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2013年1月 7日 (月)

棚瀬順哉『エマージング通貨と日本経済』(日本経済新聞社) を読む

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棚瀬順哉『エマージング通貨と日本経済』(日本経済新聞社) を読みました。著者は J.P.モルガン・チェース銀行の為替ストラテジストです。構成というか、目次は以下の通りです。

はじめに
 
第1章
ますます強まるエマージング経済と日本の繋がり
第2章
エマージング通貨の見方
第3章
通貨政策から読み解くエマージング経済
第4章
エマージング通貨危機の再来はあるのか?
第5章
ユーロ圏債務危機とエマージング経済・通貨
終章
エマージング経済の未来と21世紀の世界経済
おわりに
 

これも先日1月4日にアップした「年末年始休暇に読んだ新書版ほか」と同じで、特にエマージング諸国、いわゆる新興国経済について勉強しようと思ったわけでもなく、この先、ミセス・ワタナベの為替投資行動に一定の影響を与えそうな気がしたから読みました。ミセス・ワタナベがこの本を熟読するとは必ずしも考えませんが、ミセス・ワタナベに為替の投資アドバイスをするストラテジストやアナリストか誰かが読みそうな気がします。でも、おそらく、著者はミセス・ワタナベが読むことも念頭にあると想像しています。その意味で、かなり苦労して書き進んでいることが伺えます。輸出企業が為替の「カバー」を取る行動について、「カバー」という言葉を使わずに説明するとこうなるのかと感心しましたし、「ボラティリティ」というのが便利な言葉であることを実感しました。逆に、「ボラティリティ」という言葉を使わずに説明するのは私には厳しい課題だと受け止めています。この本のように、為替相場のバックグラウンドにあるマンデル・フレミング・モデルや購買力平価仮説に何ら言及することなく、スポットの為替レートを説明する能力は私にはありません。為替の決定要因について著者はどう考えているのか、知りたい気もします。また、「新興国」を「エマージング経済」と表記すれば、字数的ページ数的にはどれくらいボリュームが膨らむのかも興味あります。
もちろん、それなりに勉強になったことは確かです。例えば、オン・ショアとオフ・ショアの人民元市場が切り離されているのはさすがに知っていましたが、新興国のいくつかの制度については知らないこともかなりありました。また、薄々気づいていることでも、例えば、新興国為替への日本からの投資は個人レベルである点や、新興国為替への投資はその当該新興国自身の経済情勢などとともに投資元のリスク許容度に影響を受けるなど、改めて指摘されるとその通りという気になります。また、為替のトレーダーがやっぱりというか、新興国の通貨危機の再来をとっても気にしていて、危機の再来を躍起になって否定しながらも、一定の可能性は排除し得ない点もやむを得ないという気がします。一応、保険はかけておくわけなんでしょう。

繰返しになりますが、昨年の衆議院解散以降の現在の円高修正局面において、また、今後のミセス・ワタナベの為替投資行動を考える上で一定の参考になる本です。ご自身がミセス・ワタナベである場合にはオススメするかどうか迷いますが、私のようにミセス・ワタナベの動向をウォッチする向きには大いにオススメできます。

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