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2014年10月 8日 (水)

国際通貨基金 (IMF) 「世界経済見通し」見通し篇を読む!

昨日、この週末のIMF世銀総会に向けて、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook (WEO) の見通し篇第1章と第2章が公表されています。世界経済の成長見通しは7月の「改定見通し」から下方修正されており、特に、消費増税からのリバウンドが低迷している日本の成長率の下方改訂幅が大きくなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

世界成長3.3%に減速 14年IMF予測、日本を大幅下方修正
世界経済が緩やかに減速してきた。国際通貨基金(IMF)は7日発表した世界経済見通しの報告書で、2014年の世界全体の実質国内総生産(GDP)増加率を3.3%と、7月時点の予想から0.1ポイント引き下げた。9-10日に開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、成長の底上げに向け、インフラ投資の促進などが議論される見通しだ。
報告書は「世界経済を取り巻く環境は、7月の前回予想時よりもやや悪化している」と指摘。成長率見通しは4月予想から0.4ポイントの引き下げで、減速に歯止めがかからない。
日本の14年の成長率は7月に予想していた1.6%から0.7ポイントの大幅な下方修正となった。消費増税後の消費の回復の遅れが響く。ただ円安で輸出も緩やかに拡大傾向をたどり、年後半は足取りは強まるとしている。
米国と英国については「いち早く金融危機から脱却しつつある」と評価したが、ユーロ圏経済は険しさを増す。IMFは「さらに需要が減退すればデフレに陥る危険性がある」と、柔軟な財政出動や積極的な金融緩和の必要性を訴えている。
G20会議ではインフラ投資の促進策が議論の柱になる。新興国でインフラ整備の資金需要が強まる一方で、先進国は金融緩和でマネーが潤沢。両者を結んで成長につなげたい考えだ。9月の前回会合ではインフラ情報を共有することで合意しており、今回は組織運営など具体論をつめる。

次に、「世界経済見通し」フルテキストのpdfの全文リポートと第1章と第2章の見通し篇のリポートへのリンクは以下の通りです。

第2章は地域見通しですので、今夜は第1勝を中心に簡単に取り上げておきたいと思います。まず、下の画像は成長率見通しの総括表です。今年7月の前回見通しからの差も表章されています。IMF Survey Magazine のサイトから引用しています。なお、クリックすると全文リポートから p.2 の経済見通し総括表だけを抽出した pdf ファイルが別タブで開きます。

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日本の成長率見通しを大きく下方修正した理由としては、多くのエコノミストが合意する通り、消費税率の引き上げ後の内需の回復が予想を下回った "In Japan, the decline in domestic demand following the increase in the consumption tax was larger than expected." 点を強調しています。また、メディアなどでは今年と来年の成長率見通しに関心が集中しがちなんですが、中長期的な視点からの分析も重要です。すなわち、世界経済見通しへのリスクとしては短期的なリスクと中期的なリスクに分けて、短期的なリスクについては中東やウクライナなどにおける地政学的リスクを、中期的なリスクとして潜在成長率の低下をそれぞれ強調しています。潜在成長率の低下については全要素生産性(TFP)の低下とともに、人口の高齢化に伴う労働供給の減少を懸念しており、日本もこの高齢化の進展では世界の先頭を走っており、今後の中長期的な成長率の低下を招かないための政策が必要です。ということで、公共投資を取り上げる第3章につながり、また、労働供給を増加させるような構造改革の必要性が指摘されています。特に、日本については、全文リポート p.22 から以下の指摘が重要と考えますのでパラグラフごと引用したいと思います。なお、どうでもいいことながら、何度か指摘しましたが、IMFなどの国際機関ではアベノミクスの第3の矢は成長戦略ではなく、構造改革であると受け止められているようです。

Boosting medium-term growth and reducing risks of stagnation
In Japan, more forceful structural reforms (the third arrow of Abenomics) are needed to boost potential growth and move decisively away from deflation. In particular, increasing the labor supply is of the essence, given unfavorable demographic trends, but it is also important to reduce labor market duality, enhance risk capital provision to boost investment, and raise productivity through agricultural and services sector deregulation. The task of boosting growth is also critical in light of the challenges posed by high public debt and the need for sizable fiscal consolidation—for which a concrete medium-term plan beyond 2015 is urgently needed.
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やや、ついでの扱いになってしまいましたが、本日、内閣府から9月の景気ウォッチャー調査の結果が、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。上のグラフの通りで、上のパネルでは景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIを景気後退期のシャドーとともにプロットしており、下のパネルでは青い折れ線グラフが季節調整済みの経常収支を示しており、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のパネルの景気ウォッチャーの現状判断DIは先月から横ばいであり、やや「膠着状態」っぽい段階に入りつつあるのかもしれません。ただ、現状判断DIのうちの雇用判断DIと先行き判断DIがともに4か月連続で9月も落ちているのが気がかりです。また、季節調整済みの経常収支に目を転じると、ここ何か月か小幅の黒字で、これまた、「膠着状態」といえそうな気がしないでもありません。足元の円安に伴う価格効果も貿易収支や経常収支に大きな影響を及ぼさないと仮定すれば、IMF「世界経済見通し」第1章で示されたように世界経済の成長率がさらに高まらない限り、この先、もう少し同じような状態が続くのかもしれません。いずれにせよ、IMF「世界経済見通し」分析編第4章の通り、日本の経常収支不均衡は数年前に比較して大きく縮小しました。

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