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2013年1月23日 (水)

橘木俊詔・浦川邦夫『日本の地域間格差』(日本評論社) を読み、東京一極集中を考える

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橘木俊詔・浦川邦夫『日本の地域間格差』(日本評論社) を読みました。副題は「東京一極集中型から八ヶ岳方式へ」とされており、基本的な論調は、東京一極集中を是正することにより、我が国の地域間格差を縮小を目指す、という主張です。同じ出版社の「経済セミナー」という雑誌に連載されていた論文を取りまとめたものです。まず、出版社のサイトからごく簡単な内容紹介を引用すると以下の通りです。

内容紹介
行政サービス、所得や雇用環境は、地域によってどの程度差があるのか。地域間格差の実態や特徴に焦点をあて、詳細な検証を行う。

続いて、章別の構成は以下の通りです。

第1章
地域住民の生活意識と格差
第2章
先進諸国と比較した日本の地域間格差
第3章
住民の地域移動の要因
第4章
企業立地の地域間格差
第5章
地域間の賃金格差と貧困の現状
第6章
行政サービスの地域間格差
第7章
地域間格差がもたらす影響: 健康、学力、ソーシャル・キャピタル、幸福
第8章
地域間格差の是正策:財政調整か、東京一極集中をやめるか
第9章
東京一極集中をやめる方策

繰返しになりますが、地域間格差の是正を目指すのはいいとしても、そのために東京一極集中を排除することを目指すという主張なんですが、私には必ずしも賛同できません。というのは、この本にも引用されていますが、いくつかの既存研究では東京の一極集中を維持したままの地域間格差是正策が論じられていることも確かですし、比較考量の問題として、東京の一極集中をこの本の最終章で論じているような非市場的な政策により強引に是正するコストと地域間格差是正のベネフィットがまったく論じられていないのは奇異に感じます。特に、東京の一極集中のデメリットに関する指摘は p.190 の下半分の2パラにとどまっており、内容も内外価格差と首都直下型地震への備えとしての分散化という陳腐な内容となっています。もともと、格差是正に関する議論は「どの程度の格差であれば許容できるか」というもっとも肝になるポイントを意図的に外して進められていることは確かですが、第9章の冒頭に述べられているように、東京の一極集中をもって地域間格差の是正を進めようと主張している本書において、東京の一極集中のデメリットがこの程度しか議論されないのはお粗末極まりなく、特に、現在の東京一極集中は、お江戸の昔の出発点はかなり人為的であったとしても、その後は経路依存性が強いと私は受け止めており、財政リソースによるインセンティブを主とする政策的な非市場的手段による分散はコストが高いと直感的に感じてしまいます。産業も地域も補助金がなければ育たないのであれば、ホントにその産業や地域に補助金を出すことがいいのかどうか、もう一度見直すべきだと私は考えます。その点に関する論証を欠いては、関西在住や九州在住のエコノミストの勝手な主張と受け取られかねない恐れがあります。
分析はフォーマルな定量分析を実施していますが、問題点が2つあります。第1は、オピニオン・ポールという意識調査のソフトデータから無理やりに格差を説明しようとしていることです。第2に、相関関係と因果関係に関する混乱が見られます。例えば、第3章の住民の地方移動の要因の分析について、地方出身-都市在住者が、私もそうですが、高所得を志向して移動したという因果関係なのか、都市へ移動した結果として高所得になったという因果関係なのか、単なる操作変数を用いたクロスセクションの最小二乗法では、どこまでの結論が引き出せるか疑問が残ります。最後の第9章においても、東京への一極集中によるデメリットに関する議論で、東京などの大都市の機能不全が我が国経済の低迷の一因のように論述されています (p.195) が、因果関係は逆、すなわち、日本経済の長期低迷によりニューヨークや上海に比べて東京の地位が低下したのではないか、と感じるエコノミストやビジネスマンは少なくないと受け止めています。

地域間格差を離れて、本日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」の改定版 World Economic Outlook (WEO) Update が発表される予定となっています。国際機関のリポートに着目するのはこのブログの特色のひとつですから、なるべく早く取り上げたいと思います。

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