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2014年1月27日 (月)

赤字が続く貿易収支の構造要因と循環要因やいかに?

本日、財務省から2013年12月と2013年通年の貿易統計が発表されました。2013年の通年で見ると、輸出額は前年比+9.5%増の69兆7877億円で3年振りに増えた一方で、輸入額は前年比+15.0%増の81兆2622億円と4年連続で増加したため、差し引き貿易赤字は▲11兆4745億円と過去最大に達しました。まず、とても長くなってしまいますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

13年貿易赤字、過去最大の11兆4745億円
燃料や中国からの輸入増

財務省が27日発表した2013年の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は11兆4745億円の赤字だった。赤字額は12年(6兆9410億円)を上回り、比較可能な79年以降で最大。79年以降では初めて3年連続の赤字となった。
円安や原子力発電所の停止を背景に燃料の原粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が高水準だったうえ、中国からの輸入が増えたことが影響した。対中国の貿易赤字は5兆215億円と過去最大だった。
13年の輸入額は前年比15.0%増の81兆2622億円。4年連続で増加し、過去最大となった。うちLNGは17.5%増、原粗油は16.3%増。LNGは統計の残る82年以降で輸入額・数量とも最大だった。中国からは光電池など半導体等電子部品のほか、スマートフォンなど通信機や衣類の輸入も増えた。中国からの輸入額は17.4%増の17兆6502億円と過去最大となった。
輸出額は前年比9.5%増の69兆7877億円で3年ぶりに増えた。ただ円安による押し上げ効果が大きく、輸出数量指数は1.5%減だった。輸出額は米国向けなどの自動車が12.9%、中国向けのペットボトル原料などの有機化合物が38.8%それぞれ増えた。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=96円91銭で、前年比21.8%の円安だった。
地域別にみると、アジアからの輸入額が14.9%増の35兆9656億円と過去最大で、貿易黒字は46.2%減の1兆9103億円と3年連続で減った。対欧州連合(EU)の貿易赤字は6487億円と過去最大だった。一方、対米国の貿易黒字は19.8%増の6兆1198億円と2年連続で増えた。
同時に発表した13年12月の貿易収支は1兆3021億円の赤字だった。12月としては12年(6457億円の赤字)を上回り過去最大で、単月としても3番目の大きさだった。赤字は18カ月連続で9月以降、最長を更新し続けている。原粗油など冬季の燃料輸入がかさんだうえ、中国からの輸入が増えた。
輸入額は前年同月比24.7%増の7兆4126億円で、14カ月連続で増えた。輸入額は12月としては過去最大。輸出額は15.3%増の6兆1105億円で10カ月連続で増えた。輸出数量指数は2.6%増と3カ月連続で増加。為替レートは前年同月比24.0%の円安だった。
貿易収支を地域別に見ると、対中国は3835億円の赤字で、22カ月連続で赤字。中国からの輸入額と、対中国の貿易赤字額は12月としては最大だった。対欧州連合(EU)も246億円の赤字で、12月としては最大。対米国の貿易黒字は前年同月比13.9%増の5916億円で、12カ月連続で増えた。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、輸出入とその差額たる貿易収支のグラフ、特に下のパネルの季節調整済みの系列でトレンドを見れば、最近時点で明らかに輸出が伸びている一方で輸入がそれ以上に伸びており、従って、貿易赤字は拡大傾向にある、と理解すべきです。誤解を恐れず極めて大雑把にいえば、輸出が循環要因で低い伸びにとどまっている一方で、輸入は構造要因で大きく伸びている、と私は考えています。順序は逆になりますが、輸入が構造的に増加しているのは原発停止とそれに伴う燃料輸入の増加に起因すると考えて差支えありません。もちろん、それだけではなく、引用した記事にもある通り、中国からの輸入が増加した要因は循環的なものであり、景気局面の違いに起因します。すなわち、我が国が景気回復・拡大局面にある一方で、中国の景気が思わしくなく、その昔は日本に対して使われたような輸出攻勢がかけられている可能性が否定できません。特定の品目や時期に大きく伸びるという輸出ではありませんから、いわゆる「集中豪雨的輸出」とは違うような気もしますが、不振の国内で需要されなかった生産物の海外への輸出という形である可能性があります。

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輸出について詳しく見ると上のグラフの通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出金額の前年同月比伸び率を数量と価格で寄与度分解しています。下のパネルは我が国の輸出数量とOECDの先行指数のそれぞれの前年同月比伸び率をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月のリードを取っています。グラフから明らかな通り、現時点では、輸出の伸びは価格要因であり、数量が増加しているわけではありません。為替が円安に振れたのでその分の円建てでの受取りが増加しているわけです。もっとも、特にアジア向けと欧州向けで景気局面に起因する循環要因での輸出の伸び悩みが見られます。逆に、我が国よりも景気拡大が進んでいる米国向けに輸出は伸びており、米国との貿易収支も黒字を拡大させているのは引用した記事の通りです。中国に関しては、輸出の伸びの鈍化よりは輸入の急増の方が目立っている印象があります。アジア全体でもそうなっており、我が国の輸出の伸びに対するアジアの寄与度は依然として大きいものの、それ以上に輸入が増加している、という姿が見て取れます。また、Jカーブ効果も循環要因のひとつに上げられます。

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もうひとつの構造要因は貿易取引における通貨別比率です。2013年下半期のグラフは上の通りです。輸出の円建て比率は最近時点で少し落ちたものの、一時は40%を超えていた一方で、輸入は引き続き米ドル建てが70%を超えています。最近時点では燃料輸入が増加していることもあって米ドル建て比率はかえって上昇していたりします。これは原油が米ドル建てで取引されているためであり、円安が進めば円建ての輸入額が米ドル建てよりも大きく膨らむ要因のひとつといえます。

以上、大雑把ながら、我が国貿易赤字の構造要因と循環要因を見て来ましたが、当然ながら、構造的要因の原発停止に伴う燃料輸入増と貿易取引の通貨別比率は短期には変わりようがありません。循環的要因である景気局面の違いは中国や欧州に我が国に追い付いてもらうしかありません。いずれも、我が国の政策で影響を及ぼせる範囲は小さそうです。しかし、Jカーブ効果はそろそろ終了する局面に差しかかっても不思議ではありません。もっとも、1980年代のような弾力性ペシミズムは決して払拭されていませんから、為替で貿易収支が調整できる余地がどこまであるかは疑問です。私自身は来年くらいに貿易収支は黒字転換する可能性が十分にあると考えていますが、ESP フォーキャストで貿易収支の黒字転換に悲観的な見方が示されたのも理解できる気がします。

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