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2014年12月27日 (土)

今週の読書は『格差と民主主義』ほか計4冊

いよいよ2014年も押し詰まった今週の読書はクリントン政権下で労働長官を務めたロバート・ライシュ教授の『格差と民主主義』ほか、以下の計4冊です。

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まず、ロバート・ライシュ『格差と民主主義』(東洋経済) です。英語の原題は Beyond Outrage であり、「怒りを超えて」というわけですから、何かに怒っているわけで、怒りの対象は経済的な格差だということになります。その意味で、邦題はよく考えて付けられています。2012年の米国大統領選挙の年に出版されており、経済書や教養書という見方が出来ないわけでもないんでしょうが、選挙キャンペーンにおけるパンフレットとも考えられ、徹頭徹尾、共和党を批判して民主党への支持を目論んでいると見なすことも出来る本です。しかしながら、それで本書の値打ちが下がるとは私は考えておらず、例えば、ケインズの「平和の経済的帰結」とか、ずばり、『説得論集』とかはとても優れた経済書であると受け止められています。本書も、米国の保守派が経済的に台頭した起点を1995年のギングリッチ下院議長就任とし、「ウォール街を占拠せよ」の運動を明示的に支持しています。「トリクルダウン経済なんて、残酷な冗談」(p.143)と言い放ち、法人減税に反対し、「小さな政府」を疑問視し、無制限の規制緩和に異議を唱えています。単純に選挙キャンペーンでリベラルな候補を支持する、というか、リベラル派への投票行動だけでなく、何らかの直接的な意思表示の行動にも理解を示しているように感じます。クルーグマン教授らと並ぶ民主党リベラル派のライシュ教授の経済格差に対する考えが明確に示された1冊だと受け止めています。フォーマルな定量分析は示されていないものの、リベラル派から見た米国経済の格差に関する怒りを感じさせる本です。

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次に、森博嗣『サイタ×サイタ』(講談社) です。犀川創平と西之園萌絵のS&Mシリーズ、瀬在丸紅子と保呂草潤平のVシリーズ、加部谷恵美や海月及介などのGシリーズに続く、小川令子や真鍋瞬市などが登場するXシリーズの最新作5作目です。しかしながら、前作の『ムカシ×ムカシ』などに比べて、とても地味な印象を持ってしまいました。ミステリですから、華々しければそれでいいというわけでもないんでしょうが、森ミステリの場合は、動機が特に重要なポイントから外れていますので、手法に注目するわけですが、今回の犯人像も実行方法もさして意外性はなく、やや物足りなさを感じる読者もいそうな気がしないでもありません。なお、前作『ムカシ×ムカシ』刊行時の著者インタビューが講談社のサイトにあり、このXシリーズは6作、すなわち、『サイタ×サイタ』の次作で終了する一方で、Xシリーズよりも先に始まっているGシリーズは先になるかもしれないけれど、あと3作の計12作で終了する予定、と発言しています。私も、どちらかといえば、XシリーズよりもGシリーズに魅力を感じます。Xシリーズの弱点は名古屋ではなく東京を舞台に選んだためではないかと、私は密かに思ったりしています。

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次に、佐伯泰英『失意ノ方』(双葉文庫) です。「居眠り磐音の江戸双紙」のシリーズ最新刊ですが、来年早々の1月に次巻も発売予定と聞いています。次作は『白鶴ノ紅』というタイトルで1月5日発売だそうです。坂崎磐音の許嫁だった奈緒を強く連想させるタイトルです。ということで、『失意ノ方』に戻ると、このタイトルは明らかに嫡男である意知を佐野善左衛門に刺殺された老中田沼意次を示唆しています。他方で、次巻に続く奈緒の苦境についても話が進み、いつもの通りのわけの分からない道場破りも登場して、やや無節操に話が進みます。本書のハイライトは坂崎磐音と田沼意次が直接会話を交わすシーンではないかと思いますが、私の読解力が不足しているのか、それほどの緊張感は感じられませんでした。作者の心づもりによれば、このシリーズは50巻で終了とのことで、本作『失意ノ方』は第47巻、年明け早々の次巻『白鶴ノ紅』は第48巻です。ひょっとしたら、来年中には第50巻に達してしまいそうな気がしないでもありません。最後までがんばってフォローしたいと思います。

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最後に、万城目学ほか『みんなの少年探偵団』(ポプラ社) です。万城目学「永遠」、湊かなえ「少女探偵団」、小路幸也「東京の探偵たち」、向井湘吉「指数犬」、藤谷治「解散二十面相」の5本の短篇を編んだジュブナイル短篇集です。タイトルや表紙を見ても理解できる通り、明智小五郎や少年探偵団と怪人二十面相の対決をテーマとしたジュブナイル小説なんですが、私のような中年以降の大人が読んでも楽しい短篇集です。ただし、私よりももっと年配の団塊の世代の人々向けだという気がしないでもありません。万城目作品はまだ正面から暗号解読に挑んでいたりするんですが、湊作品は語り手がおばあちゃんになって、昔話の少女探偵団の物語です。最後の藤谷作品がかなり冗談めかしたパロディで、昔風の生真面目な雰囲気を捨てて、現代的なコメディタッチの作風を活かしていたりします。

役所では昨日が御用納めで、今日の土曜日から年末年始休みに入ります。いつ読むか分からないながら、何と、一念発起してトマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)を買い込みました。これだけ高額かつぶ厚い本を買うのはラインハート=ロゴフの『国家は破綻する』以来かもしれません。

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