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2014年3月 3日 (月)

法人企業統計から何を読み取るか?

本日、財務省から昨年2013年10-12月期の法人企業統計が発表されました。国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり、いつも注目が高いソフトウエアを除く設備投資額は、季節調整していない原系列では前年同月比で+4.0%増を記録しましたが、季節調整して前期と比べると▲0.3%減少しています。売上高や経常利益は季節調整ありなしのいずれの指標で見ても増加しており、いわゆる増収増益の結果が10-12月期については示されています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

10-12月期設備投資4.0%増 法人企業統計、3期連続プラス
財務省が3日発表した2013年10-12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比4.0%増の9兆4393億円で、3四半期連続のプラスだった。非製造業の旺盛な投資が継続したうえ、製造業もプラスに転換した。
設備投資の産業別の投資動向をみると、製造業は0.7%増と5四半期ぶりに増加した。輸送用機械で新車対応のための生産能力拡大や技術開発に向けた投資、情報通信機械でスマートフォン(スマホ)関連部品の生産増強のための投資が寄与した。非製造業は5.7%増と3四半期連続で増えた。宿泊業でホテルの改修が進んだほか、陸運業で物流センターの新設や防災対策のための投資が活発だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり、注目が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、季節調整して前期と比べると0.3%減と2四半期連続のマイナスだった。
財務省は設備投資について、前年同期比ではプラスが続き伸び率も拡大していることから「基調としては持ち直している」とみている。
全産業の売上高は3.8%増の333兆429億円と2四半期連続で増えた。製造業は4.7%増。輸送用機械や化学が増えた。非製造業は3.4%増。建設業や卸売業などが増加した。
経常利益は前年同期比26.6%増の16兆1908億円と、8四半期連続で増えた。製造業は49.9%増。4月の消費増税を前に自動車の駆け込み需要があった輸送用機械に加え、スマホ関連部品の需要拡大で情報通信機械がけん引した。非製造業は14.4%増。サービス業でテーマパークの集客が好調で、ホテルの稼働率も向上した。公共工事や戸建て需要の増加を背景に建設なども伸びた。
同統計は資本金1000万円以上の企業の収益や投資動向を集計。今回の結果は内閣府が10日に発表する13年10-12月期のGDP改定値に反映される。

いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。法人企業統計とGDP統計の関係についても最後のパラに適切に記述されています。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。また、影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は2012年11月あるいは10-12月期と仮置きしています。

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先述の通り、いわゆる増収増益の結果が示されており、4月からの消費増税を前にした駆込み需要も含めて、企業活動が活発になっている点についてはコンセンサスがあるものと私は受け止めています。しかし、引用した記事でも注目している設備投資の結果については評価が分かれるかもしれません。季節調整していない原系列では前年同期比でプラスにもかかわらず、季節調整した前期比ではマイナスですから当然です。来週発表のGDP統計2次QEでは設備投資は季節調整した前期比で表章されますから、法人企業統計の設備投資の伸び悩みがそのまま反映されるとすれば、GDPベースの設備投資も低い伸びに留まる可能性が示唆されています。他方、鉱工業生産指数などで示されている資本財の出荷は堅調であり、法人企業統計の結果は実感としては少し疑問が残ります。引用した記事の真ん中あたりのパラに、統計作成官庁である財務省のコメントとして「基調としては持ち直している」との見方が示されていますが、統計の計数よりも実感を重視してそうなんだろうと私は受け止めています。

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続いて、上のグラフは擬似的に計算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。いずれも、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。まず、上のパネルの労働分配率について見ると、昨年のミニ・リセッションではほとんど上昇も見られず、リーマン・ショック後のピークから下がり続け、大雑把に、ならして70%を十分に下回る水準で推移しているのが読み取れます。直近の10-12月期では原数値でも、移動平均でも65%を割り込んでいます。他方、下のパネルの設備投資はキャッシュフローの半分近くまで水準が低下しています。ほぼ歴史的な低水準と受け止めています。水準だけでなく、モメンタムとしても低下を示しているのがグラフから読み取れます。労働分配率については量的な雇用の増加、あるいは、質的な賃金の上昇に耐える企業体質が出来上がったと評価できますし、設備投資向けの資金も債券発行や銀行借入れに頼る必要なく、十分に内部資金で調達できると理解できます。今日発表の法人企業統計で、すでに十分に賃上げと設備投資の増加に向けた経営環境は整い、不足しているのは企業のアニマル・スピリットだけという姿が示されたと受け止めています。
もっとも、設備投資と賃上げの環境が整った一方で、設備投資も賃上げも振るわない結果となっている背景が2点指摘できます。第1に、4月の消費税増税以降の景気動向が不透明なことです。いかにも、長期の停滞が続いて、日本の企業家のアニマル・スピリットが萎縮しているのがよく分かります。第2に、年央の成長戦略を待っている可能性も指摘できます。これはアニマル・スピリットがまったく欠如して、政府のキャプチャによるレント・シーキングに走るという企業家にあるまじき思考パターンが出ている、との可能性も指摘できます。もちろん、そこまで我が国企業がアニマル・スピリットを失っているとは思いたくありません。と同時に、政府の成長戦略がターゲティング・ポリシーとして予算付けになることは絶対に避けるべきであり、企業活動の環境整備を大所高所から志向すべきであると主張しておきたいと思います。

何度でも繰り返しますが、我が国の経済成長や経済発展を阻害しているのは企業家かもしれない、という目で経済を観察・分析してみることを私は大いにオススメしています。市場からの退出があり得ない政府は相変わらず非効率なのかもしれませんが、企業が常に効率的とは限りません。非効率な企業が市場から退出せずにゾンビ化している可能性は従来から広く指摘されて来たところです。

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