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2013年10月21日 (月)

貿易統計は今後も着実に貿易赤字を記録し続けるのか?

本日、財務省から9月の貿易統計が発表されました。季節調整していない原系列で見て、統計のヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+11.5%増の5兆9721億円、輸入額は同じく+16.5%増の6兆9043億円、差引き貿易収支は▲9321億円の赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易赤字、9月として過去最大 15カ月連続の赤字、最長更新
財務省が21日発表した9月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9321億円の赤字だった。9月としては2012年(5682億円の赤字)を上回り、比較できる1979年以降で最大となる。赤字は15カ月連続で、これまで最長だった第2次オイルショック下の79年7月から80年8月にかけての14カ月連続を上回った。円安を背景に自動車など輸出額は増えたが、中国からのスマートフォンなど通信機や半導体等電子部品の輸入が増えた。原粗油など燃料輸入も高水準だった。
輸入額は前年同月比16.5%増の6兆9043億円で、11カ月連続で増加した。中国からは通信機のほか、太陽光発電に使う光電池など半導体等電子部品や衣類の輸入が増えた。中国からの輸入額は1兆6824億円と単月として過去最大。これに伴いアジアからの輸入額も3兆1571億円と過去最大だった。
輸出額は前年同月比11.5%増の5兆9721億円。ただ輸出数量指数は1.9%減と3カ月ぶりに減少した。米国向けの自動車や、中国向けにペットボトルなどの原料となる有機化合物パラキシレンの輸出額が伸びた。中国では環境対策の観点からパラキシレン工場の新設に制約があり、日本から調達する傾向が続いている。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=98円84銭で、前年同月比25.8%の円安だった。
貿易収支を地域別にみると、対中国は6200億円の赤字だった。9月としては最大で、19カ月連続の赤字だった。対欧州連合(EU)も244億円の赤字。9月としては最大で9カ月連続の赤字だった。一方、対米国の貿易黒字は前年同月比24.9%増の5331億円だった。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフでプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、月次統計で貿易赤字が連続しており、第2次石油危機以来とのことですが、上のグラフに見られるように、季節的な変動をならしたトレンドでは震災のあった2011年3月から31か月連続で貿易赤字が続いています。記事にある「赤字は15カ月連続」なんてものではありません。季節調整済みの系列をプロットした下のパネルで、2011年3月に輸出の青い折れ線が輸入の赤い折れ線の下にクロスして、その後、輸入が輸出を上回っているのが見て取れます。多くのエコノミストは震災を経て、これほど長く貿易赤字が続くとは考えていませんでしたし、早々に黒字に転換すると主張していたんですが、どうも、この先も貿易赤字は続きそうです。円高修正とエネルギー価格の高止まりが原因と私は考えています。

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しかし、従来からこのブログで主張している通り、我が国の国民生活や経済活動で必要とされる輸入品はケチケチせずにさっさと輸入して、その分、輸出で外貨を稼げばいいと私は考えています。貿易動向では輸出ばかりが注目されがちですが、ホントに必要なのは輸入することであり、その輸入の対価を稼ぐために輸出しているのであるという重要な事実を忘れるべきではありません。ということながら、やっぱり注目の輸出動向を見たのが上のグラフです。一番上のパネルは季節調整していない輸出額の前年同月比伸び率を輸出数量と価格で寄与度分解しており、真ん中のパネルは輸出数量とOECD先行指数のそれぞれの前年同月比伸び率について、OECD先行指数だけ1か月のリードを取ってプロットしています。一番下のパネルは初公開で、輸出入のそれぞれの数量指数の前年同月比伸び率をプロットしています。輸出額の前年同月比が伸びているのは、現状では、上のパネルに見られる通り、価格の上昇に支えられていますが、真ん中のパネルに見られるように、先進国の景気も米国はもとより欧州を含めて回復ないし拡大基調にあり、今後も輸出数量も伸びが見込めます。これで中国をはじめとする新興国の景気が本格的に回復すれば、さらに我が国の輸出は伸びを高める可能性が大きいと考えられます。一番下のパネルを見ても、我が国における景気回復・拡大はかなり力強いものがありますが、円高修正によって価格効果から輸入の伸びは輸出に比較して抑えられているのが見て取れます。貿易収支が黒字化するほどではないと私は受け止めていますが、円高修正はJカーブ効果の終了後に輸出の増加と輸入の抑制に効果を発揮する可能性が高いと期待してよさそうです。

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最後に、TPP 交渉などの貿易、特に農産物貿易にも関連して、経済協力開発機構 (OECD) から Agricultural Policy Monitoring and Evaluation が発表されています。上のグラフはこのリポートのプレス発表のサイトから引用しています。何をプロットしているのかといえば、農業収入のうち、関税や補助金といった保護策による収入の割合を多い順で、すなわち手厚く農業が保護されている順で加盟国をランク付けしています。2012年調査結果なんですが、我が国はその前の2011年のランキングから韓国を抜いて、OECD 加盟国の中でも3番目に農業を手厚く保護している結果となっています。日経新聞でも「農家の収入、半分以上は政府支援 OECD」と報じられています。農業団体や農家が TPP に反対するのも当然かもしれません。

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