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2013年3月28日 (木)

前年比マイナスの商業販売統計は消費の悪化を示しているか?

本日、経済産業省から2月の商業販売統計が発表されました。ヘッドラインとなる小売業販売額は前年同月比▲2.3%減の10兆5250億円でした。前年2012年の2月はうるう年でしたので、前年比マイマスながら、まずまずの数字と受け止めています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の小売販売額、2カ月連続マイナス 自動車販売の不振続く
経済産業省が28日発表した2月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は10兆5250億円で前年同月に比べ2.3%減った。マイナスは2カ月連続。前年にエコカー補助金効果で自動車販売が大きく伸びた反動が出たほか、天候不順で春物衣料販売の出だしが鈍かった。うるう年だった昨年に比べ、営業日数が1日少なかったことも影響した。
減少幅は2011年8月(2.4%減)以来の大きさ。ただ、うるう年でなかった11年と比較すると0.7%増で、経産省は「堅調に推移している」とみている。
自動車小売業は10.3%減で、6カ月連続の減少。機械器具小売業はテレビの販売不振や価格下落が止まらず、4.0%減と19カ月連続のマイナスだった。織物・衣服・身の回り品小売業は1.6%減だった。
一方、燃料小売業はガソリンなど石油製品価格の上昇で1.8%増。医薬品・化粧品小売業は花粉症対策商品が伸び、0.6%増だった。
百貨店とスーパーを含む大型小売店は2.9%減の1兆4236億円、既存店ベースは3.7%減で、共に2カ月連続のマイナス。うち百貨店は時計や宝飾品など高額商品の販売が伸び0.7%増だったが、スーパーは5.8%減だった。春物衣料の不振に加え、野菜の相場安が影響した。
コンビニエンスストアは0.7%減の7033億円。タバコや書籍の販売が落ち込んだほか、前年にコンサートなど高額チケットの販売が多かった反動が出た。既存店ベースも4.9%減で、9カ月連続のマイナスだった。

いつもながら適確に取りまとめられた記事だという気がします。次に、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売販売額の前年同月比、下は季節調整指数をそれぞれプロットしています。なお、このブログだけのローカル・ルールですが、直近の景気循環の山は2012年3月、谷は2012年11月であったと仮置きして、影をつけた部分である景気後退期を示しています。

photo

2月の小売業販売額は季節調整していない前年同月比ではマイナスなんですが、これは前年のうるう年の影響による反動です。もちろん、月極め料金もありますから、すべてが日数分少ないというわけではありませんが、食料を中心にうるう年は消費に大きな影響を有することは確かです。ただし、カレンダー要因ということになれば、昨年2月の祝日の建国記念日2月11日が土曜日に重なったのに対して、今年は月曜日に来て連休になりましたから、うるう年要因をわずかながら緩和した可能性はあります。
他方、季節調整済みの系列は2月に大きくジャンプしましたが、これも額面通りに受け取るべきではありません。価格が高騰したガソリン販売の影響が大きいからです。季節調整済みの指数系列が発表されている産業の中で燃料小売業の前月比が前月比+3.6%と最も大きくなっています。引用した記事にある通り、燃料小売業は季節調整していない原系列の前年同月比でもプラスです。他方、自動車小売業も1月こそ前月比でマイナスでしたが、1月には前月比+1.1%のプラスに転じています。エコカー補助金終了の反動も一巡した可能性があります。いずれにせよ、ガソリン要因があるとはいえ、消費は底堅いと考えるべきです。
消費の先行きについては、根拠ない楽観論には立ちませんが、慎重な楽観論の立場といえます。一時流行った言葉でいえば、cautiously optimistic というわけです。すなわち、メディアの報道に見られるような賃金上昇は、少なくとも現時点では、ごく限られた範囲の雇用者に恩恵が及ぶだけだと私は受け止めています。例えば、1部上場大企業の正社員だけというわけです。従って、現時点での消費拡大は所得ではなくマインド向上が先行していると考えるべきです。もちろん、景気回復ないし拡大が継続するに従って所得が上昇する可能性もある一方で、消費税率引上げ前の駆込み需要が夏ごろから顕在化する可能性もあり、必ずしも所得に基づかずに消費が拡大する可能性があります。当然ながら、所得の裏付けなく消費税率引上げを見越しただけの消費拡大はサステイナブルではなく、消費税率引上げとともに大きく失速する可能性も否定できません。これを避けるためにも、景気拡大の継続と賃上げが強く望まれるところです。

消費は内需やGDPのもっとも大きな部分を占めるだけでなく、国民生活の豊かさを測るひとつの尺度でもあります。国民生活重視のエコノミストとして、雇用とともに消費も私は重視しています。

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