今年の新入社員の初任給は増えたのか?
昨日、労務行政研究所から「2013年度 新入社員の初任給調査」が発表されています。東証第1部上場かつ回答のあった238社の集計ですから、かなりバイアスは大きいと思いますが、毎年の調査のようなので時系列的に比較することは可能だという気がします。調査結果によれば「据え置き」が95.4%と圧倒的多数を占めます。まず、リポートから調査結果のポイントを箇条書きで引用すると以下の通りです。
調査結果のポイント
- 初任給の据え置き状況
「据え置き」が95.4%で、内訳は「全学歴据え置き」がほとんど。「全学歴引き上げ」は4.2%にとどまる- 過去10年間における据え置き率の推移
2003年度から3年連続で95%を超えていたが、06年度以降は企業業績の回復や団塊世代の大量退職などを背景とした企業の採用意欲の高まりを反映し、低下傾向にあった。しかし、世界的不況に陥った09年度は一転、再び9割を超え、以降その状況が続いている- 初任給の水準
大学卒(一律設定)20万5647円、大学院卒修士22万2300円、短大卒17万2546円、高校卒(一律設定)16万1084円- 主な学歴別に見た上昇額の分布
いずれの学歴でも、「据え置き」が9割以上を占める。平均上昇額は、大学卒で73円、高校卒で107円
まず、今年の新入社員の諸君の初任給は据置きが圧倒的だったということです。繰返しになりますが、東証1部上場でしかも回答のあったわずか238社の結果ですから、他の中小企業などは状況が異なる可能性は否定出来ません。バイアスがあることを承知の上で、簡単に、リポートから引用した図表を見ておきたいと思います。

まず、上のグラフはここ10年ほどの初任給の据置き率の推移をプロットしています。上に引用した「調査結果のポイント」にもある通り、ほとんどの年で90%を超える高率を示していますが、2006-09年については景気の回復や団塊世代の大量退職などから、据置き率がかなり下がっており、賃金の下方硬直性を考慮すれば、初任給が増額されたことを示唆しています。今年については、足元でアベノミクスなどに起因する景気回復が始まっている可能性は高いものの、当然ながら、賃金や初任給に波及するに至っていません。

初任給の額は昨年からほとんど変化ありませんが、大卒の総合職などの基幹職で20万円を少し上回るくらい、というのが相場なのかもしれません。もちろん、高卒はこれよりかなり少ないですし、院卒は修学年数に応じて大卒よりも高くなっています。当然です。平均上昇額は100円未満ですから、ついつい「雀の涙」という言葉を思い出してしまいました。なお、企業規模別には「平成24年賃金構造基本統計調査結果」のうちの「企業規模別にみた初任給」では、微妙に差が出ていることが読み取れます。
最後に、新入社員の初任給を離れると、経済協力開発機構 (OECD) から今年の「対日経済審査報告」が発表されています。以下の5点が Key recommendations として明らかにされています。
- Restore fiscal sustainability
- End deflation through aggressive monetary policy aimed at the 2% inflation target
- Following the Great East Japan Earthquake, step up efforts to revitalise Japan
Reform agriculture and promote Japan's integration in the world economy
Promote green growth and restructure the electricity sector - Promote growth by increasing labour force participation and raising productivity through education reforms
- Promote social cohesion by reducing income inequality and relative poverty
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