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2014年6月18日 (水)

貿易赤字の続く貿易統計から何を読み取るか?

本日、財務省から5月の貿易統計が発表されています。季節調整していない原系列で見て、統計のヘッドラインとなる輸出額は前年同月比▲2.7%減の5兆6076億円、輸入額も▲3.6%減の6兆5165億円、差引き貿易収支は▲9090億円の赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の貿易赤字9090億円 輸出15カ月ぶり減少
財務省が18日発表した5月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9090億円の赤字だった。赤字額は前年同月の9913億円を下回り、4月に続いて2カ月連続で縮小した。貿易赤字は23カ月連続。QUICKが17日時点で集計した民間の予測中央値は1兆1764億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比2.7%減の5兆6076億円。15カ月ぶりのマイナスとなった。品目では自動車の対世界輸出額が4.3%減と14カ月ぶりに減少したほか、半導体等電子部品も5.2%減少した。地域別では欧州向けが14.5%増と12カ月連続のプラスが続いているものの、構成比の大きいアジア向けは3.4%減と15カ月ぶりの減少。米国向けも17カ月ぶりの減少となった。対世界でみた輸出数量は3.4%のマイナスとなった。
一方、輸入額は3.6%減の6兆5165億円と、19カ月ぶりに減少した。品目別では液化天然ガス(LNG)の輸入額は3.0%増と高止まりが続いているものの、中東カタールからの原粗油や、中国からの携帯電話などの通信機、豪州からの石炭などの輸入額の減少が目立った。地域別では欧州からの輸入額が5.7%増加したが、アジアからが1.2%減と21カ月ぶりの減少、米国からも14カ月ぶりのマイナスに転じた。輸入数量は対世界で4.0%減少した。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=102円12銭で、前年同月比2.9%の円安だった。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事です。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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下のパネルの季節調整済みのグラフで見て、足元で輸出は横ばいながら、輸入が減少しており、貿易収支もやや減少傾向にあるように見えなくもありませんが、2014年4-5月については駆込み需要の反動が小さくないと私は考えています。2014年4月から消費税率が引き上げられたのは記憶に新しいところですが、実はいわゆる環境税も2014年4月から増税されており、ひょっとしたら、この環境税増税と消費税増税の合せ技で、エネルギー輸入については家計の消費よりも大きな3月までの駆込みと4-5月の反動減を生じている可能性があります。一応、環境税に関するおさらいですが、環境省のサイトに示された情報に従えば、原油・石油製品、LPGとLNG、そして、石炭まで含めて、「地球温暖化対策のための課税の特例」として、2012年10月、2014年4月、2016年10月の3段階に分けて、ほぼ3等分された増税が実施されます。ほぼ3等分と言いつつ、実は、ビミョーに最後の2016年10月の増税が一番重課なので、忘れられがちなんですが、2014年4月にも環境税の増税が実施されているのは事実です。消費増税と合わせて、化石燃料に対して駆込み需要と反動減を生じさせているわけです。

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輸出については、なかなか回復が思わしくありません。その大きな要因は欧米をはじめとする先進国、さらに、中国をはじめとする新興国やアジアの景気回復・拡大のテンポが上がらないことです。上のグラフは季節調整していない貿易指数を基に、上のパネルは輸出額の前年同月比を数量と価格で要因分解しており、下のパネルは輸出数量とOECD先行指数のそれぞれの前年同月比をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月だけリードを取っています。足元で輸入数量の前年同月比はほぼゼロ近傍で伸びない姿が続いており、下のパネルから、需要サイドではOECD諸国の景気が足踏みしているため、我が国製品への需要が伸び悩む原因となっているのが見て取れます。今年2014年の1-3月期は我が国では消費増税前の駆込み需要で高成長を記録した一方で、米国でもマイナス成長でしたし、欧州の景気も思ったほどのペースで拡大していません。新興国についてもやや景気が足踏みを続けています。こういった需要サイドの要因とともに、アベノミクス初期の円高修正ないし円安の進行もほぼ一巡したことから価格面での効果も剥落し、輸出は伸び悩んでいます。逆から見て、欧州をはじめとする先進国経済や新興国が成長モメンタムを取り戻せば、我が国の輸出も伸びを高めることが期待されます。もっとも、貿易のシークエンスは、米国・欧州→中国などのアジア→日本、という順ではないかと私は予想しています。ただし、輸出ではありませんが、私の専門外で予想しかねる点もいっぱいあり、典型的には、イラク情勢の緊迫化に関して原油価格がどのように反応するか、です。一般的には、米国の商品市況におけるWTIが先駆けて大きく変動する一方で、我が国の原油価格により大きな影響を及ぼしているドバイ原油はWTIよりも遅れて、そして、もっと落ち着いた動きとなる、と私は認識していますが、例外がないわけでもないんだろうと考えています。

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最後に、以前から、このブログでも何度か書きましたが、電力をはじめとするエネルギー価格の上昇に伴って、世界における我が国産業の比較優位構造が変化しつつあるのではないか、と私は考えています。例えば、先週6月12日に帝国データバンクから「電気料金値上げに対する企業の意識調査」と題するリポートが発表されていますが、電気料金値上げで経常利益が減少する産業別の企業数の割合は以下のグラフの通りです。「製造業」で一括されているので何とも言えませんが、製造業の中で電力料金が占める割合が高い産業があるわけでしょうから、我が国の電力料金やエネルギー価格の上昇は国際貿易の比較優位構造に変化を及ぼすことは確実です。歴史的に見ても、アルミ精錬産業が我が国から姿を消したのは電力料金が高騰し国際競争力を喪失したからです。この先、アルミ精錬産業のように完全に日本国内から消失するかどうかはともかく、電力料金値上げやその他の条件に伴って国際競争力を大きく低下させ、輸出入に現れる比較優位構造にどのような変化が生じるのかはエコノミストとして大いに興味があるところです。

なお、エネルギー価格の高騰により比較優位を失う産業が出ることはある意味で当然です。そして、政策策定には強い現状維持バイアスがかかるんですが、比較優位を失った産業がゾンビ化するのに手を貸すような政策を取るべきでないことも言うまでもありません。

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