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2013年10月22日 (火)

米国雇用統計は物足りない結果に終わり金融緩和は長期化する可能性!

本日、米国労働省から米国雇用統計が発表されました。本来、10月4日に発表されているハズの指標なんですが、連邦議会で暫定予算が成立せず連邦政府がシャットダウンし、日本時間で今夜の発表となりました。統計のヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月差で+148千人増加し、失業率は前月から0.1%ポイント低下して7.2%を記録しました。いずれも季節調整済みの系列です。米国時間の統計発表を待って、日本時間では夜遅くになりましたので、簡単にグラフィックだけを取り上げておきます。まず、New York Times のサイトから記事の最初の6パラまでを引用すると以下の通りです。

Delayed Jobs Report Finds U.S. Adding Only 148,000 Jobs
American employers added 148,000 jobs in September, according to a delayed report released Tuesday by the Labor Department. The pace of growth was somewhat slower than what economists had been expecting.
The unemployment rate ticked down to 7.2 percent from 7.3 percent the previous month.
Federal Reserve officials and economists are closely watching the report for any signs of weakness. But the numbers may not offer the most current picture of the economy.
The numbers were supposed to be released two and a half weeks ago - the jobs report usually comes out the first Friday of each month - but were delayed by the government shutdown that began Oct. 1. The 16-day shutdown and concurrent Congressional battle over the debt ceiling probably worsened employment in the weeks since the September jobs data were collected, both because hundreds of thousands of federal workers and contractors were furloughed and also because anxiety and uncertainty over the budget battle caused consumer confidence to plummet.
Economists are hopeful that any dip will be temporary. If not, that could effectively delay when the Federal Reserve decides to start tapering its major monetary stimulus program, known as quantitative easing, since that action has been predicated on a steadily improving economy.
Some workers are still feeling the effects of the shutdown, though it officially ended last week.

引用した記事は日本時間の今夜の10時過ぎの時点での第1報のバージョンですから、明日にも差し替えられている可能性があります。悪しからず。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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今年2013年8月の非農業部門雇用者数の前月差増加が先月時点の統計発表時の+169千人から+193千人に上方改定されたことを差し引いて、さらに、失業率が着実に低下しているとしても、9月の雇用の+148千人増はやや物足りないと言わざるを得ません。市場の事前コンセンサスも+180千人程度の増加ということでしたので、これも下回りました。産業別には卸売+16.1千人増、小売+20.8千年増、運輸・倉庫+23.4千年増などが雇用を増加させています。なお、9月の雇用統計には入りませんが、広く報じられている通り、10月1日から米国の連邦政府は16日までシャットダウンに入りましたので、来月11月8日に公表予定の10月雇用統計ではマイナスの影響が現れる可能性が指摘されています。足元から目先の雇用は弱含みとなる可能性があり、さらに、連邦準備制度理事会 (FED) の来年1月からの次期議長が現在副議長で超ハト派、雇用を重視するイエレン女史ですから、米国の金融政策は緩和状態が長引きそうです。追加緩和すらあり得ます。我が国経済への影響としては、為替が円高に振れる可能性を私は懸念しています。

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米国の雇用について手放しで堅調といい切れないもうひとつの要素は、雇用・人口比率がサッパリ上がらないことです。かなり長期で見た上のグラフの通りです。日本のように高齢化がとてつもないスピードで進行している国であれば、高齢化に伴って労働市場から退出する人が多いわけですから、雇用者の比率が停滞ないし減少する可能性も十分にありますが、移民人口が決して少なくなく、人口がそれなりに増加を続けている米国では、まだ高齢化がそれほどのスピードでは進んでいませんから、デモグラフィックな要因よりは景気に起因する循環要因でこの雇用・人口比率が上がらないんだろうと私は考えています。

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最後に、日本の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見てほぼ底ばい状態が続いていて、サブプライム危機前の3%超の水準には復帰しそうもないんですが、底割れして日本のようにゼロやマイナスをつけて、デフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

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