よいお年をお迎え下さい

いよいよ年の瀬も押し詰まり、今日は大晦日です。
何はともあれ、みなさま、よいお年をお迎え下さい。
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年末年始休暇に入って大掃除もせず、ジブリ映画「かぐや姫の物語」を見に行きました。高畑勲監督作品です。もちろん、ストーリーは日本国内では知れ渡っているので、ストーリーの解釈やアニメの美しさ、それにかぶさる音楽などが注目なんですが、さすがのジブリ作品に仕上がっていました。でも、上のポスターに見られる通り、サブタイトルが「姫の犯した罪と罰」になっているところ、実は、「翁(あるいは、かぐや姫の周囲の人達)の犯した罪と罰」なんではないかという気もしないでもありません。
近所のシネコンで見たんですが、この年末年始映画はあまり魅力的な作品は少なそうな印象を持ちました。春休み映画やいかに?
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年末年始の冬休みに入って、特段、取り上げるべきテーマもなく、ヒマにしていた日曜日なんですが、一昨日の27日金曜日に @nifty 何でも調査団から「学生時代についての本音・実態調査」の結果が公表されています。いくつかのグラフとともに、簡単に振り返っておきます。
まず、「学生時代、いつが1番楽しかった?」という問いに対する回答は上の通りです。ローティーンの中学生よりも、ハイティーンの高校生から20歳前後の大学生のころ、というのは分かる気がします。私については、やっぱりティーンエイジャーのころという気がしますが、中学校と高校の6年間一貫校に通っていましたので、このころがもっとも楽しかった気がします。その昔の mixi を別にすれば、現在の Facebook の友人は中学・高校と大学の同窓生ばっかりだったりします。
次に、「学生時代、もっとやっておけばよかったと思うことは?」という問いに対する回答は上の通りです。私も「勉強」と回答したような気がしますが、「特にない」もとても有力な選択肢だったように記憶しています。時間をさかのぼれるわけではないんですから、過ぎ去った学生時代はすべてやり尽くしたような気になっています。
最後に、「学生時代っていいな…と今だから思うことは?」という問いに対する回答は上の通りです。やっぱり、「時間」と「体力」でしょうね。特に「時間」については、二重の意味で、すなわち、日々時間的な余裕がある、とともに、人生の先が長い、というのもあります。特に、私のように50歳を超えると人生の先がとても短く感じてしまいますので、さらに焦って短期的な視野に陥りがちです。
ミドルティーンからハイティーンというのは、まさに我が家の倅達の年代です。私もあのころに戻れればいいのにと思わないでもありませんが、おそらく、時代背景は異なるものの、結婚相手を別にして、ほぼ同じような人生を進みそうな気もします。
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いくつかのメディアのサイト、例えば、東京新聞とか時事通信などでは、昨日発表の気象庁の週間天気予報をもって年末年始の天気として報じています。特に根拠はないんですが、このブログでは日本気象協会が26日に発表した「年末年始の天気」の画像を引用しておきます。
私だけでなく、我が家は一家そろって朝に弱いので、初日の出を拝めるとはとても思えませんが、東京などの太平洋岸では冬晴れのいいお天気が続くようです。晴れても寒さは厳しいので体調管理には気をつけたいと思います。
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今日は、年内最後の閣議日で、例年よりも1日早いご用納めですから、政府統計がいっせいに発表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産統計が、総務省統計局の失業率、厚生労働省の有効求人倍率や毎月勤労統計などの雇用統計が、経済産業省から商業販売統計が、そして、総務省統計局から消費者物価指数が、それぞれ発表されています。いずれも11月の統計です。まず、とても長くなりますが、それぞれの統計のヘッドラインを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
鉱工業生産指数3カ月連続プラス 11月0.1%上昇
1年7カ月ぶり高水準
経済産業省が27日発表した11月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.1%上昇の99.4だった。プラスは3カ月連続。指数は2012年4月(100.6)以来、1年7カ月ぶりの高水準だった。消費増税前で駆け込み需要が広がり、自動車生産が増えた。企業向けのパソコン生産も好調だった。
QUICKがまとめた市場予想(0.3%)は下回った。経産省は在庫が膨らんでいないため、生産を抑制する動きは出にくいとみており、基調判断は「持ち直しの動きで推移している」のまま据え置いた。
業種別では15業種のうち8業種が上昇した。消費増税前の駆け込みによる国内の自動車販売の好調を反映し、「輸送機械工業」が0.7%上昇した。米マイクロソフト社の基本ソフト「ウィンドウズXP」のサポート終了を控えて企業でのパソコンの買い替えが進んでおり、「情報通信機械工業」も3.9%上昇。住宅や建設資材向けの材料生産が伸び、「化学工業」は1.2%上昇した。
出荷指数は0.1%低下の99.0。全体では上昇業種が多かったものの、指数への影響が大きい「はん用・生産用・業務用機械工業」が3.5%低下。前月に出荷が増えた反動減が響いた。クリスマス商戦向けの製品の作り込みが一服し、「電子部品・デバイス工業」も4.7%低下した。在庫指数は1.9%低下の106.0、在庫率指数は1.4%低下の104.5だった。自動車販売が好調な「輸送機械工業」の在庫低下が目立った。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、先行きは12月が2.8上昇、1月は4.6%上昇する見込みだ。12月は変圧器など「電気機械工業」の生産増が見込まれるほか、1月は自動車生産の増加で「輸送機械工業」が増える見通し。
11月の完全失業率、前月比横ばいの4.0% 「非自発的」離職が減少
総務省が27日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は4.0%で2カ月連続で前月比横ばいだった。事業主による人員整理などを理由にした「非自発的な離職」は前月から2万人減った一方、自発的な離職は2万人増えた。現状より条件の良い就職先を求めて転職をしようとする動きが活発になっており、雇用情勢の改善傾向が続いているもよう。総務省は雇用全体を「持ち直しが続いている」と判断している。
男性の完全失業率は0.2ポイント低下の4.1%、女性は横ばいの3.7%。完全失業者数は261万人と前月から5万人減少した。そのうち男性は156万人で前月より5万人減少し、女性は106万人と1万人増えた。女性は仕事を探していない「非労働力人口」が14万人減と4カ月連続で減少したことで失業者が増えた。女性の労働市場への参入が引き続き活況なことを映した。
11月の就業者数は6350万人で前月に比べて23万人増えた。産業別にみると「医療・福祉」が4カ月ぶりに増えた。15-64歳人口に占める就業率は72.5%(原数値)と、前月に続き比較可能な1968年1月以降の過去最高を更新した。
11月の現金給与総額0.5%増 5カ月ぶりプラス 所定内横ばいに
厚生労働省が27日発表した11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比0.5%増の27万6601円だった。増加は5カ月ぶり。国内外の需要回復を背景に製造業の生産活動が活発になり、自動車など製造業の所定外労働時間と所定外給与の増加が全体を押し上げた。
基本給や家族手当などの所定内給与は前年同月比横ばいの24万2755円と2012年5月以来1年6カ月ぶりに下げ止まった。ただ賃金水準の低いパートタイム労働者が増えており、パートタイムの比率が高まる確報値(2014年1月中旬発表)はマイナスになる公算が大きい。
残業代などの所定外給与は4.7%増の1万9814円だった。所定外労働時間は5.7%増の11.1時間。このうち製造業は11.8%増の16.2時間で、東日本大震災による落ち込みの反動で増えた12年5月(12.8%増)以来の高い伸び率だった。総労働時間は0.8%減の150.2時間。前年同月に比べ平日が1日少なかったことが響いた。
正規雇用を中心にした一般労働者とパートタイム労働者を合計した常用雇用は1.1%増の4640万9000人。このうち一般労働者は0.6%増え、パートタイム労働者も2.2%増加した。厚労省は「雇用情勢は改善しつつある」と分析している。
11月の小売販売額4.0%増 自動車などがけん引
経済産業省が27日発表した11月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は11兆5800億円で、前年同月に比べ4.0%増えた。プラスは4カ月連続で、増加率は12年4月(5.0%増)以来の高い伸び率となった。自動車販売が引き続き伸びた。好調な住宅販売を反映し家電製品も売れた。
小売業の内訳は自動車が新型車を投入した効果などで13.6%増と3カ月連続のプラス。機械器具も7.8%増。冷蔵庫やエアコン、洗濯機などが増えた。
百貨店とスーパーを含む大型小売店は1.3%増の1兆6968億円で、4カ月連続で増加した。衣料品は減ったが、飲食料品が伸びた。既存店ベースは0.6%増。百貨店は2.7%増えたが、スーパーは0.6%減った。
コンビニエンスストアは新規出店効果で5.9%増の8198億円。既存店ベースは0.4%増だった。
消費者物価6カ月連続プラス 11月、5年ぶり上昇率1%台
総務省が27日朝発表した11月の全国の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、生鮮食品を除く総合(コア指数)が前年同月比1.2%上昇の100.7と6カ月連続で上昇した。上昇率が1%を上回るのは08年11月(1.0%上昇)以来5年ぶりで、08年10月(1.9%上昇)以来の大きさだった。6カ月連続のプラスは07年10月から08年12月まで15カ月連続で上昇して以来となった。
物価上昇のけん引役は電気代やガソリンといったエネルギー。パソコンや携帯音楽プレーヤーも価格が上昇し教養娯楽用耐久財が1.7%上げた。マイナス幅を縮めたのは家庭用耐久財。ルームエアコンの価格上昇により10月の2.9%下落が11月は0.9%下落に縮小した。
上昇品目数は251、下落は206。2カ月連続で上昇が下落を上回った。
食料とエネルギーを除く総合(コアコア指数)は前年同月比0.6%上昇で、2カ月連続のプラスだった。前月に続いて傷害保険料の引き上げや円安を背景にした海外パック旅行の価格上昇が主因で、10月よりも上昇率が拡大した。
先行指標とされる12月の東京都区部のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が前年同月比0.7%上昇の99.5だった。総務省は先行きを「都区部がプラスで推移しているため、12月の全国CPIもプラス傾向が続く」とみている。
いずれもとてもよく取りまとめられた記事なんですが、さすがに、これだけ並べるともうおなかいっぱい、という気もします。次に、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、毎度のお断りですが、このブログだけのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。これは鉱工業生産統計だけでなく、景気後退期をお示ししたグラフすべてに共通です。
季節調整済みの前月比で見て、生産が+0.1%増、出荷は▲0.1%減と市場の事前コンセンサスよりもやや下振れしたものの、生産は増産を続けており、生産と出荷の増加基調を確認できる統計でした。特に、引用した記事にもある通り、12月から1月にかけての製造工業生産予測調査の結果がやたらと強いので、さらに生産が堅調に見えるのも事実です。いくぶんなりとも消費税率引上げ前の駆込み需要の影響といえますが、産業別には、輸送機械工業、情報通信機械工業、化学工業などが生産を押し上げており、為替の円安進行とともに我が国経済の比較優位の構造が強化されているような気もします。来年4月からの消費税率引上げの影響は為替で緩和される可能性もあります。
続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、所定外労働時間指数、給与指数の前年同月比、をそれぞれプロットしています。最後の給与指数の前年同月比以外はすべて季節調整済みの系列です。雇用についても、引き続き、量的には堅調と見受けられます。特に、有効求人倍率が1倍に達したのは象徴的な意味合いを持って受け止められているのではないでしょうか。そのうちに、失業率が4%を割り込めば、さらにその印象が強まる気もします。遅々として進まない賃上げなんですが、給与総額は残業の増加とともに前年同月比で増加しましたし、所定内賃金もようやく下げ止まりつつある印象があります。派遣スタッフやアルバイト・パートなどの非正規雇用の賃金については、すでにかなり上昇の兆しを見せ始めている点に着いて、先週12月20日付けのエントリーでリクルートの調査結果をお示ししたところです。
続いて、商業販売統計のうちの小売業販売のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の販売額の前年同月比伸び率、下は季節調整指数そのものを、それぞれプロットしています。消費については景気や所得とともに、11月の天候要因もあって、気温低下による衣料品の売上げ増が寄与しています。自動車については消費税率引上げ前の駆込み需要が主因でしょうから、4月以降の反動で相殺される可能性が強いと考えますが、国内経済トータルで考えれば、国内消費が消費税率引上げで振るわなくなる可能性が高い中で、海外需要をどれだけ取り込めるかも焦点となりそうです。
続いて、上のグラフは生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの全国と東京都区部の前年同月比上昇率と食料とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI全国の上昇率を折れ線グラフでプロットし、全国コアCPIの上昇率に対する寄与度をエネルギーと食料とその他に分けて積上げ棒グラフで示してあります。ただし、いつものお断りですが、上昇率や寄与度は公表されている端数を持たない指数から当方で算出しており。端数を持った指数から計算される統計局公表値と異なる場合があります。端数を持った指数は統計局外の私にはアベイラブルではありませんのでご容赦下さい。コアCPIの前年同月比上昇率が+1%を超えるのは商品市況が大きく上がった2008年以来です。上のグラフに見られる通り、引き続きエネルギー価格に牽引された物価上昇ではありますが、10-11月についてはコアコアCPIの前年同月比もプラスに転じており、需給ギャップの縮小に起因する一般物価水準の上昇の様相を呈しています。もちろん、一定の部分は消費税率引上げ前の駆込み需要に基づく仮需ですから、来年4月には需給ギャップはマイナスに振れる可能性が高いと覚悟すべきですが、有効求人倍率の1倍超えや失業率の4%割れともに、コアCPIの+1%超えも景気拡大やデフレ脱却の道程標として象徴的な意味を持つと私は考えており、経済や景気に対する国民の先行き期待に一定の効果を及ぼす可能性があると指摘しておきたいと思います。
たぶん、年内の経済評論のブログはこれで最後かと思います。今日は役所のご用納めで遅くなりましたので、簡単にしか経済指標を取り上げませんでしたが、来年も、特に消費税率引上げの前後は我が国の景気に注目したいと考えています。
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一昨日の12月24日に、阪神タイガース球団から2014年のチームスローガンとシーズンロゴマークが発表されています。下の画像は阪神タイガースの球団のサイトから引用しています。昨年はリーグ2位でクライマックス・シリーズに出場したものの、広島になすすべもなく実にアッサリと2連敗して敗退してしまいました。来年こそはリーグ優勝と1985年以来の日本一を目指してがんばって下さい。
来年はリーグ優勝と日本一目指して、
がんばれタイガース!
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本日、日銀から11月の企業向けサービス価格指数 (CSPI) が発表されています。総平均指数は96.6で前年同月比上昇率が+1.0%、変動の大きい国際運輸を除く総平均で定義されるコアCSPIも96.0の+0.6%となりました。それぞれ、前月よりも上昇幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
11月の企業向けサービス価格、5年3カ月ぶり高い伸び
7カ月連続上昇
日銀が25日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2005年平均=100)は96.6と、前年同月比1.0%上昇した。7カ月連続で前年を上回り、伸び率は08年8月(1.7%上昇)以来5年3カ月ぶりの高さだった。収益改善を背景に、企業がサービス関連の支出を拡大する動きが広がっている。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引されるサービスの価格水準を示す。全137品目のうち、前年比で上昇した品目は60、下落した品目は40だった。上昇が下落を上回るのは4カ月連続。
業種別にみると、最も押し上げに寄与したのが広告で、1.3%上昇した。テレビ広告で金融や保険、化粧品業など幅広い業種から需要が増えたほか、新聞広告も好調だった。12月は前年の衆院選に絡み政党からの出稿が増えた反動が出るとみられている。
情報通信は0.3%下落と、前月(0.8%下落)からマイナス幅を縮小した。金融機関のシステムやスマートフォン向けアプリ(応用ソフト)といったソフトウエア開発の需要が旺盛だったことに加え、前年に落ち込んだ反動も出た。内外の好調な観光需要を背景に宿泊サービスも上昇した。
為替相場や海外景気の影響を受けやすい国際運輸を除くベースでは前年同月比0.6%上昇。4カ月連続で前年を上回り、伸び率は1998年3月(1.1%上昇)以来15年8カ月ぶりの高さとなった。日銀は幅広い品目で値上げの動きが続いていることから「企業のサービス関連支出に明るさが広がっている」(調査統計局)と分析している。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価 (CSPI) とコア CSPI の上昇率とともに、企業物価 (CGPI) 上昇率もプロットしています。なお、影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は昨年2013年11月だったと仮置きしています。
昨年2012年11月を谷と仮置きしているミニリセッションの終了とアベノミクスの開始の時期に重なって、企業向け物価である CGPI も CSPI も順調に上昇に転じ、さらに上昇幅を拡大しています。特に、国際運輸を除くコア CSPI が+0.6%の上昇を示し、この上昇幅は1998年3月以来、実に15年8か月振りと報じられています。1990年代創のバブル崩壊から始まって、何とも不可解な最近までの日銀の金融政策を主因に、我が国に広く定着してしまったデフレもそろそろ終わりに近づいているのかもしれません。ただし、引用した記事にもある通り、12月統計では昨年の衆議院選挙による広告の押上げなどの反動が出る可能性が高いと指摘されていますが、いうまでもなく、デフレ脱却や物価上昇は一直線に進むものではありません。来年2014年4月からの消費税率引上げでは、一時的にせよ、需給ギャップのマイナス幅が拡大するでしょうから、数ある物価指標の中でも需給ギャップに最も敏感な CSPI にも無視できない影響を及ぼすことは覚悟すべきです。
明後日には、例年よりも1日早いご用納めの日に、政府統計がいっせいに発表される予定です。生産統計や雇用統計などとともに、安倍政権が日銀とともに最重要の政策目標のひとつに掲げるデフレ脱却との関係で、消費者物価も大いに注目でしょう。
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11月1日に発売が開始された年賀状も、そろそろ準備が進んで私は本日投函しました。ネットやSNSの浸透もあるんでしょうが、年々、年賀状を出す枚数が減っているように思わないでもありません。ということで、やや旧聞に属する話題ですが、先週12月16日に万年筆などの筆記具メーカーであるパイロットから「ビジネスマン・OLの年賀状に関するアンケート調査」の結果が公表されています。ごく簡単に、pdf の全文リポートから図表を引用しつつ取り上げたいと思います。まず、パイロットのサイトからアンケート集計概要を引用すると以下のとおりです。
アンケート集計概要
- 年賀状を出す人: 78.9%で過去最少を更新。
ソーシャルメディアの潜在的支持率は、8割以上。- 2014年は、"SNS年賀状元年"となるか。
半数以上が利用予定の一方で、「SNS友達」への郵便年賀状は激減。- 出す枚数の平均は、5枚増の54枚。もらう枚数は、43枚。
この差の広がりが、年賀状へのモチベーションを低下させる?- 上司への年賀状:「出したくない(けど出す)」から「住所がわからないから出せない(出さない)」に。個人情報保護時代のスタンス確立か?
- 「Just Married」、「二世が誕生!」・・・晴れやかなお正月を飾る写真年賀状が人気上昇中。
- 手書きコメントは年賀状のルール? 9割以上の人が「手書き箇所あり」。
- 「年賀状は必要」、3年連続80%超。日本のお正月を象徴する習慣。
しかしながら、年始の挨拶でSNSの存在感、さらに高まる。
アンケート調査主体が筆記具メーカーですから、年賀状の手書きの部分がどうしたこうした、とかいう部分が必要以上に長ったらしく感じられ、さらに、いわゆるアンケート調査の典型的なバイアスのひとつである調査主体バイアスがかかって、筆記具メーカーに望ましい回答を引き出しているような気がしますので、そのあたりは大胆に無視を決め込んで、以下に私の興味ある部分を取り上げます。
まず、上のグラフを見て分かる通り、年賀状を出す予定なのは約8割に上ります。とても微妙な数字なんですが、まだまだ風習として廃れていないと見るべきなのか、もうかなり低下したと受け取るべきなのか、何ともいえません。どこか、キリスト教国のクリスマス・カードと比べてみたい気がします。なお、出す・出さないの理由も複数回答で問うているんですが、出さない方で「ソーシャルメディア等で代用」が40.3%に上り、「相手の住所がわからない」が31.9%を占めます。私についていえば、昨年というか今年の年賀状まではビジネス上のお付合いのある同業者エコノミストなどにはオフィスに出していましたが、今年というか来年の年賀状からはヤメにしました。なお、クリスチャンかどうかは知りませんが、私の京都大学の同窓生でクリスマス・カードをくれて年賀状は出さない友人がいます。私の方からは年賀状しか出さないんですが、これも一案かもしれません。
次に、新年の挨拶のSNSの利用状況は上の通りです。調査主体のパイロットでは、アンケート集計概要の第2点目で「2014年は、"SNS年賀状元年"となるか。」としていますが、この結果を見る限り、"SNS年賀状元年" は昨年2013年だったような気もします。なお、私についていえば、ブログに新年のご挨拶をアップする予定です。SNSに関しては、その昔の mixi や今の Facebook も、オフラインの顔見知りだけとつながっていたりしますが、年賀状を出す人も出さない人もいます。出さない理由は、やっぱり、「相手の住所がわからない」が多いような気がします。
最後に、今回出す年賀状の平均枚数は、ここ何年かとともに上の通りです。サンプルが378ですから余りに誤差が大きそうで、昨年から増えたの減ったのと正面から論じる気にもなりませんが、まあ、こんなもんだろうという気もします。その昔は100枚単位で印刷していましたが、今では自宅のパソコンとプリンタでお手軽に出来上がります。この年賀状のアンケートも筆記具メーカーではなく、プリンターのメーカーが実施していれば、調査主体バイアスもあって違った結果が出たかもしれません。
今回から職場関係には年賀状を出さないと決めた私も、親戚と友人・知人を合わせて30枚の年賀状を用意してこの3連休に準備を進めたんですが、今年は大失敗があり、「2013年 元旦」とプリントアウトしてしまいました。別紙に同じメイリオのフォントで「2014年 元旦」を印刷して貼り直し、本日、20枚を超えて30枚には達しない平均的な枚数を投函し終えました。
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一昨日からクリスマス特集の3部作で、今日はジャズのクリスマス・ソングを集めたアルバムを聞きました。ブルー・ノートから一昨年に出ています。私はお近くの図書館で借りました。CD2枚組で、収録曲とアーティストは以下の通りです。
私は普段からジャズを聞いており、他の音楽はともかく、ジャズについてはそれなりの緊張感を重視するんですが、さすがにクリスマス・ソングについてはゆったりと流れるのがいいです。なお、このアルバムのいい点はジャケットにひかれることです。ゆったりと音楽を聞きながらジャケットをながめるのも一案でしょう。
なお、中身の音楽を聞いたわけではないんですが、単にジャケットにひかれるという点では、下のアルバムもいいセン行っているような気がします。左右の違いはあるものの、片足を上げるのは日本では「まいっちんぐマチコ先生」の決めのポーズですから悪くありません。ただ、サンタのプレゼントにテナー・サックスが入っているので、上のジャケットの方に軍配を上げておきます。。
何はともあれ、
メリー・クリスマス!
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この3連休が明ければクリスマスイブとクリスマスです。我が家は浄土真宗の一向門徒の仏教徒ですから、他宗教の創始者の誕生日を祝ういわれはないんですが、世間一般のならいに従って、クリスマスケーキを買ったり、子供達にプレゼントを贈ったりするのは決して反仏教的とか、排除する考えはまったく持ち合わせていません。当然です。おそらく、私の想像では、本来のキリスト教国でも、クリスマスはキリストの生誕を祝う宗教的なイベントから、かなりの程度に世俗的な年中行事になっているんではないかと考えていたんですが、ちょうど、12月18日にピュー・リサーチ・センターからクリスマスに関する世論調査 Celebrating Christmas and the Holidays, Then and Now が発表されています。pdf のリポートもアップロードされています。なかなか興味深い米国のクリスマス事情が示されていますので、週末の軽い話題として図表とともに簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、上のグラフは、クリスマスを祝うかどうか、すなわち、Celebrating Christmas: Religious or Cultural Holiday? という問いに対する回答です。当然ながら、90パーセント超の米国市民がクリスマスをお祝いします。そして、クリスマスを祝う92パーセントを母数として、51パーセントが宗教的な色彩を強く感じている一方で、32パーセントは文化的なイベントと受け止めています。おそらく、日本ではこの比率が逆転して、クリスマスを文化的なイベントとみなす比率が圧倒的なんだろうと私は想像しています。
そして、上のグラフは、クリスマスで楽しみなこと、あまり好ましくないこと、Christmas and the Holidays: What Do You Most Looking Forward To?/What Do You Like the Least? という問いに対する回答です。ここでは宗教的な行事よりも家族や友人と過ごす時間が大切にされ、逆に、商業主義・物質主義や出費の大きさが困りごとに上げられています。分かる気がします。
そして、上のテーブルは、クリスマスをより宗教的に受け止めるか、文化的なイベントと考えるか、すなわち、Is Christmas More a Religious or Cultural Holiday? について、性別、人種別、年齢別、宗教別に把握しようと試みたものです。男性よりも女性のほうが宗教色が強く、年齢が高いほど宗教的なイベントと考える傾向が強いのは私にも理解できますが、カトリックよりもプロテスタントの方がより宗教的な傾向が強いのは意外でした。私は南米のカトリック教国に3年間外交官として赴任していましたが、カーニバルなんかにしてもカトリック教徒の方がいわば「お祭り」的な受止め方をしていたのかもしれないと考え直していたりします。
最後に、上のテーブルは、家族や友人にクリスマス・プレゼントを贈るかどうか、すなわち、Buying Gifts for Friends or Family について、これも、人種別、年齢別、所得階級別、宗教別に把握しようと試みたものです。ここではプロテスタントとカトリックの差はほとんどありません。これは理解できるような気がします。また、所得による差は一定以上の所得を得ていれば、それほど大きくありません。でも、年齢の差はそれなりにあって、若い世代ほどプレゼントを贈る傾向にあるようです。興味深い結果だという気がします。
何はともあれ、
メリー・クリスマス!
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師走も半ばを過ぎて下旬に入ろうとしており、今週になって雇用の逼迫を報じる記事をいくつか日経新聞で見かけました。一例として、アルバイトなどの非正規雇用と新卒採用などの正規雇用に関して、以下の通り2本ほど上げておきます。
最初の方の記事が外食産業などで非正規のアルバイトの時給の上昇を報じており、後の方の記事では大卒や高卒の新卒採用、もちろん、正規雇用の増加が見込まれると報じています。政府の雇用統計、すなわち、失業率などの労働力調査、有効求人倍率などの一般職業紹介状況、給与や所定外労働時間などの毎月勤労統計は来週金曜日の年内最終の閣議日にいっせいに公表されますが、先に上げた記事などでも報じられているところで、今夜のエントリーでは、民間企業であるリクルート・グループの調査結果、雇用の逼迫に関するリポートを簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、派遣スタッフ募集時平均時給調査とアルバイト・パート募集時平均時給調査から、上のグラフでは、それぞれの募集時平均時給の額そのものと前年同月比伸び率をプロットしています。最新データは派遣スタッフ/アルバイト・パートともに11月です。一見して明らかですが、特に派遣スタッフの時給が急上昇を見せており、アルバイト・パートも派遣スタッフほどの高い伸び率ではありませんが、最近ではコンスタントに前年同月を上回っています。フード系の職種が調査開始以来の最高水準の時給でアルバイト全体をリードしているようです。トピック的に報じた記事を統計的にも支持していると私は受け止めています。
まず、「ワークス採用見通し調査」では、2015年卒業の新卒と2014年の中途採用について、いずれも正規職員の採用を増やす企業が増加していることを指摘しています。上のグラフはリポートの p.9 採用見通しの経年比較 を引用しています。新卒と中途のそれぞれの採用に関して DI になっていて、「増える」から「減る」を減じたパーセントで示されています。見れば分かりますが、プロットされているのは大学生・大学院生、高校生の新卒採用見通しと正規社員の中途採用見通しです。いずれの DI も震災後の2012年度から高校生を除いてプラスに転じているんですが、直近の2015年新卒と2014年度中途採用はいずれも大きくジャンプしているのが見て取れます。高校生の2015年新卒もようやくプラスに転じています。大学生・大学院生の新卒採用の DI のプラスが大きいのは、建設業、製造業の中ではコンピュータ・通信機器・OA機器関連、小売業、銀行や証券、情報通信業や飲食サービス業などとなっています。
何度もこのブログで主張して来た通り、株価や業績・利益に反映された企業部門へのアベノミクスの恩恵に比べて、家計部門の特に雇用の質、すなわち、賃金の上昇や正規雇用の増加などが極めて遅れていて見劣りしています。現政権ではかなり強権的に市場を介することなく企業に対して直接行動でもって賃上げを要求ないし指導しているようですが、企業部門に溜め込まれた購買力を政府財政に吸い上げるとともに、家計部門に還元すべき時期が来ていることは明らかです。
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私はお酒をほとんど飲まないので少し苦手なんですが、今週あたりはいわゆる忘年会のピークに当たるんではないでしょうか。「忘年会」というネーミングを付すかどうかは別にして、私ですら今週は夜の会合が何件か入っています。ということで、私も時折回答している @nifty 何でも調査団から先週の12月13日に「飲み会・忘年会についての本音・実態調査」が公表されています。今夜のエントリーでは、この調査結果からいくつかグラフを引用して、世間一般での忘年会や新年会の事情について考えてみたいと思います。なお、私はこの調査団員のひとりなんですが、ほかのネットリサーチ会社と違って、特に回答内容に関する守秘義務のようなものは入会時の案内にはなかったと記憶しています。
まず、上のグラフは「宴会・飲み会は好きですか?」という問いに対する回答です。私は「大嫌い!」まではいわないものの、「嫌い」と回答しました。でも、世間一般では、「ふつう」の回答よりも、その上側の「好き」系の回答の割合が下側の「嫌い」系の回答よりも多そうに見受けられます。また、年齢別では年齢が高くなるほど「好き」系の回答の割合が高そうです。
次に、上のグラフは「忘年会または新年会には、毎年どれくらい参加していますか?」という問いに対する回答です。今年の忘年会から来年の新年会にかけて、私は3回です。でも昨年のこのシーズンは4回でしたから、回答の選択肢でもしもあるならば「3、4回程度」を選びたいところなんですが、ないので「2、3回程度」を選んでおきました。25年度ホ前のバブル期には猛烈に忘年会があって、一晩のうちにかけ持ちしたこともあったほどなんですが、バブル崩壊後の長期のデフレを経て、さらに、国家公務員倫理法の施行を受けて、ここ数年は激減しています。
次に、上のグラフは「忘年会や新年会など宴会の会費、「高っ!」と思う金額はどこから?」という問いに対する回答です。何となく「5,000円」が分岐点のような気がしますが、私も実はそれくらいです。しかし、役所の管理職になってもう10年をはるかに超えますので、7,000円とか8,000円を請求される場合も少なくありません。2,000円とか3,000円くらいの立食だと参加しやすくなるような気もします。でも、いずれにせよ、私はお酒をほとんど飲まないので割高に感じてしまいます。
次に、上のグラフは「宴会・飲み会の席で、嫌だなぁと思う人の特徴は?」という問いに対する回答です。これについてはノーコメントです。分かる気もしますし、ガマンの範囲内という気もします。
最後に、上のグラフは「酔うとどうなりますか?」という問いに対する回答です。私は上の選択肢の中では「眠くなる」と「気が大きくなる」を選んだんですが、なぜか、「陽気になる」という選択肢がありませんでした。あれば、それも選んでいたと思います。もうひとつ、普通は選択肢に入れないんでしょうが、私の場合はお酒を飲むと、なぜかよく食べて食べ過ぎてしまいます。食欲が増進されるのか、それとも、満腹中枢が麻痺するのか、それともそれともで、お酒を余り飲まない分を食べ物のほうで元を取ろうとするのか、理由はよく分かりませんが、よく食べて体重が激増してしまったりすることもあります。そうでなくても、この季節は体重がサイクリカルに増加する場合が多いので、それなりに体重コントロールには気をつけたいと思います。
今年はアベノミクスで景気がややよくて年末ボーナスもちょっぴり増え、忘年会やクリスマス・プレゼントなどへの出費も財布のヒモが緩みがちです。こういった良好な経済の循環を実現するのが経済政策なんだろうと今さらながらに受け止めています。
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会合があって遅くまで夜更かししていると、メディアのサイトでいっせいに、明日、というか、今日の午前中に東京都の猪瀬知事が辞任会見を行うと報じています。取り急ぎ、各メディアのサイトのリンクをアップしておきます。順不同です。何らかの登録をしないと全文を見られないかもしれませんが、取り急ぎですので悪しからず。
日を改めて、私なりの感想をアップするかもしれませんが、たぶん、エコノミストとして専門外ですので、そんなことはしなさそうな気もします。
本日、霞が関に雨が降り出す前の午前中だったと思うんですが、財務省から11月の貿易統計が発表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+18.4%増の5兆9005億円、輸入額は+21.1%増の7兆1933億円、差引き貿易収支は▲1兆2929億円の赤字を記録しました。輸出は伸びていますが、輸入がそれ以上に爆発して貿易収支が赤字になっている、というのが現状です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下のとおりです。
11月の貿易赤字、過去3番目の大きさ 13年は過去最大更新へ
財務省が18日発表した11月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆2929億円の赤字だった。赤字額は11月としては2012年(9570億円の赤字)を上回り、比較できる1979年以降で最大。単月としても過去3番目の大きさで、赤字額は初めて2カ月連続で1兆円を上回った。赤字は17カ月連続で9月以降、最長を更新し続けている。為替相場の円安進行を背景に原粗油などの燃料の輸入額が膨らんだ。航空機の輸入額も増えた。
13年1-11月の貿易赤字額は累計で10兆1672億円となる。今年は9月までの赤字額累計が7兆7816億円とすでに12年年間の6兆9410億円を上回っていたが、その後さらに赤字が膨らんだ。13年は年間で過去最大の貿易赤字になることがほぼ確実な情勢になった。
11月の輸入額は前年同月比21.1%増の7兆1933億円で、13カ月連続で増えた。アラブ首長国連邦(UAE)からの原粗油やマレーシアからの液化天然ガス(LNG)、米国からの大型航空機の輸入が増えた。
輸出額は18.4%増の5兆9005億円で9カ月連続で増えた。輸出数量指数は6.1%増と2カ月連続で増加。輸出額は米国向け自動車や、オーストラリア向けの軽油、中国向けにペットボトル原料になる有機化合物が増えた。中国向け輸出額は、前年に尖閣諸島を巡る対立で落ち込んだ自動車や同部品も伸びて33.1%増となり、10年4月(41.3%増)以来の高い伸び率になった。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=98円43銭で、前年同月比23.3%の円安だった。
貿易収支を地域別にみると、対中国は5371億円の赤字で、21カ月連続で赤字だった。中国からの輸入額は過去2番目に大きかった。対欧州連合(EU)も660億円の赤字で、11カ月連続の赤字。一方、対米国の貿易黒字は前年同月比6.7%増の4841億円で、11カ月連続で増えた。
いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。
私が注目している下のパネルの季節調整済みの系列を見ると、震災直後の2011年央から最近時点まで、傾向的に貿易赤字が拡大しているのが見て取れます。特に、11月の統計に代表されるように、為替相場の円安も含めて鉱物性燃料の輸入額が増加を続けています。特に、原粗油と液化天然ガス(LNG)です。他方、円安は輸出額の増加にも寄与しており、自動車などの我が国が比較優位を有している製品の輸出額は増加を続けています。我が国の貿易構造を極めて極端に表現すれば、その昔は、生糸を輸出してコメを輸入する、というパターンだったんですが、現在では、クルマを輸出して原油を輸入する、というパターンとなっているだけともいえます。クルマが商品市況に左右されない製品であるほかは、生糸もコメも原油も商品市況に一定の影響を受けますから、現時点のように為替の減価と商品市況の高止まりが続けば、価格要因から貿易収支が赤字になる確率は高いと私は受け止めています。さらに、来年4月からの消費税率引上げを前に駆込み需要が高まれば、価格要因だけでなく所得要因からも貿易赤字が拡大する可能性が高いと考えるべきです。ただし、地域別に見て、対米国では貿易黒字、対欧州と対アジア、特に対中国では貿易赤字ですから、アベノミクスや消費税率引上げ前の駆込み需要でそこそこ景気のいい我が国に対比して、景気の相対的な回復・拡大度合いの差が所得要因として出ているわけです。従って、来年の年央から夏にかけて、我が国では消費税前の駆込み需要の反動減が出る一方で、欧州や中国の景気回復・拡大が進展を見せれば、そろそろJカーブ効果の終了も視野に入りますから、貿易赤字は来年年央ころから縮小に向かう可能性があります。ただし、その前の来年1-3月期まではほぼ確実に貿易赤字は拡大すると私は考えています。
貿易赤字は来年1-3月期まで拡大する可能性が大きい一方で、輸出も着実に伸びています。上のグラフの通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出金額の前年同月比伸び率を数量と価格で寄与度分解しています。下のパネルは我が国の輸出数量とOECDの先行指数のそれぞれの前年同月比伸び率をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月のリードを取っています。上のパネルを見れば、10月からようやく輸出数量の伸びがプラスに転じたことが読み取れます。それまでは、為替の円安に起因する価格要因から輸出額が伸びていましたが、ようやく輸出数量の伸びも見られるようになったわけです。さらに、下のパネルではOECD先行指標と輸出数量のそれぞれの伸び率の差が小さくなっているのが見て取れます。この差は主として2つの要因から生じており、価格要因は為替から、所得要因はOECDに加盟していない中国から生じていると私は考えていますが、円高修正の始まりから1年を経て為替によるJカーブ効果が解消されつつあり、さらに、中国の景気がOECDに追いつきつつある、のであれば、この先、我が国の輸出は伸びを高めると期待できます。
いつもの私の主張ですが、貿易収支の一方の側にある輸入は、生産や国民生活に必要な財・サービスを外国からの供給に頼るわけですから、ムダを廃しつつも必要なだけ輸入することが望ましく、その分をせっせと輸出すればいいわけですが、その輸入するための輸出の伸びも高まりつつあります。貿易赤字の拡大を過度に悲観する必要はありません。
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先週月曜日の12月9日に7-9月期の2次QEが発表され、その直後の9-10日にかけてシンクタンクや金融機関などから来年度経済見通しがいっせいに発表されています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ウェブ上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。ほとんどの場合、消費税率引き上げ後の来年度成長率に関する見通しを採用しています。なお、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、html 形式の富士通総研を別にして、他の機関は pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 2013 | 2014 | 2015 | ヘッドライン |
日本総研 | +2.5 | +0.9 | +0.9 | 2014年度は、消費税率引き上げ後の反動減が景気下押しに作用し、4-6月期は大幅マイナス成長に。もっとも、その後は、①経済対策の着工・進捗に伴う公共投資の押し上げ、②企業向け減税や家計支援による内需の下支え、③堅調な米国景気や金融緩和などを通じた円安による輸出環境の改善、などを背景に成長率は持ち直しへ。 |
ニッセイ基礎研 | +2.5 | +0.2 | +0.9 | 実質GDPは2013年7-9月期の前期比年率1.1%から10-12月期に同3.3%へと再加速した後、2014年1-3月期には消費税率引き上げを控えた個人消費の駆け込み需要を主因として前期比年率5.0%の高成長になるだろう。しかし、2014年4-6月期は駆け込み需要の反動減と物価上昇に伴う実質所得低下の影響が重なることで年率▲6.4%の大幅マイナス成長となることが予想される。反動減の影響は消費税率引き上げ直後が最も大きく、その後は押し下げ幅が縮小するが、実質所得減少による影響は年度を通して下押し圧力となる。マイナス成長は1四半期で終了するが、その後もあまり高い成長は期待できないだろう。 |
大和総研 | +2.5 | +1.0 | n.a. | 個人消費、住宅投資や、それに付随する生産、設備投資などへの影響を全て考慮すると、消費税増税によって2013年度のGDPは0.51%押し上げられ、2014年度のGDPは0.77%押し下げられる見込みである。 |
みずほ総研 | +2.5 | +0.8 | n.a. | 消費税率が引き上げられた直後の2014年4-6月期は、駆け込み需要の反動が生じること、家計の実質所得が目減りすることにより、大幅なマイナス成長(前期比年率▲0.5%と予想)が避けられないであろう。 2014年7-9月期以降については、円安・海外景気回復を背景とした輸出増、企業収益の改善に支えられた設備投資回復が続き、景気は緩やかな回復軌道に戻ると予測している。消費税率引き上げによって実質所得が目減りするため、個人消費(実質)は年間を通じて前年の水準を下回るとみられる。しかし、前期比ベースでみると駆け込み需要の反動で落ち込んだ4-6月期の水準からは徐々に持ち直していく展開になろう。 |
第一生命経済研 | +2.5 | +0.9 | +1.1 | 消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動が出ることに加え、税率引き上げに伴う実質可処分所得減少による消費の下押しが予想されるため、14年度の成長率は鈍化が避けられない。もっとも、①経済対策効果で公共投資が高水準を維持すること、②輸出の増加が見込めること、③景気回復の波及により設備投資が好調に推移、賃金も改善が明確化すると見込まれることから、景気後退局面入りは避けられる。 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | +2.9 | +1.6 | +2.6 | 実質成長率は13年度2.9%、14年度1.6%、15年度2.6%の予想 |
三菱総研 | +2.6 | +0.9 | n.a. | 14年度は、前半に駆け込み需要の反動減を見込むが、13年度中の企業収益の改善が設備投資や賃金の回復につながり、14年度後半には緩やかながらも再び成長軌道に戻していくと予想する。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +2.3 | +0.5 | n.a. | 2014年度は、消費税率引き上げ後の影響が、家計部門を中心に現れる。このため、2014年度の実質GDP成長率は前年比-0.5%と小幅プラスにとどまり、ゲタ(-0.9%)を除いた年度中の成長率では-0.4%となる見込みである。ただし、海外景気の持ち直しを背景に輸出の増加が続くため、増税後に景気が失速することは回避されよう。内外需の寄与度は、内需が前年比-0.2%と2009年度以来5年ぶりにマイナスに転じるのに対し、外需は+0.7%にまで高まろう。 |
伊藤忠経済研 | +2.6 | +0.5 | +1.3 | 2013年度の高成長から一転して、2014年度は0.5%の低成長を予想する。消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動から個人消費や住宅投資など家計部門が大きく落ち込む。安倍政権が講じる5.5兆円規模の経済対策や遅ればせながら増勢を強める設備投資や輸出の拡大により、反動減はある程度相殺されるものの、成長ペースの減速全てを回避は出来ない。なお、マイナス成長は2014年4-6月期の一四半期にとどまり、いわゆる2四半期連続のマイナス成長を意味するテクニカルリセッションには陥らず、また日本において、景気基準日付の決定権限を有する景気動向研究会がリセッション認定をすることもないと考えられる。 |
農林中金総研 | +2.6 | +1.1 | n.a. | 14年4月の消費税増税後は景気が一時的ながらも大幅に悪化するのは不可避であろう。政府は、それを緩和するために国費支出規模で約5.5兆円の経済対策を策定、業績改善企業に対して賃上げを要請してきたほか、成長戦略の実現に向けた法制度の整備に着手しているが、耐久財消費などの不振や2%前後の実質所得の目減りもあり、増税後の景気回復力はなかなか戻らないと思われる。 |
富士通総研 | +2.6 | +1.0 | n.a. | 日本経済は、消費が高水準を維持する中、生産、雇用の回復が続き、住宅投資、公共投資も大きく増加することによって回復が続いています。賃上げも視野に入りつつあり、来年4月に消費税率を引き上げても、景気は腰折れしないとの前回見通しのシナリオに変更はありません。 |
駆込み需要を含めて今年度2013年度は1年を通して2%台半ばか後半くらいの成長率を維持した後、来年4月からの消費税率引上げに伴って4-6月期の成長率は大きくダウンし、その後も年間を通じて2014年度は実質所得の減少に伴う成長率の低下が続くものの、政府による経済対策や来年年央くらいからの世界経済の回復による輸出増に助けられ、我が国経済は2四半期連続のマイナス成長というテクニカル・リセッションはもとより、本格的な景気後退に陥ることなく、徐々に回復・拡大基調を取り戻す、のがメイン・シナリオとして提示されています。来年度2014年度は、私自身はマイナス成長もあり得ると考えていますが、上のテーブルではもっとも成長率の低いニッセイ基礎研でもプラス成長を確保する姿が示されています。もっとも、今年度から来年度にかけて、駆込み需要に伴う大きなゲタを持ち、おそらく、直感的に+1%近いゲタを持って来年度に入りますので、ニッセイ基礎研以外にも伊藤忠経済研などもゲタを除いた1-3月期対比の成長率はマイナスと予想しているように見えます。消費税率引上げのインパクトは数字で明示した機関は大和総研だけであり、上のテーブルではヘッドラインに収録してハイライトするとともに、下のグラフをリポートの p.35/59 図表29: 消費税増税の影響 から引用しています。消費税増税シナリオと増税なしシナリオが対比されています。なお、成長率とともに注目の集まる物価上昇率に関しては、上のテーブルには入れませんでしたが、コア消費者物価の前年比で+1%に届かず0%台半ばくらいを予想している機関が多いと受け止めています。
最後に経済見通しを離れて、何度も私はこのブログで、企業が次々と優遇策を打ち出されて、企業業績や株価がかなり高い水準に達している一方で、国民の所得や賃金はサッパリ上がらないことを指摘していますが、とうとう、企業収益を設備投資や賃金に振り向けるのではなく、国債を購入しているという記事が「企業の国債保有膨らむ トヨタ4兆円超、成長への投資課題に」と題して今朝の日経新聞朝刊に掲載されていました。赤字を垂れ流している財政から各種補助金を企業へ支給したり、法人税を減税して、財源のために国債を発行して企業収益を上げたにもかかわらず、企業は利益を設備投資や賃金に振り向けることなく、自らへの優遇策の財源として発行された国債を購入している、というのです。増税される消費税を負担する消費者をバカにした話だと考えるエコノミストは私だけなんでしょうか?
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本日、日銀から12月調査の短観が発表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査の+12からさらに4ポイント改善して+16を記録しました。ただし、3月時点の先行きは+14とやや低下する見込みであり、また、設備投資計画は下方修正されており、大企業全産業では9月調査の前年度比+5.1%増が+4.6%増まで伸び率を低下させています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
大企業製造業の景況感、4四半期連続改善 日銀短観
先行き見通しは悪化
日銀が16日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス16だった。前回の9月調査(プラス12)から4ポイント改善した。DIの改善は4四半期連続。2007年12月調査(プラス19)以来6年ぶりの高い水準を維持した。QUICKがまとめた民間の予測中央値(プラス15)を上回った。生産が緩やかに増加しているほか、円安基調を背景に企業収益の拡大がマインドの改善につながった。国内販売が好調な自動車や、公共投資や住宅投資に伴う建築需要の高まりで木材・木製品などが改善した。
3カ月先については、大企業製造業がプラス14と改善は一服する見通し。市場予想の中央値(プラス17)を下回った。世界経済が緩やかに回復するとの見方から輸出や生産などの持ち直しが見込まれるものの、2014年4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動減などに対する慎重な見方が強かった。
2013年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=96円78銭と、前回の94円45銭よりも円安・ドル高方向に修正された。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。調査期間は11月14日-12月13日で、今回の回収基準日は11月28日だった。
一方、大企業非製造業のDIはプラス20と、前回から6ポイント改善した。改善は4四半期連続。消費税増税前の駆け込み需要による住宅投資や経済対策による公共投資の増加で建設が好調だったほか、小売業も改善。引き続き内需関連を中心に底堅さを示した。プラス20は07年9月調査(プラス20)以来の水準だった。
3カ月先のDIは3ポイント悪化し、プラス17を見込む。
中小企業は製造業が10ポイント改善のプラス1、非製造業は5ポイント改善のプラス4だった。非製造業のDIは92年以来約21年ぶりのプラス圏に浮上した。製造業のプラスも07年以来。これまで大企業が中心だった安倍晋三首相の経済政策である「アベノミクス」による企業業況感の改善が、中小企業にも波及してきた。先行きはいずれも小幅の悪化を見通す。
大企業・全産業の13年度設備投資計画、4.6%増 前回は5.1%増
日銀が16日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、2013年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比4.6%増だった。9月調査の5.1%増から下方修正され、QUICKがまとめた市場予想の中央値(5.3%増)も下回った。
先行きの海外経済への不透明感が拭えないことに加え、消費税増税を2014年4月に控え、特に製造業で設備投資を手控える動きが広がったようだ。
大企業のうち製造業は4.9%増、非製造業は4.4%増を計画している。
13年度の収益計画は、大企業全産業の経常利益が23.4%増、売上高は4.0%増を見込んでいる。大企業製造業の輸出売上高は前年度比10.9%増となり、9月調査から上方修正された。円安基調が続いていることで輸出企業が先行きについて強めの計画を維持したとみられる。
ということで、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。このブログのローカル・ルールで、昨年10-12月期を直近の景気の谷と仮置きしており、ほかのグラフについても以下同文です。
業況判断DIについて、特徴を3点ほど上げると、第1に幅広い企業でマインドの改善が見られることです。大企業も、中堅企業も、中小企業も、製造業も非製造業も、とても幅広くマインドが改善し、引用した記事にもある通り、中小企業の製造業・非製造業がプラスを記録したのは本当に久し振りです。実質的に昨年暮れ以降のアベノミクスが企業規模や業種を横断するような形で広がっていると考えています。第2に円安と公共事業によるマインド回復の特徴が見られます。幅広くマインドが改善しているとはいえ、製造業では特に輸出の回復に起因するとみられる自動車やはん用機械、あるいは公共事業に起因する木材・木製品、窯業・土石製品などが改善幅が大きくなっています。第3に消費税率引上げ前の駆込み需要の影響が見られます。3か月先のマインドの先行きについては製造業と非製造業を問わず、ほとんどの業種で下げる見込みとなっていますが、非製造業でもっとも上げる見通しなのが小売です。そこそこよかったボーナスを手に、年明けから消費税率引上げ前の駆込み需要がいっそう本格化すると考えるべきです。逆に、4月の消費税率引上げによりそれなりの反動減のショックを生ずることは覚悟せねばなりません。
設備と雇用の要素需要に関する過不足判断DIは上のグラフの通りです。設備についてはかなり過剰感は払拭されましたが、まだしつこく残っています。他方、雇用についてはほぼ完全に過剰感が払拭され、規模が小さい企業ほど不足感が広がっています。まずは年末ボーナスでしたが、デフレ脱却の方向に進んで物価が上昇しつつあり、企業部門の企業業績や株価が大いに回復している中で、家計部門の賃金や雇用条件などの回復が立ち遅れています。来年は雇用の改善がどこまで進むのかが現在の景気の継続性の焦点になる可能性を指摘しておきたいと思います。
大企業の設備投資計画が下方修正されています。私は「当てた」と思っています。すなわち、先週の金曜日に、日銀短観予測のエントリーで指摘した通り、日経QUICKの事前コンセンサスに反して、大企業全産業では下方修正されました。ただし、これにはウラがあり、全規模全産業の本年度の設備投資計画は9月調査よりも上方修正されています。中堅企業と中小企業での上方修正が大企業を上回った結果です。上方修正と下方修正のいずれにせよ、大企業でも前年度比で+5%近い設備投資増を計画していますが、従来からの私の主張で、GDPベースの設備投資がこれから爆発するとも思えませんし、この先、設備投資計画は下方修正されると私は見込んでいます。
さらに、大企業製造業の製品・サービスに関する需給判断DIと販売・仕入の価格判断DIの推移です。需給判断DIはすでに昨年のミニ・リセッションの水準を超えて、リーマン・ショック前の水準に迫っています。販売・仕入価格判断DIもやや直近の足元で足踏みしているものの、高い水準に上昇して来ています。来年2014年4月の消費税率引上げで一時的に需給ギャップは緩むと考えるべきですが、その後は堅調に推移すると期待されます。需給ギャップとともにデフレ脱却の条件が整いつつあります。でも、何度かこのブログでも主張したように、私はデフレ脱却の十分条件は賃金の上昇だと考えています。
最後に、新卒採用計画は上のグラフの通りです。大企業よりも、雇用不足感の強い中堅・中小企業で採用増が見込まれています。このグラフを見ると、私は2年間ながら大学の教員を経験しましたから、少なくとも就職に関していえば、生まれてくる時による運不運というか、不公平というのは確かに存在すると感じざるを得ません。
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やや気が早いかもしれないんですが、年賀状の準備を始めています。昨日、ネットサーフィン(←死語?)していると、とても気に入った年賀状向けの画像がありました。いっぱい見過ぎて、どこにあったかを忘れてしまったんですが、要するに上の馬の絵です。この画像を上に配して年賀状を書こうと考えています。いつものお気に入りのメイリオのフォントを予定しています。でも、実際に出来上がるのは来週末の3連休だろうという気がします。まあ、詰まるところ、年賀状の準備といっても、干支の画像を発見した、というだけだったりします。
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先週末は読書の記事を書かなかったので、2週間分ということになりますが、このところ、あまり新刊書は読んでおらず、旧刊の文庫本を借りてばかりいます。この2週間で話題の新刊を読んだのは以下の4-5冊くらいだという気がします。
まず、石津朋之『大戦略の哲人たち』(日本経済新聞出版) です。いわゆる戦略論については、私もクラウゼヴィッツやリデルハートなどを読んだこともあるんですが、本書では、文民政治家による戦争指導としての「大戦略」の理論家・哲人として、ハルフォード・マッキンダー、マイケル・ハワード、バーナード・ブロディ、ヘンリー・キッシンジャー、エドワード・ルトワック、マーチン・ファン-クレフェルトの6人を取り上げています。この6人をすべて知っているとすれば大したもんですが、私はキッシンジャーしか知りませんでした。何分、日本経済新聞出版社から刊行されていますので、私のような専門外のエコノミストにも分かりやすいように気配りされています。戦争を対象とする学問領域ですから、それだけでアレルギーを感じる向きにはどうしようもありませんが、普段の仕事や専門外の領域に目を向ける読書と割り切って楽しむことが出来れば、何らか得るものがありそうな気がします。
次に、品川正治『戦後歴程』(岩波書店) です。リベラルな財界人として名を成し、火災保険会社の社長まで上り詰め、今夏に亡くなった著者が、岩波書店の月刊誌『世界』に連載していた自叙伝です。副題は「平和憲法を持つ国の経済人として」となっています。どうしても、昭和のころのやや古いお話しが中心になりますが、安保闘争など、現時点で振り返ってもいろんな視点を提供してくれます。著者は京都大学の昔の教養部の前身である第三高等学校から戦争を経て東京大学のご卒業ですが、自由闊達でやや左派の京都大学の学風を強く受け継いでいるように見えます。ある意味で、私と共通する部分も少なくないように受け止めています。このような財界人がかつて存在したことを知るだけでも読む意味があると思います。
小説に目を転じて、まず、道尾秀介『鏡の花』(集英社) です。人の死というものをかなり正面から捉えている小説です。短篇集という見方もできますし、連作の長編とも受け取れます。いくつかの短編でいくつかの家族を取り上げ、シミュレーションのように誰が死んだ場合にはどうなる、という視点で家族や親しい人が描かれています。ほんの小さな違いで、その家族や周囲の人達の世界を大きく変えてしまう、ということがよく理解できます。この作者が世間の注目を集めた『向日葵の咲かない夏』と同じで、読み進むうちに何か違和感のようなものを感じるかもしれません。シミュレーションの結果であろうと思いますから、何が何でも読み進み最後まで読み切るべきです。道尾秀介という作家の力量を感じさせる1冊です。大いにオススメします。
最後に、畠中恵『明治・妖モダン』(朝日新聞出版) です。江戸と東京が交差するような明治の初期の銀座の煉瓦街の派出所や牛鍋屋を舞台に、人間ならぬ妖の活動を描きます。ひとくちに「妖怪」と称しますが、「ゲゲゲの鬼太郎」でも明らかなように、人に害をなす妖怪と人間の味方になってくれて利益をもたらす妖怪がいます。この小説では最終話の第5話で、アッと驚く結末が待っています。少し前まで「三丁目の夕日」的に昭和を懐かしむ団塊の世代の人達のひとつの流行を感じる時もあったものの、やっぱり、NHK大河ドラマ「八重の桜」ではないんですが、さかのぼるとすれば明治までです。とても痛快で楽しく、それでいて少し不気味な小説です。
年末年始休暇は、我が母校の京都大学推理小説研究会、いわゆるミス研の作家の推理小説を読もうかと、図書館で予約したり借りたりし始めています。法月綸太郎の「法月綸太郎シリーズ」、綾辻行人の「館シリーズ」を中心に、ほかにも我孫子武丸や麻耶雄嵩など、すでにかなり読んではいるんですが、改めて読み返したり、未読の作品も読みたいと思います。
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来週月曜日12月16日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと大企業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は2013年度、すなわち、今年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。いつもの通り、先行きに関する見通しを可能な範囲で取りました。ただし、今回は私が注目する設備投資計画にも目を配りました。もともと先行き判断や設備投資計画を含む調査ですから、先行きにせよ設備投資にせよ、何らかの言及があるリポートが多かったような気がします。ただし、長くなりそうな場合はこの統計のヘッドラインとなる大企業製造業だけにした場合もあります。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 <設備投資計画> | ヘッドライン |
9月調査 (先行き) | +11 +12 <+5.1> | n.a. |
日本総研 | +15 +19 <+5.9> | 先行き(2014年3月調査)は、全規模・全産業で12月調査対比+2%ポイントの9%ポイントと予想。消費増税前の駆け込みや輸出の回復が後押しする見通し。 |
大和総研 | +14 +15 <+5.7> | 先行きに関しては、海外の景気動向と、2014年4月に予定されている消費税増税の影響が焦点になるだろう。海外経済の回復を背景に、輸出企業を中心に業況感の改善が見込まれることに加えて、駆け込み需要の発現により対家計サービス業などでは業況感が改善する見込みである。ただし、4月以降反動減が生じた際には、業況感も悪化することは避けられないため、一時的な改善であることに注意が必要である。 |
みずほ総研 | +14 +15 <+5.3> | (大企業製造業) 先行きは、輸出の回復に加えて、消費増税前の駆け込み需要がピークとなることから自動車や民生用電気機械を中心に改善が続く見込みである。 (大企業非製造業) 先行きは、駆け込み需要による大幅な押し上げが予想される小売業を中心に、改善が続く見通しである。 |
ニッセイ基礎研 | +14 +15 <+5.7> | 先行きについても、米経済の堅調な回復が期待されるうえ、消費増税前の駆け込み需要がピークを迎えるため、全体的に明るさが示されそうだ。大・中堅企業では、新興国との関係が薄く、駆け込み需要の影響を受けやすい非製造業の改善幅が製造業を上回ると予想。 今回の最大の注目点は13年度設備投資計画だ。前回調査では前年度比3.3%増と、事前予想を下回る結果であった。また、GDP統計上の設備投資はほぼ横ばいに留まり、本格回復とは言い難い。一方、先行指標とされる機械受注に一部明るさが見える点は設備投資の上振れ期待を抱かせている。アベノミクス開始から約一年が経過し、内需回復や円安定着を受けて企業が慎重姿勢を修正し、上方修正が鮮明化するかが焦点となる。また、賃上げ交渉の山場を来春に控え、その原資となる13年度収益計画の動向も注目材料だ。 |
伊藤忠商事経済研 | +14 +16 <+4.7> | 先行き判断についても、調査対象時期が、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要が多くの業種で最も膨らむ2014年1-3月期に該当することもあり、更なる改善見通しが示される見込みである。(中略) 12月調査において、大企業の設備投資計画は前年比4.7%(9月調査5.1%)への下方修正を予想する。良好な企業業績を受けて、企業の投資意欲も高まりつつある。しかし、消費税率引き上げ後の需要動向を見極めにくく、また人口減少による労働力不足や長期的な需要の頭打ち、為替変動リスクなどが懸念される国内よりも、海外投資を重視する企業姿勢が製造業と非製造業を問わず強まっており、国内設備投資計画を積み増す可能性は低いと判断される。 |
第一生命経済研 | +16 +17 <+4.1> | 12月調査ということで特に注目したいのは、企業が2014年4月の消費税増税をそろそろ意識しながら、企業マインドを変化させているかもしれないという点である。例えば、業況判断の先行きDIは2014年3月までを意識して企業が回答することになっている。筆者の予想では、この時点では駆け込み需要による後押しを加味しながら、業況の先行きを現状よりもプラス方向でみていると考える。 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | +13 +16 <+7.8> | 13年度の設備投資計画は、大企業・中小企業ともに上方修正が見込まれる。 |
三菱総研 | +14 +16 <n.a.> | 先行きの業況判断DI(大企業)は、先進国を中心とする海外経済の持ち直しや増税前の駆け込み需要の本格化などが支援材料となり、製造業は+17%ポイント、非製造業は+20%ポイントと引き続き改善を見込む。また、国内需要の堅調は中堅、中小企業にも波及するとみられ、中小企業・非製造業では、1991年12月調査以来のプラスDIを見込む。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +15 +15 <+4.7> | 2013年度の設備投資計画(含む土地・除くソフトウェア)は、大企業製造業では下方修正される可能性があるが、非製造業ではやや上方修正され、ともに2年連続で増加する見込みである。また、中小企業では、計画が固まるにつれて例年通り上方修正され、非製造業も増加に転じるだろう。 |
富士通総研 | +16 +16 <+4.8> | 先行きについては、輸出の持ち直しや消費の駆け込み需要の本格化などにより、引き続き改善すると予想される。(中略) 企業収益の改善を背景に、製造業、非製造業とも投資意欲が高まりやすい環境にはある。しかし、為替が円安方向に修正されても、製造業の設備投資の国内回帰の動きはごく一部にとどまっている。また、世界経済持ち直しのテンポが緩やかなことも企業の投資意欲に影を落としており、設備投資の回復力はまだ強いとはいえない状況にある。当面は生産能力の拡大は手控えられ、ビンテージが高くなった設備の更新が中心になっていくと考えられる。 |
まず、足元12月の景況判断DIについては、ほぼ、9月調査から企業マインドがわずかなりとも改善しているとのコンセンサスが広くエコノミストの間で存在します。また、目先の先行き、すなわち、次回の3月調査に関しても同様です。ですから、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスは大企業製造業の業況判断DIで見て、9月調査の+12から12月調査では+15、さらに、先行きは+17と改善が続く見込みが示されています。ただし、大和総研のヘッドラインでハイライトしておいたように、短観3月調査の直後の4月には消費税率の引上げが実施されますから、3月調査の短観で企業マインドが改善したとしても一時的な効果にとどまる可能性が大きいと覚悟すべきです。下のグラフは、多くのエコノミストのコンセンサスに近い一例として、日本総研のリポートから業況判断DIの推移を引用しています。グラフの通りに3月まではいいんですが、景況感が4月以降にどのようになるかが懸念材料です。
次に、設備投資計画は見方が分かれました。日経QUICKによる市場の事前コンセンサスは前年比で+5.3%増と、9月調査の+5.1%増から上方修正されると見込んでいますが、予測レンジが+4.1%から+6.4%ですので、下方修正の可能性を全面に打ち出すエコノミストもいます。実は、私もその1人です。上のテーブルに取り上げた10機関のうち、設備投資計画の予想を示していない三菱総研を除く9機関の中で、上方修正を予測する機関が5機関、下方修正が4機関となっています。典型的にはハイライトした伊藤忠経済研のように、今後は国内需要の減退や為替リスクを理由に国内投資よりも海外投資を重視する企業が増える可能性を指摘する意見も無視できません。企業マインドのうち先行きの業績に対する期待は雇用と設備の要素需要に強く現れると覚悟すべきです。下のグラフはテーブルに示した大企業ではなく全規模全産業なんですが、ニッセイ基礎研のリポートから引用しています。
今週のエントリーでは、月曜日にGDP統計の2次QEを取り上げた後、火曜日に法人企業景気予測調査に着目し、さらに、水曜日には機械受注に焦点を当てました。そこでも書きましたから繰返しになりますが、この先、設備投資が爆発するとは考えにくく、9月の日銀短観の設備投資計画は12月調査ではなくても、この先の3月調査も含めて、下方修正される可能性の方が大きいと私は考えています。
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取りあえず、メインの経済評論のブログはすでに書き上げてアップしましたので、私の興味のある範囲で事実関係だけ2点アップします。
まず、今年の漢字は「輪」に決まりました。下の画像はどこから引用したのは定かには覚えていないんですが、清水寺での揮毫のシーンだと思います。
続いて、タイム誌の Person of the Year は初めてのラテンアメリカ出身ローマ法皇フランシスコ1世でした。私のこのブログでも3月14日付けのエントリーで紹介しています。なお、下の画像はタイム誌のサイトから引用しています。
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やや旧聞に属する話題ですが、先週金曜日12月6日に社会保障・人口問題研究所から平成23年度社会保障費用統計が公表されています。経済指標発表のタイミングが微妙で、少し取り上げるのが遅れました。年金や医療、介護などにかかった社会保障給付費が2011年度は前年度比+2.7%増の107兆4950億円に上ったと算出されています。もちろん、我が国経済社会の高齢化の伴う増加は決して無視できませんが、2011年3月の震災の影響も含まれています。すなわち、全部ではないんですが、震災に伴う災害救助などの支出も含まれた数字となっています。
全体の合計で見て、自己負担分を除いた社会保障給付費が国民所得に占める割合は31%に上り、国民1人当たりでは84万1100円を記録し、前の年度に比べて2.9%、金額で2万3700円増加し、いずれも過去最高となっています。107兆円余の社会保障給付のほぼ半分の53兆623億円を年金が占め、前年度比でも+0.2%の伸びを示しています。特に、我が国の場合は高齢の引退世代への社会保障給付が国際的に見て突出しており、この統計の対象となった2011年度は民主党政権下で子ども手当が給付され、それなりに勤労世代や家族向けの社会保障給付も充実しましたが、高齢の引退世代向けの給付が圧倒的です。もう、毎年のように書き続けてきたグラフですが、今年もOECD基準に従った国際比較をグラフで示しておきます。バックデータは「平成23年度社会保障費用統計」のリポートの pp.36-37 第6表と第7表 政策分野別社会支出の国際比較 であり、私の方で棒グラフを書いています。
上のパネルは社会支出全体を100%としたシェア、すなわち、高齢向けと家族向けのそれぞれのシェアを示しており、下のパネルは同じく高齢向けと家族向けの社会保障支出のGDP比をプロットしています。国名の後のカッコ内は統計を取った財政年度で、なぜか、スウェーデンだけ出ていませんが2009年度です。見れば分かりますが、下のパネルは国民経済の大きさという身の丈に見合った政策別の社会支出かどうかを見ることが出来ます。いずれのグラフからも、我が国の財政が大赤字を出しながら高齢の引退世代向けには大盤振舞いをしている姿が浮彫りになっています。特に下のパネルの高齢向けと家族向けのGDP比を見れば、我が国の家族向けの社会保障支出は民主党政権下で子ども手当を支給していたころでさえ米国に次ぐお粗末な水準であった一方で、フランスほどではないものの、日本は大赤字の財政にもかかわらず、北欧の高福祉国スウェーデンを上回るような高齢向け社会保障支出を実現している点が突出しています。投票行動に基づくシルバー・デモクラシーにより歪められた社会保障の姿を垣間見ることが出来ます。
去る10月26日付けのエントリーで小峰隆夫『日本経済論の罪と罰』を取り上げた際、第7章 「民意に従う財政再建」はあり得ない は秀逸と指摘し、財政再建に反する方向にバイアスのかかる投票結果にもかかわらず、政治レベルでなすべきことをなす、という、間接民主主義の本質を言い当てているのに目から鱗が落ちる思いをしましたが、シルバー・デモクラシーについても代議制の間接民主主義による投票結果のバイアスの除去や修正に期待したいと思います。
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本日、内閣府から10月の機械受注が、また、日銀から11月の企業物価指数 (CGPI) が、それぞれ発表されています。前者の機械受注では、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は季節調整済みの系列で8072億円、前月比+0.6%増を記録しました。後者の企業物価は前年同月比で+2.7%と前月から上昇幅を拡大しています。まず、統計のヘッドラインを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
10月機械受注、2カ月ぶりプラス 基調「緩やかな増加傾向」
内閣府が11日発表した10月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比0.6%増の8072億円だった。プラスは2カ月ぶりで、伸び率はQUICKが10日時点でまとめた民間予測の中央値(0.6%増)と同じだった。堅調だった製造業向けが減少に転じたが、非製造業の伸びが全体を押し上げた。
内閣府は「受注額が安定して8000億円台と高い水準を維持し、発注を増やす業種も広がっている」と説明した。機械受注の判断は9月の「持ち直している」を「緩やかな増加傾向がみられる」へ2カ月ぶりに上方修正した。
主な機械メーカー280社が船舶・電力を除いた非製造業から受注した金額は11.5%増の5095億円で2カ月ぶりのプラスだった。金融・保険業のシステム改修が活発でコンピューターの受注が伸びた。建設業から建設機械や運搬機械の需要が旺盛で、5月(5607億円)以来5カ月ぶりに5000億円台を回復した。
一方、製造業から受注した金額は0.2%減の3338億円と6カ月ぶりに減少した。電子部品業界向けの半導体製造装置や石油製品・石炭製品業界向けの化学機械の需要の伸びが一服した。
11月国内企業物価、5年1月ぶり高い伸び8カ月連続で上昇
日銀が11日発表した11月の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は102.6と、前年同月比で2.7%上昇した。上昇は8カ月連続で、08年10月(4.5%上昇)以来5年1カ月ぶりの高い伸びだった。外国為替市場での円安傾向が輸入品価格を押し上げた。
企業物価指数は出荷や卸売り段階など企業間で取引する製品の価格水準を示す。全820品目中、前年比で上昇した品目は390、下落した品目は302。3カ月連続で上昇品目数が下落品目数を上回った。上昇から下落を差し引いた品目数は88で11年11月(92)以来2年ぶりの多さだった。
内訳は製材・木製品が13.9%上昇と高く伸びた。米国の住宅市場の回復に加え、国内では消費増税前の住宅の駆け込み需要で引き合いが強まった。石油・石炭製品も12.6%上昇した。前月比での上昇に最も寄与したのは、鶏卵、牛肉を含む農林水産物。供給低迷や年末の需要期で需給が引き締まった。
一方、電子部品・デバイスが前年同月比1.8%下落した。スマートフォン向け需要が低迷した。電力・都市ガス・水道は上昇幅を縮めた。
円ベースの輸入物価は前年同月比16.9%上昇し、前月比では1.5%上昇した。輸出物価は前年同月比12.4%上昇し、前月比では1.2%上昇した。
いつもの通り、いろんなことをとてもよく取りまとめた記事だという気がします。それにしても、昨日もそうだったんですが、統計が2つ発表されると記事の引用だけでかなり長くなってしまいました。おなかいっぱいかもしれません。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機会受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期なんですが、毎度のお断りで、直近の景気の谷は2012年11月であると仮置きしています。
上のグラフを見ても、機械受注は明らかに回復ないし増加の軌道に乗り始めたと考えてよさそうです。ですから、統計作成官庁である内閣府も、引用した記事にある通り、基調判断を前月までの「持ち直している」から「緩やかな増加傾向がみられる」へ上方修正しています。コア機械受注も増加の方向にあることは明らかで、かつ、水準も8000億円を超えて順調に増加を示しています。産業別に機械受注を見ると、下のパネルから明らかなように、増加の主役は製造業です。10月統計こそ6か月振りに前月比マイナスを記録しましたが、昨年のミニ・リセッション後は順調に回復・拡大を示しています。製造業における受注拡大には円高是正の効果が大きいんだろうと私は受け止めています。さらに、米国経済も来年の春ないし年央あたりから本格的な拡大軌道に戻るとのエコノミストの間のコンセンサスもあり、製造業の設備投資は拡大することが見込めます。ただし、受注水準としては製造業よりも船舶と電力を除く非製造業の方が大きくなっています。先行指標のコア機械受注を追うように、我が国の設備投資も緩やかながら増加に転じることが見込まれます。
企業物価の国内・輸出入別の前年同月比上昇率と需要段階別の上昇率はそれぞれ上のグラフの通りです。国内物価の前年同月比上昇率は+2.7%まで拡大しています。円高是正による為替の効果が大きいと報じられていますが、少しずつ需給ギャップの縮小も物価の上昇に寄与していると感じ始めているエコノミストも少なくなく、私もそのうちの1人だったりします。アベノミクスに始まった円高是正に起因する素原材料や輸入品中心の物価上昇が、最終財の川下に波及しつつある姿が上のグラフからも読み取れます。しかし、企業物価はこのように順調に上昇率を高めていますが、どのくらい消費者物価まで波及するかというと、やや疑問に感じるエコノミストも少なくないと思います。消費者物価で測った日銀のインフレ目標2%の達成は、少なくとも2年後の時点では微妙かもしれません。
いうまでもなく、機械受注の増加や物価の上昇は歓迎すべき動向なんですが、忘れるべきでないのは、来年2014年4月からの消費税率引上げ前の駆込み需要が部分的ながらも含まれている可能性が強く、耐久消費財ほどではないせよ、投資財の駆込み需要と4月以降の反動も決して無視できない点は覚悟しておくべきです。
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本日、内閣府から11月の消費者態度指数と財務省から10-12月期の法人企業景気予測調査が、それぞれ発表されました。前者は消費者マインドを需要サイドから統計的に把握する代表的な指標であり、後者は日銀短観ほどではないものの企業マインドの把握に役立つ指標です。消費者も企業もいずれもマインドが改善していることが示されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
11月消費者態度指数、2カ月ぶり改善 冬の賞与への期待などで
内閣府が10日発表した11月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は42.5と前月から1.3ポイント上昇した。改善は2カ月ぶり。有効求人倍率の上昇など雇用環境が改善しつつあることや、冬のボーナスの増額への期待感が高まったことが指数を押し上げた。
内閣府は基調判断を10月の「改善基調にあるが、10月は大きく低下した」から「改善基調にある」に表現を変更した。判断の水準としては3カ月連続の据え置き。10月は台風の直撃など天候の特殊要因で指数が悪化していた。
指数を構成する4項目のうち「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」の3項目で前月比プラスだった。冬のボーナスへの期待に加え、中間決算の多くが増収増益となるなど企業収益の改善も寄与した。「収入の増え方」は前月比1.9ポイント上昇で、リーマン・ショック前の2007年1月以来の高い伸びだった。
1年後の物価の見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)が0.3ポイント低下の89.2%と11カ月ぶりに減った。足元ではガソリン価格や電気、ガス料金が下がったほか「生活日用品の値上げがやや一服した」(内閣府)ことが影響した。ただ04年4月以降で最も高かった先月(89.5%)に続き高水準で推移した。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は11月15日で、有効回答数は5780世帯(回答率68.8%)だった。
10-12月期大企業景況感4期連続プラス 投資計画の伸び最高に
内閣府と財務省が10日発表した10-12月期の法人企業景気予測調査によると、大企業の景況感を表す景況判断指数はプラス8.3だった。4期連続のプラスだったが、2004年4-6月期の調査開始以降で最高だった今年7-9月期(12.0)よりはプラス幅が縮小した。自動車やスマートフォン(スマホ)などに関連する産業の景況感が上向いた一方、石油製品や鉱業、電気・ガスなど円安による調達コスト増が響く業種は悪化した。
指数は自社の景況が前の期と比べて「上昇」と答えた企業の割合から「下降」の割合を差し引いて算出した。
大企業製造業の10-12月期の景況感はプラス9.7と、3期連続でプラスだった。医薬品や自動車、住宅向けが好調だった化学工業や、自動車向け工作機械受注が拡大した生産用機械器具製造業などの寄与度が高かった。一方、石油・石炭製品製造業や、好調だった前の期の反動減などがあった自動車・同付属品製造業はマイナスだった。
非製造業はプラス7.5で、4期連続のプラス。スマホや自動車、建築資材を扱う卸売業などが上向いた。一方で鉱業、採石業や電気・ガスなどは景況感が悪化した。
中小企業全産業の景況判断はマイナス0.1だった。7-9月期のマイナス8.7と比べ大きく改善。中小企業全産業の景況判断は04年の調査開始以来マイナスが続いているが、10-12月期のマイナス幅はもっとも小さかった。製造業はマイナス5.3だったが、非製造業はプラス0.9と初めてプラスに浮上した。財務省は「企業マインドの改善が続いていることが確認できた」(財務総合政策研究所)と見ている。
大企業全産業は14年1-3月期はプラス11.8を見込んでいる。10-12月期と比べプラス幅は拡大。製造業はプラス11.4、非製造業はプラス12.1を見込む。今回初めて公表する14年4-6月期の大企業全産業はマイナス4.1の見通し。消費増税の影響とみられる。
13年度の設備投資計画(ソフトウエア含む)は、全産業では前年度比11.5%増を見込む。前回9月時点の見通し(9.1%増)が上方修正され、04年以降では最高の伸び率だった。
調査は資本金1000万円以上の1万5769社を対象に実施し、回答率は80.4%。調査基準日は11月15日だった。同調査は日銀が16日に発表する全国企業短期経済観測調査(短観)の内容を予測する材料として注目される。
いつもの通り、いろんなことをとてもよく取りまとめた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。今年2013年4月から新系列に移行しています。また、影をつけた部分は景気後退期なんですが、毎度のお断りで、直近の景気の谷は2012年11月であると仮置きしています。
消費者態度指数は10月の41.2から1.3ポイント上昇して42.5となり、2か月振りに前月を上回っています。消費者態度指数を構成する4項目の意識指標のうち、「耐久消費財の買い時判断」は低下したものの、「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」の3項目は上昇しています。「耐久消費財の買い時判断」は消費税率引上げを控えて、消費者がタイミングを測っているような気もします。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「回復基調」で据え置いています。10月の台風の影響で大きく低下した分をすべて取り戻したわけではありませんが、12月に支給されるボーナスが増加する期待が高まってマインドも改善していると解説されています。どうでもいいことながら、今日は我々公務員にもボーナスが支給されています。もちろん、雇用は量的にはかなりイイセンまで来たんですが、ボーナスのような一時金はともかく、本格的に消費者マインドを向上させ消費の拡大につなげるためには、経済学でいうところの恒常所得の増加は不可欠です。年末のボーナスの季節を過ぎて、消費税率が引き上げられた後、もう「春闘」という言葉も死語になった感もありますが、春以降の賃上げがどうなっているかが、消費者マインドを占う上でひとつのポイントになるかもしれません。
続いて、法人企業景気予測調査の大企業の景況判断DIのグラフは上の通りです。この調査のひとつのクセとして、「貴社の景況判断」よりも「国内の景況判断」の方が常に振幅が大きく、自社よりも他社の方が、景気のいい時は自社よりも他社の方がさらに景気よく、景気の悪い時は他社の方がさらに景気悪く見える、という「隣の芝生は青い」現象となっています。引用した記事にもある通り、大企業全産業で10-12月期の「貴社の業況判断DI」は+8.3、来年1-3月期には+11.8まで上がった後、消費税率引上げにより4-6月期はドカンと低下し、▲4.1を記録すると見込まれています。この数字は、上のグラフでいずれも赤い折れ線で示してあるものです。2011年3月の震災を参考までに見ておくと、2011年1-3月期の大企業景況判断DI▲1.1から、震災後の4-6月期には▲22.0まで▲20ポイント超の低下でしたので、そこまでの大きなインパクトではありませんが、前もって予定されているイベントとはいえ、いくぶんなりとも、消費税率引上げは震災に近いショックを企業マインドに対して及ぼす可能性が示唆されていると考えるべきです。なお、グラフはありませんが、今年度2013年度の設備投資計画は大企業が前年度比+11.8%増、中堅企業が+0.4%増、中小企業が+20.0%増で、全規模・全産業で+11.5%増となっています。GDPベースの設備投資はまったく増加を示していませんので、この先爆発するとは考えにくく、どこまで実現性があるかどうか疑わしいと受け止めています。最終の仕上がりは増加幅が縮小されるものと覚悟すべきです。
消費者も企業もかなりマインドは改善していますが、消費者と企業で大きな違いがあるのは収入や所得のサポートです。企業が次々と優遇策を打ち出されて、企業業績や株価が過去最高に近い水準に達している一方で、国民の所得や賃金はサッパリ上がりません。企業からのトリクルダウンを期待するだけではなく、消費者の懐を暖める必要があります。
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本日、内閣府から7-9月期GDP統計速報改定値、いわゆる2次QEが発表されています。実質成長率は1次QEの季節調整済み前期比+0.5%、年率+1.9%から+0.3%、年率+1.1%に下方修正されました。日経QUICKによる市場の事前コンセンサスが+0.4%でしたので、やや下回ったことになります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7-9月の実質GDP改定値、年率1.1%増に下方修正
設備投資が振るわず
内閣府が9日発表した2013年7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算で1.1%増となった。11月公表の速報値(0.5%増、年率1.9%増)から小幅に下方修正した。民間在庫や設備投資が速報値を下回ったため。速報値でプラスだった設備投資は改定値で横ばいに転じた。一方、個人消費は速報値を上回った。
改定値は、速報値の公表後に明らかになった法人企業統計などのデータを使って推計し直した。民間調査機関の平均値(年率1.6%増)を下回った。
生活の実感に近い名目GDPは前期比0.3%増、年率1.0%増となった。速報値の0.4%増、年率1.6%増を下回った。
実質GDPを項目別にみると、民間投資在庫が速報値より減ったことが最大の押し下げ要因となった。消費増税を控えた駆け込み需要を背景に、メーカーが製造中の仕掛かり品在庫や製品の在庫を増やす一方、販売の増加で流通在庫や原材料の在庫が減少したためだ。
設備投資は0.0%と、速報値の0.2%増を下回った。法人企業統計の発表によれば、好調だった非製造業などの投資が前期に比べて鈍っている。一方、個人消費は0.2%増と、速報値(0.1%増)に比べて0.1ポイント上方修正した。
JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「今回の下方修正の背景にあるのは、消費の伸びを背景とした在庫の増加幅の縮小であり、悪い現象ではない。10-12月期以降は消費増税前の駆け込み需要などにより、再び4%近い高成長に復帰する」と見ている。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前期比マイナス0.0%と、速報値(マイナス0.1%)から上方修正した。名目値が実質値を下回り、デフレの象徴とされる「名実逆転」は解消していないものの、改善の兆しも見られる。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2012/7-9 | 2012/10-12 | 2013/1-3 | 2013/4-6 | 2012/7-9 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産 (GDP) | ▲0.8 | +0.1 | +1.1 | +0.9 | +0.5 | +0.3 |
民間消費 | ▲0.5 | +0.6 | +1.0 | +0.7 | +0.1 | +0.2 |
民間住宅 | +1.1 | +3.1 | +2.2 | +0.3 | +2.7 | +2.6 |
民間設備 | ▲2.1 | ▲0.6 | ▲1.0 | +0.9 | +0.2 | +0.0 |
民間在庫 * | +0.3 | ▲0.3 | +0.0 | ▲0.2 | +0.4 | +0.2 |
公的需要 | +0.0 | +1.0 | +0.7 | +1.7 | +1.6 | +1.4 |
内需寄与度 * | ▲0.3 | +0.3 | +0.7 | +0.7 | +0.9 | +0.7 |
外需寄与度 * | ▲0.5 | ▲0.1 | +0.4 | +0.1 | ▲0.5 | ▲0.5 |
輸出 | ▲3.8 | ▲3.0 | +3.9 | +2.9 | ▲0.6 | ▲0.6 |
輸入 | ▲0.4 | ▲1.7 | +1.0 | +1.7 | +2.2 | +2.2 |
国内総所得 (GDI) | ▲0.5 | +0.2 | +0.7 | +0.9 | +0.3 | +0.1 |
国民総所得 (GNI) | ▲0.4 | +0.2 | +0.7 | +1.7 | +0.0 | ▲0.2 |
名目GDP | ▲1.0 | +0.2 | +0.7 | +0.9 | +0.4 | +0.3 |
雇用者報酬 | +1.1 | ▲0.4 | +0.5 | +0.3 | ▲0.6 | ▲0.6 |
GDPデフレータ | ▲0.8 | ▲0.7 | ▲1.1 | ▲0.5 | ▲0.3 | ▲0.3 |
内需デフレータ | ▲0.9 | ▲0.8 | ▲0.8 | ▲0.3 | +0.5 | +0.4 |
テーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対する寄与度であり、左軸の単位はパーセントです。棒グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7-9月期の最新データでは、前期比成長率が小幅ながらプラスであり、黒の外需がマイナス寄与を示した一方で、黄色の公的需要がプラスに牽引したのが見て取れます。1次QEの際と同じ見方なんですが、成長率が減速したのは外需が足を引っ張った結果と言えます。
ほぼ、12月5日付けのエントリーで取り上げた2次QE予想に沿った結果だと受け止めています。12月5日のエントリーでは設備投資と在庫投資が下方修正される一方で、公共投資が上方修正されるものの、全体として下方修正と見込んだんですが、公的需要も下方修正されたため全体として下方修正の度合いが大きくなったわけです。基本的に、現時点における足元の景気判断に修正をもたらす内容ではないと考えるべきです。目先の先行きについても、引用した日経新聞の記事にもある通り、年度後半、すなわち、足元の10-12月期と来年早々の1-3月期については、来年2014年4月1日からの消費税率引上げ直前の駆込み需要が出ることもあり、年率で3-4%くらいの高成長が見込めます。もちろん、4-6月期にはこれらの駆込み需要の反動が出ます。当然です。
先月発表された1次QEの際にはデフレータの前年同月比が、消費デフレータと国内需要デフレータについてプラスに転じたグラフをお示ししましたが、基本は変わりありません。2次QEでは上の通り財別消費に注目しました。消費を耐久財、半耐久財、非耐久財、サービスに分割して、それぞれの前期比伸び率をプロットしています。今年に入ってからの3四半期は耐久財消費が伸びていることが読み取れます。もちろん、現時点では、従来の伸びに比較して特に高いとはいえません。しかし、来年4月からの消費税率引上げが決まったのはつい最近なんですが、国民の消費行動はこの消費税率引上げを先取りしていて、すでに耐久財の駆込み需要が生じていることを示唆していると私は受け止めています。いうまでもなく、来年1-3月期は耐久財にとどまらず、半耐久財・非耐久財やサービスも含めて消費が大きく伸び、4-6月期にはガタンと落ちる、というシナリオは容易に想像できます。
2次QEのほかにも、今日は財務省から10月の経常収支が、また、内閣府から11月の景気ウォッチャーが、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーだけは上の通りグラフを書きました。統計作成官庁の内閣府では基調判断を前月の「着実に持ち直している」から「緩やかに回復しつつある」に上方修正しています。
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早や、師走に入って1週間が経ちました。街はクリスマス・ムード一色です。今年はアベノミクスによる景気回復で、人びとの表情も明るい気がします。ということで、年末年始の動向について、マクロミルによる「年末年始の過ごし方に関する調査」とJTBによる「年末年始の旅行動向」からいくつか図表を引用して紹介します。
まず、マクロミル「年末年始の過ごし方に関する調査」から、上のグラフは年末年始の帰省予定です。上半分は年齢階級別、下半分は地域別となっています。全体の平均では約63%が帰省するようですが、年齢が低いほど帰省の割合が高いのは当然と言えます。地域的には、中部地方、中国地方、九州・沖縄地方で高くなっています。私も生まれ故郷の京都から東京に働きに出て来て、初めての海外勤務でチリに行くまで、年末年始は必ず京都に帰省していたことを思い出します。でも、今世紀に入ってから、トンと京都には帰らなくなりました。
次に、マクロミル「年末年始の過ごし方に関する調査」から、上のグラフは年末年始にかける予算です。とても不思議なんですが、昨年の5.6万円から今年は5.2万円に減少しています。設問として、「帰省の費用や旅行など年末年始の特別な出費の合計」という聞き方に起因するのかもしれません。現在の景気動向だけでなく、来年4月からの消費税率引上げも勘案すると、この年末年始の予算は増加しているのが自然だと私は考えています。
旅行については「餅は餅屋」ということで、上の表はJTBの「年末年始の旅行動向」から年末年始の旅行動向の推計結果を引用しています。国内旅行・海外旅行とも旅行人数も総消費額も増加すると見込まれています。誠に失礼ながら、マクロミルの調査結果よりも、旅行に関しては私はこのJTBの推計の方が信頼でき、実感に合致していると受け止めています。
帰省も含めて、旅行が増加するひとつの要因はカレンダーの並びにあります。上の画像はどこかの役所か、役所に類似した組織の年末年始の営業日だと思うんですが、見れば分かる通り、赤い矢印が休日で青が通常営業日です。12月28日のいわゆる御用納めの後、お正月の1月4-5日が土日になりますので、私なんぞは年休を取らずに黙っていても9連休となります。
例年通りというか、今年も師走は忙しくしているんですが、年末年始休暇がカレンダーの関係で充実しているので、何とか乗り切りたいと考えています。その前に、子供達は今週の期末試験を乗り切って欲しいと思います。
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今日は上の高校生の倅の誕生日です。高校2年生ですから17歳になりました。当然ながら、この4月からは高校3年生に上がり来年は大学受験の年になります。
そういったこととは何の関係もなしに、我が家の恒例のジャンボくす玉です。お祝い下さる向きはクリックして割っていただければ幸いです。
下の倅とともに期末試験の季節ですので、お誕生日のお祝いは日を改めるようです。
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昨日、米国労働省から米国雇用統計が発表されています。統計のヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は季節調整済みの系列で見て前月から+203千人増加し、失業率は0.3%ポイント低下して7.0%を記録しました。まず、New York Times のサイトから、長くなりますが、第1報の記事を引用すると以下の通りです。
U.S. Economy Adds 203,000 Jobs, as Unemployment Falls to 5-Year Low
he economy added 203,000 jobs in November, a bit better than expected, as the unemployment rate fell to 7 percent, the lowest in five years.
While the return of hundreds of thousands of federal employees following October's government shutdown may have exaggerated the move in the unemployment rate for November, the continuing payroll gains suggest the economy has picked up at least a modicum of momentum very recently.
Economists surveyed by Bloomberg before the Labor Department announcement had expected an increase of 185,000 jobs, with the unemployment rate falling by 0.1 percentage point to 7.2 percent.
Payrolls are tracked using data gathered from employers, while the unemployment rate is based on a separately survey of households.
On Wall Street, the monthly report on the labor market is by far the most closely watched economic indicator, but the November data created more anticipation than usual.
That's because the Federal Reserve seems poised to begin slowly easing back on its stimulus efforts. While the move had been expected in September, it was put off amid mixed economic data instead of the sustained signs of improvement policy makers want to see. The delay by the central bank caught Wall Street off guard three months ago.
With a spate of recent positive data, economists said a move by the Fed had become more certain, either later this month or more likely early next year. The latest figures on hiring come in the wake of more robust data for economic growth and jobless claims on Thursday and a report on Monday showing increased activity at factories.
While welcome news for job seekers, a healthier labor market is likely to be viewed more warily by investors and traders, at least in the short term.
Stronger economic growth and employment gains should bolster corporate earnings and therefore stocks over time, but speculators fear a quick Fed tapering could sap the stock market's recent momentum. The Standard & Poor's 500-stock index is up more than 25 percent in 2013. In premarket trading after the Labor Department data came out, stocks were higher.
Although the holiday shopping season seems to have gotten off to a mixed start, the retail sector added 22,000 jobs last month. Manufacturers, which are closely watched as a bellwether for the broader economy, hired 27,000 workers. And the overall participation rate rose 0.2 percentage point to 63 percent, reversing a decline in recent months.
Even as the overall unemployment rate fell, the situation does remain desperate in some pockets of the labor market.
For example, the unemployment rate among workers aged 16 to 19 remains above 20 percent. And for workers with less than a high school diploma, the jobless rate stood at 10.8 percent.
いつものお断りですが、第1報を引用していますので、その後、と言うか、現時点では、差し替えられている可能性があります。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。
非農業部門雇用者の前月差増加に関して、市場の事前コンセンサスが200千人弱でしたから、わずかとはいえ、これを上回り、さらに、失業率も0.3%ポイントも低下して7.0%に達しましたので、従来から米国の雇用は堅調と私は考えていましたが、この雇用統計はさらに強い数字と受け止めています。問題は、米国連邦準備制度理事会 (FED) がこの雇用統計を見てQE3を早めに終了すると判断するかどうかです。ハト派のイエレン副議長が来年に FED 議長に昇格しますので、日銀が失敗したような早過ぎる金融政策転換はないものと市場も私も考えていますが、もしも、QE3が我が国の日銀の異次元緩和に先立ったとしても、米国の成長鈍化に伴う所得効果は我が国経済にマイナスの影響を及ぼす可能性は十分あるものの、為替がさらにドル高円安に動けば、所得効果を打ち消す方向で価格効果が現れる可能性があります。少なくとも日本経済に対しては、米国雇用統計が順調に改善を示しQE3が終了するとしてもそれほど悲観的になる必要はないと考えてよさそうです。
次に、日本の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見てほぼ底ばい状態が続いていて、サブプライム危機前の3%超の水準には復帰しそうもないんですが、底割れして日本のようにゼロやマイナスをつけて、デフレに陥る可能性は小さそうに見えます。
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本日、内閣府から10月の景気動向指数が発表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月から+1.2ポイント上昇して109.6となり、CI先行指数も+0.7ポイント上昇の109.9となりました。景気は順調に回復・拡大しているようです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
10月の景気一致指数、5年3カ月ぶり高水準
2カ月連続上昇
内閣府が6日発表した10月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が1.2ポイント上昇の109.6とリーマン・ショック前の2008年7月(110.7)以来5年3カ月ぶりの高水準だった。景気回復が続いているためで、上昇は2カ月連続。伸び幅は昨年12月(プラス1.7ポイント)以来の大きさだった。国内外で自動車販売が堅調で、関連のコンベヤーやプレス用金型などの受注が活発だった。有効求人倍率の大幅改善も寄与した。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を前月までの「改善を示している」に4カ月連続で据え置いた。
数カ月後の先行きを示す先行指数は0.7ポイント上昇の109.9で、5月(110.4)以来5カ月ぶりの高水準だった。来春の消費増税を控えた駆け込み需要により、住宅や家電製品を中心に売り上げ見通しが増えた。
景気に数カ月遅れる遅行指数は0.9ポイント低下の113.1だった。家計消費支出や法人税収入の減少が響いた。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDIは一致指数が75.0、先行指数が77.8だった。いずれも50が「良い」と「悪い」の判断の分かれ目。
いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数とCI先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は2012年11月だったと仮置きしています。
引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「改善」で据え置いています。10月のCI一致指数では、大口電力使用量、投資財出荷指数(除輸送機械)、有効求人倍率(除学卒)、耐久消費財出荷指数などが指数の押上げに寄与し、逆に、中小企業出荷指数(製造業)、所定外労働時間指数(調査産業計)がマイナスに寄与しています。少し前もこのブログに書きましたが、毎月勤労統計の所定外労働時間は鉱工業生産指数とやや乖離した不整合な動きを示した時期があり、10月はそのうちのひとつだったと記憶しています。駆込み需要もあって、我が国の景気は順調に回復・拡大しています。来年4月の消費税率引上げ後の景気やいかに?
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今週月曜日に財務省から法人企業統計が発表されたことにより、必要な経済指標がほぼ出尽くし、来週月曜日の12月9日に今年2013年7-9月期GDP速報2次QEが内閣府より発表されます。各シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ウェブ上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。可能な範囲で、10-12月期以降の先行き経済の動向に関する記述を取っているつもりです。ただし、2次QEですから各機関とも論評はかなりアッサリしたものです。法人企業統計のついでの扱いである場合も少なくありません。すなわち、明示的に先行きに言及しているのは、みずほ総研、第一生命経済研、伊藤忠経済研だけです。なお、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | +0.5% (+1.9%) | n.a. |
日本総研 | +0.4% (+1.5%) | 7-9月期の実質GDP(2次QE)は、公共投資が上方修正される一方、設備投資などが下方修正となる見込み。 |
大和総研 | +0.4% (+1.5%) | 一次速報から下方修正される見通しである。 |
みずほ総研 | +0.7% (+3.0%) | 10-12月期の実質GDPも前期比年率+3%前後の成長が続くと予想している。公共投資はピークアウトが予想されるものの、7-9月期に小幅減となった輸出が増加に転じるほか、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が出始めることにより個人消費の伸びが高まるであろう。公共投資・民間在庫投資の寄与度が高かった7-9月期に比べ、外需・民間需要の回復によって内容の改善が期待される。 |
ニッセイ基礎研 | +0.4% (+1.4%) | 13年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.4%(前期比年率1.4%)となり、1次速報の前期比0.5%(年率1.9%)から下方修正されると予想する。 |
第一生命経済研 | +0.4% (+1.5%) | 7-9月期の前期比年率+1%台半ばという成長は、13年1-3月期の前期比年率+4.3%、4-6月期の同+3.8%からは明確な減速だが、あくまで年前半の高成長の反動の範囲内の動きにとどまっており、均してみれば景気は着実に回復しているという評価で問題ないだろう。10-12月期の成長率が再び高まる公算が大きいこともあり、7-9月期の成長率鈍化を問題視する必要はないと思われる。 |
伊藤忠経済研 | +0.4% (+1.6%) | 7-9月期の2次QEは小幅の修正にとどまり、景気判断や見通しの修正を迫るものではない。2013年7-9月期の日本経済は大幅に減速し、成長の内容も公需と在庫投資に依存するなどバランスを欠く。また、7-9月期の成長を支えた公共投資は年度後半のピークアウトが見込まれ、また7-9月期と同様の在庫投資による成長押し上げは期待できない。しかし、消費税率引き上げ前の駆け込み需要による個人消費など民間需要の拡大が支えるかたちで、2013年度後半に、日本経済の成長ペースは再び加速する見込みである。 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | +0.3% (+1.2%) | 7-9月期の成長ペースの鈍化が改めて浮き彫りになるものの、潜在成長率とされる1%弱は上回る見通しで、国内景気の回復基調に変化はない。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +0.5% (+1.9%) | 12月9日公表予定の2013年7-9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比+0.5%(年率+1.9%)と、1次速報値の同+0.5%(年率+1.9%)から大きく修正されることはないと予想される。 |
三菱総研 | +0.4% (+1.7%) | 1次速報値からほぼ変更なしと予測する。 |
続いて、下の表はニッセイ基礎研のリポートから引用しています。かなり多くのエコノミストのコンセンサスで、成長率は1次QEからやや下方修正される結果が示されています。消費と住宅はほぼ変わりないんですが、在庫と設備投資が下方修正され、公共投資が上方修正されるものの、全体としては下方修正となります。上のテーブルを見ても、1次QEから明確な上方修正を予測しているのはみずほ総研だけかもしれません。なお、先行きについては、年度いっぱい3月までは消費税率引上げ前の駆込み需要もあって高めの成長が続き、7-9月期のやや減速した成長率が足元の景気判断にマイナスの影響を及ぼすことはない、とのコンセンサスも広く共有されている気がします。もっとも、来年4月の消費税率引上げがどの程度の負のショックをもたらすかは、現時点ではまだコンセンサスは出来ていないと私は受け止めています。
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昨日のエントリーでも最後に触れましたが、経済開発協力機構 (OECD) から2012年に実施された学習到達度調査 (Programme for International Student Assessment, PISA) の結果が発表されています。OECD の原資料に当たるのが一番で、このブログでは結果報告書の第1巻 PISA 2012 Results: What Students Know and Can do : Student Performance in Mathematics, Reading and Science (Volume I) からグラフなどを直接引用していますが、国立教育政策研究所では「OECD生徒の学習到達度調査」と題して、とてもいい日本語の要約が出ています。何分、膨大なページ数の英文リポートですので、こういった日本語資料を活用するのもいいかもしれません。
なお、PISA は日本では高校1年生に当たる15歳児を対象に、数学 mathematics、読解力 reading、科学的 science の3教科の学習到達度を測定するものです。2000年から3年おきに、中心分野として読解力、数学、科学のサイクルで実施されています。結果はOECD加盟国の生徒の平均が500点、標準偏差が100点になるように調整した上で公表されていますが、実は、2000年以降も新規加盟国がパラパラとあるので、正確に平均500点になっているわけではありません。ひとつの目安です。ローテーションからして、昨日発表された PISA 2012 は数学を中心に組まれていたわけで、今夜のブログで取り上げるのも数学が中心になります。報告書第1巻は以下の章別構成になっています。
ということで、気になる我が国の順位なんですが、上のグラフの通りです。2000年から3年おきの PISA の結果の3教科の我が国のランクとスコアをプロットしてあります。なお、前述の通り、各年各教科のスコアはOECD平均でほぼ500になるように調整されており、破線で示してあります。また、PISA 2012 の結果はSnapshot of performance in mathematics, reading and science として、1枚のpdfファイルに取りまとめられています。数学ではトップの上海のスコアが613に対して、日本は536で7位、読解力と科学もともに上海がトップで、日本はこの2教科ではともに4位を占めています。前回の PISA 2009 をこのブログで取り上げたのは、ほぼ3年前の2010年12月21日付けのエントリーなんですが、PISA 2009 における日本の順位は数学9位、読解力8位、科学5位でしたから、いずれの教科においても順位を上げたことになります。今夜のエントリーでは PISA 2012 の眼目であった数学を中心に、リポート第1巻からいくつかグラフを引用して、簡単に PISA 2012 の結果を紹介したいと思います。
まず、上のグラフはリポート第1巻 p.35 Figure I.2.1 Mathematics performance and Gross Domestic Product を引用しています。ただし、データから私なりにグラフを書き加えています。赤い大きなマーカーが日本を示しています。見れば分かりますが、縦軸に数学のスコア、横軸に1人当たりGDPをプロットしてあります。当然ながら、相関係数は低いものの正の相関が認められます。しかし、ここでは単に相関であって因果関係ではありません。豊かだから数学が出来るのか、数学が出来るから豊かなのか、この因果関係は不明ですが、1人当たりGDPで測った豊かさと数学のスコアの間に正の相関は認められます。なお、日本について着目すると、数学のスコアの割りには1人当たりGDPが低い、というか、1人当たりGDPの割りには数学のスコアが高い、という結果が示されています。長らく金融政策の失敗により国民の能力に見合った経済成長が実現できていなかった可能性が示唆されていると私は受け止めています。なお、グラフの引用はしませんが、リポート第1巻 p.55 の Figure I.2.16 Curvilinear trajectories of average mathematics performance across PISA assessments がとても興味深い結果を示しています。すなわち、最初にお示しした通り、PISA ではOECD加盟国で平均点がほぼ500点、標準偏差が100点になるように調整されていますので、スコアとランクはかなりの程度に連動すると考えて差支えないんですが、2000年から始まったこの PISA の結果を年率の向上度合いで計測し、スコア/ランクが向上、変化なし、低下の3種類に分け、さらに、向上/低下については加速、着実、減速の3種類に分け、変化なしについては一度下がってから上がったケース、ずっと横ばいのケース、一度上がってから下がったケースの3かける3の9種に分類しています。我が日本はおおむね変化なしの中の一度下がってから上がったケースに分類されています。世間的なメディアの報道でも、いわゆる「ゆとり教育」で PISA のスコア/ランクを落とし、その後、「ゆとり教育」をヤメにしてスコア/ランクを上げた、という評価が一般的なように見受けます。単身赴任して大学教員を一時的にやって教育には携わったものの、私には専門外の分野ですが、そうなのかもしれないと思うところはあります。
次に、上のグラフはリポート第1巻 p.58 Figure I.2.18 Relationship between annualised change in performance and average PISA 2003 mathematics scores を引用しています。最初に数学を中心分野として実施した PISA 2003 をひとつの基準として、PISA 2003 における数学の到達度の水準とその後の到達度の改善・悪化をプロットしています。我が国は右上の領域に入っており、PISA 2003 において平均以上の数学の到達度を示すとともに、PISA 2012 までその水準を向上させている国です。ドイツやスイスなどとともに、この領域にはアジアの国々が含まれています。とても単純な収束理論 convergence からすれば、このグラフの横軸 PISA 2003 の水準と縦軸 PISA 2012 までの改善・悪化には負の相関がある可能性が指摘でき、実際にも相関は負ではないかと見えなくもありませんが、日本は数学の到達度の水準が高く、さらにそれが向上している数少ない国のひとつと考えるべきです。労働力として優秀かつさらに向上も見られており、どうして企業経営者が賃上げに踏み切らないのかがとても不思議にすら見えます。
ここからは PISA 2012 の結果の概略となります。上のグラフはリポート第1巻 p.62 Figure I.2.22 Proficiency in mathematics を引用しています。レベル1未満とレベル1-6の割合が国別に到達度の水準でソートしてプロットされています。ここでも、数学に関しては、エストニア、フィンランド、スイスなどとともに、多くのアジア諸国が上位に名を連ねています。
次に、上のグラフはリポート第1巻 p.65 Figure I.2.b Top performers in mathematics, reading and science を引用しています。数学、読解力、科学のそれぞれのレベル5と6の割合の高い順にソートしてプロットされています。国名の横には平均スコアも記されており、必ずしもレベル5-6の生徒の割合の順位と一致しません。最初にお示しした通り、我が国は平均スコアでは数学7位、読解力と科学がともに4位でしたが、上のグラフに示されたレベル5-6の割合では、数学が8位、読解力と科学はともに3位を占めるようです。
最後に、上のグラフはリポート第1巻 p.73 Figure I.2.25 Gender differences in mathematics performance を引用しています。数学の到達度における男女差をプロットしています。上の国ほど女子のスコアが高く、下ほど男子の方が高い、というようにソートされており、OECD平均の数学スコアの男女差は11となっています。日本はこの男女差が20近いので、OECD諸国の中では男女差が大きい方に属するようです。
どうでもいい個人的なことですが、昨年2012年に PISA 2012 を受けた高校1年生の15歳児は我が家の上のおにいちゃんと同い年です。実際にウチの子が参加したかどうかはともかく、社会に貢献できる日本の優秀な構成員に育てるのが親としての私の重要な務めのひとつであると考えています。
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本日、厚生労働省から10月の毎月勤労統計が発表されています。賃金と景気に敏感な残業がこの統計のヘッドラインなんですが、製造業の所定外労働時間が増産により季節調整済みの系列で前月比+1.0%増加し、残業が増加した影響で賃金給与総額は前年同月比で+0.1%増の26万7167円と4か月振りにプラスに転じたものの、所定内給与は長らく前年同月比マイナスを続けています。まず、統計について報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
10月現金給与0.1%増、4カ月ぶりプラス 製造業の活発な生産で
厚生労働省が3日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比0.1%増の26万7167円で、4カ月ぶりにプラスに転じた。需要回復に伴い、製造業の生産活動が活発になり、所定外労働時間と所定外給与が増えた。基本給や家族手当などの所定内給与は17カ月連続で減少した。
所定外労働時間は4.9%増の10.8時間で、5カ月連続で増えた。このうち製造業は9.8%増の15.8時間で、4カ月連続のプラス。伸び率は月ごとに拡大している。いずれも東日本大震災による落ち込みの反動で大きく伸びた2012年5月以来の大きさだった。残業代など所定外給与は5.4%増の1万9511円で、12年5月以来の高い伸びだった。
所定内給与は0.4%減の24万2153円だった。賃金水準の低いパートタイム労働者の割合が増えていることが響いた。総労働時間は0.4%減の148時間。労働時間の短いパートタイム労働者が増えたことで3カ月連続で減少した。
正規雇用を中心にした一般労働者とパートタイム労働者を合計した常用雇用は1.0%増の4635万人。特に一般労働者は景気回復で0.6%増の3278万9000人と2カ月連続で増加し、雇用情勢の緩やかな改善を示す結果になった。パートタイム労働者は2006年1月以降、増加し続けている。10月は1.9%増の1356万1000人だった。
いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下は製造業に限らず調査産業計の賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。賃金は凡例の通り現金給与総額と所定内給与です。影をつけた期間は景気後退期であり、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月と仮置きしています。
毎月勤労統計の10月統計で、一般労働者の所定内給与が月額304,483円、パートタイム労働者が90,977円ですから3倍を超える格差があり、パートタイム労働者の比率が上昇すれば現金給与総額は下がって行きます。このため、所定内給与は昨年のミニ・リセッションの直後から1年半に渡って前年同月比で下がり続けています。労働者1人当たりの月額賃金が上昇しても、非正規雇用の比率の増加により一種のシンプソン効果で雇用者全体としては賃金が下がり続けるという形に陥っています。ですから、賃上げはもとより必要ですが、正規雇用やより条件のいい decent な雇用が増えないことには統計の上で賃金が増加することは確認できない可能性が残されています。逆から見て、統計の上で賃金上昇が確認できれば、賃金上昇がデフレ脱却の十分条件と私は主張しているわけですから、ほぼデフレは終了している可能性すらあります。
しかし、さすがに昨年来のアベノミクス効果により、非正規雇用であっても今年の年央から賃金上昇の兆しが見えます。上のグラフはリクルートジョブズによる派遣スタッフ募集時平均時給調査とアルバイト・パート募集時平均時給調査の結果を取りまとめてあります。見れば分かると思いますが、募集時の時給と前年同月比です。昨年のミニ・リセッションから少しタイムラグを経て、今年年央あたりから派遣スタッフやパート・アルバイトの時給が急激に高まっているのが見て取れます。雇用や設備投資等の要素需要に関しては、余りに冷え切った企業の長期的な展望に対するマインドの改善が急務であり、投資を促進し、また、雇用であれば、非正規雇用だけでなく正規雇用増加のインセンティブをより高める経済政策が必要なのかもしれません。もっとも、それを成長戦略と呼ぶかどうかは別の問題です。
最後に、私はまだ詳しく見ていませんが、経済開発協力機構 (OECD) から2012年の学習到達度調査 (Programme for International Student Assessment, PISA) の結果が発表されています。我が国の労働力の水準は先進国の間で見ても高賃金を受け取るにふさわしいレベルに達していると私は受け止めています。
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法人企業統計の経済評論はすでに書いてアップしましたが、今日は、別にエンタメの記事もあります。すなわち、ユーキャン新語・流行語大賞が公表されるとともに、オリコン2013年間本ランキングも発表されています。いくつかのメディアで取り上げられていたと思います。簡単に画像を引用して紹介しておきたいと思います。
このブログの11月24日付けのエントリーの予想通り、「今でしょ!」、「お・も・て・な・し」、「じぇじぇじぇ」、「倍返し」が大賞に輝きました。「ブラック企業」もトップテンに入っています。
村上春樹『色彩を 持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』がトップです。なお、今日は同時に、書籍流通大手の日販と東販でも年間ベストセラーが発表されています。『色彩を 持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は日販の年間ベストセラーでは1位、東販の年間ベストセラーでも2位に入っています。
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本日、財務省から今年2013年7-9月期の法人企業統計が発表されました。国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり注目が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資額は季節調整して前期と比べると▲0.5%減少しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
7-9月の設備投資1.5%増 2期連続プラス 法人企業統計
財務省が2日発表した7-9月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比1.5%増の8兆9424億円で、2四半期連続のプラスとなった。製造業は減少が続いたが、建設業など非製造業の新規投資が全体を押し上げた。
設備投資の産業別の投資動向をみると、製造業は6.7%減と4四半期連続で減少した。前年の投資の反動減が出たり、不採算部門の投資を抑制した電気機械や情報通信機械などの投資が減少した。ただ減少幅は4-6月期の9.1%減より縮小した。コスト削減のための設備再編などを進めた鉄鋼や、新型車対応の新工場投資のあった自動車など輸送用機械、タブレット端末向けの高機能部材の生産能力を増強した印刷などが増加した。
非製造業は6.6%増と、2四半期連続で増えた。建設業で大型物流施設や太陽光発電向け投資などが増えたほか、リース用資産を購入した物品賃貸業、航空機を購入した運輸業などが増えた。一方、携帯電話の基地局投資が一巡した情報通信業などは減少した。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり、注目が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、季節調整して前期と比べると0.5%減と4四半期ぶりのマイナスだった。
全産業の売上高は0.8%増の318兆8438億円と6四半期ぶりに増えた。製造業は0.3%増。石油・石炭や輸送用機械などが増えた。非製造業は1.1%増。建設業や不動産業などが増加した。
経常利益は前年同期比24.1%増の12兆9735億円と、7四半期連続で増えた。なかでも製造業は46.9%増と伸び率が高く、4四半期連続で増加した。円安で輸出採算が改善した自動車など輸送用機械業に加え、化学や情報通信機械などが増益となった。非製造業は14.5%増で2四半期連続で増えた。電気業や建設業、不動産業などで増えた。
財務省は設備投資と経常利益について「前年同期比で増加が継続しており、基調として企業収益は改善し、設備投資も上向きつつある」と指摘。「日本経済は足元で緩やかに回復しつつある」との認識を示した。
同統計は資本金1000万円以上の企業の収益や投資動向を集計。今回の結果は内閣府が9日に発表する7-9月期のGDP改定値に反映される。
いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。法人企業統計とGDP統計の関係についても最後のパラに適切に記述されています。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は2012年11月あるいは10-12月期と仮置きしています。
上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしていますので、主として季節調整していない原系列の統計を基にした引用記事と少し印象が異なるかもしれません。見れば分かりますが、季節調整済みの前期比で見て、売上高が緩やかに伸びた一方で、経常利益は減少しています。ただし、経常利益の水準はかなり高く、リーマン・ショック前のレベルに近づきつつある一方で、売上げはまだまだ届きません。同様に、経常利益は昨年のミニ・リセッション前の水準を軽く超えましたが、売上はまだだったりします。企業の経営効率が強化されたという評価ができる一方で、リーマン・ショック前のように、家計部門にトリックル・ダウンすることなく企業部門だけが余剰資金を溜め込む方向に進みつつある懸念が残されています。経団連の賃上げへの前向きな姿勢は評価できますし、昨年のミニ・リセッション後の景気回復・拡大局面では企業部門よりも家計部門が先行しましたので、家計部門が購買力を使った一方で、企業部門にキャッシュが残ったという側面も見られますが、この先の景気回復・拡大をさらに力強く、さらに長期にするためには企業部門が溜め込んでいる購買力を家計部門に対して適切に配分することが必要となります。将来への明るい展望が開け切れないために、企業部門がキャッシュを溜め込むのは、明らかに を生じつつあります。
続いて、上のグラフは擬似的に計算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却の和です。なお、特別損益は無視しています。キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却の和でキャッシュフローを算出しています。まず、上のパネルの労働分配率について見ると、昨年のミニ・リセッションではほとんど上昇も見られず、リーマン・ショック後のピークから下がり続け、大雑把にならして70%を十分に下回る水準で推移しているのが読み取れます。他方、下のパネルの設備投資はキャッシュフローの半分近くまで水準が低下しています。ほぼ歴史的な低水準と受け止めています。労働分配率については量的な雇用の増加、あるいは、質的な賃金の上昇に耐える企業体質が出来上がったと評価できますし、設備投資向けの資金も債券発行や銀行借入れに頼る必要なく、十分に内部資金で調達できると理解できます。今日発表の法人企業統計で、すでに十分に賃上げと設備投資の増加に向けた経営環境は整った姿が示されたと受け止めています。
最後に、来週月曜日12月9日には7-9月期のGDP速報改定値、いわゆる2次QEが内閣府から発表されますが、設備投資についてはこの法人企業統計を受けて、やや下方修正される可能性が高いと私は考えています。
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収録曲は以下の通りです。最後の曲がスタンダードである以外はすべて小曽根の作曲になるオリジナルだそうです。
今年の5月か6月くらいに出た新譜ですが、小曽根真とゲイリー・バートンのデュエットになる「タイム・スレッド」を聞きました。ピアノとバイブのこの2人のデュエットは、すでに3作目で、「ファイス・トゥー・フェイス」と「Virtuosi」が前作になります。9局目から11曲めの組曲は、私には意味が分かりませんでした。第55回グラミー賞を授賞されたチック・コリアとゲイリー・バートンのデュエット「ホット・ハウス」と聞き比べるのも一興かもしれません。いずれにせよ、我が国を代表するピアニストの新譜です。ジャズファンを自任するのであれば聞いておくべきです。
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