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2013年11月30日 (土)

今週の読書

今週の読書です。新刊書を中心に取り上げましたが、最近、ふたたび流行っているとウワサの推理小説も読んだりしました。朝日新聞の書評欄で取り上げられた法月綸太郎の『一の悲劇』です。一応、法月綸太郎の「法月綸太郎シリーズ」はデビュー作から最新刊まですべて読んでいるつもりなんですが、今週は『一の悲劇』だけ読み返したりしました。小説をはじめとするフィクション、ノンフィクションなど、他も含めて以下の通りです。

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まず、ジェイムズ・オーウェン・ウェザーオール『ウォール街の物理学者』(早川書房) です。著者は物理学や哲学で博士号を取得した大学助教授の学者なんですが、サイエンス・ライターとしても有名です。ウォール街の金融業界でデリバティブなどを扱うクォンツ、特に物理学出身のクォンツを取り上げています。ブラック・ショールズ方程式で有名なノーベル賞クラスの人物も含まれています。私は金融業界で仕事をしたことがないので、それほど詳しくもないんですが、ビッグ・データとは違う意味で大量の時系列データを扱って複雑なモデルを組んでリターンの最大化やリスクの最少化を図る手法には経済学というよりも、あるいは、物理学というよりも、数学の応用分野だと私は考えているんですが、現在の数学がかなり論理学に近くなっている一方で、統計力学のようなデータの扱いに関しては物理学を専門とする方がアドバンテージがあるのかもしれません。経済学の観点からは理論なき推計の可能性もあり、データ・マイニングに近い印象を私は持っています。もっとも、単なる知らない人の偏見かもしれません。

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次に、日本再建イニシアティブ『民主党政権失敗の検証』(中公新書) です。取りまとめに当たった日本再建イニシアティブのサイトでもこの本は紹介されています。朝日新聞の主筆だった船橋洋一などが執筆しています。大量に出回っている民主党政権崩壊本のひとつなんですが、民主党の分裂とマニフェストに関して、ひとつだけ独自の観点を提示しています。すなわち、マニフェストななんであれ選挙に強くて当選できる国会議員が主流派としてマニフェストにこだわらない政策を目指したのに対して、小沢チルドレンなどのマニフェスト通りの政策でないと再選がおぼつかない国会議員の間で民主党は分裂したとの見方を示しています。かなり実現可能性に疑問の残る民主党マニフェストの通りの政策を実行せねば当選しない国会議員というのは、ホントに国民の代表たりえるのか、私は自信を持った見方を提示できません。

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次に、三沢洋一『致死量未満の殺人』(早川書房) です。第3回アガサ・クリスティー賞受賞作品です。憎まれ役の女子大生に対する殺人事件なんですが、着眼点はいいものの物足りなさは残ります。東野圭吾の『私が彼を殺した』のように、少し余韻を残すのは新人賞応募作品に望むのはムリなんでしょうが、もう少し何か工夫がなかったかという気がします。でも、今後が楽しみな新人作家です。

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次に、法月綸太郎『一の悲劇』(祥伝社) です。法月綸太郎の「法月綸太郎シリーズ」はすべて読んだつもりですが、いわゆる新本格ミステリの複雑怪奇な人間関係を読みこなす自信はいまだにありません。双子や意外な人物、果ては法律上の親子関係と実の遺伝子上の親子関係など、複雑を極めた人間関係の中で証拠よりは自白を重視する当時の我が国警察のやり方を基に書かれていますので、現在でも読み応えのあるミステリは少ないかもしれません。それから、二宮敦人『夜までに帰宅』(角川ホラー文庫) は下の子が期末試験を終えた際の読み物にどうかと買い求めて、親として事前チェックしたものです。基本的に、高校生が主人公のサバイバル・ホラーなんですが、ホントに怖いのはオバケや幽霊やモンスターではなく人間なんだということを再認識させられます。

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今週、いつもよりやや読書が少なかったのはジャズ雑誌を熱心に読んでいたからです。ヤマハの出している上の月刊誌を私はよく読んでいます。

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2013年11月29日 (金)

いっせいに発表された政府統計から景気の現状を考える!

本日は月末最終の閣議日ということで、政府統計がいっせいに発表されました。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数が、それぞれ発表されています。すべて10月の統計です。まず、統計のヘッドラインなどを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

鉱工業生産指数10月0.5%上昇 「持ち直しの動き」
経済産業省が29日発表した10月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.5%上昇の98.8で、2012年5月(98.8)に並ぶ水準だった。プラスは2カ月連続。アジア向けに半導体製造装置が伸び、冬場を前に住宅向けの暖房生産が指数を押し上げた。
QUICKがまとめた市場予想(2.0%上昇)は下回った。経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動きで推移している」のまま据え置いた。
業種別でみると15業種のうち9業種が上昇した。台湾などの半導体受託生産大手が活発に設備投資に動いており、はん用・生産用・業務用機械工業が7.4%上昇した。住宅用エアコンや工場用機器の好調を受け、電気機械工業も5.4%増えた。薄型テレビやスマートフォン(スマホ)に使うフィルムの生産が増えたプラスチック製品工業も2.3%増だった。
出荷指数は1.8%上昇の98.6。はん用・生産用・業務用機械工業が生産と同様に伸びたほか、普通自動車や軽自動車の販売が好調な輸送用機械工業も出荷が増えた。在庫指数は出荷の増加に伴って0.5%低下の107.8、在庫率指数は3.7%低下の106.0だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査は11月が0.9%上昇、12月は2.1%上昇との見通し。工場の修理を終えて鉄鋼業の生産が増える公算が大きい。
10月の完全失業率、4.0%で前月比横ばい 就業者数は増加
総務省が29日発表した10月の完全失業率(季節調整値)は4.0%で、前月比横ばいだった。景気の回復基調を背景に就業者数が増加しており、失業率は4%程度の低水準で推移している。総務省は雇用全体として緩やかに回復しているとし、「持ち直しの動きが続いている」との判断を維持した。
男性の完全失業率は横ばいの4.3%、女性は0.2ポイント上昇の3.7%だった。完全失業者数は男性が161万人で前月より2万人減った一方、女性は105万人と5万人増えた。女性は仕事を探していない非労働力人口が18万人減少したことで失業者が増えた格好。総務省は「女性の労働市場への参入が活性化している」と分析している。
10月の就業者数は6327万人で前月比8万人増えた。15-64歳人口に占める就業率は72.2%(原数値)と、比較可能な1968年1月以降の過去最高を更新した。
10月の有効求人倍率0.98倍 5年10カ月ぶり高水準
厚生労働省が29日発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.03ポイント上昇の0.98倍と、2カ月ぶりに改善した。リーマン・ショック前の2007年12月に並ぶ5年10カ月ぶりの高い水準で、QUICKがまとめた市場予想(0.96倍)を上回った。円安で輸出採算が改善した自動車など製造業が全体を押し上げ、6カ月連続で0.9倍台の高水準で推移した。
雇用の先行指標となる新規求人数は0.6%増と2カ月連続で増加した。新規求人倍率は0.09ポイント上昇し、1.59倍だった。07年3月の1.60倍に次ぐ6年7カ月ぶりの水準。事業主による人員整理などを理由にした離職者数は緩やかな景気の回復を受けて11カ月連続で減少し、有効求職者数が1.9%減った。
前年同月と比べた新規求人数(原数値)は10.8%増だった。業種別にみると、職業紹介や労働者派遣業などを含む「サービス業(他に分類されないもの)」が景気の回復基調を背景に22.5%増えた。自動車関連など製造業は20.2%上昇。建設業も公共事業や14年4月の消費増税前の駆け込み需要に伴う住宅着工の増加などで13.5%伸びた。
都道府県別で最も有効求人倍率が高かったのは東京都の1.45倍、最も低かったのは沖縄県の0.58倍だった。
10月全国CPI、5カ月連続上昇 「エネルギー以外も上昇の動き」
総務省が29日朝発表した10月の全国の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、生鮮食品を除く総合(コア指数)が前年同月比0.9%上昇の100.7と5カ月連続で上昇した。08年11月(1.0%上昇)以来の上昇率で、5カ月連続のプラスは07年10月から08年12月まで15カ月連続で上昇して以来となった。総務省は「エネルギー以外でも価格上昇や下落幅縮小の動きが広がっている」とみている。
上昇品目数は241、下落は211。09年5月以来、4年5カ月ぶりに上昇品目数が下落を上回った。電気代やガソリンといったエネルギーが引き続き指数を押し上げ、傷害保険料の引き上げもCPI上昇の主因になった。薄型テレビは価格下落が続いているが、他の家電製品の価格競争は一服した。生鮮食品を除いた食料では鶏卵の価格上昇が目立った。
食料とエネルギーを除く総合(コアコア指数)は前年同月比0.3%上げた。08年10月以来、5年ぶりにプラスに転換し、1998年8月(0.7%上昇)以来の大きな伸びだった。傷害保険料の引き上げや、円安を背景に値上げの動きが広がった海外パック旅行の価格上昇が主な要因だった。
同時に発表した11月の東京都区部のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が0.6%上昇の99.6だった。09年2月(0.6%上昇)に並ぶ上昇率だった。

いつもの通り、よくまとまった記事でした。とても長い引用でしたので、これだけでお腹いっぱいという気がします。次に、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、毎度のお断りですが、このブログだけのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。

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10月の鉱工業生産は、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比の増産が+2.0%増と強気でしたが、実績は+0.5%にとどまりました。もっとも、出荷が前月比で+1.8%増、逆に在庫は▲0.5%減、在庫率は▲3.7%減でしたので、まずまずいい数字と私は受け止めています。業種別で見て前月からの増産が大きかったのは、はん用・生産用・業務用機械工業が+7.4%増、電気機械工業が+5.4%増などですが、特に、この2業種は9月の減産が大きかった反動という面もあり、押しなべて、特に大きく増産したとは考えられませんが、生産は緩やかに持ち直しており、「持ち直しの動きで推移している」という基調判断の通りだと思います。製造工業生産予測調査による先行きも、11月が前月比で+0.9%、12月が+2.1%のそれぞれ増産ですから、足元から目先に先行きにかけて、生産はまずまず堅調に推移すると見込まれています。その後は、来年4月の消費税率引上げによる駆込み需要とその反動次第、ということになります。

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生産が堅調に推移していますので、雇用もまずまず順調に量的な拡大が図られています。すなわち、遅行指標の失業率こそ日経QUICKによる市場の事前コンセンサス3.9%を上回って前月から横ばいでしたが、一致指標の有効求人倍率は日経QUICKによる市場の事前コンセンサス0.96より0.02ポイントいい数字をたたき出し、先行指標の新規求人数も順調の増加しています。全体として、雇用統計はリーマン・ショック前の水準に近づきつつあります。ですから、New York Times のブログでクルーグマン教授が「バブル恐怖症」 Bubblephobia についてコラムを書いていますが、その昔の「白い日銀」であれば我が国でも引締めに走った可能性がゼロではないと考えるリフレ派のエコノミストもいそうな気がします。それはともかく、量的な雇用はかなり拡大を続けていますので、ヘーゲル弁証法的な「量的変化が質的変化に転化する」に従って、賃上げや雇用条件の改善につながる方向に進むかどうかを注視する必要があります。何度もこのブログで繰り返しましたが、デフレ脱却の十分条件は賃金の上昇です。

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消費者物価上昇率は生鮮食品を除く全国総合のコアCPIで見て、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+0.9%の上昇でしたので、10月はジャストミートしました。電気代やガソリンといったエネルギーが引き続き物価を押し上げるという構図は変わりありませんが、食料とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPIも10月にはプラスに転じましたので、エネルギーに加えて、一般物価水準の上昇が観察され始めていると私は受け止めています。もちろん、麻生副総理・財務大臣が慎重な見方を示したと報じられている通り、デフレ・マインドの払拭には、まだまだ時間がかかる可能性もあります。

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最後に、今日発表された経済指標を離れて、昨日、SMBCコンサルティングから「2013年ヒット商品番付」が発表されています。上に画像を引用した通りです。「アベノミクス効果」がダントツだったと評価されているようです。東北楽天は私の実感としてはもう少し番付が上位でもいいような気もしますが、プロ野球に関心が高くない人もいますので、このあたりかもしれません。もうすぐ12月の年の瀬に入りますが、来年は何が流行るんでしょうか?

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2013年11月28日 (木)

堅調な商業販売統計は消費税率引上げ前の駆込み需要の始まりか?

本日、経済産業省から10月の商業販売統計が発表されました。消費の動向を占う小売業販売は季節調整していない原系列の統計で見て11兆2030億円、前年同月比+2.3%増となった一方で、季節調整済みの系列では台風上陸などの天候の影響もあって前月比▲1.0%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の小売販売額2.3%増 自動車14.8%増でけん引
経済産業省が28日発表した10月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は11兆2030億円で、前年同月に比べ2.3%増えた。プラスは3カ月連続。平均気温が高く秋冬物衣料が低調だったが、自動車販売が引き続き伸びたことが寄与した。
小売業の内訳をみると、自動車が14.8%増と2カ月連続のプラス。新車の投入効果で軽自動車を中心に好調に推移し、伸び率はエコカー補助金終了前の駆け込み需要が発生した12年8月(18.5%増)以来1年2カ月ぶりの高水準だった。機械器具も旺盛な住宅需要を背景にエアコンや冷蔵庫が販売を伸ばし5.3%増だった。
百貨店とスーパーを含む大型小売店は0.4%増の1兆5860億円で、3カ月連続で増加した。スーパーで新店効果が出た。一方、既存店ベースは0.4%減。百貨店、スーパーとも平均気温が高かった影響で秋冬物衣料が落ち込んだ。
コンビニエンスストアは新店効果で4.6%増の8426億円。既存店ベースは台風など天候不順が響き0.9%減だった。

続いて、商業販売統計のうちの小売業販売のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の販売額の前年同月比伸び率、下は季節調整指数そのものを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期なんですが、毎度のお断りで、このブログだけのローカル・ルールにより、直近の景気循環の谷は2012年11月であったと仮置きしています。

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個人消費の指標となる小売業販売額は前年同月比で+2.3%増ですが、この数字はいわゆる名目値であり、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、明日発表の10月の消費者物価指数が同じく前年同月比で+0.9%の上昇と見込まれていますから、物価変動を除いた実質では+1.4-1.5%くらいになると考えるべきです。+2.3%増よりもかなり小さくなるんですが、それでも、消費としては十分に堅調な数字と私は受け止めています。ただし、中身としては、来年4月の消費税率引上げ前の自動車に対する駆込み需要が中心のようですから、ある程度の反動は覚悟すべきかもしれません。季節調整済みの前月比でマイナスを記録したのは、10月には遅れてやって来た台風などの天候要因と説明されています。気温が高かったのも季節衣類の売上げに影響した可能性があります。季節調整済みの前月比でも、自動車小売業と電機などの機械器具小売業はそれぞれ+2.4%増と+6.4%増となり、前月比マイナスとなった飲食小売業などと比べても、耐久消費財に対する消費税率引上げ前の駆込み需要が始まっている可能性を示唆していると私は受け止めています。なお、自動車や電機製品などの駆込み需要に関しては、二重の意味での駆込みであり、すなわち、単純にその商品自体への消費税率引上げ前の駆込み需要とともに、単価の著しく高い住宅の駆込み需要に伴う耐久消費財の需要増も含まれていると考えるべきです。

消費税率引上げが2段階であることから、来年4月前の駆込み需要とその後の反動の大きさは1997年ほどは大きくないと見込むエコノミストもいますが、1997年の2%ポイントの引上げ幅よりも今回の3%ポイントの方が大きいわけですから、流動性制約の小さい消費者が合理的であれば、かなり大きな駆込み需要とその後の反動が出ると私は予想しています。

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2013年11月27日 (水)

プランタン銀座の「クリスマスアンケート調査結果」に見るクリスマス・プレゼントの予算やいかに?

11月12日に、プランタン銀座からメールマガジン読者の女性を対象にした「クリスマスアンケート調査結果」が公表されています。私は11月22日付けのデパチカドットコムで見ました。「今年は回復傾向にある景況感がクリスマスにも色濃く表れる結果」と報じています。
対象者がとても偏っていて、日本国民を代表しているとは言いがたいんですが、私が初めて見た2007年から、このところ毎年のように実施されている調査であり、時系列的に昨年と比較したり、クロスセクションとしてプレゼントの贈り先別の予算額を見たりするのは意味がないわけではないと思います。昨年11月半ばの衆議院解散から始まったアベノミクスにより、消費者のマインドがどれくらい改善したかを実感するひとつの目安でもあります。今夜のエントリーではこのアンケート調査について、ご予算にかかわる結果に注目して、いくつか図表を引用しつつ取り上げたいと思います。

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まず、アンケート対象者であるメールマガジン読者の女性が恋人やパートナーからクリスマス・プレゼントとしてもらう場合の回答結果です。過半の56パーセントがもらうことを期待し、その期待予算の平均は36,401円で、昨年から+3,618円の増加となっています。昨年よりも「増えた」割合が「減った」を大きく上回っていますが、圧倒的多数は昨年と「変わらない」だったりします。上の画像では割愛しましたが、期待するプレゼントは「レストランなどでの食事」、「ネックレス」、「指輪/その他アクセサリー」が20パーセントを超えて上位のトップスリーを占めています。取りあえず、この結果は憶測や勝手な願望レベルのものも含めて、恋人やパートナーからもらう場合の期待ですから、ひとつのベンチマークと考えることが出来るかもしれません。

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次に、女性から恋人やパートナーに贈るクリスマス・プレゼントに関するアンケート調査結果です。ここからは自分で主体的に決める予算のレベルになり、前問の願望を含む期待よりは実現性が高まると考えるべきです。ということで、64パーセントがプレゼントを贈ることを予定し、平均予算は22,902円で、昨年から+3,082円増加しています。ここでも予算は昨年と「変わらない」が圧倒的ですが、「増えた」が「減った」を上回っています。贈るプレゼントとしては、「洋服」、「手料理」が20パーセントを超えています。金額が男性からもらう方よりも女性から贈る方が低くなっていて、しかも、女性から見て、もらう方がレストランなどでの外食であるのに対して、贈る方は手料理となっているのは、必ずしも全面的に肯定できる性差ではないかもしれませんが、ひとつの特徴かもしれません。それにしても、洋服をプレゼントするのは私には理解できませんでした。私は高校生くらいのころに親に買ってもらったスタジャンやダウン・コートをいまだに着たりしていますが、親以外の人から洋服を買ってもらったことは数えるほどしかありません。もっとも、単に、女性にモテなかっただけかもしれません。

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クリスマス・プレゼントとしては、最後に、「自分へのご褒美」の結果です。購入予定の割合は前の2問に比べて低いんですが、さすがに、予算は44,292円ともっとも張り込んでいます。ただし、前年からの増加は+1,706円と決して大きくない一方で、昨年から「増えた」割合が高くなっています。このあたりに、アベノミクス効果による景気の改善が色濃く現れているような気がしないでもありません。なお、「自分へのご褒美」プレゼントの上位は、「洋服」、「コスメ」、「バッグ」が上位のトップスリーで20パーセントを超えています。アクセサリーはともかく、洋服やコスメを男性のチョイスに委ねるのは勇気が必要そうなのは私も理解します。いずれにせよ、女性から恋人やパートナーに贈るクリスマス・プレゼントの予算のほぼ2倍を自分へのご褒美に割り当てているのは実感にもよく合致します。また、グラフは引用しませんが、家族や女性友人へのプレゼントの予算も昨年より増額されています。

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最後に、クリスマス・ケーキの予算などの結果は上の通りです。我が家もそうだと思うんですが、80パーセントを超える圧倒的多数の家族がクリスマス・ケーキを用意し、ご予算も昨年から10パーセント増の大盤振舞いとなっています。注目すべき点として、前の3問の自分へのご褒美も含めたプレゼントの予算に関しては、10パーセント程度の回答者で前年割れが想定されていたんですが、クリスマス・ケーキ予算はほとんど前年割れがありません。もちろん、前年から「変わらない」の比率が圧倒的なんですが、偏った回答者のサンプルながら、幅広い国民の間で景気の改善が実感されているように受け止めています。

何度も繰返しになりますが、プランタン銀座のメールマガジン読者となっている女性、という極めてバイアスの大きいサンプルながら、時系列的に前年と比較したり、クロスセクションで恋人やパートナーへのプレゼントと自分へのご褒美のそれぞれの予算を比べたりすることにより、何らかの特徴を浮かび上がらせることは出来ると思います。いろんなところに景気改善の実感が垣間見えて、とても興味深いアンケート調査結果でした。やや無理やりながら、「経済評論の日記」に分類しておきます。

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2013年11月26日 (火)

企業向けサービス価格の上昇はホントに人件費の転嫁なのか?

本日、日銀から10月の企業向けサービス価格指数 (CSPI) が発表されています。総平均指数は96.2で前年同月比上昇率が+0.8%、変動の大きい国際運輸を除く総平均で定義されるコアCSPIも95.7の+0.3%となりました。それぞれ、前月よりも上昇幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業向けサービス価格0.8%上昇
日銀が26日発表した10月の企業向けサービス価格指数の総平均(2005年平均=100)は96.2となり、前年同月比で0.8%上昇した。プラスは6カ月連続で、伸び幅は08年9月以来の大きさとなった。一部の業種で人件費などを価格に転嫁する動きがみられた。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引される価格水準を示す。調査対象の137品目のうち、上昇は51品目、下落は44品目だった。3カ月連続で上昇品目数が下落を上回った。
業種別にみると、機械修理で受注先の収益改善に伴い、備品や工具、人件費の値上がりを価格に転嫁する動きがあった。プラントエンジニアリングでも受注が増え、人件費の価格転嫁がみられた。日銀は「企業のサービス関連支出に明るさが出ている」(物価統計課)とみている。
一方、外航貨物輸送や国際航空貨物輸送など運輸は前年比の伸びが縮小し、総平均を下押しした。燃料安や10月にやや円高・ドル安が進んだことが響いた。

続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価 (CSPI) 上昇率とともに、企業物価 (CGPI) 上昇率もプロットしています。なお、影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は昨年2013年11月だったと仮置きしています。

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引用した日経新聞の記事の3パラ目に、人件費の価格転嫁の動きがいくつかの業種で始まっているかのような表現がありますが、ホントならばとても望ましい動きと私は考えています。しかし、ウワサ話としてはともかく統計的に賃金の上昇がまだ確認できませんので、人件費の値上がりを価格に転嫁という製品・サービズ価格引上げの理由は怪しいとも考えられます。今日発表の企業向けサービス価格の動向は、基本的には、物価が上昇してデフレ脱却が進んでいるわけですから、歓迎すべき動きと私は受け止めていますが、まったく賃上げをせずに労働条件ばかり厳しくする「ブラック企業」が需給ギャップの改善を受けて人件費を口実に製品やサービスの価格を値上げする動きには注意が必要そうな気がします。製品やサービスを値上げする際には、そのバックグラウンドに賃上げがあるかどうかについて、企業サイドに情報提供を求めるなどのチェック体制の強化が消費者や雇用者のサイドに求められているのかもしれません。

最後に、何度も繰り返していますが、昨年のミニ・リセッションを終えて、アベノミクスによる株価や企業業績の改善に対して賃金や労働条件が追いつかないのは、とても憂慮すべきであると私は考えています。特に、企業業績に見合ってボーナスが増えるのは、製品・サービス価格の引上げの理由にはならないと考えるべきです。

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2013年11月25日 (月)

明治安田生命のアンケート調査結果から夫婦の関係やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、語呂合わせで11月22日は「いい夫婦の日」とされており、明治安田生命がこれにちなんで、「いい夫婦の日」に関するアンケート調査結果を11月20日に公表しています。目立った経済指標の発表もなく、ヒマネタで軽く紹介したいと思います。まず、リポートの最初のページから調査結果の概要を引用すると以下の通りです。

明治安田生命「いい夫婦の日」に関するアンケート調査結果
  • 夫婦の関係: 夫婦円満の秘訣は「感謝」! メールやSNSも大事なコミュニケーション手段!
  • 夫婦とお金: 愛があればお金はいらない!? 夫婦円満度とへそくり金額に深い関係あり!
  • 理想の夫婦: 理想の夫婦「三浦友和・山口百恵」夫妻がV8達成!

アンケート調査結果では、夫婦関係が円満かどうかの問いに対して、「円満である」36.7%と「まあ円満である」47.0%を合わせて、80%超がまずまず円満と回答していますが、当然といえば当然です。その昔と違って、円満でなければ、さっさと離婚すればいいんですから、アンケート調査の時点で、というか、現時点で結婚している、あるいは、結婚を継続している夫婦はほとんどが円満なんだろうと考えるべきです。グラフを引用するまでもありません。

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続いて、夫婦の愛情に関する設問で、リポートの p.4 生まれ変わっても、もう一度同じ相手と結婚したいと思いますか という問いに対する回答結果は上の通りです。男女でやや差が出ています。すなわち、「必ず」と「たぶん」を合わせて、「結婚する」と回答した比率が男性では過半に達している一方で、女性は40%に満たない少数派となっています。メンドウだというのもあるような気もしますが、男性で現在のパートナーに対する思込みが激しいのに対して、女性はドライに割り切っているようです。私自身について考えると、人間として完成しない年ごろ、すなわち、大学を卒業するくらいまでは同じ人生かもしれませんが、その後は、せっかく「生まれ変われる」んですから、就職や結婚などはまったく別の人生を試してみたいと常々考えています。ただし、これは現在の自分自身の人生に何らかの不満があるからではなく、単なる機会の問題です。職員食堂なんかでも、毎日同じざるそばを食べている同僚がいる一方で、私なんぞは日替わり定食を魅力的だと感じたりするわけです。

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続いて、愛情からいきなり金銭に話題を飛ばして、リポートの p.14 おこづかい金額の推移 の結果は上のグラフの通りです。夫は3年連続で増加を続け、昨年から658円増加の35,347円、一方の妻は3年連続で減少を続け、今年度は昨年より▲1,780円の減少で20,495円でした。職業を持って外で働く比率に違いがありますので、こんなもんかもしれません。ただし、平日のランチ代は、弁当や自炊のゼロを別にして、夫が500円台が最多で25.6%を占めるのに対して、妻は1,000-1,500円が最多で35.5%に上ります。平均金額でも、夫が437円に対して、妻は778円と約1.8倍となっています。夫の毎日の昼食に対して、妻の方はたまのランチでちょっとした贅沢を楽しんでいるのかもしれません。なお、グラフは引用しませんが、最初の調査結果の概要の2点目にある通り、夫婦仲が円満かどうかでへそくりの金額が大きく異なります。すなわち、「円満」と回答した夫婦のへそくり金額が903,967円に過ぎないのに対して、「円満でない」と回答した夫婦は2,345,062円に上り、何と約2.6倍もの差があります。分かる気がします。

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最後に、定番の質問で、リポートの p.17 理想の有名人夫婦 の結果は上のグラフの通りです。最初の調査結果の概要に引用した通り、三浦友和・山口百恵夫妻がV8だそうです。また、田中将大・里田まい夫妻が昨年の38位から大きく順位を引き上げて5位に食い込んでいます。今年は幅広い分野で楽天の年だったような気がします。

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2013年11月24日 (日)

ユーキャン新語・流行語大賞の候補語

とても旧聞に属する話題ですが、去る11月20日に2013年ユーキャン新語・流行語大賞の候補語50語が発表されています。ゆったりと休んでいる週末の手抜きのエントリーですので、以下の通りでお仕舞いにします。なお、「ふなっしー」は流行語というよりは、実体を持ったキャラだと受け止めています。

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  • PM2.5
  • NISA (ニーサ)
  • 母さん助けて詐欺
  • 弾丸登山
  • 美文字
  • DJ ポリス
  • ななつ星
  • パズドラ
  • ビッグデータ
  • SNEP (スネップ)
  • ヘイトスピーチ
  • さとり世代
  • ダークツーリズム
  • ご当地電力
  • ご当地キャラ
  • こじらせ女子
  • 富士山
  • 日傘男子
  • バカッター
  • 激おこぷんぷん丸
  • 困り顔メイク
  • 涙袋メイク
  • 倍返し
  • 今でしょ
  • ダイオウイカ
  • じぇじぇじぇ
  • あまロス
  • ビッグダディ
  • ハダカの美奈子
  • ふなっしー
  • フライングゲット
  • マイナンバー
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一応、ハイライトしてあるのは私の注目語トップファイブです。11月1日付けのエントリーで指摘した通り、「ブラック企業」と「お・も・て・な・し」は何とか入ったんですが、やっぱり、「倍返し」、「じぇじぇじぇ」、「今でしょ」が強力そうな気がしています。12月2日の発表だそうです。

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2013年11月23日 (土)

霊園に紅葉を見に行く

今日は、新たに購入した霊園の墓石が完成したので、妹夫婦と暮らしている母親ともいっしょに、5人で霊園に紅葉を見に行きました。すでに亡くなっている父親のお骨をこの霊園に納骨する予定です。

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2013年11月22日 (金)

今週読んだ新刊書の読書感想文

前回の読書感想文のブログでは、今週の読書の目玉は浅田次郎『黒書院の六兵衛』ではなかろうかと書きましたが、予想は大きく外れました。今週の読書結果は、以下の通りです。

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まず、岩城けい『さようなら、オレンジ』(筑摩書房) です。今年の太宰治賞受賞作です。とってもよかったです。朝日新聞や毎日新聞をはじめとして、いくつかのメディアでも好意的に書評が取り上げられていると思います。今年の出版物の中で、村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋社) 東野圭吾『夢幻花』(PHP出版) などが文芸書やエンタメとしては印象に残り、エコノミストとして読んだ経済書や学術書のたぐいではダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』上下(早川書房) をみなさんにオススメしているんですが、私が読んだ限られた範囲ながら、この作品も今年のマイ・ベストに近いと考えています。オーストラリアの新大陸を舞台に、日本人夫婦の妻の方のハリネズミことサユリのジョーンズ先生への手紙とアフリカからの難民であるサリマことナキチを主人公にした第3者話法による叙述が交互に現れます。ただし、これはサユリが取りまとめているメタ構造になっていると解釈すべきです。このメタ構造については、太宰賞の選評で三浦しをんが厳しい批判を展開しています。ご参考まで。ストーリーとしては、言語の習得と子供の死と誕生、あるいは別れなど、女性の視点から勤労も含めて、故郷を離れた異国での生活が余すところなく描き出されています。ひょっとしたら、海外生活の経験の有無で読み方が変わる可能性がゼロではありませんが、私には不明です。厚い本ではないですし、ページ数もそれほど大部ではなく、各ページもガサっとしていて、軽く読み飛ばせそうなんですが、私はじっくりと感情移入して大いに時間をかけて読みました。女性だけでなく、海外生活経験者だけでなく、多くの方にオススメします。

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さて、次は、大いに期待していた浅田次郎『黒書院の六兵衛』(日本経済新聞出版) です。最近まで日経新聞に連載されていた時代小説で、幕末から明治への転換点における江戸城内で居座った正体不明の旗本に関する物語です。主人公は尾張藩の下級武士ながら官軍の先手組を仰せつかった加倉井という組頭です。勅使下行、さらに、天皇の行幸・遷都を前に、それでも無言で江戸城内に居座り続ける的矢六兵衛なる旗本の正体をめぐって、いろんな証言や聞取りや果ては加倉井の女房の憶測まで、松井今朝子の『吉原手引草』のモノローグのように配して、物語は進みます。もちろん、モノローグ意外にも物語は展開します。居座る六兵衛が立派な旗本なのかどうかは私には判断できませんが、どうしてもキャラが立たないような気がしました。最後に、江戸城に行幸なった天皇のお言葉により六兵衛は黒書院から退去しますが、このあたりの行動パターンも私には理解できませんでした。私が見聞きした範囲の前評判からすれば、少し残念な読後感が残りました。

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次に、小説ではありませんが、古市憲寿『誰も戦争を教えてくれなかった』(講談社) です。作者は『絶望の国の幸福な若者たち』で一躍脚光を浴びた社会学者です。戦争博物館ないし平和博物館をめぐるダークツーリズムから戦争について考えているんですが、第2章のドイツ・イタリアという欧州敗戦国はまだしも、第3章の中国あたりから観光案内になり、第4章の韓国ではK-POPや韓流ブームの解説になっている気がします。でも、BIGBANGが大好きで神とも崇めているので韓国とは戦争ができない、というのはいいポイントを突いているのかもしれません。アイドルへの傾倒をビジネスのネットワークに読み替えればOKなんではないでしょうか。最後の結論は、p.283 の最後のパラにある通り、「誰も戦争を知りようがないし、教えようがない」ということなのでしょう。この部分を含めて、第6章はそれなりに読み応えがあります。言うまでもなく、最後の補章のももクロとの対談はオマケなんでしょうが、私のような昭和30年代生まれのオジサンが、彼女らの世代の戦争に関する知識の薄さを実感するにはいいかもしれません。

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最後に、小杉なんぎん『阪神ファンの流儀』(KKベストセラーズ) です。これも小説ではなく、エッセイというか、コラムを集めた本というカンジです。阪神ファンであるにもかかわらず、私は作者を知りませんでしたが、関西方面では有名なコラムニストなのかもしれません。著者の実体験としては田淵捕手や掛布三塁手の活躍にさかのぼりますので、1985年のセリーグ制覇と日本一達成を知らない世代、すなわち、我が家の子供達の世代の阪神ファンへの手引書としてはいいかもしれません。阪神ファンにはオススメしますが、それ以外の野球チームのファンのみなさんには無用の書かもしれません。どこのチームのファンかによって、評価は大きく分かれそうです。

そろそろ、来週かさ来週あたりには、経済週刊誌にて今年の経済書のベスト100などが発表されると思います。地方大学に出向していたころには、私にも投票権があったんですが、今ではもっぱら拝読する側に回っています。今年の経済書では、ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』上下(早川書房) に私は感銘を受けたんですが、どのあたりにランクされているんでしょうか?

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2013年11月21日 (木)

国際エネルギー機関 (IEA)「世界エネルギー見通し」World Energy Outlook 2013 にみる再生可能エネルギーの動向やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、先週の11月12日に国際エネルギー機関 (IEA) から「世界エネルギー見通し」 World Energy Outlook 2013 が公表されています。国際機関のリポートに着目するのはこのブログの特徴のひとつながら、全文リポートのフリー・ダウンロードが2-3年後になるなど、ほかの諸事情もあって、遅れて取り上げることになりました。今夜のエントリーでは再生可能エネルギーの動向をはじめとして、二酸化炭素排出などの地球環境問題を中心に、プレス発表資料から、いくつか図表を引用して簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、2035年における1次エネルギーの需要予想は上の通りです。プレス発表資料から p.3 Primary energy demand, 2035 を引用しています。20年以上も先のお話ですが、中国が圧倒的なシェアを示し、インドも米国や欧州に匹敵するエネルギー需要国となると見込まれています。日本は南米ブラジルよりもエネルギー需要が小さくなります。従って、2012年から2035年に向けて、1次エネルギー需要の増加に対する寄与は中国やインドをはじめとする非OECDアジアが世界の需要増加分の65パーセントを占めると予想されています。現時点でアジアからOECDに加盟しているのは日本と韓国だけなんですが、逆に、先進国を構成国とするOECD諸国のエネルギー需要の増加分に対するシェアは4パーセントに過ぎません。

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続いて、上のグラフはプレス発表資料から p.4 Growth in total primary energy demand を引用しています。見れば分かると思いますが、1987年を起点として、直近のデータが利用可能な2011年までと、さらに先行き2035年までを視野に入れて、1次エネルギー需要の増加分について分解しています。天然ガスや石炭、石油などの化石燃料が引き続き高い需要なんですが、再生可能エネルギーもそれなりに伸びを示します。しかしながら、再生可能エネルギーのシェアは2035年になってもまだ低く、"Today's share of fossil fuels in the global mix, at 82%, is the same as it was 25 years ago; the strong rise of renewables only reduces this to around 75% in 2035." と見込まれています。

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続いて、上のグラフはプレス発表資料から p.5 Cumulative energy-related CO2 emissions を引用しています。新興国や途上国の1次エネルギー需要が先進国を上回って増加する一方で、再生可能エネルギーは増加を示すものの化石燃料の比率がまだまだ高く、二酸化炭素排出は増加し続けます。各年の温室効果ガス排出は言うに及ばず、1900年から2035年までの累積で推計して、非OECD諸国のシェアは51パーセントと過半に達します。従って、地球温暖化防止のためには新興国や途上国におけるCO2排出の抑制が重要な課題となっていることを理解すべきです。

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最後に、上のグラフはプレス発表資料から p.11 Growth in electricity generation from renewable sources, 2011-2035 を引用しています。化石燃料を使わず、再生可能エネルギーを用いた発電量を示しています。日米欧の先進国では緑色の風力発電のシェアが高い一方で、中国では水力発電と風力発電がほぼ拮抗しています。インド、中南米、ASEAN、アフリカといった中国以外の新興国・途上国では水力発電のシェアが高くなっています。ただし、これは、補助金や電力市場の設計などの政策的な要因に基づくものであり、"The expansion of non-hydro renewables depends on subsidies that more than double to 2035; additions of wind & solar have implications for power market design & costs." と指摘されています。

グラフは引用しませんが、日本のエネルギー価格、特に天然ガスと電力の価格は2035年時点において米国の2倍を超えるとの試算結果も示されています。エネルギー価格が相対的に高ければエネルギー消費が減って地球環境保護には資するんですが、他方で、国内産業の競争力にはダメージを及ぼす可能性が残ります。専門外の私が考えるほど単純ではないのかもしれませんが、地球環境保護と産業の競争力の間にはトレードオフが横たわっているのかもしれません。

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2013年11月20日 (水)

OECD 経済見通し Economic Outlook No.94 は世界経済の順調な回復を見込む!

昨日、経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通し」 OECD Economic Outlook No.94 が公表されています。我が国の成長率は今年2013年こそ5月時点の+1.6%から+1.8%に引き上げられましたが、2014年+1.5%(5月時点では+1.4%)、2015年+1.0%と成長が鈍化する見通しとなっています。まず、プレス向けのプレゼン資料から Key Messages を6点引用すると以下の通りです。読めば明らかですが、最後の6点目が日本に対するメッセージとなっています。

Key Messages
  1. Global growth should pick up if major risks do not materialise.
  2. Downside risks prevail. Negative spillovers from emerging economies could be stronger than before.
  3. Emerging economies need to address vulnerabilities to improve resilience and tackle the slowdown in potential growth.
  4. The United States should avoid fiscal brinkmanship.
  5. The euro area must repair the banking system and rebalance demand to reduce unemployment.
  6. In Japan, all three "arrows" of the government's strategy should be implemented fully.

今夜のエントリーでは、上の Key Messages を引用したプレス向けのプレゼン資料と同じくプレス発表時の配布資料、さらに、一応、全文リポートはpdfで入手したんですが、一般に公開されているリポートの第1章 General Assessment of the Current Economic Situation などから図表を引用して、簡単にこの国際機関の経済見通しを紹介しておきたいと思います。

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まず、上の表は、リポートの第1章 General Assessment of the Current Economic Situation p.12 Table 1.1. The global recovery will gain momentum only slowly を引用しています。成長率の総括表を画像に落としたんですが、クリックするともう少し詳しい総括表のpdfファイル、すなわち、プレス発表時の配布資料の p.3 Summary of projections が別タブで開きます。国や地域別に見た大きな特徴は、新興国や途上国を含む世界経済全体も、先進国で構成されるOECD加盟国も、非OECD諸国も、そして、米国も、成長率に関しては2013年を底に2014-15年にかけて成長が加速するシナリオとなっている一方で、日本だけが2013-14年はともに、今年5月時点の経済見通しから上方修正されているとはいえ、2013年をピークに2014-15年にかけて成長率が鈍化すると見込まれていることです。欧州も成長率の底が2013年ではなく2012年となっている違いはあるものの、2014-15年にかけて成長が加速する見通しですし、成長率だけでなく、インフレ率も2013年を底に2014-15年にかけて高まると見込まれているにもかかわらず、日本だけが2014年4月と2015年10月に2段階にわたって消費税率が引き上げられるため、この先、成長を鈍化させると予想されています。失業率の低下も来年年央にはストップします。このため、最初に引用した通り、日本に対してはアベノミクスの3本の矢を着実に実行することを求めています。特に、先行きリスクについては、リポートの第1章 General Assessment of the Current Economic Situation の p.44 において、ユーロ圏諸国の銀行部門の脆弱性と日本の財政のサステイナビリティ "the fragility of the euro area banking sector and the unsustainability of the Japanese fiscal situation" と名指しで指摘されています。まあ、日本のエコノミストから見ればやや暗い雰囲気がないでもないんですが、全体的には世界経済の着実な回復・拡大を見込んでいると受け止めています。

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そして、今回の経済見通しのひとつの特徴は、従来にもまして新興国の経済見通しを幅広く取り入れて、しかも、前回の5月時点の経済見通しから新興国の成長パスが下振れした点を重視しています。上のグラフはプレス向けのプレゼン資料の p.5 Comparison of growth projections from May and November Economic Outlooks を引用しています。実はこのグラフの横にはOECD加盟国の同様のグラフがあって、2014年までほとんど5月時点の見通しと同じパスが描かれているんですが、新興国の代表であるBRICSについては、見ての通り、今年2013年に成長率が鈍化しています。来年2014年には成長率が高まるものの、5月時点の見通しほどには回復せず、+6%を下回ると見込まれています。ただし、この新興国の成長率の下振れの主因は中国ではありません。もっとも、中国もニュートラルなマクロ経済政策を採用しており、成長率のピークは2014年になると示唆されています。

国別のより詳細な見通しは上のフラッシュで紹介されています。これも OECD のサイトから直リンしていたりします。また、Statistical Annex としてpdfファイルにより、国別のGDP成長率、消費伸び率、投資伸び率、需給ギャップ、GDPデフレータ変化率、消費者物価上昇率、失業率、長短金利、一般政府バランス、政府債務GDP比、経常収支などが、一部に四半期データも含めて提供されています。

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最後に、国際機関の経済見通しから我が国の貿易に目を転じて、本日、財務省から10月の貿易統計が発表されています。いつものグラフは上の通りです。統計のヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+18.6%増の6兆1045億円、輸入も+26.1%増の7兆1952億円、差し引き貿易収支は▲1兆907億円の赤字となりました。輸出は自動車などが好調で増加していますが、輸入は原粗油、液化天然ガスなどの増加で輸出以上に増加し、貿易赤字は拡大しています。

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2013年11月19日 (火)

米国における肥満問題はどのように認識されているのか?

私も50歳を超えて健康問題への関心が高まり、時折忘れたころに、私自身のボディ・マス指数のグラフをブログにさらしたりしているんですが、私自身は肥満や体重についてはBMIも22-23くらいの間で収まる範囲で何とかコントロールしています。でも、BMIの標準は22ですので、やや体重オーバーかもしれません。他方、外国生活も何度か経験して、欧米人の中には日本国内では考えられないような肥満が存在することも身をもって知っています。実は、その昔の2007年2月のフォーブス誌で World's Fattest Countries なる記事が掲載されたことがあります。BMI25以上の人の占める割合で見て、日本は22.6パーセントで194か国中163位、米国は74.1パーセントの9位だったりしました。上位トップテンと下位のほぼ30か国ですので、日米はかなり両極端という見方も出来ようかと受け止めています。
ということで、前置きが長くなりましたが、私がよくチェックしている米国の世論調査機関である Pew Research Center から米国における肥満に関する意識調査結果 Public Agrees on Obesity's Impact, Not Government's Role がちょうど1週間前の11月12日に公表されています。もちろん、今どきのことで、pdf の全文リポートもアップされています。まず、Pew Research Center のサイトから調査結果の概要を最初の3パラだけ引用すると以下の通りです。

Public Agrees on Obesity's Impact, Not Government's Role
Most Americans (69%) see obesity as a very serious public health problem, substantially more than the percentages viewing alcohol abuse, cigarette smoking and AIDS in the same terms. In addition, a broad majority believes that obesity is not just a problem that affects individuals: 63% say obesity has consequences for society beyond the personal impact on individuals. Just 31% say it impacts the individuals who are obese but not society more broadly.
Yet, the public has mixed opinions about what, if anything, the government should do about the issue. A 54% majority does not want the government to play a significant role in reducing obesity, while 42% say the government should play a significant role. And while some proposals for reducing obesity draw broad support, others are decidedly unpopular.
The new national survey by the Pew Research Center, conducted Oct. 30-Nov. 6 among 2,003 adults, finds that two-thirds (67%) favor requiring chain restaurants to list calorie counts on menus. But just 31% support limits on the size of sugary soft drinks in restaurants and convenience stores – 67% oppose this idea. More than half (55%) favor banning TV ads of unhealthy foods during children's programming, but barely a third (35%) supports raising taxes on sugary soft drinks and unhealthy foods. On each of these policies, Democrats and women are more supportive than Republicans, independents and men.

ということで、今夜のブログではこの意識調査結果からいくつかグラフを引用して、簡単に紹介しておきたいと思います。一応、念のためなんですが、この調査結果はあくまで意識調査 Opinion Poll の結果であり、客観的に数値で捉えられる身長や体重やBMIなどを計測した結果ではありません。お間違えのないように。

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上のグラフは、Pew Research Center のサイトから Large Majority Sees Obesity as Serious Public Health Problem のグラフを引用しています。当然ながら、肥満は公衆健康上の大問題と認識されています。選択肢の問題はさておいて、ガンには届きませんが、精神疾患、薬物乱用やアルコール中毒、喫煙や果てはエイズよりも深刻な問題と受け止められています。しかも、表は引用しませんが、肥満は個人的問題というよりも社会的問題と捉える向きが63パーセントと、逆に、社会的問題ではなく個人的問題と考える31パーセントを大きく上回っています。性別や年齢などでは特徴はないんですが、非白人よりも白人の方が、また、学歴が高い方が、個人的問題というよりも社会的問題と受け取る割合が高くなっています。

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ですから、個人的な努力もさることながら、何らかの社会的な対応が必要とされるわけで、上のグラフは、Pew Research Center のサイトから Public Favors Restaurant Calorie Counts, But Opposes Soft Drink Size Limits, Taxes on Unhealthy Foods のグラフを引用していますが、レストランのメニューにカロリー表示を義務付けるとか、子供向けのテレビ番組で不健康な食品のコマーシャルを禁じる、などの対策が過半の支持を得ています。ただし、ソフトドリンクのサイズを制限するとか、砂糖入りのソフトドリンクや不健康な食品に高率の税を課す、などの対策は好まれないようです。これらの対策については、白人と非白人、性別、年齢、学歴、支持政党による際立った特徴は見られません。

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社会的な対応として肥満問題に関する政府の役割を考えると、支持政党別にやや差が出ています。すなわち、上のグラフは、Pew Research Center のサイトから Partisans Disagree About Government Role in Reducing Obesity を引用していますが、通常の何らかの政策と同じで、民主党支持者が肥満問題への政府介入をより容認するのに対して、共和党支持者は逆の結果を示しています。人種的には白人は肥満問題における政府の役割に否定的なのに対して、黒人やヒスパニックは肯定的ですし、年齢が低いほど政府の対策を重視する傾向があります。ただし、性別や学歴では差は見られません。性別と年齢は別にしても、学歴や人種、支持政党別で、肥満問題に対して何らかの違いが見られると言うのは極めて興味深いと受け止めています。

最後に、知っている人は知っていると思いますが、本日、経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通し」 OECD Economic Outlook No.94 が公表される予定となっています。国際機関のリポートを取り上げるのはこのブログの特徴のひとつなんですが、何分、大部に渡る英文リポートですし、そもそも、まだ見てもいませんので、日を改めたいと思います。

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2013年11月18日 (月)

厚生労働省「平成23年度 国民医療費の概況」に見る社会保障費抑制は成功しているか?

やや旧聞に属する話題ですが、厚生労働省から「平成23年度 国民医療費の概況」が先週木曜日の11月14日に公表されています。2011年度の医療費は38.6兆円で過去最高を更新し、2013年度には40兆円を突破するとの見方も出ています。まず、日経新聞のサイトから記事の最初の4パラだけを引用すすと以下の通りです。

国民医療費38.6兆円、最高を更新 1人30万円突破
医療・介護など社会保障費の膨張が止まらない。厚生労働省が14日発表した2011年度の国民医療費は38.6兆円で過去最高を更新し、13年度には40兆円を突破する。「税と社会保障の一体改革」に基づき来年4月に消費増税を予定通り実施することになったが、介護などの給付費抑制策は修正が目立つ。世界がうらやむ長寿国家になった日本。経済の実力に見合った社会保障制度をつくる改革は早くも後退の懸念が出ている。
国民医療費は3年連続で1兆円以上増え、国民1人あたりで初めて30万円を超えた。厚労省推計によると、年金を含む社会保障給付費総額(自己負担除く)は25年度に149兆円。12年度比36%増え、同時期の国内総生産(GDP)の増加率(27%増)を大きく上回る見通しだ。
政府はこれまで、給付増で足りない財源を国債発行で実質的に穴埋めしてきた。だが国の借金は今夏1000兆円を超し、将来世代への先送りは限界だ。税と社会保障の一体改革に取り組んだのは給付と負担が釣り合わない状況を是正する狙いだった。
同改革で方向性を出した「増税」は、来年4月に消費税率を8%に引き上げることが決まった。だが、同時期に始めるはずだった給付抑制策は、早くも腰砕けの様相を呈している。

まず最初に一応お断りしておくと、統計で取りまとめられているのは2011年度の医療費ですから、民主党政権下の社会保障政策に基づく医療費の統計であり、この2011年度の統計をもって現在の安倍内閣の社会保障政策を議論するのはムリがあります。しかし、日経新聞の社会保障費の抑制に対する熱意は汲み取れます。ということで、1985年度からの国民医療費とその国民所得に対する比率をプロットすると以下の通りです。

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私はこのグラフから2点読み取るべきだと考えています。第1に、2001年からの小泉政権下でかなり国民医療費の抑制が図られていることです。現在も医療費をはじめとする社会保障給付の抑制を主導しているのは経済財政諮問会議のように私には見えるんですが、小泉内閣の当時でも、経済財政諮問会議が経済政策を主導をしていたと言えるような気がします。第2に、医療費を国民所得比で見る限り、分母の国民所得の成長率にも大きく左右されるということです。1980年代後半からのバブル期には医療費は増加していたものの、国民所得比では抑制が図られていますし、逆に、2008年のリーマン・ショック後の不況期には医療費の国民所得比はグンと上昇しています。すなわち、医療費をはじめとする社会保障を適正な水準に維持するためには、社会保障費そのものの抑制とともに経済成長が必要だということです。

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上のグラフは、国民医療費を65歳未満と65歳以上に分けてプロットしたものです。いずれも年齢別に、上の棒グラフは1人当りの医療費、下はそれぞれのシェアです。65歳以上にかかる医療費のシェアは2003年度に50パーセントを超え、2011年度には55パーセントを上回りました。すなわち、医療は年金や介護に比べて65歳以下の年齢層も当然受診するわけですが、年金・介護も含めれば社会保障給付は圧倒的に65歳以上の高齢層に向かっているわけです。もちろん、高齢化が進む日本の経済社会においては一定程度はやむを得ないことは理解するものの、同時に、それだからこそ、社会保障費を抑制するにはこの高齢者への優遇策の見直しが不可欠であると認識すべきです。高齢者の優遇がシルバー・デモクラシーに基づく投票行動である限り、政治家にはかなり困難な課題だという気もしますが、シルバー・デモクラシーで歪められた高齢者優遇は何としても是正する必要があります。可能性はかなり低いながら、場合によっては、社会保障費の抑制に成功すれば消費税率の引上げは不要になる可能性があると考えるべきです。

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若年層に目を転じると、同じ11月14日には同じ厚生労働省から平成25年「賃金構造基本統計調査 (初任給)」が発表されているんですが、若年者の初任給はバブル崩壊後にサッパリ上がらなくなりました。上のグラフの通りです。今年2013年の大卒初任給は男女計で前年比▲0.8%減の198,000円となり、昨年に続いて2年連続で減少を記録しました。もちろん、国が市場と関係なく決める社会保障給付と建て前としては市場で決まる初任給とでは、決定のメカニズムが大きく異なりますから、乱暴な議論は慎むべきですが、それにしても、我が国の経済社会全体の選好関数が若年者に不利で高齢者に有利な方向へ大きく偏っているおそれを私は強く感じています。2年限りの出向とはいえ、地方大学でリーマン・ショック直後の学生に直接接して日本経済論を講義した経験から、我が国の若年者冷遇や勤労世代軽視を是正したい、と常に私は考え続けています。

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2013年11月17日 (日)

NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」を見る

実は、私は毎朝BSで7時半からNHK連続テレビ小説を見ています。今、今年度の下半期は「ごちそうさん」を放送しています。今年度の上半期は「あまちゃん」でした。「ジェジェジェ」が流行語大賞に取り上げられそうな勢いで、大ヒットを飛ばしたことは記憶に新しいところですし、昨年度上半期の「梅ちゃん先生」も私は楽しみに毎日見ていました。でも、いつも年度下半期の大阪局作成の朝ドラは冴えません。昨年度後半の「純と愛」は途中で見るのを止めてしまいましたし、最近の大阪局作成の朝ドラでよかったのは「カーネーション」と「だんだん」くらいかもしれません。現在放送中の「ごちそうさん」も、かつての「細腕繁盛記」を思わせる、壮絶なイジメに突入してしまいました。私はこのイジメが終わるまで我慢して見た後、展開が思わしくないようなら見るのをヤメにするのも選択肢のひとつだと考えています。来年度上半期の東京局作成の朝ドラが吉高由里子主演の「花子とアン」ですから、大阪局にもがんばって欲しいと願っています。

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2013年11月16日 (土)

今週読んだ新刊小説

以下は今週のうちに読んだ新刊小説です。目玉は何といってもスティーヴン・キングの『11/22/63』です。ほぼ50年前の1963年11月22日における米国ケネディ大統領の暗殺をテーマにしています。

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まず、スティーヴン・キング『11/22/63』上下 (文藝春秋) です。2011年の現代社会に暮らしている米国ニュー・イングランドの高校教師が、1963年11月22日の米国ケネディ大統領の暗殺を阻止するためにタイム・トラベルをする物語です。ケネディ大統領暗殺の5年前の1958年の米国にタイム・スリップしますので、別の事件を解決したり、賭けでトラブルに巻き込まれたり、もう一度高校教師になって同僚の図書館司書と恋をしたり、いろいろとキングらしい細々したディテールが書き込まれています。最初の校務員一家の事件を起きないようにするための舞台が『It』や『不眠症』と同じメイン州のデリーの町で、登場人物も一部に重なったりします。結局、自分が正しいと思うように過去を修正することがホントに世界をよくし、自分の幸せにつながるのかどうか、とても深刻な問いを投げかけています。

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次に、垣根涼介『光秀の定理』(角川書店) です。私はこの作者の作品はベトナムを舞台にした『午前3時のルースター』しか読んだことがないんですが、幅広い作風を感じました。この本の「定理」は、いわゆるモンティ・ホール問題と呼ばれている確率論です。このブログでも6年前の2007年11月14日付けのエントリーでこの確率問題を取り上げています。なお、オリジナルのモンティ・ホール問題は扉が3つでしたが、上の表紙の画像に見られる通り、4つのお椀に細かな修正が加えられています。基本的には、明智光秀の生涯を僧侶と武芸者の2人の主人公が傍観するというストーリーなんですが、当然ながら、最後に本能寺の変をなぜ光秀が起こしたのか、という問いに帰着します。2人の主人公による回答、すなわち、作者が読者に示す回答がやや物足りません。もう少し歴史をひも解いて、何らかの新規な見方を提示できなかったのかという気がしてなりません。

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次に、姫野カオルコ『昭和の犬』(幻冬舎) です。作者は、15年以上にも渡って、何度か直木賞の候補にあげられながら、なかなか受賞に至りません。この作品は作者の得意とするエッセイと小説の中間的な位置づけで、基本は小説なんだろうと思いますが、いわゆる自伝的な小説に仕上がっています。地元の滋賀の小学校に上る前から、東京の大学に出て来て、さらに社会人となって中年になり親を介護するまで、とてもタイムスパンの長い小説であり、いろんな人生のステージにおける犬との関係を小説にまとめ上げています。私が考えるにとても重要な点ですが、関西在住時は「ブタ饅」と表現し、東京に移動してからは「肉饅」にしています。芸が細かいです。もっとも、この作品においては最初の方で関西弁、と言うか、滋賀言葉に標準語の解説を加えていたりします。これはいただけません。だったら、最初から標準語の小説を書くべきです。覚悟が足りないと見受けました。なお、タイトルは昭和だけなんですが、平成の犬も登場します。いろんな題材で、いろんな文体で、いろんな小説やエッセイをかける作者ですが、その意味で、この作品は代表作とはならないような気がします。

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最後に、法月綸太郎『ノックス・マシン』(角川書店) です。これだけ、今年3月出版で半年超経っているんですが、まあ、今年の本ですから取り上げておきます。作者は言わずと知れた我が母校の京都大学のミステリ研出身の本格推理小説家で、この作品は短編集となっています。収録されている作品は、作者のホームグラウンドである本格ミステリというよりも、多分にSF的なファンタジーのような雰囲気が主になっています。タイム・トラベルの特異点、名探偵の助手などを構成員とする引き立て役倶楽部などの4本の短中編から成っています。一応、作者と同じ名前の小説家・探偵が父親の警視とともに活躍するシリーズの本格推理小説は、私はすべて読んでいると思いますが、特に長編では、いわゆる「オッカムの剃刀」的に単純な解決からほど遠い曲がりくねった推理を展開するところ、この作品の短中編はミステリでの謎解きではなく軽妙洒脱な仕上がりとなっています。

この週末には、図書館の予約が回って来て、浅田次郎さんの『黒書院の六兵衛』上下巻を借りることが出来ました。誠に恥ずかしながら、浅田次郎さんの時代小説は読んだことがないんですが、とても楽しみにしています。

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2013年11月15日 (金)

今冬のボーナスは増えるのか?

一昨日にみずほ総研が最後にリポートを発表して、いつものシンクタンク4社から年末ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因ですので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、日本総研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングについては国家公務員となっています。

機関名民間企業
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研36.8万円
(+0.7%)
57.0万円
(+0.9%)
今冬の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+0.7%と年末賞与としては5年ぶりのプラスに転じる見込み。
背景には、円安の動きなどを受けた2013年度上期の企業収益の持ち直し。加えて、デフレ脱却に向け、労使ともに徐々に高まりつつある賃上げ機運の盛り上がりも賞与押し上げに作用。もっとも、円安効果、株高や消費者マインドの改善を背景とした消費持ち直しのプラス効果は一部の製造業大企業等に限られるため、全体としてのプラス幅は限定的。賞与額のベースとなる所定内給与の減少傾向が続いていることもマイナスに作用。
みずほ総研36.9万円
(+0.9%)
69.8万円
(▲0.8%)
2013年冬の1人当りボーナス支給額(民間企業)は前年比+0.9%と5年ぶりに増加する見通し、円安や輸出・国内需要の回復を背景とした2013年度上期の企業収益改善が主因。
第一生命経済研37.1万円
(+1.5%)
n.a.
(+1.1%)
民間企業の2013年冬のボーナス支給額を前年比+1.5%(支給額: 37万1千円)と予測する。2013年夏のボーナスは前年比+0.3%と微増にとどまったが、冬は伸び率が高まり、ボーナスの改善が明確化するだろう。昨年末以降の景気回復と円安による企業収益の大幅増や、企業の景況感改善などが背景にある。賃金は未だ増加トレンドに入っていないが、冬のボーナスが上向くことで、徐々に明るさが増してくると予想される。ボーナスの増加による、家計のマインド面でのプラス効果も期待できる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング36.8万円
(+0.5%)
57.4万円
(+1.5%)
2013年冬のボーナスは5年ぶりに増加に転じると予測する。民間企業(パートタイム労働者を含む)の一人当たり平均支給額は367,500円(前年比+0.5%)と、増加幅は夏のボーナスと比べるとやや拡大するものの小幅にとどまり、リーマン・ショック後に大きく切り下がった水準から十分に回復することはないだろう。産業別では製造業、非製造業とも小幅ながらも増加に転じるとみられる。
ボーナスの支給は中小企業にも広がり、支給労働者割合は上昇すると見込まれる。さらに、雇用環境の改善もあって、支給労働者数は3,889万人(前年比+0.7%)へと増加するだろう。一人当たり平均支給額と支給労働者数がともに増加するため、支給総額は14.3兆円(前年比+1.2%)と増加するとみられる。

夏季ボーナスについては、厚生労働省の毎月勤労統計において去る10月31日に発表されており、前年比で+0.3%増という低い伸びにとどまりました。同日付けのこのブログのエントリーで「ここまで夏季ボーナスが吝かったとは私の予想外」と嘆いたところです。冬のボーナスについても、引き続き吝くて、例えば、下のグラフは三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートから引用していますが、上のヘッドラインにも採用した通り、「増加幅は夏のボーナスと比べるとやや拡大するものの小幅にとどまり、リーマン・ショック後に大きく切り下がった水準から十分に回復することはない」ということになります。ただし、支給対象者が増加することから、支給総額は1人当たり支給額以上に増加し、マクロの消費への押上げ効果は支給額に見える伸び率以上に大きいと考えています。

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10月31日付けのエントリーでも主張しましたが、株価や企業業績と比較して賃金上昇や正規雇用の広がりなどの雇用条件の改善がひどく立ち遅れているように私には見えます。しかも、この上、来年4月からの消費税率引上げが決まっているにもかかわらず、企業への法人税率の引下げや解雇条件の緩和などの企業優遇政策が目白押しで検討されようとしています。アベノミクスの第1の矢の金融緩和はとてもいいマクロ経済政策なんですが、雇用や企業を対象にしたマイクロな経済政策の方向性に少し疑問が残ります。

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2013年11月14日 (木)

7-9月期GDP速報1次QEに示された成長率は外需の落ち込みで成長率が減速!

本日、内閣府から7-9月期GDP統計の1次速報、いわゆる1次QEが発表されています。多くのエコノミストの予想通りに成長率は減速し、季節調整済みの前期比で1-3月期+1.1%、4-6月期+0.9%に続いて、7-9月期は+0.5%となりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

実質GDP1.9%増 7-9月年率、4四半期連続プラス
内閣府が14日発表した2013年7-9月期の国内総生産(GDP)速報値は物価の変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.5%増、年率換算で1.9%増となった。4四半期連続のプラスだが、年率3.8%増だった前期に比べ伸び率は縮んだ。公共投資や住宅投資がけん引する一方、成長率を押し上げてきた消費や輸出に一服感が出た。
実質成長率の速報値は民間エコノミストの予想の平均(1.6%増)を上回った。生活実感に近い名目成長率は0.4%増、年率で1.6%増となった。
実質GDPの前期比の増減にどれだけ貢献したかを示す寄与度でみると、国内需要が0.9%分押し上げる一方、輸出から輸入を差し引いた外需はマイナス0.5%と、3四半期ぶりに押し下げ要因となった。
政府の経済対策による効果が続き、公共投資が6.5%増と前期(4.8%増)に比べ伸びを高めたほか、消費増税前の駆け込みをにらんだ住宅投資も2.7%伸びた。
個人消費は0.1%増と、4半期連続のプラス。自動車や宝飾品などの高額消費が堅調を保った半面、株価の上昇が一服して証券売買手数料が減り、前期の伸び率(0.6%増)を下回った。
設備投資も0.2%増と、火力発電や自動車など輸送用機械の設備投資が増えて、3四半期連続のプラスとなった。伸び率は1.1%増だった前期に比べ鈍った。
輸出は0.6%減と、3四半期ぶりにマイナスに転じた。アジア向けが新興国の景気減速などで減ったほか、米国向けも自動車などの一部企業が現地工場で生産を始めたことにより、日本からの輸出が落ち込んだ。
甘利明経済財政・再生相は記者会見で、冬の賞与は増える見込みである点などを踏まえ「(景気の)良い循環は始まっていると思う」と語った。
総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比マイナス0.3%と、前期(マイナス0.5%)から下落幅が縮小した。国内の物価動向を示す国内需要デフレーターはプラス0.5%と、2008年7-9月期以来5年ぶりのプラスに転じた。原油高など輸入価格の上昇はデフレーターの押し下げに寄与するため、GDPデフレーター全体ではマイナスとなった。名目値が実質値を下回り、デフレの象徴とされる「名実逆転」は解消していない。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2012/7-92012/10-122013/1-32012/4-62013/7-9
国内総生産GDP▲0.9+0.1+1.1+0.9+0.5
民間消費▲0.3+0.4+0.8+0.6+0.1
民間住宅+1.1+3.2+2.3+0.4+2.7
民間設備▲3.3▲1.2+0.1+1.1+0.2
民間在庫 *(+0.0)(▲0.2)(▲0.0)(▲0.1)(+0.4)
公的需要+0.6+1.1+0.5+1.6+1.6
内需寄与度 *(▲0.4)(+0.3)(+0.7)(+0.8)(+0.9)
外需寄与度 *(▲0.5)(▲0.1)(+0.4)(+0.1)(▲0.5)
輸出▲3.8▲3.0+3.9+2.9▲0.6
輸入▲0.3▲1.7+1.0+1.7+2.2
国内総所得GDI▲0.6+0.2+0.7+1.0+0.3
国民総所得GNI▲0.5+0.2+0.7+1.7+0.0
名目GDP▲1.2+0.2+0.7+1.1+0.4
雇用者報酬+1.0▲0.6+0.7+0.3▲0.6
GDPデフレータ▲0.8▲0.7▲1.1▲0.5▲0.3
内需デフレータ▲1.0▲0.8▲0.8▲0.3+0.5

テーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対する寄与度であり、左軸の単位はパーセントです。棒グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7-9月期の最新データでは、前期比成長率がプラスであり、黒の外需がマイナス寄与を示した他は、赤の民間消費、黄色の公的需要、グレーの在庫投資など内需の寄与は1-3月期や4-6月期と大差ないのが見て取れます。成長率が減速したのは外需が足を引っ張った結果と言えます。

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繰返しになりますが、7-9月期の成長率が減速したのは外需寄与度がマイナスに落ち込んだ要因がもっとも大きく、内需寄与度は+0.9%と引き続き堅調に推移している点を見逃すべきではありません。ただし、在庫のプラス寄与については議論が分かれるところであり、将来の景気拡大を見込んだ積極的な積増しなのか、売残りが生じた事に起因する結果としての積上りなのか、業種によっても違うでしょうし、すべてが前向きの在庫積増しとは私も考えていません。また、日本経済を下支えしているのは公共投資であり、民需では消費税率引上げ前の駆込み需要に支えられた住宅投資です。プラスに転じたとはいえ、設備投資はまだ伸びが低く、消費は雇用者所得がマイナスに転じてほぼ前期比でゼロと、底堅いながらも伸び悩みました。輸出入については、為替が1ドル100円前後で安定しているものの、我が国の内需の伸びが強くて輸入が増加した一方で、新興国をはじめとする海外経済の低迷で輸出が伸び悩んだ結果、外需寄与度がマイナスを記録しました。なお、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスは前期比で+0.4%、前期比年率で+1.6%でしたので、ほぼコンセンサス通りの結果と受け止めています。

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引用した記事の最後のパラでも注目していますが、デフレ脱却がかなり近づいた結果が示されています。すなわち、季節調整していない原系列の前年同期比で見て、GDPデフレータはまだ▲0.3%の下落とマイナスを示していますが、上のグラフを見ても分かる通り、マイナス幅はかなり縮小していますし、7-9月期には内需デフレータは+0.5%、消費デフレータも+0.3%とプラスに転じました。これは季節調整済みの系列の前期比で見ても同じで、GDPデフレータはマイナスながら、内需デフレータと消費デフレータはともに7-9月期からプラスに転じています。需要項目別デフレータの前年同期比に話を戻すと、7-9月期では住宅デフレータが+3.1%と大きな上昇を示しており、設備デフレータも+0.9%の上昇です。他方、GDPの控除項目である輸入デフレータが+14.2%と大きく上昇しているため、GDPデフレータはマイナスにとどまっていますが、昨夜のエントリーにも書いた通り、衆議院の解散・総選挙から始まった円高是正はそろそろ一巡しますので、輸出入のデフレータが落ち着き始めると内需デフレータに従って、GDPデフレータがプラスに転じるのもそう先の話ではないかもしれません。

先行きについては私自身はかなり楽観しています。海外経済は中国を始めとして現在の停滞を脱する動きがありますし、国内要因としては今冬のボーナスは増加すると予想されていますし、さらに、来年2014年1-3月期までは消費税率引上げ前の駆込み需要が見込めます。問題はその消費税率引上げ後の落ち込みをいかにカバーするかです。

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2013年11月13日 (水)

前月からの反動により減少したものの高水準が続く機械受注!

本日、内閣府から設備投資の先行指標となる機械受注統計が発表されています。9月のコア機械受注、すなわち、電力と船舶を除く民需は前月比▲2.1%減の8021億円となりました。日経QUICKによる市場の事前コンセンサスが前月比▲1.4%減でしたので、実績は予想をやや下回ったものの、大雑把にほぼ予想のレンジ内と受け止めています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月機械受注、2カ月ぶり減 受注額8000億円台は維持
内閣府が13日発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比2.1%減の8021億円だった。2カ月ぶりに減少したが、製造業や官公需、外需の受注増が寄与し、2カ月連続の8000億円台だった。
QUICKが12日時点で集計した9月の民間の予測中央値は1.4%減。7-9月期の実績がプラスとなり2四半期連続で増加しているため、内閣府は9月機械受注の判断を8月の「持ち直している」で据え置いた。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は4.1%増の3345億円と5カ月連続のプラスだった。5カ月連続は統計を遡ることができる2005年4月以降初めて。ボイラーやタービンなどの受注が伸び、運搬機械などの需要が旺盛だった。
船舶・電力を除く非製造業からの受注金額は7.0%減の4567億円で、3カ月ぶりにマイナスに転じた。金融業界のシステム投資が伸びた反動が出た。
官公需は42.9%増の3822億円で、05年4月以降で最高を記録した。防衛省など大型案件の受注が寄与した。
同時に発表した7-9月期の実績は前期比4.3%増の2兆3986億円だった。内閣府が8月統計で公表した見通しは5.3%減だったが、一転、4-6月期に続くプラスだった。製紙業や石油・石炭製品業からボイラーやタービンなどへの投資が増えた。10-12月期は2.1%減を見込んでいる。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその後方6か月移動平均を、下のパネルは需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。いつものお断りですが、このブログだけのローカル・ルールで、直近の景気循環の谷は2012年11月であったと仮置きしています。

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コア機械受注は8月の伸びが+5.4%と高かったことから、9月は前月からの反動減が予想されており、ほぼ、予想レンジ内の動きと受け止めています。特に、引用した記事にもある通り、金融業のシステム関連投資が8月に大きく伸びた反動もあって、非製造業が前月比マイナスとなった一方で、製造業は9月は増加しています。もっとも、他の指標とも共通しているんですが、直近月が減少ないし落ちたとはいえ、機械受注も水準としてはまだまだ高く、8000億円を維持しています。上のグラフからも、リーマン・ショック前の水準には達しないものの、昨年のミニ・リセッション前の水準は十分にクリアしているのが読み取れようかと思います。ですから、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直し」で据え置いています。四半期で見ても、7-9月期は前期比で+4.3%増となり、10-12月期には▲2.1%減を見込むものの、まずまず堅調な動きを示すと予想されています。今後とも、民間設備投資は緩やかな回復が見込めると考えるべきです。

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7-9月の四半期統計が利用可能になりましたので、上のグラフはコア機械受注の達成率をプロットしています。エコノミストの間での経験則としてコア機械受注の90%ラインが景気の転換点、というのがありますが、7-9月期には100%近い水準に上昇しているのが見て取れます。この指標もご同様に、リーマン・ショック前の水準には達しないものの、昨年のミニ・リセッション前の水準を超えていることが確認できます。

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機械受注としては最後のグラフですが、民需であるコア機械受注の外数ながら、官公需の月次受注額とその6か月後方移動平均をプロットしたのが上のグラフです。最近時点までグングン伸びているので、まだ公共事業をやっているのかと訝ってしまいましたが、上に引用した記事の5パラ目にあるように、防衛省の大型案件が含まれているようです。このあたりはエコノミストのフォローが追いつかない分野かもしれません。

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最後に、機械受注を離れて、今日は、日銀から企業物価 (CGPI) も発表されています。前年同月比上昇率のグラフは上の通りです。まだまだ、エネルギーや素原材料にけん引された物価上昇なんですが、足元で好調な自動車や住宅などの旺盛な需要に支えられた物価上昇も見られ始めており、例えば、円建ての輸出入物価はともに9月から10月にかけて前年同月比上昇率のプラス幅が縮小した一方で、国内物価は9月の+2.2%上昇から10月は+2.5%に上げ幅を拡大しています。そろそろ、昨年11月半ばから始まった円高修正の為替効果が剥落し始める時期に差しかかっており、来年4月の消費税率引上げまで、どの程度の物価上昇が見込めるかに私は注目しています。

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2013年11月12日 (火)

10月の消費者態度指数は台風の直撃で大きく低下!

本日、内閣府から10月の消費者態度指数が発表されました。昨日の「街角景気」と称される景気ウォッチャーが供給サイドのマインドを表しているのに対して、消費者態度指数は典型的な需要サイドのマインド指標です。10月の統計は▲4.2ポイント低下して41.2となりました。関東を直撃した台風の影響だったと説明されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の消費者態度指数、2カ月ぶり悪化 台風直撃が影響
内閣府が12日発表した10月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は41.2となり前月から4.2ポイント低下した。悪化は2カ月ぶり。大型の台風が関東を直撃するなど特殊要因が指数を押し下げた。
内閣府は基調判断を9月の「改善基調にある」から「改善基調にあるが、10月は大きく低下した」に表現を変更した。ただ、内閣府は「水準としては低くない」とみており、基調判断のレベルとしては据え置いた。
指数を構成する「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目すべてが前月比でマイナスだった。台風や秋雨前線といった悪天候で消費者心理が悪化したことや、所定内給与の減少が続いていることが響いた。
1年後の物価の見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)が1.7ポイント上昇し、89.5%だった。統計をさかのぼれる2004年4月以降で最も高い。日銀の大幅な金融緩和や、円安による日用品の値上げが背景にあるとみられる。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は10月15日で、有効回答数は5940世帯(回答率70.7%)。

いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。影をつけた部分は景気後退期なんですが、毎度のお断りで、直近の景気の谷は2012年11月であると仮置きしています。

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10月の消費者態度指数は、昨日発表された景気ウォッチャーと同じように、台風の影響で消費者マインドは前月から大きく低下を示しました。引用した記事にもある通り、統計作成官庁の内閣府の基調判断は前月の「改善基調にある」から「改善基調にあるが、10月は大きく低下した」と、半ノッチ下がったように私は見受けたんですが、どうもそうではなくて、内閣府のサイトでは「据置き」と主張しています。上のグラフを見ても、確かに水準としては高いレベルを維持しており、リーマン・ショック前にはさすがに届きませんが、昨年のミニ・リセッション前の水準はクリアしています。また、引用した記事にある物価見通しなんですが、確かに「上昇」の見方が割合を増やしています。例えば、郵送調査に切り換えられた今年3月以降の動きを見ると、「下落」が3%台でほとんど変化ないのに対して、「変わらない」が大きく減って、「上昇」に振り代わっているように見えます。季節調整していない原系列の動向ですし、これがそのままいわゆる期待インフレ率の上昇を示しているとは思えない上、消費税率引上げ前の駆込み需要の顕在化の動きもあって、物価と消費行動の関係が分かりにくくなっているんですが、少しずつながらデフレ脱却の動きが前に進んでいることを私は願っています。

先週金曜日のエントリーで取り上げたように、明後日発表の7-9月期GDP成長率はかなり減速したと見込まれており、続く10-12月期のしょっぱなの10月も台風で消費者マインドは冴えなかった結果が示されています。所得のサポートなしにどこまで消費がサステイナブルか、それとも、冬のボーナスに続いて、消費税率引上げ後の来春に所得は増加するのか、先行き消費に大いに注目しています。

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2013年11月11日 (月)

悪くない内容の景気ウォッチャーとJカーブ効果の続く経常収支

本日、内閣府から10月の景気ウォッチャーの調査結果と財務省から9月の経常収支がそれぞれ発表されています。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から▲1.0ポイント低下してと51.8となった一方で、先行き判断DIは+0.3ポイント上昇して54.5を記録しました。いずれも50を超える高い水準です。経常収支は季節調整済みの系列で7か月振りに赤字を記録し、▲1252億円となりました。まず、日経新聞のサイトからそれぞれの記事を引用すると以下の通りです。

10月の街角景気、2カ月ぶり悪化 台風影響、住宅市場に一服感
内閣府が11日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比1.0ポイント低下の51.8で、2カ月ぶりに悪化した。台風の影響で百貨店を中心に売上高が伸び悩んだことに加え、住宅市場では消費増税前の駆け込み需要の鈍化で一服感がみられた。
家計分野では「秋物衣料は、気温の高さや台風など気候の影響を大きく受けて全般に不調に推移している」(東海の百貨店)や、「10月の住宅展示場への来場数は、9月の駆け込み需要の反動で前年比4割減」(近畿の住宅展示場)といった厳しいコメントが目立った。
ただ指数は好不況の分かれ目となる50を9カ月連続で上回っており、内閣府は街角景気の基調判断を前月の「着実に持ち直している」で据え置いた。
2-3か月後の景気を占う先行き判断指数は0.3ポイント上昇の54.5で2カ月連続で改善。年末商戦への期待感がみられた。家計分野で「消費増税前の駆け込み需要が早くも始まり、4Kテレビなど高付加価値商品の需要が喚起される」(北海道の家電量販店)や「宿泊は年末年始がほぼ満室で、宴会もクリスマスを除く忘年会の需要が好調」(近畿の都市型ホテル)という声が出ていた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は92.2%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
9月経常収支、5873億円の黒字 8カ月連続
財務省が11日発表した9月の国際収支(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は5873億円の黒字だった。黒字は8カ月連続で、黒字額は前年同月と比べ14.3%増えた。現在の基準で比較可能な1985年以降では9月として最大の貿易赤字額となったが、所得収支の黒字も9月としては最大となり、経常収支では黒字を維持した。
貿易・サービス収支は9763億円の赤字。赤字は18カ月連続で、赤字額は前年同月と比べ2383億円増えた。このうち貿易収支は、輸送の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで8748億円の赤字で、前年同月から赤字額が4002億円拡大した。
輸出額は12.0%増だった。米国向け自動車や中国向けの有機化合物などが増えた。一方で輸入額は18.2%増。アジアからのスマートフォンなど通信機や太陽光発電部材など半導体等電子部品の輸入が増えた。前年同月より進んだ円安は、輸出額より輸入額を押し上げる影響の方が大きく出た。旅行や輸送動向を示すサービス収支は1015億円の赤字だった。
所得収支の黒字は前年同期比24.6%増の1兆6279億円で、2カ月ぶりに増えた。円安もあって債券利子の受け取りなど証券投資収益が増えたほか、海外事業で投資先から受け取る配当金収入や支店収益などを示す直接投資収益も増えた。
一方、季節調整済みの9月の経常収支は1252億円の赤字だった。季調済みでの比較を始めた96年以降で赤字となるのは3回目で、赤字額は過去最大となった。財務省は「輸入額が大きくなったため」(国際局)とみている。

いつもの通り、とてもよく取りまとめられた記事だという気がします。ただし、経常収支については記事の最後のパラを除いて季節調整していない原系列の統計についての記述であり、このブログにおける季節調整済みの系列と少し印象が異なる可能性があります。次に、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。全国ベースの現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、影をつけた部分は景気後退期ですが、いつものお断りで、昨年11月を直近の景気の谷と仮置きしています。

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景気ウォッチャーはかなり見通しにくい展開になっています。昨年10-12月期をボトムにして、衆議院の解散や安倍内閣の成立を契機に上昇に転じ、今年の春3-4月くらいまで急上昇した後、5月に為替や株などの金融市場が一服するとともに下落に転じ、再び夏8月をボトムに上昇に向かうかと思えば、足元の最近時点では現状判断DIと先行き判断DIに乖離を生じています。現状判断が低下した一方で、先行き判断は上昇しています。基本的には、台風の影響などにより足元の現状判断DIに影響する百貨店売上げなどが伸び悩んだ一方で、消費税率引上げ前の駆込み需要などは年度末まで期待できるわけですから、2-3か月先の先行き判断DIは上がり続けている、ということなんだろうと解釈しています。すなわち、悪い内容ではないということです。ですから、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府による基調判断は「着実に持ち直している」で据え置かれています。また、水準はどこまで意味があるかどうか不明ですが、現状判断DI、先行き判断DIとも50を超えるレベルを維持しています。この統計指標にしては余り例のない水準だと受け止めています。

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経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線の経常収支の推移に対する各コンポーネントを積上げ棒グラフでプロットしています。季節調整済みの系列であり、引用した記事にもある通り、月次で赤字を記録するのは1996年以降で3回目、今年2月以来7か月振りです。グラフを見れば明らかですが、赤の所得収支は大きな変動ありませんが、9月統計では黒の貿易収支が大きなマイナスを記録しているのが見て取れます。それにも増して、やや私が気にかけているのは、2011年3月の震災から傾向的に経常収支が黒字幅を縮小させており、9月統計もこのトレンドから大きく外れているわけではない、という点です。単純なボックス-ジェンキンズのモデルに従えば、このまま経常収支は赤字に突っ込んで行くような気もします。しかし、昨年11月の衆議院の解散から円高是正に入ってほぼ1年を経過し、貿易収支のJカーブ効果が終わると黒字化に向かう可能性も十分あり、この先見定めにくい展開かもしれません。

景気ウォッチャーは「街角景気」と通称され、商店街やタクシー運転手などの典型的な供給サイドのマインドが反映されています。明日発表の消費者態度指数は逆に需要サイドのマインドを示しています。併せて、先行きの景気を占いたいと考えています。

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今日は我が家の結婚記念日!

今日は、我が家の結婚記念日です。上の子が高校生ですから、軽く15年は超えました。しかし、まだ銀婚式にはほど遠い、という中途半端な時期だったりします。吉例によりジャンボくす玉を置いておきます。お祝いいただける向きはクリックして割って下されば幸いです。

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2013年11月10日 (日)

山中千尋「モルト・カンタービレ」を聞く

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我が国が誇る女性トップ・ジャズ・ピアニストのひとり、山中千尋の新しいアルバム「モルト・カンタービレ」を聞きました。前のアルバム「ビコーズ」ではビートルズを取り上げ、今回はクラシックです。モーツァルトの「トルコ行進曲」やベートーベンの「エリーゼのために」、リストの「愛の夢」などが取り上げられていますが、ハッキリ言って50年前からやられていることで、オイゲン・キケロやジャック・ルーシェなどが、山ほどアルバムを出していますから、企画としてはビートルズもクラシックも、何の変哲もなく新規性も皆無と考えるべきです。さらに、多くのジャズ・ピアニストは幼少時にクラシックから始めているわけであり、ルーツとしてクラシックを強調しても、ほとんどのピアノ・ファンは騙されないと思います。従って、ジャズ・ピアノですから当然といえば余りにも当然ですが、アルバムの評価は演奏そのものということになります。評価は分かれるでしょうが、私はそれほど感激しませんでした。特に、2曲めのモーツァルト「トルコ行進曲」の出来が悪いと受止めました。6局目のリスト「愛の夢」なんかはまずまずです。他の曲でもアレンジがしっくり来ません。昨年のアルバム「アフター・アワーズ 2」の方がよかったかもしれません。私は今でもこのピアニストのアルバムとしては、マイナー・レーベルで最後の「マドリガル」からメジャー・デビューした最初の「アウトサイド・バイ・ザ・スウィング」のころ、すなわち、2004-05年ころがもっとも出来がよかった気がします。少し上原ひろみと差がついた気がします。でも、2人の日本人女性ジャズ・ピアニストに関する結論を出す前にライブ盤を聞いてみたい気がします。

上の動画は、アルバムの販売元の UNIVERSAL MUSIC JAPAN がアップロードしている動画は下の通りです。このアルバムの限定盤DVDダイジェストだそうです。また、下の画像は山中千尋が最近出版したエッセイの表紙です。『ジャズのある風景』(晶文社) というタイトルです。見れば分かると思います。近くの図書館に置いてありましたので借りてみました。誠に無責任ながら、まだ読んでいません。悪しからず。

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2013年11月 9日 (土)

米国雇用統計のグラフィックス

日本時間の昨夜、米国労働省から米国雇用統計が発表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+204千人増加し、失業率は前月の7.2%から7.3%に上昇したものの、連邦政府の一時閉鎖の影響を除けば7.1%に低下していたハズとの試算結果も同時に公表されています。いずれも季節調整済みの統計です。まず、New York Times のサイトから記事の最初の3パラだけ引用すると以下の通りです。

Hiring Brisk in Jobs Data Skewed by U.S. Shutdown
Defying predictions that the government shutdown would sap job growth, private employers in the United States added more than 200,000 positions in October, well above even the most optimistic estimates on Wall Street.
In addition to the healthier-than-expected number for job creation last month, the Labor Department also revised upward the number of hires in August and September by 60,000.
The unemployment rate, based on a separate survey and one that counted furloughed federal employees as out of work, rose to 7.3 percent in October from 7.2 percent in September.

この後に延々と連邦準備制度理事会 (FED) の対応やエコノミストのインタビューなどが続くんですが、統計のエッセンスについてはこれで十分と思います。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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今回の米国雇用統計の集計において、何といっても連邦政府の一時閉鎖 shutdown の影響が注目されたんですが、11月7日に公表された米国政府の行政予算管理局 (OMB) のリポート Impacts and Costs of the October 2013 Federal Government Shutdown では p.13 において "furloughed roughly 850,000 employees per day" と推計されています。しかし、米国労働省では、この連邦政府の一時帰休 furlough について、家計に対する調査 household survey に基づく非農業部門雇用者においては雇用は維持されていると見なした一方で、事業所に対する調査 establishment survey に基づく失業率においては失業者にカウントしており、不整合な扱いとなっています。従って、非農業者雇用者の統計で政府部門は▲8千人の減少にとどまっています。また、連邦政府の一時帰休者分を除いた10月の実質的な失業率は7.1%で、4か月連続で低下したとプレスには説明しているようです。雇用者は増加し失業率は低下という結果で、連邦政府の一時帰休 furlough の扱いが不整合であり、エコノミストとしては評価に窮するところです。

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最後に、日本の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見てほぼ底ばい状態が続いていて、サブプライム危機前の3%超の水準には復帰しそうもないんですが、底割れして日本のようにゼロやマイナスをつけて、デフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

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2013年11月 8日 (金)

7-9月期GDP統計1次QEの予想やいかに?

来週木曜日の11月14日に今年2013年7-9月期GDP速報1次QEが内閣府より発表されます。必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ウェブ上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。可能な範囲で、10-12月期以降の先行き経済の動向に関する記述を取っているつもりです。なぜか、テーブルの最後に並べた三菱系3機関を除いて、ほぼすべての機関で何らかの先行き経済に関する記述を発見しています。残念ながら、三菱系3機関のヘッドラインはあっさりと引用しました。なお、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.4%
(+1.6%)
10-12月期を展望すると、アジアをはじめとする海外経済の先行きに不安が残るものの、①緊急経済対策の本格化に伴い公共投資が引き続き景気押し上げに寄与すること、②消費税率引き上げを控えて個人消費の一部で駆け込み需要が徐々に顕在化すること、③米国の堅調な経済成長や円安地合いを背景に輸出環境の一段の悪化は避けられること、などから、成長率は再び加速する見通し。
大和総研+0.4%
(+1.8%)
先行きは、内需が堅調に推移することが見込まれる。マクロで見た所得は緩やかな改善が続き、個人消費の増加を下支えするだろう。加えて、2014年4月の消費税増税を前に、年末以降駆け込み需要が生じるとみており、個人消費は増勢を強める見込みである。住宅投資は、2014年1-3月期以降駆け込み需要の反動で減少に転じる見込みである。ただし、各種激変緩和措置の影響で、駆け込み需要の規模は相当程度抑制されており、反動減は前回の増税時の1997年と比べれば小さい規模に留まるだろう。輸出についても、先行きは増加に転じるとみている。持ち直しの続くユーロ圏向けや緩やかな景気回復の続く米国向けが、輸出の増加に寄与する見込みである。
みずほ総研+0.3%
(+1.4%)
10-12月期の成長率は、年率+3%台に高まると予測している。7-9月期は低い伸びにとどまった個人消費が、自動車など耐久消費財に消費税率引き上げ前の駆け込み需要が出始めること、年末賞与が前年比で増加することが要因となり、伸びを高めると予想される。円安・海外景気の緩やかな回復を背景に輸出が増加に転じ、業績回復を受けた設備投資は拡大を維持するとみられる。景気対策関連の事業執行が一服し、公共投資の伸びは鈍化が予想されるが、10-12月期は民間需要・公的需要・外需がそろって拡大する形を取り戻すであろう。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.8%)
7-9月期の成長率は減速したが、1%以下とされる潜在成長率を上回る伸びを確保しており、景気は堅調を維持している。先行きについては、輸出が景気の牽引役となることは期待できないものの、消費税率引き上げ前の駆け込み需要により個人消費の伸びが加速することを主因として、2013年度末にかけて経済成長率は再び高まる可能性が高い。
第一生命経済研+0.3%
(+1.2%)
7-9月期の減速は、年前半の高成長の反動の面が大きく、先行きについては再び高成長に戻ると予想している。月次で見ると、個人消費、鉱工業生産などで9月に持ち直しが見られており、10-12月期に向けての展望は暗くない。
まず、成長率鈍化の大きな要因になった個人消費については、年前半の高い伸びの反動の面が大きく、基調として悪化しているわけではない。6月以降低下していた消費者マインドが、9月に再び持ち直していることも好材料だ。また、雇用の改善が明確化しつつあることに加え、先行きは消費税率引き上げ前の駆け込み需要の顕在化も予想されることを考えると、10-12月期の個人消費は再び伸びを高める可能性が高いだろう。
また、輸出についても、①減速が続いていた中国経済で底打ちがみられるなど、世界経済が改善方向にあること、②既往の円安による押し上げ効果の本格化が予想されること、などを踏まえると、先行きは着実な増加が予想される。その他、機械受注の動向などから見て、10-12月期以降の設備投資は増勢が加速する可能性が高いことも景気押し上げ要因になる。
このように、7-9月期の成長率鈍化はあくまで一時的なものにとどまるとみられ、先行きへの懸念は不要だろう。年度内の景気は好調な推移が続く可能性が高そうだ。
伊藤忠経済研+0.5%
(+2.0%)
7-9月期については、固定資本形成が伸びを高めるものの、個人消費のスピード調整と輸出の低迷が響き、日本経済の成長率は前期比年率2%まで減速すると予想される。2013年度後半すなわち10-12月期以降に関しては、公共投資がピークアウトへ向かい、輸出が引き続き足を引っ張る懸念はあるものの、消費税率引き上げ前の駆け込み需要などもあり、個人消費を中心に民需が増勢を強めることで、日本経済の成長ペースは再び加速すると見込まれる。最も懸念すべきリスク要因は、海外経済の落ち込みによる輸出の低調推移であろう。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+0.3%
(+1.4%)
海外景気の減速に伴う輸出の減少が、7-9月期の成長鈍化につながったとみられる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+2.2%)
景気持ち直しは続いているが、今年前半と比べると、そのテンポは弱まったとみられる。
持ち直しテンポが鈍化した要因は、今年前半の景気をけん引してきた輸出と個人消費がいずれも前期比でマイナスに転じたためである。
三菱総研+0.2%
(+0.7%)
4四半期連続のプラス成長ながらも、消費の増勢一服や外需の落ち込みを背景に成長鈍化を予想する。

上のテーブルを見れば明らかなんですが、7-9月期の成長は今年2013年前半に比較して大きく減速し、年率+1%台半ばから+2%くらいになると予想されています。その減速の主因は消費と輸出です。ただし、ニッセイ基礎研のヘッドラインにある通り、7-9月も引き続き「潜在成長率を上回る伸びを確保」していることは確かで、その上、9月くらいから生産や消費に持直しの動きも見え始めており、輸出も円安頼みという価格要因から海外経済の拡大という需要要因に切り替わりつつあり、先行きは増加が見込めますから、第一生命経済研のヘッドラインにあるように、「7-9月期の成長率鈍化はあくまで一時的なものにとどまるとみられ、先行きへの懸念は不要」というのが結論なんだろうと思います。多くのエコノミストのコンセンサスと見ていいと私も受け止めています。ただし、輸出はともかく、消費についてはボーナスが増加する気配を見せているものの、基本的には所得ではなくマインドに依存した消費拡大であり、それも来年2014年4月からの消費税率引上げに伴う駆込み需要の色彩が強くなっています。部分的にせよ所得のサポートが薄くて、駆込み需要も含まれていますから、消費の持直しについてはサステイナブルではない可能性が残ります。先行き経済の方向性については賃金動向が気にかかるところです。

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最後に、シンクタンクの予想の一例ということで、いつもお世話になっているニッセイ基礎研のリポートからGDP成長率のグラフを引用すると上の通りです。設備投資の寄与がまだまだ小さい中、消費が減速し、外需がマイナスに転じた一方で、公共投資などの公需が下支えしているのが見て取れます。何ら、ご参考まで。

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2013年11月 7日 (木)

景気動向指数に見る我が国景気は順調に拡大中!

本日、内閣府から9月の景気動向指数が発表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は+0.6ポイント上昇し108.2を記録しました。CI先行指数も上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の景気一致指数、5年2カ月ぶりの高水準 自動車販売好調
内閣府が7日発表した9月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が0.6ポイント上昇の108.2と2カ月ぶりに上昇。リーマン・ショック前の08年7月(110.7)以来、5年2カ月ぶりの高水準となった。新車の投入効果で自動車の販売が伸び、出荷や生産の押し上げにまで波及した。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を前月までの「改善を示している」で据え置いた。
数カ月後の先行きを示す先行指数は2.7ポイント上昇の109.5だった。伸び幅は10年3月に記録した3.6ポイント上昇以来、3年6カ月ぶりの高さ。景況感の改善を受けて消費者心理が好転したことに加え、消費増税前の駆け込み需要で住宅着工床面積が伸びたことなどが追い風となった。
景気に数カ月遅れる遅行指数は0.7ポイント上昇の115.1だった。完全失業率と家計消費支出の改善を反映した。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDIは一致指数が80.0、先行指数が77.8だった。

いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数とCI先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は2012年11月だったと仮置きしています。

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鉱工業生産指数に従って、8月のCI一致指数が低下したんですが、9月にはCI先行指数とともに一致指数も上昇しました。いずれも8月統計が低下していますので、2か月振りの上昇です。DI一致指数も同様です。引用した記事のように、水準が高いのは必ずしも重視すべきではありませんが、方向感覚として景気が順調に拡大していることを示しているのは明らかだと受け止めています。
9月のCI一致指数でプラスに寄与したコンポーネントは、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、商業販売額(小売業)(前年同月比)など、かなり幅広い構成系列が上昇しています。他方、マイナスの寄与度を示した系列は大口電力使用量と所定外労働時間指数(調査産業計)が上げられています。なお、このブログの10月1日付けのエントリーで日銀短観とともに雇用統計を取り上げた際、製造業の所定外労働時間が7-8月と2か月続けて鉱工業生産指数と逆の動きを示した点を理解に苦しむと書きましたが、CI一致指数に採用されている調査産業計の所定外労働時間指数は9月も鉱工業生産指数と反対のマイナスに動いていたりします。このところ、毎月勤労統計の所定外労働時間指数の動きに疑問があり、鉱工業生産と整合性ない結果を示している気がしないでもありません。

景気基準日付について、内閣府の景気動向指数研究会がすでに昨年2012年4月を第15循環の景気の山として暫定設定していますが、早ければ年内にも昨年2012年11月を景気の谷と同定するのではないかと私は予想しています。

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2013年11月 6日 (水)

玄田有史『孤立無業 (SNEP)』(日本経済新聞出版) を読む

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玄田有史『孤立無業 (SNEP)』(日本経済新聞出版) を読みました。思い起こせば、玄田教授の初期の著書である2001年出版の『仕事のなかの曖昧な不安』については、出版当時に私自身が海外勤務をしていたもので、帰国後に読んで感激した記憶があります。本書の第4章の冒頭でも軽く触れられていますが、中高年層の雇用を既得権益と見なして、これを守るために大卒新人をはじめとする若年層の雇用を抑制する、日本の民間企業の現状を分析していて、当時のもうひとつの論調だった「若年層バッシング」、すなわち、フリータなどの若年層の非正規の低賃金雇用が若者のヤル気のなさやスキルの低さに起因するという議論を見事に論破して、各種の賞を総なめにしたりしました。玄田教授は、その後、NEET、すなわち、Not in Education, Employment or Training を研究対象とし、最近はこの SNEP: Solitary Non-Employed Persons に注目しているようで、本書はその成果です。
タイトルの通り、孤立かつ無業の人を分析対象としています。ただ、私が読んだ印象としては孤立と無業が並列なのではなく、「無業の人の中で孤立している人」なんだろうと思います。すなわち、社会との連帯とか社会への参加を重視するとすれば、就業であれば何らかの社会活動に参加しているわけであって、問題なくOKであり、無業であってもボランティア活動などで、もちろん、そこまで行かなくても近隣と言葉を交わすだけでも社会参加であり、ともかくはOKということなんだろうと私は理解しました。ですから、私が単身赴任をして大学教授として2年間を過ごした期間は、近隣100キロ圏に知り合いはおらず、ほとんど誰とも言葉を交わさず、大学における教育と研究以外では社会との関わりを持たなかったんですが、このように孤立していても労働を通じて社会に参加しているのでOKと理解しています。
孤立無業(SNEP)については、これも偏見があって、ひきこもりに近い状態で同居家族以外の他者とのコミュニケーションを持たない理由や原因は、自室でするコンピュータ・ゲームにハマッて外出もせず、もちろん、働きもせず、という状態に陥ってしまった、との誤解です。本書では総務省統計局の「社会生活基本調査」の個票を基に、フォーマルな定量分析が実施されており、孤立無業に対するデジタルなゲーム原因説は棄却されており、むしろ、昔はアナログだったテレビを見て過ごす時間が長く、「昭和」な実態が明らかにされていたりします。そして、「孤立」と「無業」については、まず、「孤立」から脱却する必要性が論じられています。そうしないと、就業にたどり着ける確率が低いからです。しかし、繰返しになりますが、私の単身赴任時のような孤立就業はどうなるんでしょうか。やや疑問が残らないでもありません。他方で、「空気を読む」に代表されるようなコミュニケーション・スキル崇拝論者の前では、少し説得力に乏しいと感じないでもありませんでした。また、ロジャー・グッドマン編著『若者問題の社会学』(明石書店) はこのブログの8月11日付けのエントリーでも取り上げましたが、ニートも含めて我が国の若者問題全般は「一握りのキーアクターが協調して行ったクレイムメーキングの成果」という見方を示していますし、私のような専門外の人間からすれば、古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社) のような意見も成り立つように思えてなりません。ただし、かつてのように、若年者の意欲やスキルをバッシングして、実は中高年の雇用という既得権益を守るだけの論調の復活を許すことは出来ません。孤立無業者の自己責任というトラップに逃げ込むのではなく、真っ向から社会問題として取り組むべき課題であることは認識すべきです。
最後に、学術論文のバージョンは私の知る限りで以下の通りです。

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2013年11月 5日 (火)

法人税減税は設備投資の増加に向かうか?

やや旧聞に属する話題ですが、10月29日に、みずほ総研から「法人減税で設備投資は増えるのか」と題するリポートが公表されています。簡単に法人税率の引下げについて取りまとめて、資本コスト低下の影響を計測した上で、ジョルゲンソン型の資本コストを計測し、資本コストを含む投資関数を用いて設備投資を推計しています。まず、リポートからサマリーを3点引用すると以下の通りです。

法人減税で設備投資は増えるのか
  • 政府は年末にかけて、復興特別法人税の1年前倒し廃止に加えて、2015年度以降、段階的に法人実効税率を引き下げることを検討する方針である。
  • 復興特別法人税の1年前倒し廃止 (法人実効税率: 38.01% ⇒ 35.64%、2.4%Pt低下) は、資本コストを1.5%Pt低下させ、実質民間設備投資を0.3%Pt押し上げる効果がある。
  • 法人実効税率をドイツ並みの水準まで引き下げると、10年間で累計4兆円 (2012年度設備投資対比+6.0%Pt) 程度の投資押し上げ効果が見込まれ、中長期的な投資活性化への貢献が期待できる。

ということで、まず、リポートから 図表1 法人実効税率の国際比較 を引用すると以下の通りです。

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実は、このグラフはほぼ財務省のサイトにある「法人所得課税の実効税率の国際比較」そのままですので、復興特別法人税を上乗せしたグラフを書く以外に、特にみずほ総研で新たな情報を付加したわけではありません。実は、というか、当然ながら、財務省の方が情報が多いわけで、国税23.71%、地方税11.93%の合計35.64%のうち、法人税率が25.5%、事業税率が3.26%、地方法人特別税が事業税額の148%、住民税が法人税額の20.7%と分かります。また、財務省のサイトでは米国とはカリフォルニア州であると明記してあります。

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次に、ジョルゲンソン型の資本コストを推計した上で、資本コストを含む設備投資関数を推計し、上のような法人税率引下げの効果を計測しています。リポートの 図表2 法人実効税率の引き下げによる実質民間設備投資への影響 を引用しています。推計された設備投資関数からは、資本コストの1%ポイントの引下げにより設備投資が+0.2%ポイント増加するという結果を得ているようです。
ところで、設備投資増加の中長期的な効果については、いくつか考えが分かれます。短期には需要を増加させて成長率を引き上げる、というケインズ的な主張でほぼ一致していると私は考えていますが、中長期的にはまったく異なる2通りの考えがあります。第1に、黒くなる前の白い日銀のころの理論だと私は受け止めていますが、どこかに自然成長率的な考えを忍び込ませて、投資が増加するのはバブルのひとつの側面であり、設備投資が本来あるべき水準から乖離して増加したりすれば、バブル崩壊後のストック調整を深く長くする、という悲観論です。第2に、リアル・ビジネス・サイクル的なものも含めて、資本財に体化された技術進歩により生産性が向上し成長を促進する、という楽観論です。私は後者の投資の成長促進効果の方が大きいと考えていますが、いまだにバブルになる前に成長を低く抑えた方がいいと考えるエコノミストは少数ながら存在します。
ですから、設備投資が促進されれば、短期にはもちろん、中長期的にも成長にプラスだと私は考えるんですが、問題はその前提であり、法人減税が設備投資を促進するかどうかは疑問が残ります。典型的には、広く人口に膾炙した通り、9月13日の閣議後の記者会見で麻生財務大臣が表明し日経新聞が報じた記事であり、納税法人は3割ほどにしかならないので、そもそも法人税を払っていない企業には当然ながら法人減税の投資促進効果は及ばず、従って、設備投資の増え方は限定的である、との見方は払拭されません。

設備投資は現時点までまだまだ低調であるのは確かで、今年の年央には輸出も伸び悩みましたので、7-9月期のGDP成長率は4-6月期の年率+3.8%からかなり減速したと見込まれています。その一方で、経済対策による公共投資は別にして、誰の目から見ても、現在の景気を支えているのは家計の消費です。現在の財政バランスや公債残高を考慮すると消費税率の引上げは止むを得ない面があるものの、消費税増税の財源で法人税減税までサービスするがごとき、家計に冷たく、特に現役世代の働く家計に冷たく、トリクルダウンを期待した企業にやさしい経済政策は、景気転換点の直前や景気回復の初期には有効であった可能性が高いものの、私から見て、現時点ではそろそろ企業から家計に目を転ずべき時点に達しているような気がしないでもありません。

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2013年11月 4日 (月)

11月4日、本日の雑感は加齢に伴う精神的肉体的な変化など

2005年に始めたこのブログも8年を超え、私もとうに50歳を過ぎました。2004年9月の国際通貨基金 (IMF) による「世界経済見通し」 World Economic Outlook (WEO) の第3章 Figure 3.12. The Last Train for Pension Reform Departs in ... は、先進各国の51歳以上人口が50%を超え年長者の政治的なウェイトが高まると年金改革の終電が出てしまう、という趣旨で、先進各国の終電の年次をグラフで示しています。グラフは引用しませんが、リンク先を参照すれば明らかです。
ということで、国民の年齢構成の高齢化とともに社会的な選好体系に変化が生じるんですが、私自身としても、確かに50歳を超えて個体維持本能としての食欲と種族維持本能としての性欲は大きく落ちた気がします。ほかはともかく、食欲と性欲については仙人のような生活になったみたいです。欲望全体としては大きく減じた気配もないので、読書や音楽鑑賞やと別の方向に欲望が向かっているだけだという気もしますが、少なくとも、個体維持のためのやや長期的な健康についてはかなり無関心になりつつあります。すなわち、短期的に目先の健康については関心が高まる方向にありそうな気がしますが、20年後とか30年後については関心は低下しています。例えば、8月31日付けのエントリーで取り上げた篠田節子『ブラックボックス』(朝日新聞出版) を読んでカット野菜は食べられなくなった、という声をネットで見かけたりするんですが、私は平気で仕事のある日は毎日のようコンビニで買い求めて食べていたりします。でも、子供達に食べさせるかどうかは別問題です。他方、私と違って、同年齢ながら周囲にはまだまだ元気な人も少なくありません。いわゆる「脂ぎった中年」の見本のようなオヤジもいますし、言葉としてはすでに死語となった感のある「オバタリアン」も実体としては死滅したわけではありません。
50歳を過ぎて肉体的に大きく変化したのは頭髪です。白髪はまだ半分くらいなんですが、先日、散髪屋に行って合わせ鏡でじっくりと観察したところ、頭頂部の髪の毛はかなり薄いことを発見しました。バーコードにする必要は生じていませんが、高校生くらいから変化のない髪型はいつまで維持できるか不明です。それから、これも当然の年齢に伴う肉体の衰えとして、老眼が進んでいます。まだ老眼鏡を必要とする段階ではないんですが、新聞や本を読むときは近視用のメガネを外す必要があります。体型は何とか努力して維持するようにがんばっています。高校生くらいまではジーンズは30インチだったんですが、一番最近に買ったジーンズは31インチです。高校生のころから、1次元に従うウェストが3%くらい増えていますから、3次元に従う体重は10%増くらいになっていても不思議はありません。体重オーバーは年齢的に止むを得ない部分もあると認識しています。

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上は昨日までのボディマス指数 (BMI) の推移です。9月半ばころから季節変動として体重、と言うか、BMIの上昇局面に入ったかもしれません。

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2013年11月 3日 (日)

東北楽天ゴールデンイーグルス日本一おめでとう!

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読  売000000000 051
楽  天11010000x 381

東北楽天ゴールデンイーグルス日本一おめでとうございます!
田中投手という絶対的なエースを要に、王者巨人を破っての日本一ですから、大いに価値があると言えます。バックの親会社もこれからの日本経済を背負って立つ新興企業であり、経営者も注目の人です。将来の日本球界の盟主も夢ではないかもしれません。
しかしながら、私は来年も阪神タイガースのリーグ優勝と日本一を願って応援を続けます。

来年こそ、
がんばれタイガース!

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2013年11月 2日 (土)

今週の読書は人気作家の小説を中心に!

先週の読書はなぜかノンフィクションの学術書や教養書ばっかりでしたが、今週はフィクションの小説ばっかりです。人気作家を中心に取り上げています。

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まず、東野圭吾『祈りの幕が下りる時』(講談社) です。加賀恭一郎シリーズ最新刊です。加賀の母親の秘密が明らかにされます。加賀恭一郎シリーズらしく、とってもハートウォーミングです。ミステリの謎解きとしてはイマイチと感じる読者もいるかもしれませんが、東野圭吾ファンであれば読んでおくべき1冊でしょう。

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次に、万城目学『とっぴんぱらりの風太郎』(文藝春秋) です。この作者の作品は私はほぼすべて読んでいると思うんですが、初の時代小説です。この作者のバックグラウンドをなす関西、と言うか、大阪の物語で、江戸時代初期の大坂の役をめぐる忍びの物語です。最後を単純なハッピーエンドで終わらせなかった点に作者の力量を感じます。この作者の最高傑作である『プリンセス・トヨトミ』と何らかのつながりがあるかどうか、とても気になります。

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次に、森博嗣『赤目姫の潮解』(講談社) です。100年シリーズ3部作の最終巻です。しかし、前2作、すなわち、『女王の100年密室』と『迷宮100年の睡魔』の主人公だったサエバ・ミチルは登場しません。ロイディは犬で登場します。とてもシュールで難解です。赤目姫と緑目王子をいかに読み解くかがポイントでしょう。哲学的幻想小説とも称されますが、典型的な speculative fiction です。

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それから、角川ホラー文庫から何冊か読みました。上の画像は貴志祐介『雀蜂』吉村達也『幻影城の奇術師』ですが、ほかにも、櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス 死者の花嫁』『20の悪夢 角川ホラー文庫創刊20周年記念アンソロジー』も読んでいます。我が家の中学生の下の倅が中間試験を終えたので、連休の暇潰しに角川ホラー文庫を何冊か買い与えて、一応、ホラー小説ですので親としての義務とチェックを兼ねて事前に読んでいます。なお、吉村達也『幻影城の奇術師』の最後の解説でQAZの正体が明らかにされています。

万城目学『とっぴんぱらりの風太郎』を読んで、大坂の役に関する小説を読みたくなった向きには、司馬遼太郎『城塞』(新潮文庫) を強くオススメしておきます。

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2013年11月 1日 (金)

連合総研第26回「勤労者短観」に見る「ブラック企業」の認識やいかに?

最近話題の言葉に「ブラック企業」というのがあります。決していい意味ではなく、また、エコノミスト的に定義はハッキリしないんですが、ネットで検索をかけると山のようにヒットすると思います。私の感触では英語で sweatshop と呼ばれている企業や会社なんぞに近い表現ではなかろうかと受け止めているんですが、長らく公務員をしている私には余り実感はありません。それはともかく、昨日公表された連合総研の第26回「勤労者短観」では、いわゆる「ブラック企業」についての労働者から見た認識を問う質問が含まれており、年齢が若いほど「ブラック企業」の認識割合が高いなど、いくつか興味深い結果が示されています。まず、日経新聞のサイトからこの調査に関する記事を引用すると以下の通りです。

20代の24%、勤め先「ブラック企業」 連合総研
20代会社員の4人に1人は「うちの会社はブラック企業」と認識――。連合系の調査機関「連合総研」は31日、パワーハラスメントや長時間労働など労働環境が劣悪な「ブラック企業」に関するアンケート調査で、20代社員の24%が勤め先がブラック企業にあたると思っているとの結果を発表した。同総研は「若い社員ほど長時間労働などに厳しい目を向けている」とみている。
調査は10月上旬、首都圏と関西圏で20-64歳の民間企業に勤める会社員2千人を対象にアンケート形式で行われた。
調査によると、勤め先がブラック企業にあたると思うと答えた人の割合は全体の17%に上った。20代(24%)が最も高く、30代(21%)、40代(15%)と年代が高くなるほど低くなった。
「過去1年間に職場で違法状態があったか」との質問に対し、全体の29%が「ある」と回答。具体的には「残業代の未払い」(19%)が最も多く挙げられ、「有給休暇を取れない」(14%)などが続いた。

とてもよく取りまとめられた記事でしたが、今夜はこの第26回「勤労者短観」の調査結果に関する連合総研のリポートから、図表をいくつか引用して、どのような属性で「ブラック企業」と見なされているかを考えたいと思います。ただし、あくまで労働者が考える「ウチはブラック企業かどうか」というアンケート調査結果であり、何らかの客観的な指標があって「ブラック企業」かどうかが判定されているわけではありませんので、結果を見る際には注意が必要です。もっとも、この点については、セクハラやパワハラなどと同じで、受け手が「ハラスメント」であると感じるかがどうかが重要なわけですから、「ブラック企業」に関する客観的な基準もさることながら、労働者が「ブラック企業」のような働き方を強要ないし要求されていると感じるかどうかは大きなポイントだと考えるべきです。ですから、このような労働者側からの調査はもっと重視されて然るべきと私は受け止めています。

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まず、上のグラフは企業属性別です。リポート p.10 図表Ⅱ-9 を引用しています。それほど大きな差が見られませんが、製造業や建設業などよりも小売・卸売や飲食・宿泊などで「ブラック企業」と従業員から見られている比率が高いのは一般的な常識と整合的ではないでしょうか。また、従業員1000人以上の大企業ではややこの比率が低い気もしますが、従業員数で見た企業規模で大きく異なるとの印象はないように受け止めています。

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次に、リポート p.10 図表Ⅱ-10 を引用して個人属性別なんですが、一目瞭然で年齢層が若くなるほど自社を「ブラック企業」と見なしている割合が高くなっています。政府の社会保障政策だけでなく、企業の待遇も含めて、我が国では森羅万象について年齢が高くなるほど有利になる、という確立された真実の裏返しかもしれません。また、正規・非正規別では男性では差が大きくない一方で、女性では正社員の方が労働条件が過酷であることをうかがわせる結果となっています。

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上のグラフは、リポート p.11 図表Ⅱ-11 を引用しています。「所定労働時間を超えて働いた」と回答した人だけを対象とした集計ですが、大雑把に残業時間が長いほど自社を「ブラック企業」と見なす割合が高くなっています。これも常識的な結果だろうと受け止めています。参考集計で月に60時間以上の残業をすると約4割の人が「ブラック企業」認識を持つことが明らかにされています。

最後にどうでもいいことながら、今年の新語・流行語大賞は、この「ブラック企業」か「お・も・て・な・し」のいずれかではないか、と私は予想していたりします。昨年の「ワイルドだろぉ」よりは社会的なインパクトが強そうな気がするんですが、いかがでしょうか?

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