インテージの消費税増税影響分析プロジェクトに見る消費増税の影響やいかに?
とても旧聞に属する話題ですが、調査会社のインテージから消費税増税影響分析プロジェクト「総括レポート」が発表されています。今どきのことですから、サイトにはすべての図表を収録したpdfの全文リポートもアップされており利用可能です。単純なアンケート調査ではなくパネル調査ですから、統計局的なランダム・サンプリングと国勢調査で把握した母集団への回帰はムリとしても、きちんと処理されていれば大きな偏りはないものと考えられます。ということで、インテージのサイトから調査結果のポイントを4点ピックアップすると以下の通りです。
Pick Up
- 増税前のまとめ買いは1997年の増税時より拡大
- 2014年消費税増税の主役は60代
- 増税後の生活必需品への影響は限定的
- 購買回復をけん引しているのも60代
年代別の購買意欲は別にして、私や多くのエコノミストは消費増税前は、「増税前の駆込み需要も増税後の反動減も1997年当時に比べて小さく想定の範囲内」と考えていたんですが、実際には、「増税前の駆込み需要も増税後の反動減も1997年当時に比べて大きかったが、それでも想定の範囲内」というのが実態だったと考えられます。
まず、調査対象を主婦に限定し、購入品目も自動車などの高額な耐久消費財を除いた生活必需品に限定した購買金額の前年比を1997年増税時と今回で比較したグラフを引用すると上の通りです。実際には、自動車や家電などの高額な耐久消費財における増税前の駆込み需要と増税後の反動減の方が大きいのかもしれませんが、こういった調査では把握が難しく、調査の際にで抜け落ちる確率が高かったりします。把握が比較的容易な生活必需品レベルで1997年と今回のぞれぞれの消費増税で比較すると、今回の方が時期的にも早くから駆込み需要が始まっており、前年比で見た駆込み需要とその後の反動減も大きくなっていることが読み取れます。ただし、繰返しになりますが、自動車や家電といった高額の耐久消費財が調査対象から外れている点は考慮すべきです。
次に、この調査結果からマーケティングの関係で重視されている年代別の購買者なんですが、引用した上のグラフの通り、60代が1997年当時よりもシェアを増加させています。しかし、これは団塊の世代に従ったデモグラフィックな効果なんだろうと私は受け止めています。すなわち、団塊の世代は1946-48年生まれですから。1997年増税時は50歳前後、40代と50代だったわけですが、今回の増税時はすべてが60代半ばから後半に入っています。日本国民全体が高齢化しているわけですから、購買年代が上昇して団塊の世代が含まれる60代に達したというのは特段のファクト・ファインディングではなく、当たり前の現象であると私は感じています。
次に、マーケティングや今後の消費行動への分析として、品目ごとに増税後の商品選択基準を「安さ←→付加価値」と「愛着←→買い回り」の2軸でプロットした購買基準プロット図を引用すると上の通りです。右上に行くほど増税で値上がりしても愛着ある商品を選ぶことから消費増税の影響が少ない品目であり、逆に左下に行くほど価格の安いPB商品などに流れやすいと分析しています。いくつか実例を上げると、にわかに私には理解し難いところなんですが、ペットフードがかなり右上に位置しているのに比べて、人間が口にする煎餅・あられやキャンディはずっと左下にあります。また、ビール/発泡酒/第3のビールはかろうじて右上ですが、チューハイは左下だったりします。まあ、インスタント麺や冷凍食品は左下なんだろうというのは理解できる気がします。
最後に、品目は限定的ですが、まとめ買い購買者と通常購買者で増税後の購買行動を前年比トレンドで見たグラフを引用すると上の通りです。品目は生活必需品の中でも、食品・飲料・日用雑貨品・化粧品、ペットフード、ペット用品に限られるんですが、まとめ買いに走った購買者は当然ながら消費増税前の駆込み需要の山が高くて、増税後の反動減の谷も深いんですが、5月に入ってほぼ通常購買者と同じレベルまで落ち着きを取り戻しています。自動車を毎月買う人は普通はいないわけで、高額の耐久消費財については購入頻度が低いですから、マクロの反動減はアンケート調査からは捉えにくい一方で、生活必需品については反動減はほぼ1か月で終了というのは事前の想定通りだった気がします。
何度も繰り返して申し訳ありませんが、自動車や家電といった高額の耐久消費財が調査対象外なのはホントの意味で駆込み需要と反動減を把握する上で致命的ですが、生活必需品の買い物の増減を消費増税の前後でそれなりに分かりやすく、同時に、先行きの消費動向も含めて分析した結果だと受け止めています。
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