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2014年11月13日 (木)

今日発表の機械受注と企業物価は相反する方向を示しているのか?

本日、内閣府から9月の機械受注が、また、日銀から10月の企業物価が、それぞれ発表されています。機械受注はヘッドラインとなる船舶と電力を除く民需が前月比+2.9%増の8316億円となり、企業物価は国内物価が前年同月比+2.9%の上昇、ただし、消費税の影響を除くと+0.1%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月機械受注2.9%増 4カ月連続プラス、基調判断据え置き
内閣府が13日発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比2.9%増の8316億円だった。石油・石炭製品や運輸・郵便業向けの大型案件が発生し、4カ月連続のプラスだった。
QUICKが12日時点でまとめた民間予測の中央値(1.2%減)を大幅に上回った。内閣府は機械受注の判断を前月の「緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は12.0%増の3637億円と2カ月ぶりに増加に転じた。石油製品・石炭製品向けのボイラーやタービン、電気機械向けの半導体製造装置などが伸びた。
船舶・電力を除いた非製造業から受注した金額も1.7%増の4783億円と2カ月連続のプラスだった。通信業や情報サービス業からコンピューター、運輸・郵便業からボイラーやタービンの受注が増えた。
同時に発表した7-9月期の実績は前期比5.6%増の2兆4110億円だった。製造業からの受注増が寄与して2四半期ぶりのプラスに転じた。10-12月期は0.3%減と再びマイナスになる見通し。船舶・電力を除いた非製造業が回復する一方で、製造業は2四半期ぶりに減少すると見込まれている。
10月の企業物価指数、前年比2.9%上昇 原油下落で伸び率大幅鈍化
日銀が13日発表した10月の国内企業物価指数(2010年平均=100)は105.5で、前年同月比で2.9%上昇した。上昇幅は前月に比べて0.7ポイント縮小した。前月比では0.8%低下した。原油価格の下落による石油製品の下落や、夏期の電力料金割り増し終了などが影響し、伸び率は大幅に鈍化した。
消費税率引き上げの影響を除いたベースでは前年同月比0.1%の上昇。伸び率は4カ月連続で縮小した。伸び率は2013年4月(0.1%上昇)以来の低さとなった。日銀は11月についても原油価格の下落による物価押し下げ圧力は続くと見ている。
企業物価指数は出荷や卸売りなど企業間で取引する製品の価格動向を示す。公表している全814品目のうち、消費税の影響を除くベースで前年同月で上昇したのは396品目、下落は337品目だった。上昇した品目が下落した品目を上回るのは14カ月連続だった。

2つの統計の記事を並べるとやや長いながら、いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、この次の企業物価のグラフとも共通して、景気後退期を示しています。

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船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注のベースで見て、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比で▲1.2%の減少だったわけですから、+2.9%の増加はやや上振れのサプライズでした。7-9月期の四半期で見ても前期比+5.6%増を記録し、10-12月期の見通しは▲0.3%減とマイナスながらほぼ横ばい圏内の動きと見込まれていますから、楽観的に見ると設備投資がそろそろ調整局面を終え、来年早々から年央には反転上昇の局面を迎える可能性が高まったようにも見えます。ただし、内需も外需もそれほどの伸びを見せていない段階で、どこまで設備投資が増加するかは需要面からは疑問が残ります。逆に、供給面からの理由であればいくつか思い浮かべることができます。すなわち、第1に人手不足から労働に代替する設備需要が生じてもおかしくない段階に来ています。第2に長らく設備投資が低迷していた間に資本ストックの更新投資レベルまで落ちていた、もしくは、更新レベルすら割り込んでいた設備投資が増加する可能性もあります。さらに、第3に企業部門が増益を記録する中で設備設備に対する資金不足が解消、もしくは、資金余剰が生じた可能性が上げられます。日銀短観に示された設備投資計画もそれを裏付けているように私には見えます。今後は、鉱工業生産指数(IIP)の資本財出荷などの動きをウォッチするとさらに設備投資動向が明らかになるんではないかと受け止めています。

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続いて、機械受注の四半期データが利用可能になりましたので、達成率のグラフを書くと上の通りです。これも船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注のベースです。4-6月期にはちょうど90%まで落ちましたが、7-9月期には100.7%まで上がりました。エコノミストの経験則である90%ラインを割ることなく、再び上昇に転じています。7-9月期の達成率が100%を超えていますので、現時点での10-12月期見通しの前期比▲0.3%減も達成率が100%を超えれば、ひょっとしたら、前期比プラスになる可能性もあるんではないかと考えています。

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次に、企業物価上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内と輸出入別の前年同月比上昇率を、下のパネルは需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。国内企業物価の前年同月比上昇率で見て、6月の+4.5%、7月の+4.4%から8月+3.9%、9月+3.6%、そして、10月+2.9%と急激に上昇幅が鈍化しました。消費税の影響を除くベースでは10月はとうとう+0.1%とほぼゼロ近傍に達しました。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで+3.3%だった国内物価上昇率が+2.9%だったんですから、これはかなり下振れしたサプライズでした。基本的には、国際商品市況の下落に伴う石油の値下がりとこれを反映した国内の電力などのエネルギー価格の低下に起因する供給サイドの要因で下げていると考えられるんですが、需要サイドも消費増税ショックの後の回復が遅れている点も考慮すべきであると受け止めています。供給サイドについて数字を確認すると、10月の国内物価の前月比▲0.8%の下落のうち、電力・都市ガス・水道の寄与度が▲0.28%、石油・石炭製品が同じく▲0.27%とほぼ2/3を説明できますから、サプライ・サイドからのエネルギー価格の下落が企業物価上昇率縮小の最大の要因と考えるべきです。

本日発表された企業活動に関する指標は、一見しただけでは相反する方向を指し示しているように見えます。すなわち、機械受注は年内くらいの設備投資の調整局面の終了と来年早々から年央くらいに反転上昇する可能性を示唆し、企業物価上昇率の鈍化は消費増税ショックからの需要の回復の遅れを反映しているように見えます。しかし、設備ストックの更新レベルに近づいた設備投資がようやく増加に転じる兆しを示した一方で、エネルギー価格の下落に伴う供給サイドからの物価上昇の鈍化ですから、機械受注が示すほど企業活動は強くなく、同時に、企業物価上昇率の鈍化に表れているほど需要が弱いわけでもない、というのが結論であろうと私は考えています。

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