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2013年11月30日 (土)

今週の読書

今週の読書です。新刊書を中心に取り上げましたが、最近、ふたたび流行っているとウワサの推理小説も読んだりしました。朝日新聞の書評欄で取り上げられた法月綸太郎の『一の悲劇』です。一応、法月綸太郎の「法月綸太郎シリーズ」はデビュー作から最新刊まですべて読んでいるつもりなんですが、今週は『一の悲劇』だけ読み返したりしました。小説をはじめとするフィクション、ノンフィクションなど、他も含めて以下の通りです。

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まず、ジェイムズ・オーウェン・ウェザーオール『ウォール街の物理学者』(早川書房) です。著者は物理学や哲学で博士号を取得した大学助教授の学者なんですが、サイエンス・ライターとしても有名です。ウォール街の金融業界でデリバティブなどを扱うクォンツ、特に物理学出身のクォンツを取り上げています。ブラック・ショールズ方程式で有名なノーベル賞クラスの人物も含まれています。私は金融業界で仕事をしたことがないので、それほど詳しくもないんですが、ビッグ・データとは違う意味で大量の時系列データを扱って複雑なモデルを組んでリターンの最大化やリスクの最少化を図る手法には経済学というよりも、あるいは、物理学というよりも、数学の応用分野だと私は考えているんですが、現在の数学がかなり論理学に近くなっている一方で、統計力学のようなデータの扱いに関しては物理学を専門とする方がアドバンテージがあるのかもしれません。経済学の観点からは理論なき推計の可能性もあり、データ・マイニングに近い印象を私は持っています。もっとも、単なる知らない人の偏見かもしれません。

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次に、日本再建イニシアティブ『民主党政権失敗の検証』(中公新書) です。取りまとめに当たった日本再建イニシアティブのサイトでもこの本は紹介されています。朝日新聞の主筆だった船橋洋一などが執筆しています。大量に出回っている民主党政権崩壊本のひとつなんですが、民主党の分裂とマニフェストに関して、ひとつだけ独自の観点を提示しています。すなわち、マニフェストななんであれ選挙に強くて当選できる国会議員が主流派としてマニフェストにこだわらない政策を目指したのに対して、小沢チルドレンなどのマニフェスト通りの政策でないと再選がおぼつかない国会議員の間で民主党は分裂したとの見方を示しています。かなり実現可能性に疑問の残る民主党マニフェストの通りの政策を実行せねば当選しない国会議員というのは、ホントに国民の代表たりえるのか、私は自信を持った見方を提示できません。

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次に、三沢洋一『致死量未満の殺人』(早川書房) です。第3回アガサ・クリスティー賞受賞作品です。憎まれ役の女子大生に対する殺人事件なんですが、着眼点はいいものの物足りなさは残ります。東野圭吾の『私が彼を殺した』のように、少し余韻を残すのは新人賞応募作品に望むのはムリなんでしょうが、もう少し何か工夫がなかったかという気がします。でも、今後が楽しみな新人作家です。

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次に、法月綸太郎『一の悲劇』(祥伝社) です。法月綸太郎の「法月綸太郎シリーズ」はすべて読んだつもりですが、いわゆる新本格ミステリの複雑怪奇な人間関係を読みこなす自信はいまだにありません。双子や意外な人物、果ては法律上の親子関係と実の遺伝子上の親子関係など、複雑を極めた人間関係の中で証拠よりは自白を重視する当時の我が国警察のやり方を基に書かれていますので、現在でも読み応えのあるミステリは少ないかもしれません。それから、二宮敦人『夜までに帰宅』(角川ホラー文庫) は下の子が期末試験を終えた際の読み物にどうかと買い求めて、親として事前チェックしたものです。基本的に、高校生が主人公のサバイバル・ホラーなんですが、ホントに怖いのはオバケや幽霊やモンスターではなく人間なんだということを再認識させられます。

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今週、いつもよりやや読書が少なかったのはジャズ雑誌を熱心に読んでいたからです。ヤマハの出している上の月刊誌を私はよく読んでいます。

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