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2014年1月29日 (水)

今年こそお給料は上がるか?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、一昨日1月27日に大和総研から「本当に賃金は上がるのか?」と題した経済分析リポートが発表されています。結論からいうと、現政権の後押しもあって、企業業績が改善している製造業では賃上げの期待が持てる一方で、賃上げは非製造業への恩恵が大きく、非製造業の賃上げにも広がる動きとなる可能性がある、と見込まれています。まず、大和総研のサイトからサマリーを4点引用すると以下の通りです。

サマリー
  • 安倍政権による後押しもあり、賃上げの議論が高まっている。経団連が6年ぶりのベアを容認するといった動きもみられるが、最終的な賃上げ動向は個別企業の判断に委ねられることになる。今後の賃上げ動向を見通すため、賃金上昇を取り巻く各産業の環境を概観する。
  • アンケート調査によると、企業が賃上げに際して最も重視しているのは、圧倒的に企業収益動向である。ただし、過去の関係性においては、企業収益実績が影響を及ぼすのは一時金であり、今回注目されている基本給については、収益動向ではなく、労働需給との関係性が強い。
  • 足下で利益が大幅に改善している製造業では、賃金が上昇する可能性が高く、ベースアップについてもある程度は期待が持てるだろう。しかし、製造業の多くでは雇用の過剰感はさほど高まっておらず、追加的な労働力を確保する必要性は低いことから、ベースアップについては収益の改善が著しい一部の企業に留まり、全体としては一時金での対応となる可能性が高い。
  • 一方、非製造業では足下までの収益の改善が総じて小幅であることに加え、消費税増税を控え、先行きについても不透明感が強いことから、当面、賃上げには慎重にならざるを得ない。ただし、非製造業は製造業に比べて労働需給がタイトであり、追加的に労働力を確保する必要性が高いことから、賃金上昇圧力が強いものと考えられる。また、非製造業では賃上げによる自部門への恩恵が大きいこともあり、収益の改善が続けば、ベースアップの動きは広がりやすいと言えよう。

今夜のエントリーでは、大和総研のリポートからいくつかグラフを引用しつつ、リクルートジョブズの時給調査結果も示して、雇用や賃金の動向について私なりの見方も含めて簡単に取り上げたいと思います。

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まず、上のグラフは大和総研のリポート p.4/8 図表3 業種別にみた企業収益と労働需給 を引用しています。縦軸が企業収益、横軸が雇用不足/過剰感となるカーテシアン座標に雇用者数をプロットしています。当然ながら、右上にあるほど賃金上昇の圧力・可能性が大きい業種ということになります。製造業と非製造業で大雑把な特徴がつかめると思います。製造業はアベノミクスの成果もあって円高修正が進んで企業収益が上がっている一方で、依然として雇用過剰感が強く、他方、非製造業では企業収益は製造業ほど上がっていないものの、雇用不足感が強い、ということになります。もちろん、見れば分かりますが、震災復興などの要因もあって建設業だけは例外です。詳細は割愛しますが、企業収益は所定内給与にはほとんど影響を与えない一方で、所定内以外の給与にはある程度の正の効果を及ぼします。企業収益が増加すれば所定内ではないお給料、たとえばボーナスなどが増加するわけで、当然です。それに対して、労働需給は所定内給与にも所定内以外の給与にも正のインパクトを持ちます。これも当然です。ですから、建設業を別にすれば、製造業は企業収益から、非製造業は労働需給から賃金上昇が期待できるということになりますが、おそらく、先に顕在化するのは前者の製造業における企業収益の改善がボーナスなどの所定外給与に波及するというルートであろうと考えるべきです。

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次に、上のグラフは大和総研のリポート p.8/8 の図表6 賃上げが各産業の生産に与える影響 を引用しています。注にもある通り、家計最終消費が+1%増加した際に、各産業の生産に与える影響額について産業連関表を用いて試算しています。全産業で+4.2兆円の生産拡大効果を見込む中で、特に右側に並んだ非製造業で賃上げに伴う消費拡大の恩恵が大きいのが見て取れます。製造業がアベノミクスに伴う円高修正により輸出で稼いでいるのに対して、非製造業は賃上げに伴う国内の消費拡大から生産の波及効果の恩恵を受けるのは余りにも当然です。コトの始まりは製造業のボーナス増かもしれませんが、非製造業の賃上げまで我が国経済の好循環が望める可能性が指摘されていると私は受け止めています。しかしながら、経団連の現在と次期の両会長の1月27日の記者会見では、日経新聞の記事読売新聞の記事を見る限り、経営者団体は法人税率引下げの圧力団体になっているように見受けられ、ケインズ的なアニマル・スピリットで賃上げを断行するという気概があるのかないのか、私には不明です。

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ということで、リクルートジョブズの調査から、三大都市圏におけるアルバイト・パートと派遣スタッフのそれぞれの募集時平均時給を取りまとめたのが上のグラフです。2013年12月度派遣スタッフ募集時平均時給調査2013年12月度アルバイト・パート募集時平均時給調査のそれぞれからデータを取ってグラフ化しています。いずれの非正規雇用も昨年2013年年央から時給が前年同月比で上昇し始め、特に派遣スタッフの上昇は大きくなっています。そろそろ、正規職員の雇用拡大や賃上げが始まる可能性を示しているのかもしれません。もちろん、調整速度の違いから、非正規雇用の賃金よりも正規職員の賃金は遅れ、正規職員の雇用拡大はさらに遅れることとなる可能性が高いことは覚悟すべきです。

リフレ政策の下でデフレを脱却し、現在のようにプラスのインフレ率を達成すれば、まず第1段階として、実質賃金が低下して量的な雇用が拡大します。そして、続く第2段階として、量的な雇用が拡大して労働需給がタイト化すれば賃金上昇が始まる、ということになります。現在は第1段階から第2段階に差しかかる状況にあると私は考えているものの、4月からの消費税率引上げによって労働需給が再びルーズになる可能性はやや懸念されるところです。

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