上昇率が縮小した企業物価指数をどう見るか?
本日、日銀から7月の企業物価(PPI)が公表されています。国内物価は前年同月比で+4.3%の上昇を記録し、前月の+4.6%からやや上昇率が鈍化しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の国内企業物価、4.3%上昇 上昇率は前月から鈍化
日銀が12日発表した7月の国内企業物価指数(2010年平均=100)は106.6と、前年同月に比べ4.3%上昇した。石油製品などエネルギー価格の上昇が引き続き目立ったほか、食料品などでも原材料高を転嫁する動きが広がった。伸び率は5年9カ月ぶりの高い伸びだった前月の4.6%から鈍化した。消費税率引き上げの影響を除いたベースでも1.5%上昇と、前月(1.7%上昇)を下回った。
企業物価指数は出荷や卸売り段階など、企業間で取引する製品の価格水準を示す。項目別にみると石油・石炭製品や非鉄金属などが上昇した。イラク情勢の緊迫化などで上昇した原油価格の転嫁が進んだほか、在庫減少や中国のインフラ整備の影響で銅の価格も上昇した。
食料品でもすしや弁当、チーズなどで原材料価格の上昇を製品価格に転嫁する動きが広がった。半面、製材・木製品の前年同月比の伸び率は大きく鈍化した。消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動で、住宅建設用資材の価格が急速に伸び悩んでいるという。
公表している全816品目のうち上昇は424品目、下落は312品目だった。上昇品目数は5月をピークにやや減少傾向にあるものの、上昇が下落を上回るのは13年9月以来11カ月連続となった。今回の公表から電子レンジと食器洗い機の2品目を調査対象から外した。
円ベースでの輸出物価は前年比で0.7%上昇。前月の2.1%から鈍化したが、自動車メーカーが一部車種の輸出価格を引き上げたことなどが寄与した。輸入物価は2.8%上昇した。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内と輸出入別の前年同月比上昇率を、下のパネルは需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。
国内企業物価の上昇率がやや鈍化したのは、基本的に輸入物価や素原材料の上昇率が縮小しているからであり、確かに、中東情勢などに起因する石油価格の上昇などから7月は前月に比べて上昇率が大きくなっていますが、昨年年央から今年1月までコンスタントに2ケタ上昇を続けていた輸入物価が2月以降は急速に上昇率を低下させています。上のグラフのうち、上のパネルでは輸入物価上昇率が、下のパネルでは素原材料の上昇率が、円高是正ないし円安に触れた為替効果の一巡とともに、今年に入って大きく低下しているのが見て取れます。この先、何らかのラグを伴って、消費者物価も含めて、川下に波及する可能性があると考えるべきです。さらに、4月の消費増税ショックに伴う需給ギャップのデフレ方向への変化も年央くらいからは物価上昇率に影響を及ぼしつつある段階に達しており、7月の統計にも現れ始めているのかもしれません。
輸入物価ないし素原材料価格の動向にせよ、消費増税に伴う需給ギャップの悪化にせよ、いずれも、早くから多くのエコノミストに想定されていた動きであり、この先の物価動向に対する見方に変更を迫るものではないと私は受け止めています。
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