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2014年1月21日 (火)

世界経済フォーラム「グローバルリスク 2014」 Global Risks 2014 に目を通す

今年は我が国の安倍総理がダボス会議でスピーチを行う予定ですが、はなはだ旧聞に属する話題ながら、このダボス会議を主催する世界経済フォーラムから昨年2013年12月30日に「グローバルリスク 2014」Global Risks 2014 が公表されています。今どきのことですから、pdf の全文リポートもアップされています。まあ当然でしょう。遅ればせながら、まず、10大リスク、すなわち、リポートの p.13 Table 1.2: Ten Global Risks of Highest Concern in 2014 を引用すると以下の通りです。

Table 1: Ten Global Risks of Highest Concern in 2014
  1. Fiscal crises in key economies
  2. Structurally high unemployment/underemployment
  3. Water crises
  4. Severe income disparity
  5. Failure of climate change mitigation and adaptation
  6. Greater incidence of extreme weather events
    (e.g. floods, storms, fires)
  7. Global governance failure
  8. Food crises
  9. Failure of a major financial mechanism/institution
  10. Profound political and social instability

なお、それぞれのリスクの定義はリポートの p.53-54 の Appendix A - Definitions of Global Risks 2014 で与えられています。今夜のエントリーではリポートから図表をいくつか引用しつつ、エコノミストの目から見た簡単な紹介をしたいと思います。主として、上の Ten Global Risks のうち、1と2と4のリスクを取り上げたいと思います。

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上のグラフはリポートの p.16 Figure 1.1: The Global Risks Landscape 2014 を引用しています。横軸はリスクが現実のものとなる蓋然性、縦軸はリスクが現実となった場合のインパクトを示していますから、このグラフで右上にあるリスクほど深刻であると考えるべきです。青いマーカーが経済的なリスクを示しており、そのうちの右上にプロットされているリスクとしては、財政危機 Fiscal crises と失業ないし雇用不足 Unemployment and underemployment ということになります。最初に引用した10大リスクの4番目の所得の不平等 Severe income disparity は青いマーカーの経済リスクではなく、赤いマーカーの社会的リスクとしてプロットされています。

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次に、リポートの p.21 Figure 1.4: The Global Risks 2014 Interconnections Map ではさまざまなリスクの相互関係が示されていますが、このチャートから財政に関する部分を取り出したチャートが上の通りです。直接にはリポートの p.27 から引用しています。財政危機と相互関係が深いリスクとして、ガバナンスの失敗 Global governance failure、政治的社会的不安定 Political and social instability、所得の不平等 Income disparity、汚職Corruption などが結び付けられています。国家の崩壊 State collapse とも結ばれていますが、ここまで行くと私の場合は考えが至りません。特に、財政危機と関連して、赤いマーカーの社会的リスクとして相互に深い関係が示されているのは政治的社会的不安定と所得の不平等です。財政危機から派生した両者を結ぶラインが太く濃く示されているのが見て取れます。

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次に、上のグラフはリポートの p.34 Figure 2.3: Youth Unemployment Rate by Region (2007-2013) を引用しています。若年層の失業率が上昇ないし高止まりしていることが見て取れます。今日発表された国際労働機関 (ILO) の2014年版の「世界雇用情勢報告」 Global Employment Trends 2014 でも p.21-22 にかけて Labour market situation of youth worsens further と題する分析を行っています。日本の場合は統計のクセもあって、そもそも各国比較で失業率が低いので、若年者失業率も世界の中では決して高くありませんが、それでも、国内で他の世代と比較すれば高いといえます。すなわち、2012年平均の失業率を見れば、15-24歳が8.1%、25-34歳が5.5%、35-44歳が4.1%、45-54歳が3.3%、55-64歳が4.1%、65歳以上が何と2.3%で、各年齢階級を平均すれば全国で4.3%となっています。15-24歳の失業率はこの倍近いということになります。非正規雇用にさえ就けずに失業状態で、我が国特有の事情かもしれませんが、OJT によるスキルアップ=生産性向上から取り残された若年者が決して少なくないと考えるべきです。若年層の失業は中高年の失業よりも、国民経済に対して生産性の向上を長期にわたって阻害するリスクが大きいと考えるべきです。特に我が国のような OJT に負う部分が大きい国では若年層の失業をさらに削減する政策が必要です。政府だけでなく、企業のアニマル・スピリットを喚起する必要があるかもしれません。

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最後に、このリポートで取り上げられている経済的なリスクのひとつの財政危機に関して、昨日開催された経済財政諮問会議における資料として「中長期の経済財政に関する試算」が明らかにされています。国・地方の基礎的財政収支及び公債等残高の試算結果は上の通りです。上のグラフから、経済再生ケースではプライマリー・バランスの赤字幅が縮小していますので、ボーン教授の検定によれば直感的には財政はサステイナブルと判定されそうな気もします。なお、財政の持続可能性については、私が地方大学に出向していたころに紀要論文で取りまとめた「財政の持続可能性に関する考察」がとてもオススメです。もっとも、学術論文ですから読みこなすにはそれなりの基礎知識が必要です。

従来から、世界経済フォーラムの主催するダボス会議のメディアでの取扱いについて、日本では欧米に比較して余りに注目度が低いと感じていましたが、総理大臣の出席とスピーチにより、もっとダボス会議に関する情報がメディアで流れることを切に願っています。

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