先週の読書から
今週読んだのは主に以下の3冊です。なぜか、警察小説とラブストーリーの組合せだったりします。図書館の予約が回って来ただけの単純な理由です。結果的に、3冊を3つの市と区の図書館から借りました。
まず、横山秀夫『64』(文藝春秋) です。出版が2012年10月ですから、足かけ3年も図書館の待ち行列に並んだのかもしれません。私はこの作者の作品は初めて読みました。いわゆる警察小説です。作者のD県警シリーズの最新刊です。かなり、ありきたりのステレオタイプといえなくもありませんが、キャリアとノンキャリアの対立、警務部と刑事部の派閥抗争などを織り混ぜながら、もっとも卑劣な犯罪のひとつである誘拐事件が進みます。背景では、主人公の娘の家出もあります。大ベストセラーなんですが、私にはイマイチでした。
次に、長岡弘樹『教場』(小学館) です。この作者の作品では『傍聞き』を読んだ記憶があります。やっぱり、警察小説の短篇集だったんですが、この『教場』の舞台は警察学校の初任者課程です。そこでもいろいろと事件が起こります。それにしても、実際に警察学校でこれだけの件数の退校者=辞職者が出るんでしょうか。私には想像もできない世界なのかもしれません。でも、小説としての出来はいいと考えています。
おしまいに、青山七恵『めぐり糸』(集英社) です。昨年7月14日付けで同じ作者の『快楽』(講談社) の読書感想文を取り上げ、「清純派だった青山七恵の新境地」かもしれないとうそぶきましたが、その続きなのかもしれません。主人公の女性のとても常軌を逸したラブストーリーです。主人公自身の表現として、主人公と結婚相手である英而との関係を『ジェーン・エア』の主人公ジェーンとロチェスターになぞらえた上で否定していたりしますが、主人公と哲治の関係は『嵐が丘』のキャサリンとヒースクリフに似ていたりしないでもないと私は考えています。ものすごく不思議な男女関係です。不思議というだけであれば、東野圭吾『白夜行』と同じですが、その次元はまったく異なります。作者自身も主人公を通じて、p.477 で「わたしと哲治とのことはこの世のどんなに博識で聡明な人であっても永遠に理解できない関係なのではないか」と言わしめています。でも、表現力や文体の美しさなどはさすがのものがあります。最近10年くらいの芥川賞受賞作家、すなわち、2003年に金原ひとみと綿矢りさが同時受賞した後では、この青山七恵と川上未映子が傑出していると私は受け止めているんですが、前作『快楽』くらいからの青山七恵の変貌には、どう評価すべきは分からず少し戸惑いがあります。
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