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2013年5月22日 (水)

貿易統計をながめて貿易赤字の方向を考える!

本日、財務省から4月の貿易統計が発表されました。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+3.8%増の5兆7774億円、輸入額は+9.4%増の6兆6573億円、差引き貿易収支は▲8799億円の赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易赤字、4月で最大 対米輸出増、中国から輸入は過去最高
財務省が22日発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8799億円の赤字だった。赤字は10カ月連続で、4月としては前年(5184億円の赤字)を上回り比較できる1979年以降で最大だった。液化天然ガス(LNG)などの輸入が高水準だった。
輸出額は前年同月比3.8%増の5兆7774億円。円安の影響で2カ月連続のプラスだった。主に中国向けのパラキシレンなど有機化合物や、米国向けの自動車が伸びた。輸出数量は5.3%減と11カ月連続でマイナスが続いたが、3月の9.8%減、2月の15.8%減と比べマイナス幅は縮小した。
輸入額は前年同月比9.4%増の6兆6573億円で、6カ月連続で増えた。カタールなどからのLNG輸入が17.9%増えたうえ、中国やベトナムからの衣料品輸入が増えた。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=96円01銭で、前年同月比16.6%の円安だった。
地域別にみると、米国向け輸出は1兆1013億円と前年同月比14.8%増え、2008年10月以来の高い水準となった。自動車やベンゼンなど有機化合物の輸出が好調だったためで、対米貿易黒字額は5630億円と08年7月以来の水準を回復した。
一方、中国、欧州連合(EU)との貿易収支は、4月としては過去最大の赤字となった。中国からの輸入額は前年同月比13.3%増の1兆4409億円と過去最大。貿易赤字は4425億円だった。衣料品やスマートフォンなど通信機輸入が増えた一方、輸出は自動車やプレス機械部品などが減った。EUとの貿易赤字は386億円。欧州景気の低迷で19カ月連続で輸出が減少した。
財務省は今後の見通しについて「円安傾向だが、依然として海外景気の下振れリスクに留意する必要がある。鉱物性燃料の動向もあり、確たる見通しは難しい」(関税局)としている。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。最後の「確たる見通しは難しい」などはまさにその通りという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフでプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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輸出入とも着実に増加しているのが見て取れます。まず、輸入について考えると、何らかのラグを伴って、輸入は為替の価格効果が効いて数量から減り始めると私は考えていたんですが、報じられているように、電力会社などからのLNGやほかの燃料の需要であれば、価格弾力性はかなり低い可能性があります。電力会社は競争の働かない地域独占企業ですから、コストアップの価格転嫁能力は極めて高く、逆から見て、輸入燃料の価格弾力性はとても低いと考えるべきです。要するに、高い燃料で発電すると電力料金を引き上げれば済むからです。電力消費者のところまで波及して初めて価格弾力性が意味を持つかもしれませんが、かなり気の長いお話であろうと思います。原発に代替する発電用の燃料輸入などの例外を除けば、2-3四半期くらいのかなり長いラグを伴いつつ、為替の価格効果がそれなりに輸入減少に作用すると予想しています。ただし、国内景気の回復に伴う所得効果が価格効果を相殺する方向に働く可能性は否定できません。貿易赤字は年内いっぱいくらいは続く可能性が十分あります。もっとも、輸出入の価格弾力性が低過ぎてマーシャル・ラーナー条件を満たさないならば貿易赤字が解消されない可能性もあります。

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目を輸出に転じると、上のグラフの通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同月比を価格と数量で寄与度分解しており、下のパネルは輸出数量指数とOECD先行指標の前年同月比を重ねてプロットしています。ただし、OECD先行指標には1か月だけリードを取っています。現時点では、輸出数量のマイナス幅が縮小している段階ですが、Jカーブ効果の時期を過ぎれば、為替の円高是正と海外経済の拡大に伴って、今後は輸出の着実な増加が期待できると私は受け止めています。下のパネルの折れ線グラフの乖離の要因は2つあり、為替とOECD非加盟国である中国経済の動向から生じていると私は考えています。中国から見れば欧州が大きな輸出市場なんでしょうが、我が国から見れば中国はそれなりに大きな輸出市場です。今後、中国経済が本格的な拡大軌道に戻れば、円高是正の効果とともに、このグラフに見られるギャップは縮小ないし逆方向に転じる可能性があると考えるべきです。

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いずれにせよ、輸出に対するリスクは為替であると私は考えています。前々からこの考えは変わりません。上のグラフはブリティッシュ・コロンビア大学のサイトからデータを取ってプロットしています。円の対ドル及び対ユーロの日次の為替レートです。リーマン・ショック前の水準にさえ円高修正が進んでいないにもかかわらず、早くも円安に対する警戒論がメディアなどで流されています。黒田総裁より前の日銀理論に深く傾倒していたりしたんでしょうか?

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