« 「スポーツマーケティング基礎調査」に見るスポーツ市場やいかに? | トップページ | 鉱工業生産統計は景気の拡大を示しているか? »

2013年10月29日 (火)

雇用統計は労働需給のミスマッチを示しているか?

本日、総務省統計局の失業率厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、経済産業省から商業販売統計が、それぞれ発表されています。失業率は前月から0.1%ポイント低下して4.0%に改善し、有効求人倍率は前月と同じ0.95倍、また、商業販売統計のうち小売業販売額は11兆円で前年同月と比べて+3.1%増となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の失業率4.0%に改善有効求人倍率は横ばい
総務省が29日発表した9月の完全失業率(季節調整値)は、前月比0.1ポイント低下の4.0%となった。職探しをしていた人の就業が進んだためで、2カ月ぶりに改善した。厚生労働省が発表した有効求人倍率(同)も前月と横ばいの0.95倍だった。雇用環境は堅調に推移しているが、さらなる改善には人手不足産業とのマッチングを進める必要がある。
厚労省は雇用情勢の判断を前月に続き「一部に厳しさが見られるものの、改善が進んでいる」に据え置いた。男女ともに失業率は改善し、男性が0.2ポイント低下の4.3%、女性が0.2ポイント低下の3.5%となった。
9月の就業者数は6319万人で、前月比19万人増えた。15-64歳人口に占める就業率は72.1%となり、比較可能な1968年1月以降過去最高を更新した。女性だけ見ても63%で、過去最高を更新した。総務省は「職探しをしていた人の就業が進んだ」と分析している。
一方で、雇用者(役員を除く)に占める非正規社員の比率も37.1%となり、上昇が続く。女性を中心に、非正規での就業が進んでいるようだ。
職探しをしていない失業者にあたる「非労働力人口」は9月に前月比9万人減の4504万人となった。景気の回復を受け、職が見つかると期待して労働市場に参入する人が増えているためで、特に女性は10万人の大幅減だった。
パートを含む新規求人数は前年同月比9.2%増で、仕事がないために失業している人は少ない状況になっている。さらに失業率を改善するには、人手不足感が強い建設業(9.7%増)、医療・福祉(4.1%増)などで、ミスマッチを解消していく必要がある。
9月の小売販売額3.1%増 自動車販売好調、2カ月連続プラス
経済産業省が29日発表した9月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は11兆円で、前年同月から3.1%増えた。プラスは2カ月連続。新車の投入効果で自動車販売が好調だったほか、気温低下で秋物衣料の販売が伸びた。
小売業の内訳をみると、自動車が5カ月ぶりに増加に転じた。軽自動車の販売が好調だったほか、昨年9月に終了したエコカー補助金による反動減の影響も一巡し、11%増となった。前年比で2ケタ以上の伸びは昨年8月以来13カ月ぶり。燃料が石油製品価格の上昇で4.7%増加した。秋物衣料の売れ行きが好調で「織物・衣服・身の回り品」も3.9%増えた。一方、機械器具は一部の店舗改装の影響などで3.2%減った。
大型小売店は1.7%増の1兆5060億円で、2カ月連続で増加した。既存店ベースでも0.7%増えた。百貨店で衣料品や高額商品が引き続き好調だった。
コンビニエンスストアは新店効果で3.8%増の8280億円だった。一方、天候不順で客足が遠のき、既存店ベースでは1.6%減だった。

いつもの通り、いずれもよくまとまった記事でした。記事の引用だけでおなかいっぱい、という感じがしないでもないんですが、次に、雇用統計のグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に失業率、有効求人倍率、新規求人数です。影を付けた部分は景気後退期ですが、毎度のお断りで、このブログだけのローカル・ルールで、直近の景気循環の谷は2012年11月であったと仮置きしています。これについては後の商業販売統計のグラフも同じです。

photo

まず、量的な雇用は堅調であり、拡大を続けている姿が確認できたと私は考えています。すなわち、逆からいえば、引用した記事の最後に示唆されているような雇用のミスマッチが生じつつあるとは見なしていません。もしもそうであるならば、量的な雇用だけでなく、質的にも雇用が改善していなければ理論的な整合性がないと考えるからです。引用した記事にあるように、建設業や医療・福祉で部分的なミスマッチが生じている可能性は否定しませんが、これらの業種で賃金が上昇したり、正社員雇用が拡大するような気配は、統計的にはもちろん、アクネドータルにも今のところ感じられません。というか、知らないだけかもしれませんが、私には情報がありません。それとも、何らかの構造的なミスマッチ解消策により非正規の低賃金雇用を継続しようとしているのであれば、そのような政策が必要かどうか考え直すべきです。すなわち、産業や分野別にしてもミスマッチを問題にせねばならないほど量的に労働供給が不足し始めているのであれば、もしもホントにそうならば、賃金が上昇したり、非正規雇用でなく正規雇用などの条件のよい decent な雇用需要の拡大などが生じて然るべきだと私は考えるんですが、あくまで現状維持バイアスが強くて、労働需要があるにもかかわらず、低賃金の非正規雇用を引き続き維持継続するようなミスマッチ解消策には私は反対します。賃金上昇から大幅なインフレが生じたり、労働力不足のために供給に大きな影響が出たりするんであればともかく、現状でそこまで雇用主の企業優先策を考える必要があるんでしょうか?

photo

上のグラフは産業別の雇用者について、季節調整していない原系列の統計のまま前年同月比で増減を見ています。ここ2-3か月は水色の製造業、緑色の医療・福祉、黄色の卸売・小売業などが前年に比べて雇用を増加させています。青色の建設業については7-8月くらいまでは雇用を減らしたりしていました。グラフはありませんが、米国などで注目されている雇用・人口比率は、我が国の場合、リーマン・ショック前には届きませんが、かなり回復を示しており、昨年のミニ・リセッション前の水準は軽く超えています。そろそろホントに賃金が上昇したり、正規雇用などの decent な雇用が増加するくらいまで、その近くまで雇用は回復を示しているんではないかと私は考えています。繰返しになりますが、量的に雇用は改善しており、ミスマッチ解消策と称して、あくまで非正規低賃金雇用の維持を求めるがごとき政策には疑問を感じざるを得ません。

photo

上のグラフは商業販売統計のうち小売業について、季節調整していない原系列の小売業売上げの前年同月比と季節調整した指数をそれぞれプロットしています。今日は、供給側の統計である経済産業省の商業販売統計と需要側の統計である総務省統計局の家計調査が同時に公表されました。いつもは統計として信頼性の高い前者しかこのブログでは取り上げていませんが、どちらの統計からも消費は力強く伸びていることが確認できました。すなわち、商業販売統計の小売業販売額は季節調整していない原系列の前年同月比で+3.1%増、季節調整済みの前月比は+1.8%の増加を示し、家計調査の前年同月比は実質で+3.7%増、季節調整済みの前月比は実質+1.6%の増加でした。雇用が改善を示して、所得とマインドが向上するとともに消費税率引上げ前の駆込み需要が始まった可能性が示唆されていると私は受け止めています。

雇用のミスマッチについて話を戻すと、ホントに建設業や医療・介護で労働力不足が生じているのであれば、単に未熟練労働者を同じ労働条件のままでそれらの分野に振り向けるだけでなく、新たな入職者とともに既存の雇用者にも職業訓練を行って、各雇用者についてより生産性を高めて、効率単位の労働力を増加させるようにすべきです。結果的ながら、生産性の高い雇用者が高い賃金を受け取ったり、より decent な雇用条件を得られるようなミスマッチ解消策が望ましいと私は考えています。

|

« 「スポーツマーケティング基礎調査」に見るスポーツ市場やいかに? | トップページ | 鉱工業生産統計は景気の拡大を示しているか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/20840/53758797

この記事へのトラックバック一覧です: 雇用統計は労働需給のミスマッチを示しているか?:

« 「スポーツマーケティング基礎調査」に見るスポーツ市場やいかに? | トップページ | 鉱工業生産統計は景気の拡大を示しているか? »