7-9月期GDP速報1次QEは2四半期連続のマイナス成長を記録!
本日、内閣府から7-9月期のGDP統計速報1次QEが発表されています。季節調整済みの前期比成長率が▲0.4%、年率で▲1.6%のマイナス成長を記録しました。4-6月期に続いて2四半期連続のマイナス成長であり、テクニカルなリセッションと目される成長率水準といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
GDP年率1.6%減 7-9月、消費回復に遅れ
内閣府が17日発表した2014年7-9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.4%減、年率換算で1.6%減と2四半期連続のマイナスとなった。QUICKが集計した14日時点の民間予測のレンジ(0.8%増-3.5%増)の下限を大きく下回るマイナス成長となった。消費増税後の反動減からの回復が見込まれていた内需の不振が鮮明になっている。民間設備投資の減少が続いたうえ、天候不順によって個人消費の回復も遅れている。在庫の取り崩しが進んだことも見かけ上の成長率を押し下げた。
生活実感に近い名目成長率は0.8%減、年率で3.0%減となった。安倍晋三首相は今回の結果などを踏まえ、2015年10月からの消費税率10%引き上げの是非を最終判断する。
実質成長率への寄与度で見ると、国内需要が0.5ポイント押し下げた半面、輸出から輸入を差し引いた外需は0.1ポイントの押し上げ要因となった。
内需のうち個人消費は0.4%増と2四半期ぶりプラス。4月の消費増税の駆け込み需要の反動減は薄れつつあるものの、夏場の天候不順や物価上昇などが重荷となった。設備投資は0.2%減と2四半期連続のマイナス。生産回復の遅れによる稼働率の低下が響いた。
住宅投資は6.7%減と2半期連続で減ったが、減少幅は4-6月期の10.0%減から縮小した。住宅着工数の減少が続いている。公共投資は13年度補正予算や14年度予算の前倒し執行が進み、2.2%増と2四半期連続のプラスとなった。
外需は輸出が1.3%増。スマートフォン向け電子部品などが伸びた。一方、輸入は0.8%増だった。その結果、成長率に対する外需寄与度は2四半期ぶりにプラスとなった。
総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比でプラス2.1%となり、2四半期連続でプラスだった。国内の物価動向を表す国内需要デフレーターはプラス2.4%と3四半期連続のプラスだった。
実質季節調整系列の金額ベースで見ると522兆8301億円で、13年1-3月期(521兆3016億円)以来の低い水準だった。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。ですから、4-6月期だけでなく7-9月期も消費税率引き上げの影響が残っています。当然ながら、来年2015年1-3月期まで残るハズです。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2013/7-9 | 2013/10-12 | 2014/1-3 | 2014/4-6 | 2014/7-9 |
国内総生産GDP | +0.6 | ▲0.4 | +1.6 | ▲1.9 | ▲0.4 |
民間消費 | +0.3 | ▲0.0 | +2.2 | ▲5.0 | +0.4 |
民間住宅 | +4.3 | +2.2 | +2.3 | ▲10.0 | ▲6.7 |
民間設備 | +0.7 | +0.8 | +7.5 | ▲4.8 | ▲0.2 |
民間在庫 * | (+0.3) | (▲0.1) | (▲0.5) | (+1.2) | (▲0.6) |
公的需要 | +1.1 | +0.5 | ▲0.6 | +0.1 | +0.7 |
内需寄与度 * | (+1.0) | (+0.2) | (+1.8) | (▲2.9) | (▲0.5) |
外需寄与度 * | (▲0.4) | (▲0.6) | (▲0.2) | (+1.0) | (+0.1) |
輸出 | ▲0.6 | +0.2 | +6.4 | ▲0.5 | +1.3 |
輸入 | +1.8 | +3.7 | +6.2 | ▲5.4 | +0.8 |
国内総所得 (GDI) | +0.4 | ▲0.4 | +1.2 | ▲1.6 | ▲0.8 |
国民総所得 (GNI) | +0.0 | ▲0.4 | +0.9 | ▲1.3 | ▲0.4 |
名目GDP | +0.4 | +0.1 | +1.5 | ▲0.1 | ▲0.8 |
雇用者報酬 (実質) | ▲0.5 | ▲0.1 | +0.2 | ▲1.4 | +0.7 |
GDPデフレータ | ▲0.4 | ▲0.4 | ▲0.1 | +2.0 | +2.1 |
内需デフレータ | +0.4 | +0.5 | +0.7 | +2.4 | +2.4 |
上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7-9月期の最新データでは、前期比成長率が4-6月期に続いてマイナスであり、赤の民間消費と黄色の公的需要が小幅のプラス寄与を示す一方で、グレーの民間在庫のマイナス寄与が大きく、緑の民間住宅も小幅ながらマイナス寄与を示しているのが見て取れます。

引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前期比成長率で+0.5%、前期比年率で+2.0%成長でしたので、マイナス成長は予想外で大きなネガティブ・サプライズでした。このブログで先週金曜日にお示しした1次QE予測でもマイナス成長を予測したシンクタンクはありませんでしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでもレンジの最低値は前期比で+0.2%成長でした。同時に、今日発表された統計では4-6月期の前期比成長率も▲1.9%に下方改訂されており、2四半期連続のマイナス成長ですから、テクニカルに景気後退入りしたと受け止める向きもありそうです。基本的には、消費増税前の駆込み需要に対する反動減と物価上昇に伴う実質所得の減少が4-6月期にとどまらず、年央以降の消費を冷え込ませた結果と考えられますが、もうひとつの要因として、来年10月からの消費税率の再引上げに備えた家計の生活防衛、すなわち、消費性向の低下ないし貯蓄率の上昇が上げられると私は考えています。さらに、統計的には予想以上に在庫調整が進んだために、在庫の寄与度のマイナスが大きかったことも上げられます。事前の予想ではGDP前期比成長率への寄与度で見て▲0.1-0.2%程度のマイナス寄与と見込まれていた在庫調整の進展が▲0.6%でしたので、これだけでマイナス成長を説明できてしまいます。でも、在庫調整の予想外の進展を除いても、ほぼゼロ近傍の成長だったんですから、これはこれでかなりの低成長と考えるべきです。
先行きに関しては、大和総研のリポートで指摘されているように、実質雇用者報酬が前期比で改善したことをもって、「家計を取り巻く雇用・所得環境は底堅い」とまで結論するのは、夏季賞与を考慮すれば疑問が残るとしても、在庫調整のテンポが想定外にスピーディーだったという側面もあるわけですから、ニッセイ基礎研のリポートで分析されている通り、「景気の実勢はヘッドラインの数字が示すほどは悪くない」というのは事実であり、みずほ総研のリポートでも「在庫投資のマイナス寄与がはく落する」とされている10-12月期にはプラス成長が見込まれていることから、過度に悲観する必要はないものの、景気回復・拡大が大きく停滞しているのも事実と受け止めなければなりません。
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