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2013年5月14日 (火)

企業物価に見るデフレの現況やいかに?

本日、日銀から4月の企業物価指数 (CGPI) が発表されました。ヘッドラインとなる国内企業物価は前年同月比で保合いとなり、昨年3月以来ほぼ1年振りにマイナス圏から脱した形になりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

4月の国内企業物価横ばい 下落1年1カ月ぶりとまる
日銀が14日発表した4月の国内企業物価指数(2010年=100、速報値)は101.4となり、前年同月比横ばいとなった。上昇率がマイナス傾向から抜け出すのは12年3月以来、1年1カ月ぶり。外国為替市場で円安が進み、石油・石炭など素材品目の輸入価格が幅広く上昇。電気料金の値上がりも影響した。
項目別の内訳では、電気料金の引き上げの影響で電力・都市ガス・水道が前年同月比6.4%上昇したほか、米国の住宅市況の回復などを背景に製材・木製品が6.0%プラスとなった。中国の需要低下などを受けて鉄鋼は5.0%下落。価格競争が激しい情報通信機器も6.2%下がった。
円安の影響で、円ベースの輸入物価指数は前年同月比9.5%上昇の123.8となった。6カ月連続の上昇で、水準としてはリーマン・ショックが発生した08年9月以来の高い水準となった。契約通貨ベースでは4.5%低下しており、円安が輸入物価を押し上げた格好だ。
企業物価指数は前月比でみると0.3%上昇し、5カ月連続のプラス。5カ月連続で上昇するのは10年12月-11年4月以来となる。企業物価は出荷や卸売り段階で企業間でやり取りされる製品の価格水準を示す。

いつもながら、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、企業物価上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルは国内と輸出入、サービスの物価上昇率です、サービスだけ2005年基準であるほかは、2010年基準です。下のパネルは需要段階別の素原材料、中間財、最終財の上昇率です。いずれも前年同月比の上昇率であり、折れ線グラフの色分けは凡例にある通りです。

photo

企業物価の統計やグラフを見る上で注意すべきであるのは、すべて円建てで評価されていることです。国内物価はそれで何ら差し支えないんですが、輸出入物価は少し様子が違います。すなわち、4月の前年同月比で見て、輸出物価は円ベースで+8.9%の上昇なんですが、契約通貨ベースでは▲1.6%の下落ですし、輸入物価は円ベースで+8.2%の上昇が契約通貨ベースでは▲4.5%の下落だったりします。どうしてこうなっているのかというと、円高修正がこの1年間で、というか、昨年11月以降でかなり進んだからです。円ベースの輸出入物価はいずれも昨年10月まで前年比でマイナスだったんですが、実に正直に昨年2012年11月からともにプラスに転じています。
引用した記事にある通り、前年同月比で上昇幅が大きいのは、電力・都市ガス・水道、製材・木製品、非鉄金属などの原材料となっており、逆に、大きく下落したのは、情報通信機器や鉄鋼となっています。また、季節調整していない前月比で3月から足元で上がったのは、やっぱり、電力・都市ガス・水道や食料品・飲料・たばこ・飼料となっています。他方、輸出入物価の契約通貨ベースで下がったのは、輸出で輸送用機器と化学製品、輸入で石油・石炭・天然ガスなどとなっています。世界的な需給関係が価格に反映されていると私は受け止めています。

現時点で、企業物価がゼロに戻したとはいえ、輸入の素原材料が円高修正の結果として円ベースで上昇しているのが大きな要因となっており、景気の拡大に伴う需給ギャップの改善や賃金上昇が主導しているわけではありません。即効性の高い円高修正はともかく、アベノミクスが経済全体に波及するには今しばらく時間がかかりそうです。

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