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2013年6月19日 (水)

赤字が続く貿易収支は円安定着で黒字に戻るか?

本日、財務省から5月の貿易統計が発表されました。季節調整していない原系列の統計で、輸出額は前年同月比10.1%増の5兆7676億円、輸入額は10.0%増の6兆7616億円、差引き貿易収支は9939億円の赤字でした。市場の事前コンセンサスは貿易赤字1.2兆円というものでしたから、これほど赤字は大きくありませんでした。やや長くなりますが、まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易赤字9939億円、5月で最大 アジアからの輸入額過去最大
財務省が19日発表した5月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9939億円の赤字だった。赤字は11カ月連続で、5月としては前年(9079億円の赤字)を上回り比較できる1979年以降で最大。単月としても過去3番目の高水準だった。前年同月と比べ進んだ円安が、原粗油や液化天然ガス(LNG)など燃料やスマートフォン(スマホ)など通信機の輸入額を押し上げた。
輸入額は前年同月比10.0%増の5兆7616億円で、7カ月連続で増えた。アラブ首長国連邦(UAE)などからの原粗油や、中国からのスマホなど通信機や半導体等電子部品の輸入が増えた。中国からの輸入額は1兆4564億円と単月として過去最大となった。これに伴いアジアからの輸入額も2兆9812億円と過去最大だった。
輸出額は前年同月比10.1%増の5兆7676億円。輸出額の伸び率が輸入額の伸びを上回るのは12年5月以来1年ぶり。米国向けの自動車や灯油、中国向けではペットボトルの原料となる有機化合物などが伸びた。輸出額増は3カ月連続だが円安の影響が大きく、輸出数量は4.8%減と12カ月連続のマイナス。ただし、2月は15.8%減、3月は9.8%減、4月は5.3%減と落ち込み幅の縮小は続いている。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=99円27銭で、前年同月比23.4%の円安だった。
地域別に見ると、米国向け輸出は1兆413億円と前年同月比16.3%増。5カ月連続で増えた。対米国の貿易黒字も26.3%増の4271億円で5カ月連続で増加。一方、中国との貿易収支は、過去最大となった輸入額が響き、4100億円の赤字。15カ月連続の赤字だった。欧州景気低迷の影響で欧州連合(EU)向け輸出は4.9%減の5291億円で、20カ月連続で減少。これに伴い対EUの貿易収支は887億円の赤字だった。
財務省は貿易収支の今後の見通しについて「輸出数量の対前年同月のマイナスは減ってきてはいる」と指摘。ただし「円安の傾向はみられるが、依然として海外景気の下振れにも留意する必要や燃料価格の動向もあり、確たることを言うのは難しい」(関税局)としている。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。最後の「確たることを言うのは難しい」などはまさにその通りという気がします。もっとも、先月も同じ趣旨のコメントだったと記憶しています。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフでプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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輸出入についてはほぼ同じようなテンポで増加しています。下の季節調整済みの系列を見れば同じような傾きで増加しているのが明らかだと思います。また、直感的には分かりにくいんですが、5月の統計については上のグラフの季節調整していない原系列の前年同月比で見ても、輸出も輸入も貿易収支も大雑把に+10%増となっています。貿易収支については、昨年11-12月以来の円高修正の輸出数量押上げ効果が2-3四半期遅れで現れることから、今年年央以降は貿易赤字幅の縮小が本格化するものと私は見込んでいます。しかし、貿易収支が黒字に戻るかどうかは不透明です。円レートにもよりますが、1ドル100円を上回る円安水準であれば、貿易黒字に戻りそうな気がしますが、何ともいえません。

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目を輸出に転じると、上のグラフの通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同月比を価格と数量で寄与度分解しており、下のパネルは輸出数量指数とOECD先行指標の前年同月比を重ねてプロットしています。ただし、OECD先行指標には1か月だけリードを取っています。現時点では、輸出数量のマイナス幅が縮小している段階ですが、Jカーブ効果の時期を過ぎれば、為替の円高是正と海外経済の拡大に伴って、今後は輸出の着実な増加が期待できると私は受け止めています。円高修正の輸出への効果は、まず、価格に現れています。数量の減少幅がかなり縮小した一方で、価格は上昇し、かけあわせた輸出金額は前年同月比で見てプラスに転じています。OECD先行指数はすでに前年同月比でプラスに転じており、世界的に見て中国は別にしても日本製品への需要は高まっている可能性が高いと受け止めています。

輸出が持ち直すとなれば、貿易収支の観点からは輸入の増加がどこまで続くのかということになります。エネルギーの国際商品市況もほぼ落ち着きを取り戻し、原発の規制基準が決まって7月8日から施行され、原子力規制委員会が原発再開をどのように判断するかにもよります。原発再開に関する技術的な事項について、誠に残念ながら、専門外の私にはよく分かりません。

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