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2014年11月26日 (水)

経済協力開発機構「OECD 経済見通し」OECD Economic Outlook による我が国の成長率見通しやいかに?

昨日、経済協力開発機構(OECD)から「OECD 経済見通し」 OECD Economic Outlook, No.96 が公表されています。ヘッドラインとなる成長率見通しについて、日本の成長率見通しを消費再増税の先送りも織り込んだ上で、2014年は+0.4%、15年は+0.8%と見込み、前回5月の OECD Economic Outlook, No.95 と比べると、それぞれ▲0.8%ポイント、▲0.4%ポイントの下方修正となっています。引用はしませんが、日経新聞のサイトでは以下の記事がアップされています。ご参考まで。

今夜はOECDのサイトにアップされている「経済見通し」第1章に当たる General assessment of the macroeconomic situation のリポートからいくつか図表を引用しつつ、簡単に OECD 経済見通しを紹介しておきたいと思います。

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まず、リポートから経済見通しの総括表として、p.11 Table 1.1. The global recovery will gain momentum only slowly を引用すると上の通りです。前回5月の OECD Economic Outlook, No.95では、2014年と15年の成長率見通しが、それぞれ、米国で+2.6%と+3.5%、ユーロ圏で+1.2%と+1.7%、日本で両年とも+1.2%でしたから、米国では両年とも▲0.4%ポイント、ユーロ圏では▲0.4%ポイントと▲0.6%ポイント、日本では▲0.8%ポイントと▲0.4%ポイント、それぞれ下方改定されています。2014年の日本の成長率の下方改定幅が特に大きいのは、当然ながら、4月に実施された消費税率の引上げのショックに起因する景気の停滞が想定外だったからです。ただし、今回初めて公表された2016年の成長率は+1.0%と2015年からさらに高まると見込まれており、ハロウィーンの金融緩和や人手不足の顕在化に伴う賃金の上昇などから、緩やかな景気の回復が継続すると予想しています。

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続いて、リポートから日米英欧の主要国・地域の成長率、潜在成長率、コア・インフレ、需給ギャップ、失業率、雇用ギャップといった指標の見通しをプロットしたグラフとして、p.14 Figure 1.1. Macroeconomic performance among the largest OECD areas is expected to continue to differ を引用すると上の通りです。それぞれのデータはOECDのStatLinkにあります。注目点はいくつかありますが、AとBのグラフで示唆されているのは、我が国の人口動向などから潜在成長率が高まらず、従って、現実の成長率も英米欧に比べて低いままでとどまる、との事実であろうと受け止めています。また、EとFについては、我が国の失業率は水準でいえば英米欧よりも低いんですが、現状のままであれば3%台半ばにとどまってさらなる低下にはつながらない一方で、0.5%ポイントから0.7%ポイント近い失業ギャップ、すなわち、現実の失業率とインフレを加速しない失業率で定義されるNAIRUとのギャップが存在することから、労働市場などの構造改革によってさらなる失業率の低下が可能である、という点かと考えています。同時に、グラフは引用しませんが、リポートの p.28 Figure 1.6. Economic slack continues to hold back wage growth では、米英の失業ギャップがまだまだ大きく、そのために賃金がなかなか上昇しない、という分析も示しています。

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さらに、リポートから私の興味の範囲で為替の景気への効果を見た p.20 Figure 1.3. Impact on GDP growth of a euro and yen depreciation を引用すると上の通りです。ベースラインのシナリオから1%のユーロ・ドル為替のユーロ安と円ドル為替の円安が2014年7-9月期から見通し期間いっぱいの2016年末まで生じた場合のGDP成長率へのインパクトを計測しています。日欧とも2015年には+0.2%ポイント程度、2016年には+0.4%ポイント程度の成長率の上振れが生じると推計されているのがグラフから読み取れます。ちょっと信じがたいほどの大きなインパクトで、注にある「1%の減価」というのは「10%」ではないかと疑わしいほどです。というのも、内閣府による「短期日本経済マクロ計量モデル(2011年版)の構造と乗数分析(2011年1月)」と題するディスカッション・ペーパーでは、このグラフのような成長率への影響ではなく標準ケースからの乖離ですが、10%の円安で1年目+0.19%、2年目+0.38%、3年目+0.58%の影響を報告しています。こんなもんだろうという気がします。しかし、いずれにせよ、為替が成長率にこれほどのインパクトを持っているとすれば、異次元緩和以前の日銀の引締め気味の金融運営が日本経済の成長に悪影響を及ぼしていたということもうなずけます。

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最後に、リポートから設備投資動向を見た p.30 Figure 1.7. The post-crisis recovery in investment remains slow を引用すると上のグラフの通りです。サブプライム・バブル崩壊前の2008年1-3月期を100とする指数です。ユーロ圏欧州がずっと低い水準で推移している一方で米英は2013年末から2014年初にかけてバブル崩壊前の水準を超えました。ビミョーなのが日本であり、2013年1-3月期までは割合と米英に近いラインで推移していたのが、消費税率の引上げとともに我が国の設備投資は一気に落ち込んで、この先も低迷を続ける可能性が示唆されています。

最後に、大きな負のインパクトを持っていた消費税率の引上げだったんですが、このリポートでは pp.35-37 で Box 1.3. Consumption tax increases in Japan と題したコラムで1997年の消費増税と比較しつつ分析を試みています。そして、"One possibility is that the expectation of a further tax increase contributed to the sharper-than-expected fall in economic activity in 2014." との仮説を持ち出しています。このブログで私が主張していた仮説、すなわち、来年2015年10月からの消費税率再引上げに備えた家計の生活防衛に伴う貯蓄率の上昇/消費性向の低下が現在の景気の足踏みの原因のひとつ、とまったく同じであると受け止めています。

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