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2013年8月20日 (火)

どういう人が自由貿易を支持するのか?

米国通商代表部 (USTR) のマイケル・フロマン代表が来日して、昨日、日本記者クラブで環太平洋経済連携協定 (TPP) などに関して記者会見を行い、多くのメディアで取り上げられています。中には、東京新聞のように「フロマン代表どんな人? 手ごわい交渉人」と題した紹介記事を掲載しているメディアも少なくないようです。実は、その前に先月か先々月か、日経新聞の経済教室で慶応大学経済学部の木村福成教授が、杏林大学総合政策学部の久野新講師の論文を引いて、自由貿易の選好に関する議論を紹介していました。私の方で論文を取り寄せて読んでみましたので、いくつかの論点を紹介します。引用元は以下の通りです。

いずれの論文も、データは、ISSP (International Social Survey Program) の下で実施されたISSP National Identity II, 2003 から入手しています。質問事項には当然ながら貿易等に対する考え、および回答者の個人属性が含まれており、その結果は国際比較可能な形でデータベース化されています。ISSP では他にもさまざまな調査を実施しており、詳細は ISSP のサイトで確認することが出来ます。

ということで、久野論文ではいくつかのモデルで実証分析がなされていますが、私の見たところ以下の点が注目すべき結果を残しているように見受けられます。なお、経済要因と非経済要因への分割は2番目の久野論文に準じており、性別が経済要因か非経済要因か、などについては異論が残る可能性もあるものの、一応、ここで議論するのは意味がないと考えます。

  • 経済要因
    • 女性は自由貿易を支持しない。
    • 高齢になるに従って自由貿易は支持しない。
    • 熟練労働者は非熟練労働者よりも自由貿易を支持する。
    • 農林水産業および食品加工業の従事者は自由貿易を支持しない。
    • 関税で保護されている産業の従事者は自由貿易を支持しない。
    • モデルにより統計的に有意でない場合もあるが、概して失業者は自由貿易を支持する。
  • 非経済要因
    • 帰属コミュニティーへの愛着に関しては、都道府県レベルの愛着が強いと自由貿易は支持しないが、アジアへの愛着が強いと自由貿易を支持する。
    • 愛国心の観点から日本に誇りを持つ場合、政治的影響力や歴史に誇りを持つ場合は自由貿易は支持せず、科学技術に誇りを持つ場合は自由貿易を支持し、経済的成果に誇りを持つ場合は特に支持・不支持の傾向は見られない。

マイクロ・データの分析は専門外なんですが、とても興味深い結果です。もちろん、国際比較すれば結果は大いに異なり、例えば、当然ですが、豪州は農業従事者は自由貿易を支持しそうです。しかし、久野論文では豪州を除く各国で女性は自由貿易を支持しないとの結果を得ています。日本でも、主婦連は「TPPの交渉参加に反対します」と態度を明らかにしており、女性が自由貿易を支持しない点については整合的な気もします。一方で、年齢については分かる気もしますし、少なくとも、これら以外の経済要因については常識で理解できるところではないでしょうか。非経済要因についても、愛国心に着目するとしても何に対して誇りを持つかによって自由貿易への態度が異なる点は斬新な発想だという気がします。繰返しになりますが、とても興味深い実証分析結果でした。

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