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2013年3月26日 (火)

来週月曜日に公表される日銀短観の業況判断は改善を示すか?

来週月曜日4月1日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから3月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIを取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は2013年度、すなわち、来週から始まる来年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。いつもの通り、先行きに関する見通しを可能な範囲で取りました。もともと先行き判断を含む調査ですから、各機関とも何らかの先行きに関する言及がありました。ただし、長くなりそうな場合はこの統計のヘッドラインとなる大企業製造業だけにした場合もあります。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
12月調査▲12
+4
<n.a.>
n.a.
日本総研▲5
+9
<+1.4>
先行き(2013年6月)は、大企業・製造業、大企業・非製造業で、各々3月対比+5%ポイント、+6%ポイントの改善と予想。米中景気の回復により輸出が持ち直しに転じるほか、緊急経済対策の効果が、顕在化してくることが背景。加えて、消費者マインドの改善が続くこともプラスに作用する見込み。
大和総研▲7
+7
<+2.4>
(大企業製造業) 先行きに関しても、海外経済の回復期待と、円安による輸出数量増加見込みを背景に、製造業の業況判断は改善が続くだろう。
(大企業非製造業) 先行きに関しても、足下の流れを引き継いで改善が続くと見込んでいる。収益の改善を受けて、賞与の引き上げを決定する企業が増加しており、所得環境の改善が期待されることから、「小売」の改善に加えて「対個人サービス」でも強い先行き改善期待が示されるだろう。
みずほ総研▲5
+9
<▲0.8>
先行き判断については、円安や海外経済の持ち直しを背景とする輸出増の恩恵が幅広い業種に広がっていくとの期待から、加工業種・素材業種とも改善が見込まれる。
(大企業非製造業) 先行きについては、緊急経済対策による公共投資の押し上げや個人消費の回復などを背景に改善が続く見込みである。
ニッセイ基礎研▲7
+8
<▲0.5>
先行きについては、海外経済の回復期待は従来よりも高まっているうえ、金融緩和強化に伴う円安や12年度補正予算執行に伴う公共事業拡大というアベノミクスへの期待が強く現れるため、さらに大幅な景況感改善が示されそうだ。
伊藤忠商事経済研▲3
+7
<+1.4>
最も注目される大企業製造業の現状判断DIが、12月調査の▲12から3月調査で▲3へ改善すると見込んでいる。円安による輸出数量押し上げが進むことで、先行きは3へ更に改善し、2011年9月調査以来のプラス転換を臨むと考えられる。
第一生命経済研▲8
+7
<▲2.4>
目立ちそうなのは、先行きDIの改善である。企業決算を控えて、3か月後により企業収益が改善するという予想は、先行きDIに反映するだろう。筆者の見通しでは、大企業・製造業は現状▲8の予想は、先行きでは+12ポイント改善へとDI4へと大きく上昇すると予想する。
三菱総研▲7
+7
<n.a.>
先行きの業況判断DI(大企業)は、国内経済の回復への期待などから大幅な改善となろう。製造業が+6%ポイント、非製造業が+4%ポイントの改善を予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲8
+6
<+0.7>
(大企業製造業) 先行きの業況判断DIは6ポイント上昇の-2と、加工業種を中心に堅調な改善が続くと予測する。円安による収益の拡大効果が本格化する上、世界経済の回復ペースの高まりを背景に輸出の増加が見込まれる。幅広い業種で業況が改善するだろう。
(大企業非製造業) 先行きについても、景気の持ち直しを受けて内需の拡大が続くとみられる中、景況感は改善が見込まれる。円安に合わせて株高が進んでいることや、雇用環境が緩やかながらも持ち直していることを受けて、消費者マインドは改善しており、業況判断DIの上昇幅は拡大する見通しだ。
みずほ証券リサーチ&コンサルティング▲7
+8
<+0.5>
先行きについても、円安の進行や海外経済の持ち直し、緊急経済対策の効果が期待されることなどから、大企業の「先行き」については改善を示すと想定した。なお、中小企業については先行き慎重な判断が示されやすいという傾向を考慮している。

見れば分かると思いますが、大企業の製造業・非製造業の業況判断DI、さらに、大企業全産業の2013年度設備投資計画の前年度比です。設備投資計画は土地を含みソフトウェアを除くベースです。さらに、日銀短観予想の一例として、日本総研のリポートから大企業と中小企業の業種別の業況判断DIの推移のグラフを引用すると以下の通りです。なお、日銀短観には大企業と中小企業の間に中堅企業というカテゴリーがあるんですが、ほぼ大企業と中小企業の間にあると考えて差し支えありません。

photo

シンクタンクなどの予想結果は、押しなべて業況判断DIなどで示される企業マインドが改善するという結果になっています。昨年11月の衆議院解散以降の経済の流れを見ればその通りという気もしますが、他方で、法人企業景気予測調査で調査しているBSIなどでは、「国内の景況判断BSI」と「貴社の景況判断BSI」に分けて調査した場合、後者が前者を下回る例が多く見られることから、世間一般で考えられているほどには大きな改善が出ない可能性もあります。例えば、3月12日付けのエントリーで取り上げた1-3月期調査の法人企業景気予想調査では、大企業の「国内の景況判断BSI」が1-3月期+17.9、4-6月期+15.8となっている一方で、同じく大企業の「貴社の景況判断BSI」は1-3月期+1.0、4-6月期+3.8でしかありません。ですから、多くの人が考える景気の現況よりは控えめな結果が出る可能性があります。もっとも、低めに出るとはいえ、足元よりも先行きの景況感はさらに改善を示すことは明白です。ただし、設備投資計画については、モロに「貴社の景況判断」に依存するわけですから、3月調査ではマイナスから始まる場合が少なくありません。2012年度の設備投資計画が12月調査から下方修正されるとともに、3月調査の2013年度計画はわずかにマイナスでスタートすると私は考えています。

という意味で、数字だけを見れば、みずほ総研やニッセイ基礎研の予想が私の見方に近いといえます。逆に、2013年度の設備投資計画がプラスに出れば、企業マインドは私が考えているよりもかなり強い、という解釈も成り立ちます。

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