企業向けサービス物価(SPPI)の上昇率はなぜ縮小しないのか?
本日、日銀から9月の企業向けサービス物価(SPPI)が公表されています。ヘッドライン上昇率は前年同月比で見て前月と同じ+3.5%でした。変動の大きい国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIも同じです。いずれも、消費増税直後の5月から+3%台半ばの上昇率を続けています。まず、統計を報じた日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
9月の企業向けサービス価格、前年比3.5%上昇 増税除き0.8%上昇
日銀が27日発表した9月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は102.4と、前年同月に比べ3.5%上昇した。伸び率は前月から横ばいだった。宅配便など運輸関連の需要が消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減から回復し、人手不足を背景に単価が上昇した。消費増税の影響を除いたベースの伸び率も0.8%で前月と同じだった。
消費税の影響を除くベースで前年同月を上回るのは15カ月連続となる。上昇品目数は79で、下落は41。上昇品目と下落品目の差は38と、現行の2010年基準で最大だった8月の47から縮小した。日銀は「価格改定が集中する10月を控えて、9月は全般的に動きが乏しかった」と説明している。
品目別(消費税の影響を除く)では、宅配便など道路貨物輸送の伸び率が1.3%と前月の1.0%から拡大した。貸し切りバスなど道路旅客輸送も1.7%と、前月の1.1%を上回った。一方、雑誌広告はタイアップ広告が好調だった前年同月の反動で前月のプラスからマイナスに転じた。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引されるサービスの価格水準を示す。価格改定が集中しやすい10月は、人手不足を背景にソフト開発や運輸で値上げの動きが出ている。一方、天候要因もあって「単月では基調を判断しにくい」(日銀)という。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルはサービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしています。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

一見して理解できるところですが、モノの企業物価(PPI)がここ2-3か月で上昇幅を縮小させているのに対して、サービスの企業向けサービス物価(SPPI)はほぼ3%台半ばの上昇率を維持しています。なお、消費税の影響を除く上昇率は+0.8%と発表されており、当然ながら、この消費税を除くSPPI上昇率もほぼ横ばいを続けています。逆に、消費増税以降の需給ギャップの悪化に従ったPPI上昇率の低下にもかかわらず、SPPI上昇率が横ばいを続けているのが少し違和感があるとさえ言えます。すなわち、GDP成長率の低下などに見られるように、需給ギャップのマイナス方向への振れが観察される一方で、日銀リポートなどで主張されている通り、従来から需給ギャップに敏感であると見なされてきたSPPIが一向にその上昇率を縮小しないのはひとつのパズルであろうかと私は受け止めています。引用した記事にもある通り、多くの企業で10月の価格改定を待っている状態なのか、原油価格などの商品市況の影響がPPIに対して大きく出ている一方で、人手不足を背景とした人件費の上昇の影響がSPPIで強く出ているのか、それとも、SPPI品目における価格転嫁の広がりと需給ギャップの悪化が相殺しているのか、もちろん、単一のドミナントな要因ではなく、これらの諸条件が重なった結果だとは思いますが、このSPPI上昇率の膠着状態はエコノミストには謎です。
経済を見る上でもっともやっかいなところは、足元の経済状況が実は明確には把握できないことです。お天気であれば、現時点で、晴れているのか、曇っているのか、雨が降っているのかが明確なんですが、経済状況については景気が拡大局面にあるのか、後退局面にあるのかも実は未確定です。もっと時間が経過した後で、じっくりとデータを分析して後付けで結論を出すしかない場合も少なくありません。ですから、経済予測が外れまくるのは、現状すら未確定なんですから仕方ない気もします。
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