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2014年12月 8日 (月)

7-9月期GDP統計2次QEはちょっとびっくりの下方改定でマイナス成長幅が拡大!

本日、注目を集めた7-9月期のGDP統計2次QEが公表されています。成長率は1次QEで▲0.4%、年率▲1.6%のマイナス成長でしたが、2次QEでは前期比で▲0.5%、前期比年率では▲1.9%と下方改定されました。上方改定の予想が大勢だっただけに、少し驚かされました。特に、民間設備投資と公共投資の下方改定幅が大きくなっています。まず、日経新聞のサイトから統計について報じた記事を引用すると以下の通りです。

GDP改定値、年率1.9%減 設備投資を下方修正
7-9月実質

内閣府が8日発表した2014年7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.5%減だった。2四半期連続のマイナスで、11月17日発表の速報値(0.4%減)から下方修正された。年率換算では1.9%減(速報値は1.6%減)だった。速報値の発表後に明らかになった法人企業統計などを反映した結果、設備投資や公共投資が下振れした。
7-9月期の法人企業統計などをもとに推計し直した結果、設備投資は0.4%減(速報値は0.2%減)に下方修正された。速報段階で取り入れていた一部の予測値が実際よりも高すぎ、改定値では下押し要因になった。零細企業の設備投資も振るわなかった。民間の在庫寄与度はマイナス0.6ポイントで、速報段階から変わらなかった。
公共投資は1.4%増(速報値は2.2%増)に下方修正した。内閣府は「季節調整をかけ直した技術的な要因により、4-6月期が上方修正された一方で7-9月期が下方修正された」と説明している。
生活実感に近い名目GDPは0.9%減(速報値は0.8%減)、年率で3.5%減(同3.0%減)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比プラス2.0%(速報値はプラス2.1%)だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事となっています。次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2013/7-92013/10-122014/1-32014/4-62014/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.4▲0.4+1.4▲1.7▲0.4▲0.5
民間消費+0.3▲0.1+2.2▲5.1+0.4+0.4
民間住宅+4.3+2.2+2.3▲10.0▲6.7▲6.8
民間設備+0.5+1.0+6.2▲4.7▲0.2▲0.4
民間在庫 *(+0.2)(▲0.1)(▲0.4)(+1.3)(▲0.6)(▲0.6)
公的需要+0.8+0.4▲0.8+0.5+0.7+0.5
内需寄与度 *(+0.8)(+0.2)(+1.6)(▲2.8)(▲0.5)(▲0.5)
外需寄与度 *(▲0.4)(▲0.6)(▲0.2)(+1.0)(+0.1)(+0.1)
輸出▲0.6+0.2+6.4▲0.5+1.3+1.3
輸入+1.7+3.7+6.2▲5.4+0.8+0.7
国内総所得 (GDI)+0.1▲0.4+1.0▲1.4▲0.8▲0.9
国民総所得 (GNI)▲0.2▲0.4+0.7▲1.2▲0.4▲0.5
名目GDP+0.2+0.2+1.3+0.1▲0.8▲0.9
雇用者報酬▲0.5▲0.2+0.2▲1.4+0.7+0.6
GDPデフレータ▲0.3▲0.3+0.1+2.1+2.1+2.0
内需デフレータ+0.5+0.6+0.8+2.5+2.4+2.4

テーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示した積上げ棒グラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対する寄与度であり、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4-6月期の最新データでは、前期比成長率がマイナスであり、消費増税ショック直後の4-6月期に大きなマイナス寄与だった赤の消費がプラスに転じたものの、グレーの在庫と緑の住宅、水色の設備などがマイナス寄与を示しているのが見て取れます。

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先週木曜日12月4日のエントリーで2次QE予想を取り上げましたが、その際の大勢見通しは1次QEから上方改定でしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも1次QEの年率▲1.6%から2次QEでは▲0.5%に上方修正されると見込まれていただけに、下方改定は少し驚きをもって受け止められたのではないかと私は想像しています。1次QEから2次QEへの改定の際の寄与度で効いているのは設備投資と公共投資なんですが、2次QEを単独で見る限り、在庫調整の進展がマイナス成長率への最大の寄与を示していることに変わりありません。2四半期連続のマイナス成長ですからテクニカルな景気後退局面と考えるエコノミストがいても不思議ではありませんが、足元の10-12月期は年率で+3%程度のプラス成長という見方も根強くエコノミストの間に存在し、2四半期だけで景気後退と判定するかどうかはビミョーなところです。ハッキリ言って、この2次QEの結果はかなり玉虫色で、受け取るエコノミストによって見方が変わる可能性が高い可能性があります。もともと強気だったり、楽観的だったりすると、10-12月期などの将来の明るい姿を中心に経済を描き、逆だと消費増税ショックによるマイナス効果を大きく見せる、というバイアスがかかりそうな気もします。私は同業者のエコノミストからいくつかのシンクタンクや金融機関を通じてニューズレターの配信を受けているんですが、同じ証券会社であるにもかかわらず、株式サポートのエコノミストは明るい経済を語り、債券サポートのエコノミストは慎重な見方を示す、といった例がありそうな気もします。ただし、2四半期連続のマイナス成長により、10-12月期はプラス成長にリバウンドするとしても、従来からの私の仮説が正しくて、次の消費増税に備えた家計防衛的な色彩の強い消費性向の下落ないし貯蓄率の上昇が景気低迷の原因のひとつと仮定すれば、それほど順調に回復軌道に戻る可能性は低そうな気もします。極端な場合は、次の駆込み需要まで待たねばならないかもしれません。その意味で、私は日本経済の先行きは楽観的ながらも慎重に見ていますから、その昔に流行った言い回しで "cautiously optimistic" なのかもしれません。

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GDP統計から離れて、今日は内閣府から11月の景気ウォッチャーと財務省から10月の経常収支がそれぞれ発表されています。上のグラフでは、上のパネルで景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIを、下のパネルでは青い折れ線グラフで経常収支、積上げ棒グラフでその内訳を、それぞれプロットしています。なお、上のパネルで影を付けた部分は景気後退期です。長くなりますので、グラフをお示しするに止めますが、景気ウォッチャーが下がり続けているのが気がかりです。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を前月の「このところ弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」から後半を削除して、「このところ回復に弱さがみられる」に下方修正しています。

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