3か月連続でプラスとなった企業向けサービス価格から金融政策のラグを考える!
本日、日銀から7月の企業向けサービス価格指数 (CSPI) が発表されています。前年同月比上昇率で+0.4%と前月と同じ結果でした。3か月連続の前年同月比プラスですから、そろそろサービス価格上昇が定着するのかもしれません。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。
7月の企業向けサービス価格、3カ月連続上昇
運輸がけん引
日銀が26日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2005年平均=100)は96.3と、前年同月比0.4%上昇した。プラスは3カ月連続で、上昇率は前月と同じだった。前年に落ち込んでいた運輸が円安を背景に大きく伸びた。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引される価格水準を示す。前月と比べて7月は横ばいだった。
業種別にみると、運輸は2.7%上昇し、前年からの伸び率は6月から0.8ポイント拡大した。7月に円安が進み、主に外貨建てで取引される運賃を円換算した価格が押し上げられたほか、道路貨物輸送では燃料費の上昇を価格に転嫁する動きも出た。
情報通信は0.9%下落したが、6月と比べ前年からの下落幅は縮まった。金融や通信業を中心にソフトウエア開発の需要が堅調で、案件の増加が単価の下落に歯止めをかけている。広告は1.2%下落。7月の参院選に向けて、各政党からの新聞広告の出稿が増えたが、テレビ広告では昨年のロンドン五輪の反動で減少した。
というわけで、いつもの通り、よくまとまった記事だという気がします。企業向けサービス価格指数 (CSPI) のグラフは以下の通りです。影をつけた景気後退期は毎度のお断りで、直近の景気の山は内閣府の認定通りに昨年2012年4月なんですが、このブログのローカル・ルールで、2012年11月を直近の景気の谷と仮置きしています。

企業向けサービス価格指数 (CSPI) の7月の前年同月比上昇率+0.4%への寄与度を品目別に細かく見ると、引用した記事にもある通り、運輸が+0.59%ともっとも大きく、中でも外航貨物輸送が+0.43%を占めています。次に、土木建築サービズなどの諸サービスが+0.16%となっています。金融・保険も+0.05%とプラスです。ソフトウェア開発などを情報通信は▲0.17%のマイナス寄与ながら、5-6月の前年同月比▲1.1%から7月には▲0.9%にマイナス幅を縮小させています。全体的にジワジワとサービス価格は上昇しているようです。
なお、私は黒田総裁に交代した今年4月以降の日銀の異次元緩和が物価に及ぼす影響は、4-6四半期くらいのラグを持つ、と考えていたんですが、日経新聞の記事によれば、黒田総裁はカンザスシティ連銀主催のジャクソンホール会合にて公演し、異次元緩和はすでに市場、実体経済、物価予想の3つの面で好影響が出ていると発言したと報じられています。日銀のサイトにアップされている黒田総裁の発言要旨でも、同様の発言が確認できます。ですから、統計で示される物価の上昇率にはまだ異次元緩和は及んでいないと考えるのが多くのエコノミストのコンセンサスだと私は受け止めていたんですが、消費者物価も年央にプラスに転じていますし、私の考えるように金融政策から物価への波及は4-6四半期というのんびりした長さのラグではなく、もっと早いのかもしれません。もっとも、このあたりは現時点で確認することはかなり難しく、事後的にフォーマルな実証分析を待つしかありません。
アベノミクスの第1の矢である金融政策は着実に効果を示し始めています。第2の矢の財政政策は第1の矢のラグを埋めるための「時間を買う政策」であると私は受け止めていたんですが、現在、総理大臣官邸で開催されている「消費増税についての集中点検会合」に関する報道などを見れば、今や市場における日本財政の信認を回復するための財政調整の方が重視されるとの意見を持つエコノミストも少なくないように見受けられます。
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