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2013年11月22日 (金)

今週読んだ新刊書の読書感想文

前回の読書感想文のブログでは、今週の読書の目玉は浅田次郎『黒書院の六兵衛』ではなかろうかと書きましたが、予想は大きく外れました。今週の読書結果は、以下の通りです。

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まず、岩城けい『さようなら、オレンジ』(筑摩書房) です。今年の太宰治賞受賞作です。とってもよかったです。朝日新聞や毎日新聞をはじめとして、いくつかのメディアでも好意的に書評が取り上げられていると思います。今年の出版物の中で、村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋社) 東野圭吾『夢幻花』(PHP出版) などが文芸書やエンタメとしては印象に残り、エコノミストとして読んだ経済書や学術書のたぐいではダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』上下(早川書房) をみなさんにオススメしているんですが、私が読んだ限られた範囲ながら、この作品も今年のマイ・ベストに近いと考えています。オーストラリアの新大陸を舞台に、日本人夫婦の妻の方のハリネズミことサユリのジョーンズ先生への手紙とアフリカからの難民であるサリマことナキチを主人公にした第3者話法による叙述が交互に現れます。ただし、これはサユリが取りまとめているメタ構造になっていると解釈すべきです。このメタ構造については、太宰賞の選評で三浦しをんが厳しい批判を展開しています。ご参考まで。ストーリーとしては、言語の習得と子供の死と誕生、あるいは別れなど、女性の視点から勤労も含めて、故郷を離れた異国での生活が余すところなく描き出されています。ひょっとしたら、海外生活の経験の有無で読み方が変わる可能性がゼロではありませんが、私には不明です。厚い本ではないですし、ページ数もそれほど大部ではなく、各ページもガサっとしていて、軽く読み飛ばせそうなんですが、私はじっくりと感情移入して大いに時間をかけて読みました。女性だけでなく、海外生活経験者だけでなく、多くの方にオススメします。

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さて、次は、大いに期待していた浅田次郎『黒書院の六兵衛』(日本経済新聞出版) です。最近まで日経新聞に連載されていた時代小説で、幕末から明治への転換点における江戸城内で居座った正体不明の旗本に関する物語です。主人公は尾張藩の下級武士ながら官軍の先手組を仰せつかった加倉井という組頭です。勅使下行、さらに、天皇の行幸・遷都を前に、それでも無言で江戸城内に居座り続ける的矢六兵衛なる旗本の正体をめぐって、いろんな証言や聞取りや果ては加倉井の女房の憶測まで、松井今朝子の『吉原手引草』のモノローグのように配して、物語は進みます。もちろん、モノローグ意外にも物語は展開します。居座る六兵衛が立派な旗本なのかどうかは私には判断できませんが、どうしてもキャラが立たないような気がしました。最後に、江戸城に行幸なった天皇のお言葉により六兵衛は黒書院から退去しますが、このあたりの行動パターンも私には理解できませんでした。私が見聞きした範囲の前評判からすれば、少し残念な読後感が残りました。

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次に、小説ではありませんが、古市憲寿『誰も戦争を教えてくれなかった』(講談社) です。作者は『絶望の国の幸福な若者たち』で一躍脚光を浴びた社会学者です。戦争博物館ないし平和博物館をめぐるダークツーリズムから戦争について考えているんですが、第2章のドイツ・イタリアという欧州敗戦国はまだしも、第3章の中国あたりから観光案内になり、第4章の韓国ではK-POPや韓流ブームの解説になっている気がします。でも、BIGBANGが大好きで神とも崇めているので韓国とは戦争ができない、というのはいいポイントを突いているのかもしれません。アイドルへの傾倒をビジネスのネットワークに読み替えればOKなんではないでしょうか。最後の結論は、p.283 の最後のパラにある通り、「誰も戦争を知りようがないし、教えようがない」ということなのでしょう。この部分を含めて、第6章はそれなりに読み応えがあります。言うまでもなく、最後の補章のももクロとの対談はオマケなんでしょうが、私のような昭和30年代生まれのオジサンが、彼女らの世代の戦争に関する知識の薄さを実感するにはいいかもしれません。

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最後に、小杉なんぎん『阪神ファンの流儀』(KKベストセラーズ) です。これも小説ではなく、エッセイというか、コラムを集めた本というカンジです。阪神ファンであるにもかかわらず、私は作者を知りませんでしたが、関西方面では有名なコラムニストなのかもしれません。著者の実体験としては田淵捕手や掛布三塁手の活躍にさかのぼりますので、1985年のセリーグ制覇と日本一達成を知らない世代、すなわち、我が家の子供達の世代の阪神ファンへの手引書としてはいいかもしれません。阪神ファンにはオススメしますが、それ以外の野球チームのファンのみなさんには無用の書かもしれません。どこのチームのファンかによって、評価は大きく分かれそうです。

そろそろ、来週かさ来週あたりには、経済週刊誌にて今年の経済書のベスト100などが発表されると思います。地方大学に出向していたころには、私にも投票権があったんですが、今ではもっぱら拝読する側に回っています。今年の経済書では、ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』上下(早川書房) に私は感銘を受けたんですが、どのあたりにランクされているんでしょうか?

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コメント

日経新聞に掲載されている小説は、いつも着目しているのですが、浅田次郎の今回の小説は、いらいらして最後のほうは無視しておりました。残念ですね。旬が過ぎた作家なのでしょうかね。安部さんの「等伯」とか「韃靼の馬」なんかは、良かったと思います。

投稿: kincyan | 2013年11月25日 (月) 06時11分

『黒書院の六兵衛』については、ちょっと最後の締りが悪かった気もします。ラストがとても印象的であれば、もっとよかったんですがネ…

投稿: ポケモンおとうさん | 2013年11月25日 (月) 07時26分

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