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2014年1月31日 (金)

いっせいに発表された政府統計から何を読み取るべきか?

今日は、月末の閣議日ですので主要な政府経済統計がいっせいに発表されました。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数が、それぞれ公表されています。消費者物価指数の東京都区部を除いて、すべて12月の統計です。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

12月の鉱工業生産、12年4月以来の高水準 海外向け設備好調
経済産業省が31日発表した2013年12月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は100.3だった。2012年4月(100.6)以来の高水準で、前月比では1.1%上昇した。プラスは2カ月ぶり。米国やアジア向けに設備関連の装置や機械が好調だったほか、国内の建設需要の増加を背景に建設材の生産も伸びた。
QUICKがまとめた市場予想(1.3%)は下回った。経産省は生産の回復傾向は続いているものの、一段の加速はみられないとして、基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いた。
業種別でみると15業種のうち13業種が上昇した。米国向けで、製造設備で使う数値制御ロボットやインドネシア向けのプレス機械が好調だった。復興や公共工事の増加を背景に建設向け鋼材などの需要が好調で、「金属製品工業」も生産が増加。スマートフォン(スマホ)やタブレット端末向けの液晶部材の生産が増えた「電子部品・デバイス工業」も指数を押し上げた。
出荷指数は0.6%上昇の99.7。生産が伸びた電子部品や業務用機械の出荷が増えた。一方、「輸送機械工業」は米国の寒波の影響で輸出が伸びず、2.5%低下した。出荷の増加に伴い、在庫指数は0.4%低下の105.7。在庫率指数は0.1%上昇の104.8だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、先行きは14年1月が6.1%上昇、2月は0.3%上昇する見込みだ。自動車で新車販売が好調なことを反映した。消費増税前の駆け込み需要に備えた増産も生産予測に影響している可能性はある。
併せて発表した10-12月期の鉱工業生産指数は前期比1.9%上昇の99.6と、4四半期連続でプラスを維持。一方で、13年通年の鉱工業生産指数(原指数)は前年比0.8%低下と、2年ぶりのマイナスだった。年前半に輸出が振るわなかったことが響いた。
12月の失業率、3.7%に改善 6年ぶり水準
総務省が31日発表した2013年12月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は前月比0.3ポイント低下の3.7%と07年12月以来6年ぶりの水準に低下した。緩やかな景気回復で失業者数が減った。新規に求職する動きが鈍った要因も重なった。改善は3カ月ぶり。
完全失業者数(同)は241万人で20万人減少した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は10万人減、「自発的な離職」は2万人減だった。完全失業率を男女別にみると、男性が0.3ポイント低下の3.8%、女性は0.2ポイント低下の3.5%だった。
就業者数(同)は6346万人で4万人減少し、非労働力人口は4491万人と22万人増えた。総務省は「12月は民間企業の採用活動が一時的に弱まる傾向がある。求職活動が一時的に鈍化した可能性がある」と分析している。
併せて発表した13年平均の完全失業率は4.0%で、12年に比べて0.3ポイント低下した。完全失業者数は20万人減の265万人、就業者数は41万人増の6311万人だった。
12月の有効求人倍率、1.03倍に上昇 6年3カ月ぶりの高水準
厚生労働省が31日発表した2013年12月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.03ポイント上昇の1.03倍と、07年9月以来6年3カ月ぶりの高水準だった。改善は3カ月連続。輸出企業の業績回復や東日本大震災からの復興需要、消費増税前の駆け込み需要などを反映し、製造業や建設業で求人が増えた。QUICKがまとめた市場予想は1.01倍だった。
新規求人倍率は前月比0.08ポイント上昇の1.64倍と2カ月ぶりに改善した。雇用の先行指標となる新規求人数が2.8%増えたうえ、新規求職申込件数が2.3%減った。
前年同月と比べた新規求人数(原数値)は10.9%増えた。業種別に見ると自動車関連を含む製造業が31.1%増えた。職業紹介や労働者派遣業などを含む「サービス業(他に分類されないもの)」は19.7%増、情報通信業は10.7%増だった。
都道府県別で最も有効求人倍率が高かったのは愛知県の1.49倍、最も低かったのは沖縄県の0.61倍だった。
併せて発表した13年平均の有効求人倍率は、前年比0.13ポイント上昇の0.93倍だった。改善は4年連続。有効求人数は9.4%増、有効求職者数は5.9%減だった。
13年CPI、5年ぶりプラス 前年比0.4%上昇 上昇品目広がる
総務省が31日朝発表した全国の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、13年平均の生鮮食品を除く総合(コア指数)が、前年比0.4%上昇の100.1だった。上昇は5年ぶり。原発の稼働停止や円安による燃料の輸入価格の上昇を背景に、電気代やガソリンといったエネルギー価格が上昇した。他方、上昇品目は広がった。上昇品目は210で、下落は254。前年は上昇192、下落284だった。パソコンや携帯音楽プレーヤーなどの価格がプラスに転じた。
13年12月のコア指数は前年同月比1.3%上昇の100.6。ルームエアコンやテレビの価格が上昇し、7カ月連続のプラスだった。7カ月連続のプラスは07年10月から08年12月まで15カ月連続で上昇して以来で、1.3%の上昇率は08年10月(1.9%上昇)以来5年2カ月ぶりの大きさだった。上昇品目数は267、下落は188で、3カ月連続で上昇が下落を上回った。
食料とエネルギーを除く総合(コアコア指数)は前年同月比0.7%上昇の98.7で、3カ月連続のプラスだった。傷害保険料の引き上げや円安を背景にした海外パック旅行の価格上昇が引き続き影響した。
同時に発表した14年1月の東京都区部のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が0.7%上昇の99.0だった。

いずれもとてもよく取りまとめられた記事なんですが、さすがに、これだけ並べるともうおなかいっぱい、という気もします。次に、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、毎度のお断りですが、このブログのローカル・ルールで、直近の景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。これは鉱工業生産統計だけでなく、シャドーで景気後退期をお示ししたグラフすべてに共通です。

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まず、鉱工業生産は季節調整済みの前月比で+1.1%増でしたから、ほぼ市場の事前コンセンサスに沿った増加を示したと受け止めています。なお、引用した記事にもある通り、日経QUICKによる市場の事前コンセンサスは+1.3%増でした。先行きについては、製造工業生産予測調査で1月が前月比+6.1%増、2月が+0.3%増と引き続き伸びを見込んでいます。もっとも、4月からの消費税率の引上げに対する駆込み需要も1-3月期で終了するわけですから、上のグラフにも耐久消費財の出荷が12月には前月比でマイナスをつけているのが読み取れ、そろそろピークオフする可能性が現れているかもしれません。いずれにせよ、3月まで生産や出荷は堅調に推移し、4月の消費税率引上げでドンと落ちる、という形になる可能性が高いような気がします。消費については上下の往復で4月は前月比2桁マイナスもあり得ますが、然るべく経済対策も実施されますし、需要見通しをきちんと立てれば生産についてはそこまで行かないものと私は予想しています。

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10-12月期の四半期統計が利用可能になりましたので、上のグラフの通り、在庫循環図のグラフを書いてみました。私は政府の官庁エコノミストですので在庫循環図は時計回りになります。日銀エコノミストはこの逆で反時計回りになったりします。それはともかく、グラフは、緑の矢印でお示しした2008年1-3月期から始まって、オレンジ矢印の2013年10-12月期までです。緑矢印の直後の2008年9月にリーマン・ショックがあって景気は山を超えましたが、現時点ではまだ次の山に達しそうにはありません。内閣府のサイトにある「鉱工業の在庫循環図と概念図」に従えば、この在庫循環図から我が国の景気は在庫積増しの景気回復・拡大局面にあると考えられます。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数です。これも上から順に、失業率は景気の遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標、と多くのエコノミストは考えています。昨年2013年いっぱい12月までの統計を見る限り、雇用は極めて順調に推移しています。一致指標の有効求人倍率は1倍を超え、失業率も12月には信じられないくらいに低下しました。新規求人数も増加を続けています。従って、雇用は量的には極めて順調に拡大しており、そろそろ質的な賃金上昇や正規雇用の拡大が始まる段階に達しつつある、と私は受け止めています。前世紀初頭の米国のフォードのような企業家のアニマル・スピリットが我が国でも発揮されることを願っています。ただし、12月の失業率3.7%について私はやや信頼性が低いと考えています。すなわち、前回に同じような現象が現れたのは2011年9月の統計だったんですが、2011年8月の失業率4.5%から9月には4.2%にドンと低下したものの、2011年10月28日付けのエントリーで「失業率の大幅な改善はにわかには信じ難く、統計の信頼性について疑問を持つ向きがあっても不思議ではない」と書いて、翌月の2011年10月の失業率が4.5%に戻った記憶があります。今回も似た現象が起こる可能性が否定できません。ただし、この先、私は失業率は3%近い水準まで低下する可能性が十分あると考えていて、先日もある経済団体の実務者の方の質問に応じて、「3%そこそこまで失業率は低下する余地がある」と発言し、「せいぜい3%台半ば」とするその方の発言を否定したりしています。従って、12月統計の信頼性はともかく、失業率はまだまだ低下する可能性を否定しません。

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最後に、消費者物価の動向は上のグラフの通りです。棒グラフは青い折れ線で示した生鮮食品を除くコア消費者物価の前年同月比上昇率の寄与度となっています。ただし、上昇率を計算する基礎となる端数を持った指数が公表されていませんから、公表されている限りの指数とウェイトで私なりに計算しています。全国12月の消費者物価は生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率で+1.3%に達しました。前月11月が+1.2%でしたので大きな違いはないように感じられるかもしれませんが、この0.1%ポイントの上昇率の違いに私はかなり大きな意義を見出しています。というのは、先週1月22日のエントリーで取り上げた2013-2015年度の政策委員の大勢見通しにおいて、消費税率引上げの影響を除くケースの2014年度の政策委員の見通しの中央値がこの+1.3%だったからです。要するに、すでに2013年12月の時点で2014年度の日銀の物価上昇見通し+1.3%に達した、ということになります。もちろん、今年2014年4月からの消費税率引上げで需給ギャップがマイナスに動いて物価上昇率は下振れする可能性が高いですし、多くのエコノミストの論調では、たとえば、2014年1月に発表されたESPフォーキャスト調査では、日銀の物価目標について「達成できる」1人に対して、「達成できない」34人と、圧倒的に日銀のインフレ目標の達成可能性に否定的なんですが、少なくとも、統計に現れた物価上昇率は2015年度に2%に達するインフレ目標に整合的である、と理解すべきです。

繰返しになりますが、生産はやや市場の事前コンセンサスを下回ったものの、雇用や物価は極めて順調です。物価も日銀のインフレ目標にそって上昇率を高めています。デフレ脱却の十分条件である賃上げの条件は整備されました。

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2014年1月30日 (木)

消費税率引上げ前の駆込み需要で上振れする商業販売統計!

本日、経済産業省から2013年12月の商業販売統計が発表されています。統計のヘッドラインとなる小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で13兆5030億円、前年同月比で+2.6%増となった一方で、季節調整済みの指数では前月比で▲1.1%減となりました。なお、2013年通年の小売販売額は138兆9080億円、前年比で+1.0%増を記録しました。年間を通じた小売販売の前年比増加は2012年に続いて2年連続です。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の小売販売額2.6%増、消費増税控え自動車がけん引
経済産業省が30日発表した2013年12月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は13兆5030億円で、前年同月に比べ2.6%増えた。プラスは5カ月連続。12月としては2000年(14兆1110億円)以来の高い水準となった。14年4月の消費増税前の駆け込み需要などで自動車や家電製品の売れ行きが伸びた。
小売業の内訳は自動車が14.2%増と4カ月連続のプラス。機械器具も0.9%増。好調な住宅販売を背景に買い替え需要も広がり冷蔵庫やエアコン、洗濯機などが増えた。飲食料品は2.3%増だった。
百貨店とスーパーを含む大型小売店は0.9%増の2兆1394億円で、5カ月連続で増加した。衣料品は減ったが、飲食料品が伸びた。既存店ベースは0.1%増。百貨店は1.9%増えたが、スーパーは0.9%減った。
コンビニエンスストアは新規出店効果で4.9%増の8763億円。既存店ベースは0.3%減だった。
併せて発表した13年の小売業販売額は138兆9080億円で、前年に比べ1.0%増えた。プラスは2年連続。野菜の相場高や円安を背景とした石油製品価格の上昇などの影響が大きかった。自動車販売は12年のエコカー補助金打ち切りに伴う落ち込みが大きく、1.4%減と2年ぶりに減少した。

続いて、商業販売統計のうちの小売業販売のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の販売額の前年同月比伸び率、下は季節調整指数そのものを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期なんですが、毎度のお断りで、このブログのローカル・ルールにより、直近の景気循環の谷は2012年11月であったと仮置きしています。

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上のグラフを見ても読み取れるように、季節調整済みの前月比がマイナスを記録したものの、季節調整していない原系列の前年同月比でも、季節調整済みの指数でも、一昨年のミニリセッションを終えてから小売販売はほぼ増勢を維持していると考えてよさそうです。少し商品ごとにブレークダウンすると、4月の消費税率の引上げが表明された昨年2013年10月から、原系列の前年同月比で見て、電気製品が含まれる機械器具や自動車などの耐久消費財が高い伸びを続けて来たんですが、12月の前年同月比で+0.6%増にとどまっている織物・衣服・身の回り品や同じく+2.3%増の飲食料品といった半耐久財や非耐久財が、当然ながら、その商品の保存可能性や季節性に応じて、足元の1月から3月末にかけてドッと駆込み需要を発生させる可能性が大きいと私は考えています。従って、現状で景気は回復ないし拡大基調にあると多くのエコノミストは考えているんですが、この1-3月期は景気の基調に加えて駆込み需要もあって消費は増勢を強めると考えるべきです。大雑把な私の感覚では、駆込み需要の大きさはGDP比で0.5%から1%近く、4月以降にほぼ同額の反動減が現れる、と覚悟すべきです。

繰返しになりますが、消費税率の引上げ前後でGDP比0.5%から場合によっては1%に近い消費の駆込み需要と反動減は発生する可能性がああるものの、景気の基調がまだ回復ないし拡大であることに加え、かなりの規模の政府の経済対策、さらに、日銀の追加緩和の可能性まで考慮に入れれば、景気は腰折れせずに済むものと期待しています。

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2014年1月29日 (水)

今年こそお給料は上がるか?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、一昨日1月27日に大和総研から「本当に賃金は上がるのか?」と題した経済分析リポートが発表されています。結論からいうと、現政権の後押しもあって、企業業績が改善している製造業では賃上げの期待が持てる一方で、賃上げは非製造業への恩恵が大きく、非製造業の賃上げにも広がる動きとなる可能性がある、と見込まれています。まず、大和総研のサイトからサマリーを4点引用すると以下の通りです。

サマリー
  • 安倍政権による後押しもあり、賃上げの議論が高まっている。経団連が6年ぶりのベアを容認するといった動きもみられるが、最終的な賃上げ動向は個別企業の判断に委ねられることになる。今後の賃上げ動向を見通すため、賃金上昇を取り巻く各産業の環境を概観する。
  • アンケート調査によると、企業が賃上げに際して最も重視しているのは、圧倒的に企業収益動向である。ただし、過去の関係性においては、企業収益実績が影響を及ぼすのは一時金であり、今回注目されている基本給については、収益動向ではなく、労働需給との関係性が強い。
  • 足下で利益が大幅に改善している製造業では、賃金が上昇する可能性が高く、ベースアップについてもある程度は期待が持てるだろう。しかし、製造業の多くでは雇用の過剰感はさほど高まっておらず、追加的な労働力を確保する必要性は低いことから、ベースアップについては収益の改善が著しい一部の企業に留まり、全体としては一時金での対応となる可能性が高い。
  • 一方、非製造業では足下までの収益の改善が総じて小幅であることに加え、消費税増税を控え、先行きについても不透明感が強いことから、当面、賃上げには慎重にならざるを得ない。ただし、非製造業は製造業に比べて労働需給がタイトであり、追加的に労働力を確保する必要性が高いことから、賃金上昇圧力が強いものと考えられる。また、非製造業では賃上げによる自部門への恩恵が大きいこともあり、収益の改善が続けば、ベースアップの動きは広がりやすいと言えよう。

今夜のエントリーでは、大和総研のリポートからいくつかグラフを引用しつつ、リクルートジョブズの時給調査結果も示して、雇用や賃金の動向について私なりの見方も含めて簡単に取り上げたいと思います。

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まず、上のグラフは大和総研のリポート p.4/8 図表3 業種別にみた企業収益と労働需給 を引用しています。縦軸が企業収益、横軸が雇用不足/過剰感となるカーテシアン座標に雇用者数をプロットしています。当然ながら、右上にあるほど賃金上昇の圧力・可能性が大きい業種ということになります。製造業と非製造業で大雑把な特徴がつかめると思います。製造業はアベノミクスの成果もあって円高修正が進んで企業収益が上がっている一方で、依然として雇用過剰感が強く、他方、非製造業では企業収益は製造業ほど上がっていないものの、雇用不足感が強い、ということになります。もちろん、見れば分かりますが、震災復興などの要因もあって建設業だけは例外です。詳細は割愛しますが、企業収益は所定内給与にはほとんど影響を与えない一方で、所定内以外の給与にはある程度の正の効果を及ぼします。企業収益が増加すれば所定内ではないお給料、たとえばボーナスなどが増加するわけで、当然です。それに対して、労働需給は所定内給与にも所定内以外の給与にも正のインパクトを持ちます。これも当然です。ですから、建設業を別にすれば、製造業は企業収益から、非製造業は労働需給から賃金上昇が期待できるということになりますが、おそらく、先に顕在化するのは前者の製造業における企業収益の改善がボーナスなどの所定外給与に波及するというルートであろうと考えるべきです。

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次に、上のグラフは大和総研のリポート p.8/8 の図表6 賃上げが各産業の生産に与える影響 を引用しています。注にもある通り、家計最終消費が+1%増加した際に、各産業の生産に与える影響額について産業連関表を用いて試算しています。全産業で+4.2兆円の生産拡大効果を見込む中で、特に右側に並んだ非製造業で賃上げに伴う消費拡大の恩恵が大きいのが見て取れます。製造業がアベノミクスに伴う円高修正により輸出で稼いでいるのに対して、非製造業は賃上げに伴う国内の消費拡大から生産の波及効果の恩恵を受けるのは余りにも当然です。コトの始まりは製造業のボーナス増かもしれませんが、非製造業の賃上げまで我が国経済の好循環が望める可能性が指摘されていると私は受け止めています。しかしながら、経団連の現在と次期の両会長の1月27日の記者会見では、日経新聞の記事読売新聞の記事を見る限り、経営者団体は法人税率引下げの圧力団体になっているように見受けられ、ケインズ的なアニマル・スピリットで賃上げを断行するという気概があるのかないのか、私には不明です。

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ということで、リクルートジョブズの調査から、三大都市圏におけるアルバイト・パートと派遣スタッフのそれぞれの募集時平均時給を取りまとめたのが上のグラフです。2013年12月度派遣スタッフ募集時平均時給調査2013年12月度アルバイト・パート募集時平均時給調査のそれぞれからデータを取ってグラフ化しています。いずれの非正規雇用も昨年2013年年央から時給が前年同月比で上昇し始め、特に派遣スタッフの上昇は大きくなっています。そろそろ、正規職員の雇用拡大や賃上げが始まる可能性を示しているのかもしれません。もちろん、調整速度の違いから、非正規雇用の賃金よりも正規職員の賃金は遅れ、正規職員の雇用拡大はさらに遅れることとなる可能性が高いことは覚悟すべきです。

リフレ政策の下でデフレを脱却し、現在のようにプラスのインフレ率を達成すれば、まず第1段階として、実質賃金が低下して量的な雇用が拡大します。そして、続く第2段階として、量的な雇用が拡大して労働需給がタイト化すれば賃金上昇が始まる、ということになります。現在は第1段階から第2段階に差しかかる状況にあると私は考えているものの、4月からの消費税率引上げによって労働需給が再びルーズになる可能性はやや懸念されるところです。

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2014年1月28日 (火)

企業向けサービス価格指数(CSPI)上昇率は着実にプラスが続く!

本日、日銀から2013年12月の企業向けサービス価格指数 (CSPI) が発表されています。総平均指数は97.0で前年同月比上昇率が+1.3%、変動の大きい国際運輸を除く総平均で定義されるコアCSPI上昇率も96.1の+0.5%となりました。いずれも前年同月比で着実にプラスを記録しているように見受けられます。2013年平均で見ても、CSPI上昇率が+0.5%、コアCSPI上昇率は前年比保合いを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

13年企業向けサービス価格、5年ぶり上昇 円安進み
運輸など上昇

日銀が28日発表した2013年の企業向けサービス価格指数(2005年平均=100)は96.3と、前年比で0.5%上昇した。上昇は08年以来5年ぶり。外国為替市場での円安進行で外航貨物輸送や国際航空貨物輸送などの運輸関連のサービス価格が押し上げられた。首都圏を中心にした再開発事業やマンション建設、東日本大震災の復興関連で建設需要が高まり、諸サービスも上昇した。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引される価格水準を示す。
13年12月の指数は97.0となり、前年同月に比べ1.3%上昇した。上昇は8カ月連続で伸び率は08年8月(1.7%上昇)以来の大きさだった。
業種別にみると、運輸が前年同月比3.4%上昇した。年末休暇関連の需要や消費増税前の駆け込み需要が出て、荷動きが活発化した。
上昇品目が下落品目を上回る傾向が続いている。運輸やテレビ広告などで消費増税前の駆け込み需要が出ているもよう。日銀の調査統計局は「足もとで広がる値上げが駆け込み需要に後押しされたものか、今後も値上げが持続するのか、注視したい」としている。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(CSPI)とコアCSPIの上昇率とともに、企業物価(CGPI)上昇率もプロットしています。CSPI上昇率がCGPIに追い付いたように見えなくもありませんが、左右の軸で目盛りが異なりますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は昨年2013年11月だったと仮置きしています。

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日銀のインフレ目標は消費者物価(CPI)上昇率で2%ですから、それほど単純に企業物価(CGPI)やサービス物価(CSPI)に引き直せるわけではないんですが、少なくともここ数か月はCSPIもコアCSPIも前年同月比でプラスを維持していることから、CPIのインフレ目標もそれなりに捉えつつあると私は認識しています。特に、2013年通年のCSPIの総平均で2008年以来のプラスを記録し、国際運輸を除くコアCSPIでも前年比ゼロの保合いまで上昇率が上がって来たのは頼もしい限りです。円高修正ないし円安の進展による為替要因が少なからず寄与していることは事実でしょうが、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数からみた日本経済」でも、CSPIは他の物価指数と比べても需給ギャップとの相関が高く景気循環に敏感に動く傾向が強い、と指摘されている通り、CSPI総合の上昇率がプラスに転じた背景には需給ギャップに応じた動きも含まれていると考えるべきです。

さら需給ギャップ改善の背景には、CGPIの品目に比べて人件費がコストに占める比率が大きいCSPIで、景気の回復・拡大が雇用の増加につながり、労働需給の引締りから賃金上昇を引き起こしている可能性が指摘できます。ただし、これについては日を改めて取り上げたいと思います。

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2014年1月27日 (月)

赤字が続く貿易収支の構造要因と循環要因やいかに?

本日、財務省から2013年12月と2013年通年の貿易統計が発表されました。2013年の通年で見ると、輸出額は前年比+9.5%増の69兆7877億円で3年振りに増えた一方で、輸入額は前年比+15.0%増の81兆2622億円と4年連続で増加したため、差し引き貿易赤字は▲11兆4745億円と過去最大に達しました。まず、とても長くなってしまいますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

13年貿易赤字、過去最大の11兆4745億円
燃料や中国からの輸入増

財務省が27日発表した2013年の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は11兆4745億円の赤字だった。赤字額は12年(6兆9410億円)を上回り、比較可能な79年以降で最大。79年以降では初めて3年連続の赤字となった。
円安や原子力発電所の停止を背景に燃料の原粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が高水準だったうえ、中国からの輸入が増えたことが影響した。対中国の貿易赤字は5兆215億円と過去最大だった。
13年の輸入額は前年比15.0%増の81兆2622億円。4年連続で増加し、過去最大となった。うちLNGは17.5%増、原粗油は16.3%増。LNGは統計の残る82年以降で輸入額・数量とも最大だった。中国からは光電池など半導体等電子部品のほか、スマートフォンなど通信機や衣類の輸入も増えた。中国からの輸入額は17.4%増の17兆6502億円と過去最大となった。
輸出額は前年比9.5%増の69兆7877億円で3年ぶりに増えた。ただ円安による押し上げ効果が大きく、輸出数量指数は1.5%減だった。輸出額は米国向けなどの自動車が12.9%、中国向けのペットボトル原料などの有機化合物が38.8%それぞれ増えた。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=96円91銭で、前年比21.8%の円安だった。
地域別にみると、アジアからの輸入額が14.9%増の35兆9656億円と過去最大で、貿易黒字は46.2%減の1兆9103億円と3年連続で減った。対欧州連合(EU)の貿易赤字は6487億円と過去最大だった。一方、対米国の貿易黒字は19.8%増の6兆1198億円と2年連続で増えた。
同時に発表した13年12月の貿易収支は1兆3021億円の赤字だった。12月としては12年(6457億円の赤字)を上回り過去最大で、単月としても3番目の大きさだった。赤字は18カ月連続で9月以降、最長を更新し続けている。原粗油など冬季の燃料輸入がかさんだうえ、中国からの輸入が増えた。
輸入額は前年同月比24.7%増の7兆4126億円で、14カ月連続で増えた。輸入額は12月としては過去最大。輸出額は15.3%増の6兆1105億円で10カ月連続で増えた。輸出数量指数は2.6%増と3カ月連続で増加。為替レートは前年同月比24.0%の円安だった。
貿易収支を地域別に見ると、対中国は3835億円の赤字で、22カ月連続で赤字。中国からの輸入額と、対中国の貿易赤字額は12月としては最大だった。対欧州連合(EU)も246億円の赤字で、12月としては最大。対米国の貿易黒字は前年同月比13.9%増の5916億円で、12カ月連続で増えた。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、輸出入とその差額たる貿易収支のグラフ、特に下のパネルの季節調整済みの系列でトレンドを見れば、最近時点で明らかに輸出が伸びている一方で輸入がそれ以上に伸びており、従って、貿易赤字は拡大傾向にある、と理解すべきです。誤解を恐れず極めて大雑把にいえば、輸出が循環要因で低い伸びにとどまっている一方で、輸入は構造要因で大きく伸びている、と私は考えています。順序は逆になりますが、輸入が構造的に増加しているのは原発停止とそれに伴う燃料輸入の増加に起因すると考えて差支えありません。もちろん、それだけではなく、引用した記事にもある通り、中国からの輸入が増加した要因は循環的なものであり、景気局面の違いに起因します。すなわち、我が国が景気回復・拡大局面にある一方で、中国の景気が思わしくなく、その昔は日本に対して使われたような輸出攻勢がかけられている可能性が否定できません。特定の品目や時期に大きく伸びるという輸出ではありませんから、いわゆる「集中豪雨的輸出」とは違うような気もしますが、不振の国内で需要されなかった生産物の海外への輸出という形である可能性があります。

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輸出について詳しく見ると上のグラフの通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出金額の前年同月比伸び率を数量と価格で寄与度分解しています。下のパネルは我が国の輸出数量とOECDの先行指数のそれぞれの前年同月比伸び率をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月のリードを取っています。グラフから明らかな通り、現時点では、輸出の伸びは価格要因であり、数量が増加しているわけではありません。為替が円安に振れたのでその分の円建てでの受取りが増加しているわけです。もっとも、特にアジア向けと欧州向けで景気局面に起因する循環要因での輸出の伸び悩みが見られます。逆に、我が国よりも景気拡大が進んでいる米国向けに輸出は伸びており、米国との貿易収支も黒字を拡大させているのは引用した記事の通りです。中国に関しては、輸出の伸びの鈍化よりは輸入の急増の方が目立っている印象があります。アジア全体でもそうなっており、我が国の輸出の伸びに対するアジアの寄与度は依然として大きいものの、それ以上に輸入が増加している、という姿が見て取れます。また、Jカーブ効果も循環要因のひとつに上げられます。

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もうひとつの構造要因は貿易取引における通貨別比率です。2013年下半期のグラフは上の通りです。輸出の円建て比率は最近時点で少し落ちたものの、一時は40%を超えていた一方で、輸入は引き続き米ドル建てが70%を超えています。最近時点では燃料輸入が増加していることもあって米ドル建て比率はかえって上昇していたりします。これは原油が米ドル建てで取引されているためであり、円安が進めば円建ての輸入額が米ドル建てよりも大きく膨らむ要因のひとつといえます。

以上、大雑把ながら、我が国貿易赤字の構造要因と循環要因を見て来ましたが、当然ながら、構造的要因の原発停止に伴う燃料輸入増と貿易取引の通貨別比率は短期には変わりようがありません。循環的要因である景気局面の違いは中国や欧州に我が国に追い付いてもらうしかありません。いずれも、我が国の政策で影響を及ぼせる範囲は小さそうです。しかし、Jカーブ効果はそろそろ終了する局面に差しかかっても不思議ではありません。もっとも、1980年代のような弾力性ペシミズムは決して払拭されていませんから、為替で貿易収支が調整できる余地がどこまであるかは疑問です。私自身は来年くらいに貿易収支は黒字転換する可能性が十分にあると考えていますが、ESP フォーキャストで貿易収支の黒字転換に悲観的な見方が示されたのも理解できる気がします。

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2014年1月26日 (日)

桑原あいの新しいアルバム「THE SIXTH SENSE」を聞く

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桑原あいの2枚めのアルバム「THE SIXTH SENSE」を聞きました。トリオ・プロジェクト第2弾です。まず、曲の構成は以下の通りです。

  1. PAPERS
  2. LOST "ABILITY"
  3. INTUITION -your sixth sense-
  4. CLOCKLIKE DROPS OF WATER
  5. AUGURY, WAVES, DIVE!
  6. ONE DAY AFTER PREDICTION DREAM
  7. BRAINWORK
  8. METHOD FOR...
  9. LABORATORY

アルバム名も、曲名も、ほぼ大文字で統一したのは、世紀の変わり目あたりに同じタイトル、すなわち、The Sixth Sense というホラー映画があったのを意識したのかもしれません。ブルース・ウィリスの主演だった記憶があります。
それはともかく、デビュー・アルバムの「from here to there」が上原ひろみをかなり意識して作られた気がしたのに対して、この2枚目はかなり物足りない印象です。これが桑原あいの個性だと言われればそれまでなんですが、ジャズのピアニストとしてはどうかという気もします。エレクトーン出身のピアニストにしてはタッチがクリアだったんですが、うまく表現できないものの、何だかモヤモヤした演奏に聞こえてしまいました。アルバムとしてのまとまりにも欠ける印象です。あまりオススメしません。
下は YouTube にアップされていたトレイラです。

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2014年1月25日 (土)

エコノミスト誌のビッグマック指数

最新号のエコノミスト誌で久し振りにビッグマック指数が明らかにされています。下のグラフの通りです。ビッグマック指数は購買力平価のひとつの代理変数として見ているエコノミストが多いような気がします。クリックすると、ブラウザによりますが、別タブか、別画面で、通貨単位別の詳細な情報を提供するフラッシュが開きます。週末の軽いトピックの提供です。

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引用元はエコノミスト誌のサイトです。

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2014年1月24日 (金)

米国の貧困と経済的不平等はどのように認識されているか?

昨日、米国の非営利民間調査機関であるピュー・リサーチ・センターから米国における貧困や経済的不平等に関する意識調査結果 Most See Inequality Growing, but Partisans Differ over Solutions が発表されています。米国の代表的なメディアのひとつである USA TODAY との共同調査です。我が国でも貧困問題や経済的な不平等の問題は年を追うごとに深刻化していると認識されていますので、貧困や格差の問題で米国の国民意識は、エコノミストとして興味あるところです。まず、ピュー・リサーチ・センターのサイトからリポートの最初のパラをサマリー代わりに引用すると以下の通りです。

Most See Inequality Growing, but Partisans Differ over Solutions
There is broad public agreement that economic inequality has grown over the past decade. But as President Obama prepares for Tuesday's State of the Union, where he is expected to unveil proposals for dealing with inequality and poverty, there are wide partisan differences over how much the government should – and can – do to address these issues.

引用したサマリーにもありますし、何よりもリポートのタイトルが明らかに示している通り、政党支持、というか、政治的な立場を超えて貧困の広がりや経済的不平等の深刻化は共通に認識されているんですが、政治的な立場に従って、支持する解決方法は異なっています。今夜のエントリーでは図表を引用しつつ、貧困や経済的不平等に関する米国の国民意識の調査結果を簡単に紹介します。なお、この調査結果は pdf ファイルでも提供されています。

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まず、上の画像の前に、リポートには "Partisans Agree Inequality Has Grown, But Differ Sharply over Gov't Action" という表がありますが省略しています。タイトル通り、経済的不平等の進行は政党支持により違いはない、という結果を得ている表です。民主党支持層も共和党支持層も、過去10年間で富裕層が他の階層に対して不平等の度合いを高めている点については、ともに60%超が肯定しています。両党支持者の間で平均的な差は7%ポイントしかありません。しかし、"Wide Partisan Gap over How Best to Reduce Poverty" と題された上の表の通り、貧困削減や格差是正のために政府が何らかの行動を取るべきかどうかは共和党と民主党の両党支持者の間で大きな差がある、ということになります。当然、民主党支持層は政府の行動を支持し、共和党支持層は政府の介入を嫌います。なお、上の表は今回の調査結果のもっともコアになるものです。例えば、この調査結果を報じたハフィントン・ポストのサイトでもこの表が引用されています。

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次に、"More Republicans, Independents Favor Gov't Action on Poverty than Inequality"、すなわち、貧困削減や格差是正に対して政府が行動すべきかどうかについて、政党支持別に意識調査した結果は上の表の通りです。タイトルの通り、共和党支持者に比べて、民主党支持者や独立系は貧困削減に関しても、格差是正に関しても、いずれも政府が行動を起こすべきと考えています。ただし、少なくとも貧困削減に関しては共和党支持者も A lot/Some の合計が大きく過半数を超えている点は忘れるべきではありません。格差是正についても貧困削減には届きませんが、共和党支持者の間で A lot/Some の合計が過半数に近い点は見逃すべきではありません。両党の支持者の間で貧困削減や格差是正に対応する政府の行動について差があることは確かですが、政府の行動へのサポートが民主党支持層と比べて相対的に少ない共和党支持者の間でもそれなりに政府の行動を求める声は存在することを理解すべきです。すなわち、民主党支持者が貧困や格差問題への政府の行動を求める一方で、共和党支持者が政府の不介入一辺倒であるとの間違ったイメージは払拭されるべきだと私は考えています。

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引用の最後に、リポートから "Does Hard Work Lead to Success?" の結果グラフを引用すると上の通りです。2000年調査をピークに年を追って落ち続けて来たんですが、今年の調査では少し上昇しました。いずれにせよ、ほぼ60%以上ですので、米国らしく健全と私は受け止めています。ハードワーク、勤労が成功に導く鍵であることは当然ですが、経済社会環境などで貧困に陥ってしまった国民に対するセーフティネットも必要です。逆から見て、まじめに労働や勉強に努力しなくても政府が過剰に所得を保障するのは好ましくない面がある一方で、政府が貧困削減や格差是正に何の政策も持たずに国民個々人の努力の結果をそのまま受け入れることも適当ではありません。また、引用した図表以外にも、個人の努力を重視するか、個人を取り巻く環境を重視するか、と言った質問に対して、政党支持別のほかに所得階級別などの意識調査結果も示されています。かなり常識的な結果だと私は受け止めています。

何度もこのブログで繰り返しているように、私は雇用を重視するエコノミストとして、政府は国民に質の高い雇用を提供して所得を得る条件を整備しつつ、貧困に陥った場合のセーフティネットを準備し、社会的に受け入れられないような格差を是正する仕組みを用意することが求められています。米国でも日本でも、もちろん、別の国でも、程度の差はあるかもしれませんが、この原理は同じことだと思います。

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2014年1月23日 (木)

本日の雑感: 東京都知事選告示と田中投手のヤンキースとの契約 ほか

本日、東京都知事選挙が告示されました。猪瀬知事がわずか1年で辞職表明した後、細川元総理が小泉元総理の協力を得て、ほぼ脱原発の1枚看板で立候補し、与党の推す舛添元厚生労働大臣や共産党と社民党が推薦する宇都宮日弁連前会長やIT企業家の家入氏や航空自衛隊出身の田母神氏などと選挙戦に入ることとなります。メディアの報道によれば、争点は原発とオリンピックが中心になるそうで、2月9日の投票日まで各候補者が都民に支持を訴えることになります。私も東京都民ですので付与された投票権を行使しようと考えています。もっとも、すでに投票する候補者は決めています。

安倍総理がダボス会議に出席しスピーチをしました。全部で30分を軽く超えて長くなりますが、上の動画の通りです。ダボス会議を主催する世界経済フォーラムのサイトから引用しています。スピーチのタイトルは The Reshaping of the World: Vision from Japan となっており、日経新聞のサイトなどでは「法人税改革を国際公約」などと報じられています。何度も繰り返しますが、国内の購買力が企業に集中して消費者にトリックルダウンしていない現状で、法人税率の引下げの景気押上げ効果には私はまったく懐疑的です。

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それから、何といっても今日のトップニュースは東北楽天を昨年のパリーグ優勝と日本一に導いた田中将大投手のヤンキースとの契約でしょう。メディアで余りにも広く報じられていますから、7年契約総額1億5500万ドルというのは知れ渡っているような気もしますが、取りあえず、 nikkansuports.com のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

ヤンキース、マー君と7年契約発表
ヤンキースは22日、楽天から新ポスティングシステムを利用して大リーグ移籍を目指していた田中将大投手(25)と7年契約を結んだと発表した。AP通信などによると総額1億5500万ドル(約163億円)の大型契約。
年俸は6年目までが2200万ドル(約23億円)、7年目が2300万ドルで、総額でも単年でも日本選手史上最高となった。これまでの最高はイチロー外野手がマリナーズと結んだ2008年からの5年契約で、契約金を含め総額9千万ドル、年平均1800万ドルだった。契約には田中が希望すれば、4年目終了時にフリーエージェント(FA)となれる条項が含まれる。
ヤンキースのブライアン・キャッシュマン・ゼネラルマネジャーは「ヤンキースはチャンピオンにふさわしいチームをフィールドに送り続けようとする。それが伝統」と電話での記者会見で異例の大型契約について話した。
契約が完了したことで、新ポスティング制度に基づき2000万ドル(約21億円)の譲渡金がヤンキースから楽天に支払われる。ヤンキースには現在イチローと黒田博樹投手が在籍。かつては松井秀喜外野手が活躍した。
田中はプロ7年目の昨季、24勝0敗1セーブ、防御率1.27で、史上初めて無敗で最多勝を獲得。創設9年目のチームを初のパ・リーグ優勝と日本一に導いた。
自由に海外の球団に移籍できるFAの資格条件を満たしていないため、球団の同意を得て新ポスティング制度での大リーグ移籍を目指していた。

薄給の公務員からすれば目が眩むような金額が踊っていますが、国家予算の事業費などは別にして、個人のお給料としてはまったく実感のわかない数字だったりします。というか、実感のわく人は極めて少数でしょう。実力でこれだけもらえるようになろうとすれば並大抵の努力では叶いそうもありません。もちろん、天性の才能も必要でしょう。今年のシーズンで金額にふさわしい活躍を期待しています。なお、どうでもいいことですが、新しいポスティング・システムが採用され、球団の受取り額がヤケに減った気がします。その昔に、阪神から井川投手が大リーグに移籍した際に阪神球団が受け取ったのは30億円とウワサされていましたが、同じ先発完投型の投手として実力的には井川投手と同等か凌駕する田中投手に21億円とは、もちろん、為替レートも違うとはいえ、球団経営が報われないように感じてしまうのは私だけでしょうか。

雑感の最後に、今朝のNHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」のヒロイン夫婦の突然の祝言には少し驚いてしまいました。まだ1月もかなり残っているのに、早くも最終回かと目を疑ってしまいました。今後の展開はどうするのでしょうか?

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2014年1月22日 (水)

国際通貨基金 (IMF) 「世界経済見通し改定見通し」 World Economic Outlook Update は世界経済の成長の加速を予測!

昨日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し改定見通し」 World Economic Outlook Update が公表されています。今年2014年の世界経済の成長率は昨年10月の見通しよりも+0.1%ポイント高まって+3.7%に加速し、日本は+0.4%ポイント高まって+1.7%と見込まれています。まず、pdf の全文リポートから冒頭のサマリーに当たる Is the Tide Rising? の部分を引用すると以下の通りです。

Is the Tide Rising?
Global activity strengthened during the second half of 2013, as anticipated in the October 2013 World Economic Outlook (WEO). Activity is expected to improve further in 2014–15, largely on account of recovery in the advanced economies. Global growth is now projected to be slightly higher in 2014, at around 3.7 percent, rising to 3.9 percent in 2015, a broadly unchanged outlook from the October 2013 WEO. But downward revisions to growth forecasts in some economies highlight continued fragilities, and downside risks remain. In advanced economies, output gaps generally remain large and, given the risks, the monetary policy stance should stay accommodative while fiscal consolidation continues. In many emerging market and developing economies, stronger external demand from advanced economies will lift growth, although domestic weaknesses remain a concern. Some economies may have room for monetary policy support. In many others, output is close to potential, suggesting that growth declines partly reflect structural factors or a cyclical cooling and that the main policy approach for raising growth must be to push ahead with structural reform. In some economies, there is a need to manage vulnerabilities associated with weakening credit quality and larger capital outflows.

次に、IMF のサイトから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。前回2013年10月時点との比較も盛り込まれています。なお、下の画像をクリックすると別タブか別ウィンドウでリポート p.2 Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections のページだけを抜き出した pdf ファイルが開くようにリンクを張ってあります。今夜のエントリーでは、もともと3ページほどの短いリポートですし、チーフ・エコノミストのブランシャール教授のブログなどとともに、簡単に取り上げておきたいと思います。

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上の表にある通り、押しなべて先進国も新興国・途上国も成長率を加速させていますが、特に寄与が大きいのは米欧です。米国経済は2013年の+1.9%成長から2014年には+2.8%成長に大きく加速し、ユーロ圏欧州経済も長かった景気後退を終えて2014年には+1.0%のプラス成長を記録すると見込まれています。チーフ・エコノミストのブランシャール教授のブログでは、特に米国経済の高成長について、昨年12月の財政再建に関する合意によって民間需要が喚起される点が強調されています。他方、新興国・途上国は全体としては2013年の+4.7%成長から2014年には+5.1%成長に押し上げられる一方で、個別には中国経済が振るいません。すなわち、依然として成長率の水準は高いものの、2012-13年の+7.7%成長から2014年+7.5%、2015年+7.3%と徐々に中国の成長率が低下して行くのが見て取れます。シャドウ・バンキングなどへの信用規制のために資本コストが上昇し、成長をけん引している投資にマイナスの影響を及ぼす、との見方が示されています。
日本についてはリポートではそっけないんですが、これもブランシャール教授のブログでは、2014年の+1.7%成長は主として財政刺激と輸出によるものであり、よりサステイナブルな成長のためには消費と投資へバトンタッチされる必要がある、と指摘されています。もちろん、国債に対する市場の信認をつなぎ止めるために財政再建の必要性も強調しています。なお、見通しに関するダウンサイドのリスクとして、先進国においてはデフレと金融の不安定性、新興国・途上国においては米国の量的緩和縮小に伴う金融市場や外国為替市場でのボラティリティの上昇や国内需要の脆弱性などが上げられています。

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最後に、昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合において、「展望リポート」の中間レビューが行われ、2013-2015年度の政策委員の大勢見通しが明らかにされています。IMF の経済見通しとの異同が気にならないでもありません。特に消費者物価です。

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2014年1月21日 (火)

世界経済フォーラム「グローバルリスク 2014」 Global Risks 2014 に目を通す

今年は我が国の安倍総理がダボス会議でスピーチを行う予定ですが、はなはだ旧聞に属する話題ながら、このダボス会議を主催する世界経済フォーラムから昨年2013年12月30日に「グローバルリスク 2014」Global Risks 2014 が公表されています。今どきのことですから、pdf の全文リポートもアップされています。まあ当然でしょう。遅ればせながら、まず、10大リスク、すなわち、リポートの p.13 Table 1.2: Ten Global Risks of Highest Concern in 2014 を引用すると以下の通りです。

Table 1: Ten Global Risks of Highest Concern in 2014
  1. Fiscal crises in key economies
  2. Structurally high unemployment/underemployment
  3. Water crises
  4. Severe income disparity
  5. Failure of climate change mitigation and adaptation
  6. Greater incidence of extreme weather events
    (e.g. floods, storms, fires)
  7. Global governance failure
  8. Food crises
  9. Failure of a major financial mechanism/institution
  10. Profound political and social instability

なお、それぞれのリスクの定義はリポートの p.53-54 の Appendix A - Definitions of Global Risks 2014 で与えられています。今夜のエントリーではリポートから図表をいくつか引用しつつ、エコノミストの目から見た簡単な紹介をしたいと思います。主として、上の Ten Global Risks のうち、1と2と4のリスクを取り上げたいと思います。

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上のグラフはリポートの p.16 Figure 1.1: The Global Risks Landscape 2014 を引用しています。横軸はリスクが現実のものとなる蓋然性、縦軸はリスクが現実となった場合のインパクトを示していますから、このグラフで右上にあるリスクほど深刻であると考えるべきです。青いマーカーが経済的なリスクを示しており、そのうちの右上にプロットされているリスクとしては、財政危機 Fiscal crises と失業ないし雇用不足 Unemployment and underemployment ということになります。最初に引用した10大リスクの4番目の所得の不平等 Severe income disparity は青いマーカーの経済リスクではなく、赤いマーカーの社会的リスクとしてプロットされています。

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次に、リポートの p.21 Figure 1.4: The Global Risks 2014 Interconnections Map ではさまざまなリスクの相互関係が示されていますが、このチャートから財政に関する部分を取り出したチャートが上の通りです。直接にはリポートの p.27 から引用しています。財政危機と相互関係が深いリスクとして、ガバナンスの失敗 Global governance failure、政治的社会的不安定 Political and social instability、所得の不平等 Income disparity、汚職Corruption などが結び付けられています。国家の崩壊 State collapse とも結ばれていますが、ここまで行くと私の場合は考えが至りません。特に、財政危機と関連して、赤いマーカーの社会的リスクとして相互に深い関係が示されているのは政治的社会的不安定と所得の不平等です。財政危機から派生した両者を結ぶラインが太く濃く示されているのが見て取れます。

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次に、上のグラフはリポートの p.34 Figure 2.3: Youth Unemployment Rate by Region (2007-2013) を引用しています。若年層の失業率が上昇ないし高止まりしていることが見て取れます。今日発表された国際労働機関 (ILO) の2014年版の「世界雇用情勢報告」 Global Employment Trends 2014 でも p.21-22 にかけて Labour market situation of youth worsens further と題する分析を行っています。日本の場合は統計のクセもあって、そもそも各国比較で失業率が低いので、若年者失業率も世界の中では決して高くありませんが、それでも、国内で他の世代と比較すれば高いといえます。すなわち、2012年平均の失業率を見れば、15-24歳が8.1%、25-34歳が5.5%、35-44歳が4.1%、45-54歳が3.3%、55-64歳が4.1%、65歳以上が何と2.3%で、各年齢階級を平均すれば全国で4.3%となっています。15-24歳の失業率はこの倍近いということになります。非正規雇用にさえ就けずに失業状態で、我が国特有の事情かもしれませんが、OJT によるスキルアップ=生産性向上から取り残された若年者が決して少なくないと考えるべきです。若年層の失業は中高年の失業よりも、国民経済に対して生産性の向上を長期にわたって阻害するリスクが大きいと考えるべきです。特に我が国のような OJT に負う部分が大きい国では若年層の失業をさらに削減する政策が必要です。政府だけでなく、企業のアニマル・スピリットを喚起する必要があるかもしれません。

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最後に、このリポートで取り上げられている経済的なリスクのひとつの財政危機に関して、昨日開催された経済財政諮問会議における資料として「中長期の経済財政に関する試算」が明らかにされています。国・地方の基礎的財政収支及び公債等残高の試算結果は上の通りです。上のグラフから、経済再生ケースではプライマリー・バランスの赤字幅が縮小していますので、ボーン教授の検定によれば直感的には財政はサステイナブルと判定されそうな気もします。なお、財政の持続可能性については、私が地方大学に出向していたころに紀要論文で取りまとめた「財政の持続可能性に関する考察」がとてもオススメです。もっとも、学術論文ですから読みこなすにはそれなりの基礎知識が必要です。

従来から、世界経済フォーラムの主催するダボス会議のメディアでの取扱いについて、日本では欧米に比較して余りに注目度が低いと感じていましたが、総理大臣の出席とスピーチにより、もっとダボス会議に関する情報がメディアで流れることを切に願っています。

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2014年1月20日 (月)

ESPフォーキャストに見る貿易収支の黒字転換と賃金上昇の見通しやいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、先週1月15日に日経センターからESPフォーキャストの調査結果が発表されています。いつも通りの成長率と消費者物価上昇率の予想とともに、特別調査として貿易収支と賃金上昇についても公表されています。5日遅れで取り上げていますので、ごく簡単にグラフとともに紹介しておきたいと思います。

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まず、前期比年率で表示した実質成長率の予測は上のグラフの通りです。4月からの消費税率の引上げ直前の1-3月期に駆込み需要で+4%台半ばの高成長を記録した後、4-6月期には逆に▲4%台半ばのマイナス成長となる、要するに、ならしてみれば今年上半期1-6月期はゼロ成長、という予測です。その後は、+1%台半ばから後半のほぼ潜在成長率に見合った成長を続けた後、来年2015年10月の消費税率引上げ第2段の前後にも同じような駆込み需要と反動減が生じるとの予測です。

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興味あるのは貿易収支の予測です。2-3年くらいで黒字に復帰するとの予想と数年内は赤字のままという予想がほぼ拮抗しています。私は前者の予想を持っており、2015-16年には貿易収支は黒字転換すると見込んでいますが、実は、貿易収支については為替などの価格要因と景気などの需要要因という経済的な要因もさることながら、原発再稼働要因も決して無視できません。すなわち、原発をバンバン再稼働させれば貿易収支の黒字転換が進みますが、逆は逆で、脱原発を進めれば貿易収支の赤字解消は遠のきます。当然のことながら、私は原発政策を貿易収支に割り当てるのは反対します。すなわち、貿易収支を黒字にするために原発の再稼働を進めるのは本末転倒です。他方、日本は25年前に米国について「双子の赤字」と批判していて、多くのエコノミストは弾力せペシミズム、すなわち、為替レートは貿易収支や経常収支には大きな影響を及ぼさない、という経験もしています。ESPフォーキャストでも意見が分かれるのは理解できるところです。

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最後に、上のグラフは厚生労働省の毎月勤労統計ベースの所定内給与上昇率の予測です。景気に敏感な所定外給与を含めた現金給与総額はこれよりもさらに伸びる可能性がありますが、消費への影響が大きく、いわゆる「恒常所得」に近い概念として考えると所定内給与、ということになりそうです。経団連のように一部上場などの大企業だけを取れば、私は+1%近い伸びを見込めると考えていますが、中小企業も含めれば+0.5%には達せず、上のグラフの予測はいいセンではないかと思います。いずれにせよ、消費税率引上げに伴って価格に転嫁されれば実質所得はマイナスになる、ということです。増収増益で史上最高益に近い企業活動なんですが、我が国の企業家精神やアニマルスピリットの貧弱さが限界を露呈して縮小均衡に陥る危険がありそうな気もします。

今日の経済財政諮問会議で議論されたように、対日投資の促進を口実にして法人税率を下げるよう財界が要求するのであれば、その見合いで賃金を上昇させるべきです。思い切って賃金を引き上げたフォードのような経営者は日本にはいないんでしょうか?

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2014年1月19日 (日)

先週の読書から

今週読んだのは主に以下の3冊です。なぜか、警察小説とラブストーリーの組合せだったりします。図書館の予約が回って来ただけの単純な理由です。結果的に、3冊を3つの市と区の図書館から借りました。

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まず、横山秀夫『64』(文藝春秋) です。出版が2012年10月ですから、足かけ3年も図書館の待ち行列に並んだのかもしれません。私はこの作者の作品は初めて読みました。いわゆる警察小説です。作者のD県警シリーズの最新刊です。かなり、ありきたりのステレオタイプといえなくもありませんが、キャリアとノンキャリアの対立、警務部と刑事部の派閥抗争などを織り混ぜながら、もっとも卑劣な犯罪のひとつである誘拐事件が進みます。背景では、主人公の娘の家出もあります。大ベストセラーなんですが、私にはイマイチでした。

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次に、長岡弘樹『教場』(小学館) です。この作者の作品では『傍聞き』を読んだ記憶があります。やっぱり、警察小説の短篇集だったんですが、この『教場』の舞台は警察学校の初任者課程です。そこでもいろいろと事件が起こります。それにしても、実際に警察学校でこれだけの件数の退校者=辞職者が出るんでしょうか。私には想像もできない世界なのかもしれません。でも、小説としての出来はいいと考えています。

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おしまいに、青山七恵『めぐり糸』(集英社) です。昨年7月14日付けで同じ作者の『快楽』(講談社) の読書感想文を取り上げ、「清純派だった青山七恵の新境地」かもしれないとうそぶきましたが、その続きなのかもしれません。主人公の女性のとても常軌を逸したラブストーリーです。主人公自身の表現として、主人公と結婚相手である英而との関係を『ジェーン・エア』の主人公ジェーンとロチェスターになぞらえた上で否定していたりしますが、主人公と哲治の関係は『嵐が丘』のキャサリンとヒースクリフに似ていたりしないでもないと私は考えています。ものすごく不思議な男女関係です。不思議というだけであれば、東野圭吾『白夜行』と同じですが、その次元はまったく異なります。作者自身も主人公を通じて、p.477 で「わたしと哲治とのことはこの世のどんなに博識で聡明な人であっても永遠に理解できない関係なのではないか」と言わしめています。でも、表現力や文体の美しさなどはさすがのものがあります。最近10年くらいの芥川賞受賞作家、すなわち、2003年に金原ひとみと綿矢りさが同時受賞した後では、この青山七恵と川上未映子が傑出していると私は受け止めているんですが、前作『快楽』くらいからの青山七恵の変貌には、どう評価すべきは分からず少し戸惑いがあります。

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2014年1月18日 (土)

今年の花粉の飛散やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、日本気象協会から1月15日に「2014年春の花粉飛散予測」が公表されています。第3報だそうです。第1報と第2報はすっかり見逃していました。第3報によれば、今年の花粉飛散の始まりは例年通りで、飛散量は東京の場合は昨年よりもかなり少ないと予想されています。私のような花粉症に人間にとっては朗報です。

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2014年スギ花粉前線は上の通りです。日本気象協会のサイトから引用しています。2014年春のスギ花粉の飛散開始は、九州や東海地方の早いところは2月上旬、四国、中国、近畿や関東地方は2月中旬の見込みです。各地の飛散開始は概ね例年並みの時期ですが、北陸や東北の日本海側は例年より遅いと予想されています。よく、東京では「花粉は建国記念日からゴールデンウィークまで」といわれますが、始まりはドンピシャのようです。

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20113年に比べた花粉飛散量の予想は上の通りです。これも日本気象協会のサイトから引用しています。2014年春のスギ+ヒノキ、シラカバ花粉の飛散数は、北海道と近畿から九州地方にかけては例年並みかやや多いでしょう。東北と関東甲信、北陸、東海地方は例年より少ない見込みです。いずれにせよ、花粉の飛散数が多かった2013年に比べるとかなり少なく、30%から90%のところがほとんどです。東京周辺でも昨年比で半分以下の「非常に少ない」ですから、とても助かります。何分、花粉症だけは自助努力では大きな限界があり、それなりの対策を講じたいと考えています。

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がんばれ受験生! センター試験が始まる

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広くメディアで報じられている通り、今日から明日にかけて大学入試センター試験が実施されています。私も数年前に地方大学の日本経済論担当の教員として単身赴任した際に2年ほど試験監督を務めた記憶があります。英語のリスニングでICプレーヤーの不具合が発生しないことを願って緊張したことが思い出されます。
今年のセンター試験受験生は、11月29日に大学入試センターからプレス発表された資料によれば、志願者数が560,670人、前年度に比べて▲12,674人、▲2.2%の減少だそうです。少子高齢化に従って志願者数は減少しているようですが、まだまだ、受験生全員が志望校に合格するわけではありません。その意味で、広く志望校への合格を祈念するのは不誠実であると私は考えていますので、後悔しないように全力を出し切ることを希望します。

何はともあれ、
がんばれ受験生!

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2014年1月17日 (金)

12月に低下した消費者態度指数は消費税増税への警戒感を示すのか?

本日、内閣府から12月の消費者態度指数が発表されています。季節調整済みの一般世帯の消費者態度指数は12月には前月差▲1.2ポイント低下し、41.3となりました。「雇用環境」は上昇したものの、その他の3項目、すなわち、「耐久消費財の買い時判断」と「暮らし向き」と「収入の増え方」がともに低下を示しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の消費者態度指数、2カ月ぶり悪化 増税控えじわり警戒感
内閣府が17日発表した2013年12月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は41.3と前月(11月)から1.2ポイント低下し、2カ月ぶりに悪化した。同調査では今後半年間の暮らし向きなどを対象世帯に聞くため、4月の消費増税を控えた警戒感から、耐久消費財を買い控えようとする心理が働いたことが影響したとみられる。内閣府は基調判断を前月の「改善基調にある」から「足踏みがみられる」に判断を引き下げた。下方修正は13年8月以来4カ月ぶり。
指数を構成する4項目のうち「暮らし向き」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」がマイナスだった。大企業を中心に冬のボーナスが増えた半面、毎月勤労統計調査では基本給や家族手当など所定内給与の減少が続いていることが「暮らし向き」と「収入の増え方」の指数を押し下げた。
一方「雇用環境」は上向いた。11月の有効求人倍率は1.00倍と6年1カ月ぶりに1倍台になるなど雇用環境の改善が寄与した。
1年後の物価の見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)が0.8ポイント低下の88.4%と2カ月連続で減った。9割程度の世帯が上昇すると見込んでいるものの、足元で電気やガス料金が下がっていることが影響した。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は12月15日で、有効回答数は5682世帯(回答率67.6%)だった。

いつもの通り、いろんなことをとてもよく取りまとめた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。昨年2013年4月から新系列に移行しています。また、影をつけた部分は景気後退期なんですが、毎度のお断りで、直近の景気の谷は2012年11月であると仮置きしています。

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需要サイドの消費者マインドを代表する消費者態度指数は明らかに伸び悩んでおり、統計作成官庁である内閣府でも基調判断を「改善基調にある」から「足踏みがみられる」に変更しました。引用した記事では、4月からの消費税増税前の警戒感が強調されていますが、他の要因も見逃せません。すなわち、消費者態度指数を構成する各消費者意識指標についてコンポーネント別に前月差でみると、「雇用環境」が+0.1ポイント上昇した一方で、「耐久消費財の買い時判断」が▲3.1ポイント低下、「暮らし向き」が▲1.5ポイント低下、「収入の増え方」が▲0.6ポイント低下、と残る3項目は低下を記録しているところ、「雇用環境」が上昇して「収入の増え方」や「暮らし向き」が低下しているわけですから、量的な雇用が増加している一方で、質的な雇用条件や賃金が必ずしも同じ足並みで改善しているわけではない、ということが伺われます。これら2要因を総合すれば直感的な理解ながら、名目の賃金や雇用条件はそれなりに改善している気がしないでもないんですが、4月からの消費税率引上げを考慮すれば実質的な生活水準を低下させないだけの改善には及ばない、との受止めが広がっているんではないかとも考えられます。ただし、「耐久消費財の買い時判断」については消費税率引上げ前で安定しないことは確かです。

今日は月例経済報告閣僚会議も開催されています。1月の「月例経済報告」では景気の基調判断が上方修正され、2006年8月以来8年振りに「緩やかに回復している」と表現されました。家計部門による消費の拡大にけん引された景気拡大が、いかにしてキャッシュを溜め込んだ企業部門にバトンタッチされるか、中でも賃金は消費税率の引上げをカバーするだけの上昇を見せるのか、大いに注目です。

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第150回芥川賞と直木賞が決まる

広く報じられている通り、昨夜、選考会が開かれて第150回芥川賞直木賞が決定しました。芥川賞は小山田浩子「穴」(『新潮』9月号) に、直木賞は朝井まかて『恋歌』(講談社) と姫野カオルコ『昭和の犬』(幻冬舎) に、それぞれ授賞されることとなりました。誠におめでとうございます。
なお、これらの受賞作のうち、姫野カオルコ『昭和の犬』についてはすでに読んでいて、昨年2013年11月16日付けのエントリーで読書感想文をアップしています。このクラスの受賞作品を事前に読んでいるなど、世間からかなり遅れて読書している私のような鈍な人間にはめずらしいことです。自慢したくして仕方ありません。もっとも、読書感想文で「この作品は代表作とはならない」と書いてしまっています。直木賞を授賞されたんですから、代表作となりそうな気がします。大いにします。これからは作品の評価について、やや高めにバイアスをかけて読書感想文を書きたいと反省しています。

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2014年1月16日 (木)

大きく増加した機械受注と上昇続く企業物価

本日、内閣府から11月の機械受注統計が、また、日銀から12月の企業物価指数 (CGPI) が、それぞれ発表されています。それぞれの統計のヘッドラインを見ると、コア機械受注、すなわち、船舶と電力を除く民需で定義される機械受注は季節調整済みの系列で8826億円、前月比+9.3%増と大きく増加し、国内の企業物価上昇率は前年同月比で+2.5%と2%超の上昇が続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の機械受注、5年4カ月ぶり高水準 基調判断を上方修正
内閣府が16日発表した2013年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比9.3%増の8826億円だった。製造業、非製造業からの受注がともに伸び、リーマン・ショック前の08年7月(8875億円)以来、5年4カ月ぶりの高水準となった。プラスは2カ月連続で、内閣府は機械受注の判断を前月の「緩やかな増加傾向がみられる」から「増加傾向にある」に、2カ月連続で上方修正した。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は6.0%増の3537億円と2カ月ぶりに増加した。パルプ・紙・紙加工品業界や石油製品・石炭製品業界向けに、ボイラーやタービンといった火水力原動機、化学機械の受注が増えた。
船舶・電力を除いた非製造業から受注した金額は8.1%増の5506億円と2カ月連続のプラス。卸売業・小売業からコンピューターの受注が増加したほか、運輸業・郵便業から鉄道車両の受注が増えた。
11月に発表した船舶・電力除く民需の10-12月期の受注額見通しは前期比2.1%減。12月が前月比25.4%減までにとどまれば達成でき、19.6%減なら横ばいになる。これまで単月で最も大きかった落ち込みは09年1月の11.9%減のため、13年10-12月期は3期連続でプラスになる可能性が高い。
13年の国内企業物価、2年ぶりプラス 円安で輸入品価格が上昇
日銀が16日発表した2013年の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は101.9と、前年比で1.3%上昇した。為替相場の円安進行に伴う輸入品価格の上昇で2年ぶりにプラス転換した。
円安進行を映し、円ベースでの輸出物価は前年比で11.6%上昇。プラス幅は1974年(33.9%上昇)以来の大きさだった。輸入物価も1980年(44.8%上昇)以来となるプラス14.5%だった。
企業物価指数は出荷や卸売り段階など企業間で取引する製品の価格水準を示す。企業物価指数を項目別にみると「石油・石炭製品」や「非鉄金属」、「電力・都市ガス・水道」などが上昇した。円安で調達コストが影響した。飼料価格の高騰や夏場の猛暑で、牛肉や豚肉、鶏卵など「農林水産物」も上昇した。一方、販売競争による値下がりで「情報通信機器」などは下落した。
13年12月の指数は102.8と、前年同月比で2.5%上昇した。プラスは9カ月連続。前月比では0.3%上昇した。円安でガソリンなどが値上がりし、石油・石炭製品が上昇した。全820品目のうち前年同月比で上昇した品目は396品目、下落した品目は296品目だった。4カ月連続で上昇品目が下落品目を上回った。
円ベースの輸出物価は前年同月比で12.4%上がり、輸入物価も17.6%上昇した。

いつもの通り、いろんなことをとても適確に取りまとめた記事だという気がします。それにしても、先月もそうだったんですが、主要な統計が2つ発表されると記事の引用だけでかなり長くなってしまいました。企業物価は2013年平均の統計にも紙幅が割かれ、おなかいっぱいかもしれません。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期なんですが、毎度のお断りで、直近の景気の谷は2012年11月であると仮置きしています。

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上のグラフの通り、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は11月にかなり大きく増加しました。日経QUICKによる市場の事前コンセンサスは中央値が前月比で+1.2%増と緩やかな予想でしたし、レンジでも▲1.2%から+6.0%でしたから、予想のレンジを突き抜けた大幅増といえます。もちろん、月ごとの振れ幅の大きい統計ですから、12月統計ではそれなりの反動減は覚悟する必要がありますが、引用した記事にもある通り、受注水準もリーマン・ショック前の2008年7月以来、5年4か月振りの高い額に上っています。もっとも、前月比で増加したのは15業種のうちの4業種に過ぎず、特に、石油製品・石炭製品の前月比+390.5%増とパルプ・紙・紙加工品の+344.1%増が突出しています。統計作成官庁である内閣府は、基調判断を前月の「緩やかな増加傾向がみられる」から「増加傾向にある」に上方修正していますが、幅広い業種に支えられた受注増といえるかどうかは疑問が残ります。いずれにせよ、ならして10-12月期は前期比でプラスとなるのは確実ですし、あるいは1-3月期も消費税率引上げ前の駆込み需要による押上げ効果も一定程度はあると考えられますが、今年年央から先の動向が気にかかります。消費税率引上げにより景気が腰折れすると私は決して考えていませんが、それなりの駆込み需要とその反動減のスウィングを企業がどのように受け止めて設備投資に対応するかは不透明です。

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企業物価の国内・輸出入別の前年同月比上昇率と需要段階別の上昇率はそれぞれ上のグラフの通りです。国内物価の前年同月比上昇率は+2%台半ばまで拡大しています。円高是正による為替の効果が大きいと報じられていますが、少しずつ需給ギャップの縮小も物価の上昇に寄与していると感じ始めているエコノミストも少なくなく、私もそのうちの1人だったりします。アベノミクスに始まった円高是正に起因する素原材料や輸入品中心の物価上昇が、最終財の川下に波及しつつある姿が上のグラフからも読み取れます。しかし、企業物価はこのように順調に上昇率を高めていますが、どのくらい消費者物価まで波及するかというと、やや疑問に感じるエコノミストも少なくないと思います。消費者物価で測った日銀のインフレ目標2%の達成は、今年4月の消費税率引上げのショックを見極める必要がありますが、少なくとも2年後の時点での目標達成は微妙なところと考えているエコノミストが多そうな気もします。

いうまでもなく、機械受注の増加やインフレ目標に沿ってデフレ脱却を目指す物価の上昇は歓迎すべき動向なんですが、忘れるべきでないのは、この動きの背景に来年2014年4月からの消費税率引上げ前の駆込み需要やそれに伴う需給ギャップの縮小が部分的ながらも含まれている可能性が強く、耐久消費財ほどではないせよ、投資財の駆込み需要と4月以降の反動も決して無視できない点です。ある程度の覚悟をしておくべきです。

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2014年1月15日 (水)

経団連新会長の下で日本企業のアニマルスピリットはどこに向かうか? ほか

広く報じられている通り、昨日付けの経団連のお知らせ「会長候補者の内定について」により、東レの榊原会長が6月から次期経団連会長に就任することが明らかにされています。私は1か月ほど前の昨年2013年12月17日付けのエントリー「4月から消費税率が引き上げられる来年度の経済見通しやいかに?」で、同日付けの日経新聞の記事「企業の国債保有膨らむ トヨタ4兆円超、成長への投資課題に」を取り上げ、日本企業のアニマルスピリットの欠如を大いに嘆いているんですが、かつては「財界総理」とまで称された新しい経団連会長の下で企業活力はどこに向かうんでしょうか。昨年2013年10月5日付けのこのブログのエントリーでルイジ・ジンガレス『人びとのための資本主義』(NTT出版) を取り上げて、米国の企業家が本来のケインズ的なアニマルスピリットではなく、政府をキャプチャして補助金や有利な制度変更求める構図を苦々しく紹介したんですが、我が国企業も「成長戦略」と称して政府をキャプチャしたり、それら政府からの優遇措置により溜め込んだ利益を設備投資にも雇用者の賃金にも回さずに国債を買ったりする路線を突っ走るんでしょうか。
邦訳されているものの原典を読んでいないので、George A. Akerlof and Robert J. Shiller (2009) Animal Spirits: How Human Psychology Drives the Economy, and Why It Matters for Global Capitalism, Princeton University Press の p.143 からの孫引きで申し訳ありませんが、GE の経営者であったジャック・ウェルチは以下のように自伝で発言しているそうです。ここまでいえる日本の経営者がどれほどいるんでしょうか。

  • Jack Welch Jack: Straight from the Gut
    "We wouldn't merely grow with GNP... Instead, GE would be the locomotive pulling the GNP, not the caboose following it."
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目を世界に転じると、世銀から「世界経済見通し」Global Economic Prospects 2014 が発表されています。今年2014年の世界経済の成長率見通しは+3.2%と2013年の+2.4%から+0.8%ポイント上昇し、今年に続く2015-16年も+3%台半ばの堅調な成長が続くと見込まれています。リポートの総括表として、成長の Infographic を世銀のサイトから引用すると上の通りです。このサイトに収めるため縮小をかけています。少し見づらいかもしれませんので、上の画像をクリックすると、別タブか別ウィンドウで pdf の全文リポートから抜き出した見通し総括のページが開きます。

最後に、昨日、米国の保守系のシンクタンクであるヘリテージ財団から 「経済自由度指数」Index of Economic Freedom 2014年版が発表されています。日本は世界178か国中で25位、スコアは72.4で "Mostly Free" にランクされています。なお、ランク付け不能のアフガニスタン、イラク、コソボ、リビアの4か国を除いて、どん尻の世界178位は北朝鮮だったりします。このブログで取り上げるのは初めてかもしれません。ご参考まで。

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2014年1月14日 (火)

景気回復を示す景気ウォッチャーと赤字の続く経常収支

本日、内閣府から12月の景気ウォッチャー調査の結果が、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーは現状判断DIが前月から+2.2ポイント上昇して55.7となり、引き続き、消費税率引上げに伴う駆込み需要が牽引力ながら、マインドは着実に改善を示しています。他方、経常収支は季節調整済みの系列で▲466億円、季節調整していない原系列で見て▲5928億円と、いずれも大きな赤字に落ち込んでいます。まず、日経新聞のサイトからそれぞれの統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

街角景気、12月2カ月連続改善 年末商戦が好調
内閣府が14日発表した2013年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.2ポイント上昇の55.7と2カ月連続で改善した。2013年5月(55.7)に並ぶ高い水準。好不況の分かれ目となる50を11カ月連続で上回った。11カ月連続で50を上回るのは2005年5月-06年5月の13カ月連続以来。景気回復を背景に冬のボーナスが増え消費者の購買意欲を刺激したほか、消費増税前の駆け込み需要も出て、客単価を押し上げた。年末商戦が好調で、高額品や自動車、家電を中心に売上高が伸びた。
内閣府は街角景気の基調判断を前月の「緩やかに回復しつつある」から「緩やかに回復している」に上方修正した。上方修正は2カ月連続。
家計分野では「客の冬のボーナスが増えている。消費増税前の駆け込み需要も発生している。新型エコカーの発売で新車受注は好調に推移している」(東北の乗用車販売店)との声があった。「時計宝飾など高額品のみならず、コートやスーツといった衣料品の動きが好調。景気の回復と消費増税前のボーナス支給が相まって高単価品をまとめ買いしている」(東海の百貨店)といった前向きなコメントが多かった。
雇用分野では「内定辞退者が出るほど就職内定率は前年同期を上回っている」(四国の大学)との指摘もあった。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は0.1ポイント低下の54.7と4カ月ぶりに悪化した。家計分野で「消費増税前に化粧品など買いだめできる商品の売上高が大きく伸びる」(近畿の百貨店)と期待する声があった一方で、「消費増税直前になり、個人消費は耐久消費財への支出のため高単価な外食には抑制的になると思われる。4月以降は不透明感が強い」(東海の高級レストラン)と懸念する見方もあった。「消費増税までのカウントダウンが始まり、耐久消費財などにお金が流れるため不要不急の買い物は後回しになる」と不安視する声も聞かれた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は90.5%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
11月経常収支、5928億円の赤字 過去最大
財務省が14日発表した2013年11月の国際収支(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は5928億円の赤字だった。赤字は2カ月連続で、現在の基準で比較可能な1985年以降で赤字額は最大となった。円安を背景に燃料輸入など貿易収支の赤字額が11月としては過去最大となり、所得収支の黒字で補えなかった。
貿易・サービス収支は1兆3643億円の赤字で、11月としては過去最大だった。赤字は20カ月連続で、赤字額は前年同月と比べて3690億円拡大した。うち貿易収支は、輸送の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで1兆2543億円の赤字だった。輸出額は17.6%増の5兆6316億円。米国向け自動車やオーストラリア向けの軽油、中国向けにペットボトル原料などになる有機化合物が増えた。輸入額は22.1%増の6兆8859億円と、11月としては最大だった。原粗油や液化天然ガス(LNG)など燃料や航空機の輸入額が増加した影響が大きい。旅行や輸送動向を示すサービス収支は1100億円の赤字だった。
円相場は1ドル=100.03円で、前年同月比23.7%の円安(インターバンク直物相場・東京市場中心値の月中平均レート)だった。
所得収支の黒字は前年同月比0.8%増の9002億円で、3カ月連続で増えた。海外への日本企業の配当金支払い増加などで証券投資収益が減ったが、直接投資収益は日本での事業で得た配当金や支店収益などの海外への支払いが減ったため増えた。
季節調整済みの経常収支は466億円の赤字で、3カ月連続の赤字だった。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事だという気がします。ただし、経常収支については記事の最後のパラを除いて季節調整していない原系列の統計についての記述であり、このブログにおける季節調整済みの系列と少し印象が異なる可能性があります。次に、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。全国ベースの現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、影をつけた部分は景気後退期ですが、いつものお断りで、一昨年2012年11月を直近の景気の谷と仮置きしています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIは、いずれもかなり高い水準にあります。引用した記事にもある通り、現状判断DIは昨年2月から12月まで11か月連続で50を超えていますし、先行き判断DIにいたっては一昨年12月から13か月連続で50超えです。ただし、DIですから水準よりも方向性を重視すべきであり、上のグラフを見ても理解できる通り、最近数か月で現状判断DIと先行き判断DIが微妙に乖離しているのが見て取れます。現状判断DIは12月までボーナスの増加にも支えられた駆込み需要で上昇を続けていますが、先行き判断DIはすでに4月以降の消費税引き上げを盛り込んで上昇が一服していると考えるべきです。12月については▲0.1ポイントの低下を記録しています。でもまあ、引用した記事にもある通り、現状判断DIを見て前月の「緩やかに回復しつつある」から「緩やかに回復している」に基調判断を微妙に半ノッチ上方修正する統計作成官庁の気持ちも分からなくもありません。それにしても、四国の大学では内定辞退者が出るほど大学生の就職がいいような記事ですが、決してウソとは思わないものの、そのまま信じるには、私は大学生の就職の悪い時期を見過ぎたのかもしれません。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線の経常収支の推移に対する各コンポーネントを積上げ棒グラフでプロットしています。季節調整済みの系列ですので、引用した記事のように季節調整していない原系列の統計に基づく論調とは少し印象が異なるかもしれません。グラフを見れば明らかですが、赤の所得収支は大きな変動ありませんが、9月統計から黒の貿易収支が大きなマイナスを記録しているのが見て取れます。それにも増して、やや私が気にかけているのは、2011年3月の震災から傾向的に経常収支が黒字幅を縮小させており、11月統計もこのトレンドから大きく外れているわけではない、という点です。単純なボックス-ジェンキンズ型のモデルに従えば、経常収支は赤字に突っ込んだ後も、このまま経常赤字を拡大させて行くような気もします。しかし、前回の衆議院の解散から円高是正に入って1年余りを経過し、貿易収支のJカーブ効果が終わると黒字化に向かう可能性もいくぶんなりともあって、この先見定めにくい展開かもしれません。

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今夜は経常収支の参考グラフをいくつか書いてみました。上のパネルは国際収支ベースの貿易収支、すなわち、輸出入とその差額たる貿易収支で、下のパネルは季節調整していない原系列の経常収支と季節調整済みの経常収支です。貿易収支のうちの輸出については、リーマン・ショック後のV字回復を終えて、ほぼ3年間輸出が停滞していたところ、円高修正に伴って回復を見せています。しかし、それ以上に輸入が増加しており、結果として、貿易赤字が膨らんでいるのが見て取れます。当然ながら、通関に基づく貿易統計と同じ動きです。それから、経常収支に関して季節調整のありなしでは、もちろん、単月では大きく異なる場合もありますが、方向性としては当然ながら同じであり、単純にグラフを先行き方向に引き伸ばせば経常赤字は膨らむ基調にあるように見えます。

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2014年1月13日 (月)

新成人に明るい未来は開けるか?

今日は成人の日で各地で成人式が行われていることと思います。私の成人式はもう30年余りも昔のことでした。ということで、先週1月8日にネットリサーチ大手のマクロミルから「2014年 新成人に関する調査」が発表されています。2008年から始まったこの定点調査も6回目になります。昨年と比較して、今年の新成人は未来に明るい展望を持つ割合が増えているようです。まず、マクロミルのサイトからトピックスを4点引用すると以下の通りです。

トピックス
  • 期待・応援している新成人: 1位「志田未来」、2位「神木隆之介」3位「武井咲」
  • "日本の未来"は「明るい」と思う44%、昨年に比べ22ポイントの大幅アップ
  • "自分の未来"は「明るい」と思う63%、昨年に比べ12ポイントアップ
  • SNS 利用は、「LINE」が82%で最多。「Twitter」67%、「Facebook」49%

まず、トピックに上げた最初の点は、あくまで、人気投票ですから、私のブログではパスします。トピックの第2点から第4点までについてグラフを引用しつつ、ごく簡単に紹介すると以下の通りです。ただし、マクロミルのモニター登録をしている新成人が調査対象ですから、それなりのバイアスはあると考えてながめるべきことはいうまでもありません。

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トピックで引用した第2点目と第3点目、すなわち、日本と自分の未来は明るいか、の回答のグラフを連結して一挙に引用すると上の通りです。上の2つの棒グラフが「日本の未来」、下の2つが「自分の未来」です。それぞれ、今年2014年の新成人と昨年2013年を比較できるように並べてあります。特徴として、第1に「日本の未来」を明るいと考える新成人は昨年よりも今年の方がグンと多いにもかかわらず、それでもまだ過半に達せず、明るいよりも暗いの方が多くなっています。逆に、第2に、「自分の未来」は「日本の未来」ほど昨年から増えていませんが、過半は明るいと考えており、暗いを凌駕しています。これは今年と昨年の新成人の気質などの違いというよりも、新成人を取り巻く経済社会の環境の差であると考えるべきです。日本の未来が明るいと考える新成人が増加したのは、いうまでもなく、アベノミクスの賜物です。

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上のグラフの通り、SNS の利用は昨年の新成人よりも10%ポイント近く増加して、とうとう90%を超えました。これも昨年と今年の新成人の違いというよりも、今年は昨年から社会全体で SNS の利用が増加したということなんでしょう。LINE と Twitter が Facebook を上回って増加しているのはスマホの利用が普及したからだと受け止めています。逆に、私のようにパソコンからしか SNS を利用しない中年のオジサンは Facebook なのかもしれません。mixi も昨年から半減したんですから、経営立直しを迫られるのも当然だという気がします。この分野では日本独自のサービスよりも、国際的により広く普及したサービズに規模の経済が働くのかもしれません。
グラフを引用した以外にも、いくつか注目すべき結果が報告されています。例えば、就職に対して不安を感じている人は76%、とか、これからの日本の政治に「期待できる」24%、「期待できない」76%、とか、9割以上が、「国民年金は、将来、自分がもらえるか不安」と感じている、とか、国民年金制度は「信頼できない」が73%などです。詳しくは「調査結果詳細レポート」が pdf でアップされています。ご参考まで。

何はともあれ、
がんばれ新成人!

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2014年1月12日 (日)

最近の新刊書の読書感想文

正月休み明け最近の新刊書の読書感想文です。一応、私の頭の中では新刊書のうちなんですが、人気本であるため図書館で延々と待って借りられた本もあります。そこそこ回って来たと感激していますが、正月休みを終えてドッと返却されたのかもしれません。

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まず、ニーアル・ファーガソン『劣化国家』(東洋経済) です。著者は言わずと知れた人気の経済史学者で、英国生まれのハーバード大学教授です。昨年は同じ著者の『文明』(勁草書房) を読み、この私のブログの9月18日付けの記事で取り上げています。内容としては、昨年2013年10月5日付けのエントリーで取り上げたアセモグル & ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』上下 (早川書房) とかなり共通する部分があります。ファーガソン教授は序章のタイトルである「なぜ西洋は衰退したのか」という問いに対して、民主主義、資本主義、法の支配、市民社会の4つの観点から説き起こして解決策を提示しようと試みています。なお、本書をよりよく理解するために、p.24 で上げられている本に目を通しておいた方がベターです。私はほとんど読んでいましたが、エルナンド・デ・ソト『資本の謎』だけは邦訳を見たことがありません。

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次に、清家篤『雇用再生』(NHKブックス) です。慶應義塾塾長であり、労働経済学の大家の著書です。ただし、著者の専門分野である労働経済学にとどまらず、労働法制や労使関係など、幅広い雇用問題について包括的に取り上げています。新卒一括採用の合理性や解雇規制の緩和への否定的な見解など、経路依存的な雇用慣行を引合いにして、ある意味で、パングロシアンな議論を展開しているように見えかねませんが、私のような雇用を重視するエコノミストから見れば、十分に常識的で世間一般の受止めからからしても違和感のない内容ではないかと考えています。雇用については「岩盤規制」という表現がなされるように、日本経済の構造改革のために極端な議論も必要とされる場合も否定しませんが、他方に、この本のような常識的な議論もバックグラウンドに留保しておくことも重要だと考えています。

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次に、村上春樹編訳『恋しくて』(中央公論新社) です。これまた、編者は我が国を代表する小説家で、日本に限らず世界を通じてノーベル文学賞に最も近い作家の1人といえましょう。編者が書き下ろした作品を含めて、10編のラブ・ストーリーが編まれています。最初の方にある「ニューヨーカー」などから取られた若い人たちのストレートなラブ・ストーリーが私には分かりやすかったですが、「恋と水素」と題する飛行船ヒンデンブルク号の事故に題材を取ったゲイの男性間のラブ・ストーリーも興味深いものがありました。映画にもなったタイタニック号の事故を、ちょっと思い出させるものがあります。もっとも、タイタニックほどは時間的な余裕はなかったと想像しています。繰返しになりますが、若い恋人達のストレートなラブ・ストーリーに私はひかれるものを感じました。どうでもいいことかもしれませんが、竹久夢二調の表紙には評価が分かれるところかもしれません。私の評価はやや低いといえます。

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次に、ジョン・アーヴィング『ひとりの体で』上下(新潮社) です。私はこの作者の作品は大好きで、昨年2013年3月20日の記事では前作である『あの川のほとりで』上下 (新潮社) を取り上げています。この最新作は表紙を見てインスパイアされる通り、ゲイとかバイセクシュアルをテーマにしています。それに、この作者らしく、演劇とレスリングが関係して来ます。まあ、この作者の代表作である『ガープの世界』を思わせるものがあるわけです。日本語版ではページ数の半分近く、上巻ほとんどすべてが、主人公の通った男子単学のプレップ・スクール時代の物語であり、最後は60代後半まで語りは続きますが、かなりの程度に青春物語としても読めるんではないかと思います。昨年暮れ12月29日付けのエントリーで @nifty 何でも調査団から「学生時代についての本音・実態調査」を取り上げ、高校生のころが学生時代としては1番楽しかった、との結果を示しましたが、私も6年間一貫制の男子単学の中学校・高校に通っていましたので、分かる気がします。少し物足りない可能性があるのは、社会全体としてゲイやバイセクシュアルに対する許容度が広がっていく過程を描写し切れておらず、主人公の周囲にとどまった狭い世界しか描けていない、という批判はあろうかと思います。しかし、作者の半自伝的な小説なんですから、そこまでの「大きな物語」を求めるのは酷かもしれません。

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最後に、新刊なのか、既刊書なのか、やや判断に迷うところですが、エラリー・クイーン「国名シリーズ」です。角川文庫から上の画像にある5冊まで新訳が出版されています。ただし、私はまだ読み始めたところであり、これらの5冊をすべて読んだわけではありません。実は、この「国名シリーズ」10冊すべてを中学生から高校生のころに読んだ記憶があります。1960年前後に翻訳された創元推理文庫版ではなかったかと思いますが、40年近く前のことですので記憶力の限界を超えて中身はほとんど覚えていません。「国名シリーズ」の中でも評価の高い『エジプト十字架』、『ギリシア棺』、『オランダ靴』が新たに翻訳されましたので、近くの図書館で一気に借りました。この先、『アメリカ銃』、『シャム双生児』、『チャイナ橙』、『スペイン岬』、『ニッポン樫鳥』と新訳が進むことを期待しています。なお、最後の作品は「国名シリーズ」には入らないとの説もありますが、私は詳しくありません。私の場合はすでに忘却の彼方なんですが、その昔の創元推理文庫版と新訳の角川文庫版では、かなり言葉遣いなんかが違うので、ゴッチャにして読まない方がいい、とミステリ好きの友人から聞きました。何らご参考まで。

つい昨日から今日にかけて、長らく図書館の待ち行列に並んでいた横山秀夫『64』(文藝春秋) と、タイミングよく新刊書が図書館に入荷されたところでゲットできた青山七恵『めぐり糸』(集英社) を借りることが出来ました。今週の読書はエラリー・クイーンの「国名シリーズ」を押しのけて、この2冊が中心になりそうです。

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2014年1月11日 (土)

12月の米国雇用統計では大きく低下した失業率と物足りない雇用者増のどちらを信じるべきか?

昨日1月10日、米国の労働省から12月の米国雇用統計が発表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+74千人の増加にとどまった一方で、失業率は0.3%ポイント低下して6.7%になりました。いずれも季節調整済みの統計です。まず、Wall Street Jpurnal のブログ・サイトから統計のハイライトを引用すると以下の通りです。

Highlights From the December Jobs Report
The Labor Department on Friday reported December jobs gains were much lower than expected as the year ended. U.S. payrolls rose 74,000 last month, the smallest rise in three years, while the unemployment rate dropped to 6.7%, Labor said Friday. Here are highlights:
Revisions: Employment gains for November and October were revised upward by a total of 38,000. Employers added 241,000 jobs in November, up from an initially reported 203,000. October's gain was unrevised at 200,000.
Jobless Rate: The December unemployment rate decreased to 6.7%, from 7.0% the prior month, but that was because more people dropped out of the workforce rather than found new jobs.
Yearly Figures: For 2013, employers added an average of 182,000 jobs each month. That is roughly in line with 2012, when payrolls expanded by about 183,000 positions each month.
Participation Rate: The December civilian labor force participation rate was 62.8%, weaker from a month earlier. It is also down from 63.6% in December 2012.
Longer-run Trend: December's mild advance held back longer-term averages. Monthly job gains averaged 172,000 over the past three months, which was in line as well with the six-month trend. For the first half of 2013, payrolls expanded by 195,000 each month.
Winners: In December, employment rose in the retail sector, which added 55,000 new jobs. Other strong gains came from the wholesale trade industry (15,000) and professional and business services (19,000).
Losers: But employment in the construction sector was down by 16,000. Some economists had predicted before the report that colder weather could be to blame. The federal government's workforce continued to shrink, with 7,000 fewer positions last month from November.
Earnings and Work Week: The average work week for private employees edged down to 34.4 hours last month from the prior month. Meanwhile, average hourly earnings for private employees rose by 2 cents to $24.17 from a month earlier. Over the year, average hourly earnings have risen by 42 cents.

やや長いですが、まずまずよく取りまとめられている印象があります。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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産業別では、引用した記事の Winners と Losers にもある通り、クリスマス商戦を含む12月ですから季節調整しても小売業の雇用者像が大きくなっており、減少は建設業で生じているようです。11月の雇用者増が+38千人上方改定されていますが、これが12月に生じていたと勝手に後ろ倒しして考えてみても、+74千人に+38千人を加えて+100千人余りにしかならず、雇用者数の増加幅としては物足らない一方で、失業率はドカンと0.3%ポイントも低下して6.7%に達しました。雇用者数と失業率の間に整合性がなく不可解な結果で、私はどう解釈していいのか、現時点では何ともいえません。家計を対象とした統計と事業所を調査する統計の違いはありますので、このような不整合は可能性としては生じ得るものの、エコノミストとしては解釈に困ってしまいます。ただ、ADP のデータでは12月の民間部門は+283千人の雇用者増と報告されていますから、米国労働省の統計では失業率低下の方がもっともらしくて、雇用者数増加が小幅だったのは何らかの統計の綾だった、というふうに解釈すべきかもしれません。

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次に、日本の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見てほぼ底ばい状態が続いていて、サブプライム危機前の3%超の水準には復帰しそうもないんですが、底割れして日本のようにゼロやマイナスをつけて、デフレに陥る可能性は小さそうに見えます。連邦準備制度理事会 (FED) は QE3 の出口戦略を進める可能性は十分あると受け止めるべきです。

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2014年1月10日 (金)

景気動向指数に見る我が国景気は1-3月期に一時的なピークか?

本日、内閣府から11月の景気動向指数が発表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数とCI先行指数ともに前月より上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の景気一致指数、5年4カ月ぶり高水準
0.1ポイント上昇

内閣府が10日発表した11月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が0.1ポイント上昇の110.5だった。リーマン・ショック前の08年7月(110.7)以来5年4カ月ぶりの高水準で、3カ月連続で上昇した。
11月の有効求人倍率が6年1カ月ぶりに1倍台を回復したことに加え、気温が下がり衣料品をはじめとした季節商品の販売が伸びたことが寄与した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を前月までの「改善を示している」で据え置いた。
数カ月後の先行きを示す先行指数も1.0ポイント上昇の110.8となり、07年5月(111.4)以来6年6カ月ぶりの高水準だった。4月からの消費増税を前に需要が堅調な自動車の在庫率が下がったほか、新設住宅着工床面積が増加。住宅や自動車に使われる鉄鋼の在庫率も低下した。東証株価指数(TOPIX)の上昇も指数を押し上げた。
景気に数カ月遅れる遅行指数は1.8ポイント上昇の114.7だった。08年12月(116.6)以来4年11カ月ぶりの高水準。企業の業績改善を受けて法人税収が増えたたほか、完全失業率も改善した。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDIは一致指数が85.0、先行指数が77.8だった。

いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数とCI先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は2012年11月だったと仮置きしています。

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引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「改善」で据え置いています。11月のCI一致指数では、有効求人倍率(除学卒)、小売業の商業販売額(前年同月比)、耐久消費財出荷指数などが指数の押上げに寄与し、逆に、中小企業出荷指数(製造業)、大口電力使用量などがマイナスに寄与しています。駆込み需要もあって、我が国の景気は順調に回復・拡大しています。昨夜のエントリーで取り上げた帝国データバンク景気動向調査でも景気DIは着実に上昇を続けており、おそらく、今年1-3月期が一時的な景気のピークになることは間違いありません。さらに、4月からの消費税率引上げは、経済対策の効果もあって、景気後退を招くほどの大きなネガティブなインパクトを及ぼすわけではないと、多くのエコノミストは予想しています。

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2014年1月 9日 (木)

帝国データバンクによる景気動向調査では景気DIが調査開始以来の最高を記録!

本日、帝国データバンクからTDB景気動向調査の結果が公表されています。ヘッドラインとなる景気DIは前月から+1.2ポイント上昇して49.5となり、6か月連続の上昇で過去最高を2か月連続で更新しています。明日は内閣府から政府の景気動向指数が発表されますが、民間調査でも消費税率引上げ前の駆込み需要が浮彫りにされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のポイントを引用すると以下の通りです。

調査結果のポイント
  1. 「大企業」「中小企業」「小規模企業」の全規模で過去最高を更新した。規模間格差が4カ月連続で縮小しており、アベノミクス効果が幅広い規模にまで波及してきた。
  2. 『小売』は2カ月連続で改善した。自動車や家電・情報機器などが1年前と比較して急激に改善した。しかし、繊維製品や専門商品は30台にとどまるなど、業種間での二極化がみられ、10業界中で最も低い水準となった。また、『農・林・水産』は「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、日本産水産物の輸出の好調や食品偽装表示問題が重なり養殖魚の価格も上昇したこともあり、大幅に改善した。
  3. 地域別では、『北海道』『北陸』『九州』など6地域が過去最高を更新した。他方、小売やサービスなどが高い『南関東』や『近畿』では、建設や不動産など公共工事関連が低く、全体を下回る状況となった。

ということで、帝国データバンクのサイトから全国の景気DIのグラフを引用すると以下の通りです。

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調査対象の全10業種すべてが改善を示した上、企業規模別に見ても規模間格差が4か月連続で縮小視、また、地域別に見ても10地域中9地域で前月を上回り、うち6地域が過去最高を更新しています。帝国データバンクでは、アベノミクス効果が小規模企業まで波及した結果と分析しています。さらに、先行きについても恐ろしく強気で、1か月後の景気DIは12月から+0.6ポイント上昇して50.1に、3カ月後は+2.8ポイントの52.3にさらに上昇した後、消費税率引上げ後の6か月後でも51.9を維持し、1年後は53.2を見込んでいます。私はやや怪しいと受け止めています。当然、消費税率引上げ前の駆込み需要と引上げ後の反動の大きさは、符号こそ違え、相関があると考えるべきです。「山高ければ、谷深し」ともいいます。この駆込みとその後の反動はGDP比でそれぞれに1%近く、おそらく、それぞれに絶対値で0.5-0.8%くらいに達すると考えるべきです。あくまで、駆込みと反動がそれぞれにこれだけあるんですから、上下考え合わせて4-6月期にはGDP比で▲1.0-1.5%くらいの落ち込みが生じる可能性があります。そのための経済対策も準備されていますが、現在の景気に浮かれることは賢明ではない可能性があり、政策的なショックはそれなりに大きいと覚悟すべきです。

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2014年1月 8日 (水)

UNICEF のリポートに見る日本の子供の幸福度は世代間不平等の犠牲か!

UNICEF 調査部 (Office of Research) から Innocenti Report Card がシリーズで公表されていますが、昨年12月に日本の子供の幸福度に関するリポート Child Well-being in Rich Countries: Comparing Japan が明らかにされています。Innocenti Report Card の第11巻である Child Well-being in Rich Countries: A comparative overview の日本版という位置づけで、先進31か国の中における日本の子供の幸福度を分析しており、個別の国としては31か国の中でトップにリポートが公表されています。まず、UNICEF のサイトからリポートの概要 Description を引用すると以下の通りです。

Description
Using national data sources from Japan and matching them carefully with the data used in the original Report Card 11, this report manages to include Japan in the league table and subsequent ranking in each of five dimensions in order to assess Japan's performance in child well-being among developed countries. Maintaining as much as possible the original framework of the RC11, the analysis is based on indicators that are strictly comparable between Japan and the other countries.

上に引用した Description の中に "five dimensions" というのがありますが、以下の通りです。なお、最後のカッコ内の数字は先進31か国の中の日本のランクです。

Dimension 1
Material well-being (21)
Dimension 2
Health and safety (16)
Dimension 3
Education (1)
Dimension 4
Behaviours and risks (1)
Dimension 5
Housing and environment (10)

全体を総合した日本のランクは31か国中で6位となっており、経済規模並みにまずまず上位を占めているといえます。ただし、リポートでも "Japan's poor performance in 'Material wellbeing' is puzzling given the excellent performance in 'Education' and 'Behaviours and risks'." と指摘されており、上のテーブルにある第3項目の教育水準や第4項目の日常生活のリスクの低さが優れているにもかかわらず、第1項目の物質的な幸福度が低いのは "puzzling" ということになります。単純に考えれば、一例として、教育水準が高ければ生産性も高くて、物質的な豊かさにもいい影響を及ぼすと考えるのが普通だからです。今夜のエントリーでは、このパズルも含めて、簡単にリポートを紹介したいと思います。グラフなどの引用元をグローバルに示しておくと以下の通りです。

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まず、提示したパズルに対するいきなりの種明かしですが、日本の子供達の物質的な幸福度が低いのは、子供を持つ家庭の間で相対的貧困などの格差が大きく、貧困が広がっているからです。上のグラフはリポートの p.6 Figure 1.1a Relative child poverty rates を引用しています。グラフが多くなり過ぎるので引用は控えますが、上のグラフの次のページのグラフ、すなわち、リポートの p.8 Figure 1.1b Child poverty gaps でも日本の成績は悪くなっていて、我が国の世代間不平等のしわ寄せが子供に及んでいる実態が浮彫りにされています。昨年2013年12月12日付けのエントリーで社会保障費用統計を取り上げた際にも言及した通り、社会保障給付が高齢の引退世代に極めて手厚い一方で、将来を担う世代である子供を持つ家庭には不平等や貧困が広がっている実態が国際機関のリポートでも示唆されたと受け止めるべきです。このリポートからは必ずしも明らかではありませんが、バックグラウンドに圧倒的な投票パワーを有するシルバー・デモクラシーにより、日本の社会保障政策が左右されているのは明らかでしょう。

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次に、日本の子供達の努力や能力などを見ると、上のグラフは第3項目の教育の一例として、リポートの p.19 Figure 3.2 Educational achievement by age 15 を引用していますが、12月4日付けのエントリーで取り上げた OECD の学習到達度テスト (PISA) の結果では優秀な成績を収めていることが明らかにされています。さらに、下のグラフは第4項目の日常生活のリスクの低さの一例として、リポートの p.24 Fig 4.2a Teenage fertility rate を引用していますが、10代での出産率は極めて低くなっていますし、これ以外にも、グラフは引用しないものの、リポートでは日本の子供達の日常生活上のリスクの低さを示すものとして、過体重は少なく、朝食をとる割合は高く、アルコールの摂取割合は低い、という結果などが示されています。体重、朝食、アルコールの3項目では日本はすべて先進31か国中でトップです。

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要するに、特筆大書されるべきは、日本の子供達はよく勉強して世界でもトップクラスの成績を収めるとともに、日常生活でも節制に努めてリスクがとても低い一方で、一部に歪んだ社会保障政策にも起因して、子供を有する家庭に不平等や貧困が広がっており、そのために物質的な幸福度が低くて、総合的な子供の幸福度の足を引っ張っている、ということになります。この UNICEF のリポートは国立人口問題・社会保障研究所との共同研究の成果として発表されているんですが、著名な国際機関と国立研究機関からこのような結果を示されて、日本の民主主義は将来社会の担い手たる子供達を持つ家庭に対する政策をどのように改めるんでしょうか。それとも、圧倒的な投票パワーを背景にしたシルバー・デモクラシーにひれ伏して無視を決め込むだけなんでしょうか。

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2014年1月 7日 (火)

「ドリーム効果」で大きく膨らんだ森記念財団の試算による東京オリンピックの経済効果やいかに?

本日、森記念財団の都市戦略研究所から「2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う我が国への経済波及効果」と題するリポートが公表されています。このブログの昨年2013年9月10日付けのエントリーでも紹介した東京都発表の経済効果は、生産誘発額が3兆円と控えめな内容だったんですが、森記念財団の試算では数倍に大きく膨らんでいます。

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ということで、文字が小さくてやや見づらいんですが、上の画像はリポートの p.6 試算結果 を引用しています。左上の東京都発表の経済効果では粗付加価値額1.4兆円、生産誘発額3.0兆円とされていたところ、森記念財団の試算では粗付加価値額8.3兆円、生産誘発額16.4兆円を積み増して、合計で粗付加価値額9.7兆円、生産誘発額19.4兆円に上ると結論しています。我が国全体で約20兆円、GDPの0.3%に相当する経済波及効果があり、延べ121万人の新たな雇用を創出すると、東京都の試算から大きく膨らんでいます。
森記念財団の独自試算で膨らませた部分を詳しく見ると、画像の右上の緑色の部分では東京オリンピック開催に伴う直接的な需要の増加として、訪日外国人の増加による消費拡大と宿泊施設の建設増加を見込み、また、青い背景の部分では都市づくり事業の前倒し効果として公的な基盤整備事業と民間都市開発事業のそれぞれの前倒しを見込み、さらに、黄色い部分では新規産業の創出効果として、新規雇用の増加と外国企業の誘致を見込んでいます。最後に、ピンクの背景の部分は「ドリーム効果」として、リポートの p.5 にある試算の前提条件の表現を借りると、「社会全体で華やかな喜ばしい出来事が起きたとき、だれもが気分が高揚して、つい財布のヒモが緩み、様々な消費行動が拡大する」効果を見込んでいて、実は、粗付加価値額でも生産誘発効果でもこの「ドリーム効果」がもっとも大きかったりします。すなわち、森記念財団が東京都の試算に積み増した粗付加価値額8.3兆円のうちの3.7兆円、生産誘発額16.7兆円のうちの7.5兆円が、それぞれ「ドリーム効果」によるものです。森記念財団の積増し額の半分近くが「ドリーム効果」によるものだったりするわけです。
最後に、リポートの最終ページでは、オリンピック開催による経済効果を雇用創出につなげるため、高齢者や女性の労働参加を促進するとともに、雇用の流動化などを促す労働市場政策を推進し、また、オリンピック後の反動による経済落ち込みを軽減するため、新たな需要創出につながるイノベーションを生み出すための規制改革を実行する必要性を指摘しています。オリンピックの有無にかかわらず、我が国経済に必要とされている政策でしょうが、改めて東京オリンピックを景気としてリポートの最後に付け加えた、といったところでしょうか。

私は「ドリーム効果」がゼロだと主張するつもりは毛頭ありません。というよりも、「ドリーム効果」がかなりの額に上り、森記念財団の試算を上回る可能性すらあると考えています。というのも、東京都の試算より膨らんだとはいえ、オリンピックの経済効果がGDPの0.3%というのはやや小さい気がするからです。ともあれ、このブログの従来からの主張の通り、消費をサポートするのはマインドと所得です。マインドに支えられた「ドリーム効果」は無視できません。でも、今年こそデフレ脱却に向けた動きを進め、安部総理も主張する通り、賃金が上がり所得が増えることを切に願っています。

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2014年1月 6日 (月)

今年の新成人は景気楽観派が多いのか?

ものすごく旧聞に属する話題なんですが、昨年12月11日にセイコー・ホールディングスから2014年新成人に関する調査結果が発表されています。ちょうど1週間後の来週月曜日は成人の日の祝日ですので、図表とともに今年の新成人について簡単に取り上げておきたいと思います。まず、朝日新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

新成人、「消費増税」に最も関心 3割が景気肯定派
最も関心があるのは「消費増税」――。セイコーホールディングスが今年成人式を迎える男女1236人に今年の関心事をたずねたところ、こんな結果が出た。回答した新成人の多くが就職活動を控えており、消費増税による景気の先行きに注目しているようだ。
私生活をのぞく「2014年の一番の関心事」を自由回答で聞いたところ、「消費増税」(16.1%)がトップ。2位に「景気」(6.5%)、3位に「サッカーW杯」(6.4%)が続いた。一方、「私生活」では、「就活・就職」が9.7%で首位だった。
今年の景気がどうなるかについては、「分からない」が51%で最も多かったが、「良くなる」「どちらかと言えば良くなる」という肯定派が30%にのぼった。理由には「東京五輪が決まったから」、「給料アップの会社が増えてきそうだから」があげられた。肯定派にお金の使い道をたずねると、「旅行」(49%)と「買い物」(32%)の二つで8割超を占めた。
アンケートは、セイコーHDが民間調査会社に委託してインターネットを使って昨年11月に実施した。

なお、引用した記事にもありますが、回答者数は男女同数の1,236サンプル、1,000人を超える大多数が学生だったりします。また、以下のグラフは昨年12月発表ですから、「来年」が現在の今年、すなわち、2014年ですので念のため。

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まず、私生活を除く2014年の一番の関心事についての質問の回答は上の通りです。かなり多くの新成人が「消費税増税」を上げています。121人の性別は男性が51人と女性が70人だそうで、女性の方が消費税に対する関心が高くなっています。なお、除外された私生活で予想される2014年のトップニュースに関する質問では、大学生が大多数を占めるため「就活・就職」がトップとなっています。また、引用した記事にもある通り、2014年の景気見通しは50.6%が「分からない」との回答なんですが、「良くなる」5.8%と「どちらかといえば良くなる」24.6%を合わせて30.4%が景気肯定派となっています。私は新成人ではありませんが、私もこの中に入るような気がします。

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次に、大切にしたいものについての質問の回答は上の通りです。「お金」や「時間」が上位を占めていますが、セイコー・ホールディングスが調査主体ですから、調査主体バイアスに従って「時間」を上げる回答者もいた可能性を指摘しておきたいと思います。消費税は女性の方の関心が高かったんですが、「お金」を大切に思うのは微妙に男性の方が多かったりします。新成人ですから中年の私と違って、「体(健康)」なんぞはまだ気にもならない年代なのかもしれませんが、「ネットワーク(絆)」よりも重視されているのは意外でした。また、グラフは引用しませんが、成功した人に関する質問では、2012年は山中伸弥教授、2013年は東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大投手が上げられています。分かる気がします。

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最後に取り上げるのは、調査主体に敬意を表して、普段の生活で増やしたい時間についての質問の回答です。上のグラフの通りです。「勉強時間」、「趣味の時間」、「睡眠時間」、「読書の時間」、「アルバイトの時間」の順となっています。ただし、グラフは引用しませんが、この後に、減らしたい時間についての質問もあり、トップが「睡眠時間」となっています。2番目の「だらだらする時間」とか、3番目の「何もしない(ボーっとしている)時間」は分かりますが、睡眠時間については不足している新成人と爆睡し過ぎて時間が足りない新成人の格差が大きいのかもしれません。

成人式や新成人に関するトピックは、例年、マクロミルの調査から引用しており、昨年は1月15日付けのエントリーで「2013年 新成人に関する調査」を取り上げています。昨年が1月8日の発表でしたし、今年は今日の時点ではまだ発表されていませんが、このマクロミルの調査は「定点調査レポート」と銘打っていますので、発表されたら可能な限り取り上げたいと考えています。

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2014年1月 5日 (日)

忘年会から正月に乱高下した体重をコントロールする!

12月中旬くらいから始まった忘年会に加えて、正月の暴飲暴食で乱高下した体重を必死になってコントロールしています。今日は朝からエアロバイクを漕いだり、プールで泳いだりして、一時は23を超える日もあったBMIも、何とか22そこそこまで落ち着かせることが出来ました。下のグラフは昨年8月1日以降のBMIの推移です。それなりに狭いレンジに収まっているように見えますが、日々の乱高下がものすごかったりします。

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年末年始休暇を終えて明日から仕事が始まる!

私のようなオフィス勤務のサラリーマンは年末年始休みで9連休という人も少なくなかったような気もしますが、それでも明日からは通常通りのお仕事が始まります。役所ではご用始めです。その昔ののどかな時代は、ろくに仕事もせずに、女性が着物姿で出勤したり、男はお酒だけ飲んで酔っ払ったりと、いろいろとあったんですが、今では通常勤務です。

年々、年賀状は減少傾向ですが、私の勝手な観察によれば、メイリオのフォントを使う場合が増えつつあるような気もしないでもありません。お国のために、明日からがんばってお仕事します。

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2014年1月 4日 (土)

年末年始休暇に読んだ既刊書

どうもいいことですが、この年末年始休暇には綾辻行人、法月綸太郎、我孫子武丸、麻耶雄嵩などの京都大学推理小説研究会、ミス研出身の作者のミステリを読もうと考えていたんですが、方向を間違えたというか、エドワード D. ホックの短篇集をいっぱい借りて読んでしまいました。3シリーズ14冊を3つの区立図書館から借りて、このくらいのボリュームであれば1日に2冊は読み進んでしまいますので、ほぼ1週間弱で読み切ってしまいました。読んだ順に以下の通りです。煩瑣になりますので、書名を表すカッコは省略してあります。悪しからず。

  1. 怪盗ニック・シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
    • 怪盗ニック登場
    • 怪盗ニックを盗め
    • 怪盗ニックの事件簿
    • 怪盗ニック対女盗賊サンドラ
  2. サム・ホーソーン医師シリーズ (創元推理文庫)
    • サム・ホーソーンの事件簿 Ⅰ
    • サム・ホーソーンの事件簿 Ⅱ
    • サム・ホーソーンの事件簿 Ⅲ
    • サム・ホーソーンの事件簿 Ⅳ
    • サム・ホーソーンの事件簿 Ⅴ
    • サム・ホーソーンの事件簿 Ⅵ
  3. オカルト探偵サイモン・アーク・シリーズ (創元推理文庫)
    • サイモン・アークの事件簿 Ⅰ
    • サイモン・アークの事件簿 Ⅱ
    • サイモン・アークの事件簿 Ⅲ
    • サイモン・アークの事件簿 Ⅳ

アーサー・コナン・ドイル卿によるシャーロック・ホームズを主人公とするシリーズに比べて、拳銃の普及率が高い米国のミステリだからだと私は解釈しているんですが、殺人事件が多い気がします。でも、サム・ホーソーン医師のシリーズは1920年代から1940年ころを時代背景としているため、ナチスにからんだトピックが見受けられ、また、オカルト探偵サイモン・アークのシリーズでは第2時世界大戦後の冷戦を背景にしているため、ソ連や共産圏諸国の陰謀めいたお話があります。実際に執筆したのはそういった年代ではないんですが、それぞれの時代背景をよく考慮していると感心しました。中身はすべて本格ミステリです。特に、サム・ホーソーン医師のシリーズは密室ものが多い気がします。

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2014年1月 3日 (金)

年末年始休暇に読んだ新刊書

ここ1週間ほどの年末年始休暇に読んだ、あるいは、これから読む予定の新刊書です。何とめずらしいことに、すべて買って読む本に分類されます。通常は半分以上が借りて読む本となってしまったんですが、この年末年始休暇の新刊書の読書は数少ない買って読む本ばかりでした。

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まず、宮部みゆき『ペテロの葬列』(集英社) です。杉村三郎シリーズの第3巻というか、私の印象では3部作の最終巻です。昨年TBSドラマの「名もなき毒」は月曜日の放映ということでプロ野球の移動日のお休みに当っていたので、私も可能な範囲で熱心に見ていて、このテレビドラマでは3部作のうちの前半の2巻、すなわち、『誰か』と『名もなき毒』を原作として構成されていたんですが、この『ペテロにの葬列』も含めて、主人公の杉村三郎やその家族と職場の同僚以外は、私立探偵の北見などの一部の例外を別にすれば登場人物=キャスティングはほぼ重ならず、まったく別の物語となっていて、この『ペテロの葬列』でも踏襲されています。ラストはやや意外な終わり方ですが、このシリーズを終結させるためには仕方がないのかもしれません。ひょっとしたら続くのかもしれませんが、私は勝手にこのシリーズの終了を感じ取っています。衝撃のラスト以外にも、今多コンツェルンのグループ広報室の人事は大きく入れ替わりましたし、喫茶「睡蓮」のマスターもヤメました。この本もドラマ化されないかと期待しています。

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次に、ジェフリー・ディーヴァー『ポーカー・レッスン』(文春文庫) です。『クリスマス・プレゼント』に続く短篇集です。リンカー・ライムのシリーズは1編だけ収録されていますが、この著者のもうひとつの人気シリーズであるキャサリン・ダンスの登場はありません。原題は、前の『クリスマス・プレゼント』が Twisted で、この『ポーカー・レッスン』が More Twisted となっており、相変わらず、タイトル通りに、この著者らしくひねくれたストーリーと結末を提供しています。でも、読み進んで慣れて来ると、何となく結末が想像できてしまう短編もありますので、やっぱり、この著者の本領は長編なんだろうと受け止めています。なお、キャサリン・ダンスの登場するシリーズ最新刊『シャドウ・ストーカー』がすでに発売されていますが、私はいくつかの図書館で予約を入れており、買わずに借りて読もうと考えています。

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最後に、佐伯泰英『湯島ノ罠』(双葉文庫) です。「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズ第44巻となりました。史実としての田沼父子失脚と整合性を保つためか、ここしばらく、せっかく江戸に戻った坂崎磐音も活躍の場がないようで、無難に歴史的事実と関係ないトピックを続けています、なお、双葉社の新刊発行カレンダーによれば、シリーズ第45巻の『空蝉ノ念』が明日1月4日に発売予定だそうです。私はきっと買うと思います。

この年末年始休暇の読書は新刊だけでなく、既刊もかなり読みました。というか、私の読書量では、この年末年始休暇のようにヒマにしていれば3-400ページの文庫本は1日当たり軽く2冊は読んでしまいますので、ある程度の冊数は図書館から借りておかねばヒマ潰しになりません。

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2014年1月 2日 (木)

家でゴロゴロしてテレビドラマを鑑賞する!

photo昨日から今日にかけて、初詣に行ったのを別にすれば、特に何をするでもなく寝正月です。家でゴロゴロしてテレビドラマを見たりしています。昨夜は宮部みゆき原作の「桜ほうさら」をNHKで見て、今日は朝からTBSで一挙公開の東野圭吾原作の「新参者」の再放送をチラチラ見た後、今夜は同じチャンネルで同じ原作者の「眠りの森」の鑑賞を予定しています。東野圭吾×阿部寛×石原さとみ、加えて、宝塚を退団したばかりの音月桂の取合せは、熊川哲也Kバレエカンパニーよりも、何となく楽しみだったりします。

細かい筋はともかく、原作を読んでいますので、「桜ほうさら」と「新参者」については、それなりに記憶が新ただったんですが、「眠りの森」はすっかり忘れています。新たな気分で見られるんではないかと期待しています。それとも、見始めると思い出したりするんでしょうか?

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2014年1月 1日 (水)

一家で初詣に行く

改めまして、
あけましておめでとうございます。

我が家の恒例の初詣に行きました。破魔矢を買っておみくじを引き、元旦の記念写真を撮って来ました。帰宅すると年賀状が届いていました。

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昨年の写真とも見比べましたが、私は同じようなダウンコートを着ています。実は、高校生のころに親に買ってもらったもので、35年くらい着ています。なお、我が家で一番背が高いのは、現時点で下の倅のようです。上の倅は私よりも背は高いハズですが、私と同じO脚だということが親子関係を明らかにしているようにも見えます。最後に、私と女房は正月ごとに年齢を重ねており、一休さんの狂歌を思い出します。

本年もよろしくお願い申し上げます。

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謹賀新年

あけましておめでとうございます。

新しい年2014年がさきほど明け、エコノミストの端くれとして、少しでも日本と世界の経済が上向き、国民生活が豊かになることを願っています。
それでは、そろそろ寝ます。おやすみなさい。

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