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2013年7月 2日 (火)

毎月勤労統計調査から何を読み取るか?

本日、厚生労働省から5月の毎月勤労統計調査結果が発表されました。ヘッドラインとなる賃金は季節調整していない前年同月比で、また、景気に敏感な所定外労働時間は製造業では季節調整済みの系列で前月比と順調な景気拡大を示しています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の所定内給与0.2%減 パート労働者の割合増加
厚生労働省が2日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報)によると、毎月決まって支給する所定内給与の総額は前年同月比0.2%減の24万1691円で、12カ月連続で減少した。フルタイムで働く一般労働者とパート労働者の給与はどちらも増えたが、給与水準の低いパート労働者の割合が増えたため、全体の給与水準を押し下げた。
調査は従業員5人以上の事業所が対象。一般労働者の所定内給与は30万2444円で0.1%増、パート労働者は9万1286円で0.3%増だった。パート労働者の所定内給与が前年同月を上回るのは5カ月ぶり。厚労省は「求人倍率が改善して、人手不足感が出てきたことで、パート労働者の賃金も伸びてきた」とみている。
就業形態別の雇用をみると、一般労働者は前年と同水準なのに対し、パート労働者は2.2%増えた。
生産の増減を反映し、足元の景気動向を示すとされる製造業の残業時間(季節調整済)は、前月比1.9%減った。6カ月ぶりに減少に転じたが、経済産業省が発表した5月の鉱工業生産指数は2.0%上昇で、堅調に推移している。

というわけで、いつもの通り、よくまとまった記事だという気がします。まず、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下は製造業に限らず調査産業計の賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。賃金は凡例の通り現金給与総額と所定内給与です。毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、昨年2012年3月を直近の景気の山、2013年11月を谷と仮置きしています。

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まず、上のパネルの所定外労働時間ですが、季節調整済み指数の前月比で見て5月は▲1.9%減となりました。引用した記事からも理由が判然としない不安が読み取れますが、生産は増加しているわけですし、私はまったく理解できません。鉱工業生産指数か毎月勤労統計か、いずれかの確報で修正されるのか、あるいは、いずれかの統計が実態を正確に反映していないのか、いずれかではなかろうかという気がします。異なる役所が作成している別の統計であるとしても、ランダム・サンプリングで正しく統計が作成されていると仮定すれば、このような整合的でない結果が出ることは政府統計として好ましくないと受け止めています。
賃金については引用した記事の通りの解釈しか出来ません。すなわち、正規雇用者も非正規雇用者も賃金単価が上昇している一方で、正規雇用が伸びずに非正規雇用だけが伸びた結果、加重平均としての賃金単価が減少を記録した、すなわち、シンプソン・パラドックスが生じた、という以上の情報は現時点ではありません。アベノミクスによる景気拡大効果はまず非正規雇用の増加に現れ、一定のラグを伴って正規雇用の増加につながる、という可能性が示唆されています。量的な雇用拡大において非正規雇用が先行し、同様に、賃金の引上げも非正規雇用が正規雇用に先行する、というのは極めて蓋然性が高いと受け止めています。

鉱工業生産の増産と所定外労働時間の減少の間に横たわる不整合について、あえて強弁すれば、景気拡大が残業で追いつくくらいの増産の段階を超えて、非正規雇用を増加させて所定外労働時間の減少につながった可能性は否定できません。否定できないんですが、そんな可能性はかなり低いと私は考えています。

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