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2014年8月 9日 (土)

今週の読書は岩田一政・日本経済研究センター[編]『量的・質的金融緩和』ほか

今週の読書は、岩田一政・日本経済研究センター[編]『量的・質的金融緩和』ほか、以下の通りです。

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まず、岩田一政・日本経済研究センター[編]『量的・質的金融緩和』(日本経済新聞出版) です。本書は日本経済研究センターの金融研究班による2013年11月の研究成果を取りまとめたものであり、昨年4月からのいわゆる「異次元緩和」について、既存の研究成果を紹介するとともに、可能な範囲で定量的な分析を試みています。もちろん、現時点では1年余りのデータしか蓄積されておらず、定量分析は難しい面もあります。日銀のこの量的・質的金融緩和の効果について、イールドカーブ効果、ポートフォリオ・リバランス効果、市場期待効果の3つのルートからの分析を実施し、一定の効果を認めています。さらに、将来にわたっての金融政策の課題として、出口戦略の検討と政府との協調を示唆し、特に、日銀の財務健全性は政府によって保証された上で大胆な金融政策でデフレ脱却を目指すべき、との主張が目につきました。ほかに、金利についてもフォーワード・ガイダンスを実施すべきとの政策提言も目新しいと感じました。かなり包括的に現行の日銀金融政策を分析した学術書ないし教養書としてとてもオススメです。なお、日本経済研究センターの以下のサイトも本書あるいは本書で取り上げたテーマである量的・質的金融緩和政策を理解する上でとても有益だと思います。2つ目のサイトでは、リポート全文は会員限定なんですが、要旨を見るだけでも参考になります。

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次に、池井戸潤『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社) です。ご存じ、半沢直樹シリーズ第4弾最新刊です。フラッグシップ航空会社の再建をテーマとし、政権交代も絡んで、半沢の属する銀行の不正融資の解明と債権放棄の行方を描き出しています。フラッグシップ航空会社ですから政治家の利権も大いに関係しますし、また、モデルとなった日航JALと政府系金融機関もチラリと出たりします。また、半沢と因縁の金融検査官である黒崎もなぜか登場します、ややネタバレになりますが、このシリーズ第4作では半沢が大いにパワーアップし、航空行政を所管する国土交通大臣を辞任に追い込んだりシます。いつもながら、善悪のはっきりしたキャスティングで、旧T系の銀行員、国土交通大臣と再建タスクフォースのスタッフなどが悪役で、意外にも、政府系金融機関のスタッフはいい方に回っています。また、金融庁の黒崎も悪役一辺倒ではなくなって、それなりに重要な情報を半沢にもたらしたりします。相変わらず直木賞作家のペンは快調で、とても面白く仕上がっています。我が家では私と下の倅がこのシリーズを愛読しており、この作品も買って読みました。

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次に、西尾維新『終物語』上中下 (講談社BOX) です。私のような中年向けではなく、高校生から大学生くらいをターゲットにしたラノベの物語シリーズの最終巻です。ですから、最初の『化物語』から読み始めればよかったのかもしれませんが、どうも無理があったのかもしれません。取りあえず、内容を概観すると、物語シリーズですから主人公は高校生の阿良々木暦です。上巻は第1話 おうぎフォーミュラで1年3組の教室に阿良々木暦と忍野扇が閉じ込められ、数学の勉強会メンバーがどうして高得点を取ったのかの謎をときます。老倉育が多数決で犯人にされます。なお、世界でもっとも美しい数式が e + 1 = 0 として紹介されていますが、私は E = MC2 なんではないかと考えています。第2話 そだちリドルでは、中学生のころ阿良々木暦が老倉育に数学を教えてもらう記憶が改められ、老倉家の家庭内暴力が明らかにされます。第3話 そだちロストでは、羽川翼と阿良々木暦が老倉育を家庭訪問し、忍野扇とともに老倉育の母親のロストを解明します。中巻では、忍野忍の第1のパートナー初代怪異殺しと第2のパートナーである阿良々木暦が対決します。下巻の第5話 まよいヘルでは、阿良々木暦が阿鼻地獄で八九寺真宵に会って生き返る、というか、復活することになり、第6話 ひたぎランデブーでは、生き返った阿良々木暦が受験を終えて、恋人である戦場ヶ原ひたぎとデートします。戦場ヶ原ひたぎが阿良々木暦に望むのは「名前で呼んで」だったりします。第9話 おうぎダークでは、忍野扇の正体を臥煙伊豆湖が見破り、阿良々木暦に退治させようとします。以下、ネタバレながら、阿良々木暦が地獄から連れ帰った八九寺真宵の幽霊が北白蛇神社の神様となり、忍野忍は一度完全体になりながらも結局童女に戻って阿良々木暦の影に入り、羽川翼は忍野メメを南極から連れ帰って、忍野扇は実体を持つこととなります。
ということで、その昔の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と同じように、ハイスクールの生徒について理解するにはいい本で、それなりに、会話なども分かった気がしますが、繰返しになるものの、中年の私には無理があありました。

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最後に、吉村萬壱『ボラード病』(文藝春秋) です。私はこの作者の作品は芥川賞を受賞した「ハリガネムシ」しか読んだことがないんですが。本作はとても重い内容です。舞台は架空のB県海塚市で、30歳の女性が小学5年生のころを回想します。震災や福島やましてや原発という言葉が出て来るわけではありませんが、強く連想させるものがあります。小学生が大量に死んだり、同調できない人が消えたり、などなど、嘘で塗り固められた海塚市の実体について p.160 以降ですべてが明らかにされます。このディストピア小説をどのように受け止めるべきか、私には分かりません。

この週末も何冊か借りましたので、来週も充実した読書生活が送れそうです。

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