今夏のボーナスは期待できるのか?
春闘のいっせい回答日の3月12日の翌日3月13日のエントリーでは、ごく簡単に主要企業の回答経過を取りまとめておきましたが、ほぼボーナスに当たる年間一時金も業績連動が多いものの、かなり期待の持てる結果となっていました。ということで、先週にみずほ総研が最後にリポートを発表して、いつものシンクタンク4社から夏季ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因ですので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研以外は国家公務員となっています。また、いつものお断りですが、みずほ総研の公務員ボーナスだけはなぜか全職員ベースなのに対して、ほかは組合員ベースの予想ですので、数字が大きく違っています。注意が必要です。それから、これまた、みずほ総研を除いて、妙に公務員ボーナスの伸び率が大きいんですが、これは復興財源捻出の一環として大きく削減されていた国家公務員賞与に対する特例措置が終了し水準が戻るためです。
機関名 | 民間企業 (伸び率) | 公務員 (伸び率) | ヘッドライン |
日本総研 | 36.4万円 (+1.3%) | 58.2万円 (+11.3%) | (1) 今夏の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+1.3%と夏季賞与としては2年連続のプラス、2000年代半ば以来の伸びとなる見込み。 (2) 背景には、内需を中心とした景気回復の動きを受けた2013年度下期の企業収益の持ち直し。加えて、デフレ脱却に向けた政府による賃上げのムード作りが押し上げに作用。このため、消費税率引き上げ後の消費下支えに一定の効果をもたらすと期待可能。もっとも、中小企業を中心に、消費税率引き上げ後の需要減への懸念、原材料コスト上昇の価格転嫁の遅れなどから、人件費増加に慎重姿勢を維持している例がみられ、産業・企業による引き上げスタンスにはばらつきが残存。こうしたなか、賞与水準は、リーマン・ショック後の大幅な落ち込みを取り戻すには至らない見込み。 |
みずほ総研 | 36.5万円 (+1.6%) | 65.5万円 (+1.3%) | 2014年夏の1人当たりボーナス支給額(民間企業)は前年比+1.6%と2年連続で増加する見通し。円安や内需回復による企業収益の改善と安倍政権の賃上げ要請がボーナス増額を後押し。 |
第一生命経済研 | 36.5万円 (+1.6%) | n.a. (+12.1%) | 民間企業の2014年夏のボーナス支給額を前年比+1.6%(支給額: 36万5千円)と予測する。2013年夏、冬のボーナスとも前年比+0.3%と微増にとどまったが、今夏は伸び率が高まり、ボーナスの改善が明確化するだろう。 円安と景気回復による企業収益の大幅増がボーナス改善の主因。春闘でも、組合要求に対する経営側の回答は前向きなものが多く、賃上げムードの高まりが示されていた。円安効果が大きかった製造業だけでなく、内需の好調を受けて非製造業にもボーナス増が広がるとみられる。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 36.3万円 (+1.1%) | 57.8万円 (+10.6%) | 2014 年夏のボーナスの一人当たり平均支給額は363,300円(前年比+1.1%)と2年連続で増加し、伸び率も前年と比べて拡大すると予測する。産業別では、業績が好調な大企業のウエイトが高い製造業で増加幅が大きくなる一方、非製造業ではほぼ横ばいにとどまるとみられる。 |
上のテーブルを見れば明らかな通り、今夏のボーナスはかなり期待できそうです。景気の回復・拡大に伴う企業業績の改善とともに、安倍内閣の賃上げ重視姿勢を受けて、昨年よりも伸びが高まりそうです。ただし、それでも各機関とも+1%台の予想ですから、消費税率引上げに伴う物価上昇には届かず、夏季ボーナスの実質購買力は昨夏よりも低下するという結論になります。従来からこのブログで指摘しているように、景気回復・拡大をさらに力強くするためには、企業部門に滞留している購買力を家計部門において活用できるようにすることが重要であり、私は賃上げを重視していますが、デフレ脱却の観点からもボーナスを含む賃上げは最重要の課題のひとつであると考えるべきです。また、そのためにも、安倍内閣の3本目の矢である成長戦略が重要となりますが、企業の期待成長率が伸び悩んでおり、企業家のアニマル・スピリットがサッパリ上向かない現状で、成長戦略はいわゆるターゲティング・ポリシーとなって財政リソースのバラマキに終わるのではなく、期待成長率を引上げアニマル・スピリットを鼓舞するような内容になることが必要だと考えています。
最後に、一例として、三菱リサーチ&コンサルティングのリポートのp.6/8から夏のボーナス予想のグラフを引用すると以下の通りです。
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