海外ジャーナリストの執筆になる経済教養書を読む
ジャーナリストの手になる経済教養書を2冊ほど読みました。まず、フィリップ・コガン『紙の約束』(日本経済新聞出版社)です。著者はフィナンシャル・タイムズ紙やエコノミスト誌の記者を務めたジャーナリストとして英国で活躍しており、いわゆる「債務」一般を歴史も含めて説き起こしています。ひょっとしたら、この著者は金本位制への復帰をオススメしているのではないかと感じさせる部分もあったりしますが、経済活動につきものの貯蓄・負債について、さまざまなエピソードも踏まえてストーリーが進み、いろんな知識を吸収することが出来ます。p.126 で近隣窮乏化政策について触れており、「デフレの包みを受け渡す」と表現しています。アベノミクスより前の日本は世界各国から「デフレの包み」をいっぱい受け取っていたということなんでしょう。
次に、ニコラス・ワプショット『ケインズか ハイエクか』(新潮社) です。著者はタイムズ紙やオブザーバー紙の記者・編集者を務めたジャーナリストです。21世紀の現在から考えると、ケインズ的な混合経済とオーストリア学派的な自由主義的経済とは完全に勝負がついていると私は考えていたんですが、1冊目の経済書の観点と同じで、政府の政策対応が大きいと過剰な債務が残りかねないという問題意識かと思います。ケインズと対比させなければ、リアル・ビジネス・サイクル理論の形でオーストリア学派はまだエコノミストの間にも一定の影響を残していますが、私の希望的な観測も含めて、アベノミクスが何らかの結果を残して、私の理解する雇用を重視したリベラルな経済学が広く浸透すれば、少なくともエコノミストの間では、今後はますます影響力を低下させるのではないかと考えます。もっとも、政府や中央銀行と一定の緊張関係を保持することが求められるメディアの世界では、政府批判の根拠として生き残る可能性は否定しません。その意味で、エコノミストの間で大きくケインズに傾いた天秤が、ジャーナリストからは違った風に見えるのかもしれません。
タイトルに明示しましたが、今夜のエントリーで取り上げた2冊は、いわゆる経済の学術書ではありません。しかし、広い意味で経済社会や経済学についてよりよく理解するために有益な本であろうと考えています。「読書感想文の日記」に分類しておきます。
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