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2013年6月12日 (水)

大きく減少した機械受注と上昇を示す企業物価から先行きを考える

本日、内閣府から4月の機械受注統計と日銀から5月の企業物価 (CGPI) がそれぞれ発表されました。電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注は大幅増だった先月の反動で7233億円と3か月振りの前月比減少で▲8.8%減となりましたが、先月発表の4月統計から前年同月比上昇率がプラスに転じている企業物価は5月は+0.6%となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトからそれぞれの統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

4月機械受注、前月比8.8%減 石油石炭関連の受注一服
内閣府が12日発表した4月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比8.8%減の7233億円だった。マイナスは3カ月ぶり。石油や石炭関連の受注が大きな伸びに寄与した3月の反動で、4月は大幅な減少率になった。
減少率は比較可能な2005年4月以降で09年1月(11.9%減)、06年1月(9.1%減)に次いで3番目の大きさだった。QUICKが11日時点でまとめた民間予測の中央値(8.4%減)も下回ったが、基調判断は3月の「緩やかな持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。内閣府は「7000億円台は維持しており水準としては低くない」とみている。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は7.3%減の2862億円と3カ月ぶりに減少した。3月は石油製品・石炭製品業界からの船舶、自動車業界からのコンピューターといった分野で受注が伸びたが、4月に入って一服した。一方、電気機械業界からの半導体製造装置の受注は伸びた。
船舶・電力を除いた非製造業からの受注額は6.0%減の4472億円と3カ月ぶりのマイナス。運輸・郵便業界からの鉄道車両や、金融・保険業界からのコンピューターの受注減が響いた。
5月に発表した船舶・電力除く民需の4-6月期の受注額見通しは1.5%減。3カ月ぶりにマイナスに転じた4月の結果を踏まえても5月と6月がそれぞれ前月比で2.3%減にとどまれば見通しは達成できる。内閣府は「設備投資のマインドは好転している」とみている。
企業物価上昇率、1年5カ月ぶりの伸び 5月前年比0.6%上昇
日銀が12日発表した5月の国内企業物価指数(2010年=100、速報値)は101.6と、前年同月比0.6%上昇した。上昇率は前月から0.5ポイント拡大し、2011年12月以来1年5カ月ぶりの高い伸びとなった。円安進行で円に換算した価格が上昇しているほか、電力料金の値上げなどが響いた。
企業物価指数は出荷や卸売り段階で企業間が取引する製品の価格水準を示す。前月比でも0.1%上昇し、6カ月連続のプラスとなった。原油や液化天然ガス(LNG)価格の高止まりをきっかけにした企業向けの電力料金の値上げが押し上げた。また円安が企業物価全般を押し上げているほか、海外の需要増を受けて銅地金など非鉄金属も上昇した。
円ベースでの輸出物価は前年比13.5%上昇、輸入物価も14.2%上昇した。前年比で上昇した品目は311、下落した品目は401だった。
一方で、契約通貨ベースでは輸出入ともに下落している。輸出物価は2.3%下がり、輸入物価は4.5%下落した。国際商品市場での原油安などを反映して石油・石炭価格が下がっているほか、中国の景気先行き懸念を背景に化学製品の需要が悪化したほか、金属価格の下落が影響した。

いつもながら、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその後方6か月移動平均を、下のパネルは需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。いつものお断りですが、このブログだけのローカル・ルールで、直近の景気循環の山は2012年3月、谷は2012年11月であったと、それぞれ仮置きしています。

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季節調整済みの前月比では市場の事前コンセンサスも下回って大幅な減少を示したコア機械受注ですが、水準として7000億円レベルをキープしていることなどから、基調判断は「緩やかな持ち直しの動き」で据え置かれました。先行きまで含めて考えれば、私も決して悲観的に見る数字ではないと受け止めています。昨日発表された法人企業景気予測調査でも設備投資に対するマインドはかなり改善を示しており、日銀短観も待ちたいところだというのは分かる気がします。もともとが単月での振れの激しい統計ですから、引用した記事にもあるように、「過去3番目の減少率」も大きなサプライズではなかったかもしれません。

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次に、企業物価上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内と輸出入、サービスの物価上昇率です、サービスだけ2005年基準であるほかは、2010年基準です。下のパネルは需要段階別の素原材料、中間財、最終財の上昇率です。いずれも前年同月比の上昇率であり、折れ線グラフの色分けは凡例にある通りです。前月からの上昇の寄与が大きい品目は、電力、化学品、非鉄金属、鉄鋼などですが、逆に、石油・石炭製品は下がっています。また、下のパネルに見る通り、素原材料や中間財が前年同月比で上昇に転じている一方で、国内品の最終財はまだ水面下でマイナスを続けています。輸出入の貿易財の価格については、引用した記事にもある通り、契約通貨建てでは引き続き下落しているものの、円高修正に伴って、円建て価格では大きな上昇を示しています。その昔の卸売物価から消費者物価への波及ほど単純ではなくなりましたが、一定のラグを伴って、ある程度はこの企業物価の上昇が消費者物価にも波及するものと考えられます。物価上昇を目指した現政権に国民の支持があるわけですから、デフレ脱却に向けたひとつの価格の動きであると理解するべきです。

昨日までの日銀金融政策決定会合では特段の追加緩和策は見られませんでしたが、引き続き金利が低位で安定を続けると仮定すれば、企業マインドが改善を示し物価が先行き上昇するのは設備投資には追い風です。私は政府の成長戦略には懐疑的で、民間企業のイノベーションを重視する見方をしていますが、いずれにせよ、イノベーションを体化するのは設備投資です。先行きに注目したいと思います。

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