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2013年6月17日 (月)

県民経済計算に見る所得格差やいかに?

とっても古い情報を今ごろなんですが、3週間ほど前の5月29日に内閣府から2010年度の県民経済計算の結果が発表されています。平均的な1人当たり県民所得で見て、2010年度はやや格差が縮小したようです。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10年度の県民所得1.3%増 内閣府、格差は縮小
内閣府が29日発表した2010年度の県民経済計算によると、各都道府県の1人あたり県民所得は平均287万7千円と前年度に比べて1.3%増えた。08年のリーマン・ショックによる景気の落ち込みが持ち直し、製造業などの回復が所得を押し上げた。
1人あたりの県民所得が最も多い東京都は430万6000円で、前年度比で2.0%減った。東京に多い金融や保険業の回復が遅れたため。最下位は沖縄県の202万5000円。
都道府県ごとの県民所得にどれだけの差があるかを示す「変動係数」は13.5%と5年連続で下がった。東京の所得が下がる一方、39県は前年より所得が増え、格差は縮まった。
都道府県別の名目県内総生産を米ドルに換算すると、最多の東京都は1兆635億ドルと、韓国(1兆145億ドル)を上回る規模を保った。

まず、47都道府県とその平均の1人当たり県民所得を大きな順から descending に並べたグラフは以下の通りです。中位ということであれば石川県が全国23番目なんですが、東京都の大きな数字に引っ張られて、平均より多いのはわずかに8県となっています。直感的には、東京を除く平均は京都と千葉あたりではないかと感じています。もっとも、キチンと計算したわけではありません。

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昨年発表された2009年度の1人当たり県民所得の47県目は高知県となって、沖縄県が久し振りに46県目に順位を上げたんですが、2010年度は再び順位が再逆転しました。なお、改定された2009年度の計数を見ると、やっぱり、沖縄県が47番目となっていたりします。下位には沖縄県をはじめ、北海道・東北や九州、山陰、高知県などが並んでいます。また、上位を見ると、愛知県や神奈川県を抜いて、滋賀県や静岡県が上がったということは、引用した記事にもある通り、製造業の回復が所得を押し上げたと理解すべきなんだろうと受け止めています。なお、上のグラフの格差はあくまで県内の平均的な1人当たり県民所得で各県を比べた結果であり、県内における格差はこの統計からは分かりません。下のグラフも同じです。

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引用した記事にも取り上げられている格差を表わす変動係数のグラフは上の通りです。変動係数は標準偏差を平均で除した無名数のパーセント表示なんですが、上のグラフのために計算した際には、1人当たり県民所得を人口に応じた加重平均ではなく、ウェイトを考慮しない単純平均で求めています。これを見ると、記事にもある通り、2005年度まで拡大した格差はこの2005年度をピークに5年連続で格差が縮小しているように見えます。実は、リーマン・ショック前までの第14循環の景気拡大期では、相対的貧困率で計測して、景気回復・拡大の初期に格差が縮小して、その後、格差は拡大したんですが、1人当たり県民所得では、逆に、第14循環の景気回復・拡大の初期に格差が拡大して、その後、格差が縮小したことが観察されます。相対的貧困率と1人当たり県民所得では真逆の結果となっているわけです。これについて、私の過去の研究成果が解明を試みています。すなわち、第14循環においては、景気回復の当初は非正規労働者の雇用が拡大し始め、相対的貧困率で見た格差が縮小することにつながった一方で、景気回復・拡大の後期には正規職員の雇用拡大が生じて、元に戻る形で格差が拡大した可能性を示唆しています。景気局面によって正規雇用と非正規雇用の拡大テンポが異なることに格差の縮小と拡大の原因がある可能性を示唆しているわけです。これを地域間の格差に当てはめて見ると、景気回復・拡大の初期に非正規比率の高い都市部で所得が増加して格差が拡大し、景気拡大が地方にも波及するにつれて正規職員の比率の高い地方部で所得が増加して格差が縮小する、という結果となり、相対的貧困率と1人当たり県民所得で景気局面によって格差が逆の動きをすることも、正規・非正規の雇用を考慮すれば整合的に理解できます。我が研究成果ながら、いろんな方面に活用できると、今さらながら評価を勝手に引上げています。

地方大学の教員から東京に戻ってサラリーマンに復帰した今となっては統計的な裏付けは出来ませんが、格差を議論する上で雇用の正規・非正規について十分に考慮する必用があることは、当然ながら、指摘しておきたいと思います。

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