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2014年11月 5日 (水)

毎月勤労統計からみてホントに今夏のボーナスは増えたのか?

本日、厚生労働省から毎月勤労統計が発表されました。月次の直近は9月の統計ですが、今夏のボーナスについても集計されています。夏季ボーナスは調査産業の平均で前年比3.1%増の37万550円と昨年よりも増えました。業績見合いの分が増加しているにしてはやや渋い結果だと受け止めています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

14年夏の賞与、23年ぶり高い伸び 業績改善で前年比3.1%
厚生労働省が5日発表した毎月勤労統計調査(従業員5人以上)によると、6~8月に支払われた2014年夏の賞与は前年同期比3.1%増の37万550円と、夏の賞与としては1991年(6.3%増)以来23年ぶりの高い伸び率を記録した。プラスは2年連続。円安を背景とした景気回復に加え、消費増税に伴う駆け込み需要で生産活動が活発化し、企業業績が改善した。
業種別では、製造業が52万1785円と10.5%伸びた。建設業は10.0%増の39万3283円、不動産・物品賃貸業は11.8%増の44万9279円、卸売・小売業は5.6%増の32万4321円となるなど、幅広い業種が恩恵を受けた。
同時に発表した9月調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比0.8%増の26万6595円だった。プラスは7カ月連続。基本給や残業代などが増加したため。
基本給や家族手当などの所定内給与は0.5%増の24万2211円だった。増加は4カ月連続。今年の春季労使交渉で大手企業を中心に広がった基本給を底上げするベースアップ(ベア)の結果を映した。
ボーナスにあたる特別給与は11.5%増の5506円だった。残業代などの所定外給与は1.6%増の1万8878円。所定外労働時間は2.9%増の10.8時間。このうち製造業の所定外労働時間は2.6%増の15.9時間だった。
一方、現金給与総額から物価上昇分を除いた実質賃金は前年同月比2.9%減と15カ月連続で減少した。

いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、真ん中は製造業に限らず調査産業計の賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、そして、本邦初登場かもしれない下のパネルは就業形態別雇用の推移を前年同月比で、それぞれプロットしています。賃金は凡例の通り現金給与総額と所定内給与であり、就業形態は一般労働者=フルタイムとパートタイム労働者です。影をつけた期間は景気後退期です。

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ボーナスに先立って、まず、月次統計を見ると、景気に敏感な所定外労働時間指数は生産が増産になったことと整合的に9月は増加しました。極めて短期的に見れば、景気は1月をピークに、8月をトラフにして景気後退局面があったのかもしれないと思わないでもないんですが、深さと期間が足りない可能性もありますし、公式の景気局面の判定にはヒストリカルDIを主たる指標として用いますので、専門家によるキチンとした景気局面の同定が必要です。また、真ん中と下のパネルは質的な雇用の改善を示していると私は受け止めています。すなわち、まだまだ物価上昇には追いつかないものの賃金が上昇を示すようになり、これまた、まだまだパートタイム労働者の伸びの方が高いもののフルタイムの一般労働者の伸びも高まっています。現状では、雇用の改善はやや足踏みを示していますが、人手不足感は強まりつつあり、量的な雇用の拡大から質的な雇用の改善に向かう局面を迎えつつあると考えるべきです。

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続いて、夏季と年末のボーナスの前年比をプロットしたのが上のグラフです。私の手元にあるExcelのデータでは1998年までしかさかのぼれないんですが、引用した記事に従えば、夏季賞与としては1991年の6.3%増以来23年振りの高い伸び率を記録したようです。リーマン・ショック直後の2009年の夏季ボーナスは▲9.8%減と大きなマイナスを記録したわけですから、業績見合いで今年のボーナスはもっと増えてもよさそうに思うんですが、やや渋い結果となったと私は考えています。それにしても、どこまでが消費への影響が大きい恒常所得なのかは議論が残るものの、ボーナスが増えれば消費、特に大型消費に影響が及ぶのは当然です。そろそろ、いくつかのシンクタンクから年末ボーナスの予想も出始める時期ですので、近く年末ボーナス予想を取り上げたいと考えています。

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さらに、産業別の今年の夏季ボーナスの詳細は上のグラフの通りです。上のパネルが額、下が昨年からの伸び率です。鉱業,採石業等がやや飛び抜けた伸び率を示していて、下のパネルが少し見づらいんですが、調査産業計で+3.1%の増加ですから物価上昇率を上回っています。特に、建設業、製造業、卸売業・小売業、不動産業などで高い伸びを記録しています。ただし、注意すべきは夏季賞与が物価上昇を上回ってかなり伸びたにもかかわらず夏場の消費は盛上がりに欠けていた点です。賃金との累積的な効果で考えてボーナスの伸びがまだ不足しているのか、それとも、ボーナスは消費を押し上げる恒常所得に入らないのか、おそらく後者なんではないかと思うんですが、今後の先行きは労働市場のひっ迫とともにボーナスだけでなく毎月のお給料も増加を示すにつれ、消費への拡大効果が徐々に現れ始めると私は楽観視しています。

労働市場のひっ迫とそれに伴う賃金の上昇は雇用者からすれば所得の増加につながり、マクロの消費を拡大すると考えられますが、企業部門から見ればコストの増加となります。現状では家計部門よりも圧倒的に企業部門に有利な分配がなされており、消費増税とともに企業への法人減税が政策的に実行されようとしていますから、この程度の賃上げは実行されてしかるべきと私は考えていますが、個別のマイクロな視点からの企業行動では労働に代替する設備投資の増加が見られる可能性もあると考えています。

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