貿易統計に見る輸出の下げ止まり
本日、財務省から1月の貿易統計が発表されました。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出が前年同月比+6.4%増の4兆7992億円、輸入が+7.3%増の6兆4286億円、差引き貿易赤字が▲1兆6294億円と、統計が比較可能な1979年1月以降で最大の貿易赤字を記録しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。
1月の輸出額、8カ月ぶり増加 貿易赤字は過去最大
財務省が20日に発表した1月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆6294億円の赤字だった。赤字は7カ月連続で、赤字額は2012年1月(1兆4814億円)を上回り、比較可能な1979年1月以降で最大だった。ただ、輸出額は円安などの影響で8カ月ぶりにプラスに転じた。
地域別にみると、対中国の貿易収支は6546億円の赤字で、過去最大の赤字額だった。スマートフォン(スマホ)やノートパソコンなどの輸入が大幅に増え、輸入額が過去最大の1兆4175億円に膨らんだことが影響した。
全体の輸出額は前年同月比6.4%増の4兆7992億円。主に中国向けのペットボトル用パラキシレンなどの有機化合物、米国やタイ向けの自動車部品、アジア向けの非鉄金属が伸びたほか、中国の春節(旧正月)が今年は2月にずれたことも増加要因になった。
全体の輸入額は7.3%増の6兆4286億円で、3カ月連続のプラス。原油価格上昇や暖房需要の増加の影響で軽油やナフサなどの石油製品、液化天然ガス(LNG)、原粗油が高水準だった。
財務省関税局は「外貨建ての貨物が輸出で6割、輸入で8割弱を占めているので、円安が輸出入額の増加に効いてきている」と分析している。
いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事ですが、次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフでプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。
1月の貿易統計の印象を一言で表現すると輸出が下げ止まった、ということになろうかと思います。先月1月24日付けのエントリーでも、昨年2012年10月を底に輸出の季節調整値が上向きに転じた旨を強調しましたが、1月統計を見てもその動きが続いています。輸出の動きをさらに詳しく見ると、下のグラフの通りです。いずれも貿易指数のうち輸出の前年同月比を折れ線グラフでプロットしてあり、上のパネルでは輸出額を価格と数量で寄与度分解してあり、下のパネルは輸出先で寄与度分解してあります。
上のいずれのグラフも元は季節調整していない原系列の前年同月比ですので、季節調整済みの輸出とは微妙にベースが異なっており、輸出の底入れの要因を考えるにはやや強引な議論かもしれませんが、まず、輸出額の増加は数量ではなく価格の要因が大きいことが見て取れます。特に昨年12月以降は輸出の価格の上昇が顕著であり、円高修正の効果と受け止めています。ただし、私の知り合いのエコノミストから送ってもらっているニューズレターなどを見る限り、シンクタンクなどにおける独自算出の季節調整済みの輸出数量も底入れを示しています。また、地域別の輸出は、アジア向けが前年同月比でプラスに転ずるととともに、北米向けも引き続き底堅く、欧州向けもマイナス幅を縮小して来ています。中国や欧米の景気回復にともなう需要面の要因とともに、円高修正の進展による価格面での競争力の回復もあって、輸出の先行きは期待できそうです。
取りあえず無視しましたが、1月の貿易統計には円高修正に伴うJカーブ効果が色濃く現れています。すなわち、円建ての原系列統計で見て輸出額が減少して、輸入額が増加しています。数量効果が統計から把握できるようになるには今少し時間がかかるかもしれません。
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