最近読んだ小説の読書感想文
昨夜の経済書に続いて、小説もサッパリ買わなくなって借りてばかりですので、この1週間で読んだ3冊ほどの読書感想文をブログに記録として残しておきたいと思います。
まず、山田悠介『奥の奥の森の奥に、いる。』(幻冬舎) です。悪魔をめぐるホラー小説です。私は地方大学に出向して大学生諸君と接している時に、この著者の絶大なる人気を目の当たりにして、デビュー作の『リアル鬼ごっこ』をはじめ、『@ベイビーメール』や『スイッチを押すとき』などを読んだんですが、当然ながら感性が中年ですので、いまいち理解が及ばないところがあります。この著者は圧倒的に中高生に人気ですから、我が家のホラー小説愛好家の下の子に読ませてみたい小説です。
次に、葉室麟『おもかげ橋』(幻冬舎) はよかったです。私はこの著者の作品は初めて読みました。「おもかげ橋」はまさに都電の停留所のある高田馬場や早稲田に近いあの場所を指していて、そこを舞台にしています。時代小説です。時代小説にはかなり高い確率でお家騒動や派閥争いがからむんですが、この小説も同じ趣向です。九州肥前の架空の藩出身の弥市と喜平次が主人公となり、ともに派閥争いから藩を離れ江戸に住まいしているんですが、2人とも元の藩の上司の娘である萩乃が江戸に来た折に彼女を守りつつ、旧藩をお家騒動をから救います。男女の夫婦仲というものにも思いが至ったいい作品です。
最後に、朝井リョウ『何者』(新潮社) です、直木賞を受賞した話題作です。私はこの著者の作品は映画化された『桐島、部活やめるってよ』しか読んだことがないんですが、若い世代の思考や行動パターンを必ずしも完全に理解できなくても、かなりいい作品だということは読み取れます。大学3年生が秋の大学祭を終えて、4年生にかけてのいわゆる就活にまつわる小説です。ツイッターやフェイスブックの活用に始まり、わずか140字で人物を判断するのがいいのかどうか、人間としての本質と就職面接などのプレゼンの際に見せる表の顔との乖離、さまざまな読み方のできる小説です。ただし、何で読んだか忘れたものの、「ミステリの要素がある」といった書評だか紹介文を見ましたが、最後のツイッターの裏アカウントの暴露による言い争いの場面はもう少し上手な処理が出来なかったものかと思わないでもありません。確かに最後を締めくくる大事なパートではありますが、やや読後感が悪くなった気がします。
朝井リョウ『何者』は新潮文庫のアンソロジー『最後の恋』に収録されている「水曜日の南階段はきれい」とあわせて読むともっと楽しめると聞き及んでいます。未読なんですが、近くの図書館に予約中です。
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