景気回復を示す景気ウォッチャーと赤字の続く経常収支
本日、内閣府から12月の景気ウォッチャー調査の結果が、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーは現状判断DIが前月から+2.2ポイント上昇して55.7となり、引き続き、消費税率引上げに伴う駆込み需要が牽引力ながら、マインドは着実に改善を示しています。他方、経常収支は季節調整済みの系列で▲466億円、季節調整していない原系列で見て▲5928億円と、いずれも大きな赤字に落ち込んでいます。まず、日経新聞のサイトからそれぞれの統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
街角景気、12月2カ月連続改善 年末商戦が好調
内閣府が14日発表した2013年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.2ポイント上昇の55.7と2カ月連続で改善した。2013年5月(55.7)に並ぶ高い水準。好不況の分かれ目となる50を11カ月連続で上回った。11カ月連続で50を上回るのは2005年5月-06年5月の13カ月連続以来。景気回復を背景に冬のボーナスが増え消費者の購買意欲を刺激したほか、消費増税前の駆け込み需要も出て、客単価を押し上げた。年末商戦が好調で、高額品や自動車、家電を中心に売上高が伸びた。
内閣府は街角景気の基調判断を前月の「緩やかに回復しつつある」から「緩やかに回復している」に上方修正した。上方修正は2カ月連続。
家計分野では「客の冬のボーナスが増えている。消費増税前の駆け込み需要も発生している。新型エコカーの発売で新車受注は好調に推移している」(東北の乗用車販売店)との声があった。「時計宝飾など高額品のみならず、コートやスーツといった衣料品の動きが好調。景気の回復と消費増税前のボーナス支給が相まって高単価品をまとめ買いしている」(東海の百貨店)といった前向きなコメントが多かった。
雇用分野では「内定辞退者が出るほど就職内定率は前年同期を上回っている」(四国の大学)との指摘もあった。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は0.1ポイント低下の54.7と4カ月ぶりに悪化した。家計分野で「消費増税前に化粧品など買いだめできる商品の売上高が大きく伸びる」(近畿の百貨店)と期待する声があった一方で、「消費増税直前になり、個人消費は耐久消費財への支出のため高単価な外食には抑制的になると思われる。4月以降は不透明感が強い」(東海の高級レストラン)と懸念する見方もあった。「消費増税までのカウントダウンが始まり、耐久消費財などにお金が流れるため不要不急の買い物は後回しになる」と不安視する声も聞かれた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は90.5%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
11月経常収支、5928億円の赤字 過去最大
財務省が14日発表した2013年11月の国際収支(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は5928億円の赤字だった。赤字は2カ月連続で、現在の基準で比較可能な1985年以降で赤字額は最大となった。円安を背景に燃料輸入など貿易収支の赤字額が11月としては過去最大となり、所得収支の黒字で補えなかった。
貿易・サービス収支は1兆3643億円の赤字で、11月としては過去最大だった。赤字は20カ月連続で、赤字額は前年同月と比べて3690億円拡大した。うち貿易収支は、輸送の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで1兆2543億円の赤字だった。輸出額は17.6%増の5兆6316億円。米国向け自動車やオーストラリア向けの軽油、中国向けにペットボトル原料などになる有機化合物が増えた。輸入額は22.1%増の6兆8859億円と、11月としては最大だった。原粗油や液化天然ガス(LNG)など燃料や航空機の輸入額が増加した影響が大きい。旅行や輸送動向を示すサービス収支は1100億円の赤字だった。
円相場は1ドル=100.03円で、前年同月比23.7%の円安(インターバンク直物相場・東京市場中心値の月中平均レート)だった。
所得収支の黒字は前年同月比0.8%増の9002億円で、3カ月連続で増えた。海外への日本企業の配当金支払い増加などで証券投資収益が減ったが、直接投資収益は日本での事業で得た配当金や支店収益などの海外への支払いが減ったため増えた。
季節調整済みの経常収支は466億円の赤字で、3カ月連続の赤字だった。
いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事だという気がします。ただし、経常収支については記事の最後のパラを除いて季節調整していない原系列の統計についての記述であり、このブログにおける季節調整済みの系列と少し印象が異なる可能性があります。次に、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。全国ベースの現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、影をつけた部分は景気後退期ですが、いつものお断りで、一昨年2012年11月を直近の景気の谷と仮置きしています。

景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIは、いずれもかなり高い水準にあります。引用した記事にもある通り、現状判断DIは昨年2月から12月まで11か月連続で50を超えていますし、先行き判断DIにいたっては一昨年12月から13か月連続で50超えです。ただし、DIですから水準よりも方向性を重視すべきであり、上のグラフを見ても理解できる通り、最近数か月で現状判断DIと先行き判断DIが微妙に乖離しているのが見て取れます。現状判断DIは12月までボーナスの増加にも支えられた駆込み需要で上昇を続けていますが、先行き判断DIはすでに4月以降の消費税引き上げを盛り込んで上昇が一服していると考えるべきです。12月については▲0.1ポイントの低下を記録しています。でもまあ、引用した記事にもある通り、現状判断DIを見て前月の「緩やかに回復しつつある」から「緩やかに回復している」に基調判断を微妙に半ノッチ上方修正する統計作成官庁の気持ちも分からなくもありません。それにしても、四国の大学では内定辞退者が出るほど大学生の就職がいいような記事ですが、決してウソとは思わないものの、そのまま信じるには、私は大学生の就職の悪い時期を見過ぎたのかもしれません。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線の経常収支の推移に対する各コンポーネントを積上げ棒グラフでプロットしています。季節調整済みの系列ですので、引用した記事のように季節調整していない原系列の統計に基づく論調とは少し印象が異なるかもしれません。グラフを見れば明らかですが、赤の所得収支は大きな変動ありませんが、9月統計から黒の貿易収支が大きなマイナスを記録しているのが見て取れます。それにも増して、やや私が気にかけているのは、2011年3月の震災から傾向的に経常収支が黒字幅を縮小させており、11月統計もこのトレンドから大きく外れているわけではない、という点です。単純なボックス-ジェンキンズ型のモデルに従えば、経常収支は赤字に突っ込んだ後も、このまま経常赤字を拡大させて行くような気もします。しかし、前回の衆議院の解散から円高是正に入って1年余りを経過し、貿易収支のJカーブ効果が終わると黒字化に向かう可能性もいくぶんなりともあって、この先見定めにくい展開かもしれません。

今夜は経常収支の参考グラフをいくつか書いてみました。上のパネルは国際収支ベースの貿易収支、すなわち、輸出入とその差額たる貿易収支で、下のパネルは季節調整していない原系列の経常収支と季節調整済みの経常収支です。貿易収支のうちの輸出については、リーマン・ショック後のV字回復を終えて、ほぼ3年間輸出が停滞していたところ、円高修正に伴って回復を見せています。しかし、それ以上に輸入が増加しており、結果として、貿易赤字が膨らんでいるのが見て取れます。当然ながら、通関に基づく貿易統計と同じ動きです。それから、経常収支に関して季節調整のありなしでは、もちろん、単月では大きく異なる場合もありますが、方向性としては当然ながら同じであり、単純にグラフを先行き方向に引き伸ばせば経常赤字は膨らむ基調にあるように見えます。
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