« 今週のジャズは西山瞳・安ヵ川大樹「Down by the Salley Gardens」を聞く | トップページ | 毎月勤労統計に見る雇用の質的改善やいかに? »

2014年12月 1日 (月)

法人企業統計に見る企業活動は消費増税ショックから立ち直りつつあるのか?

本日、財務省から7-9月期の法人企業統計が発表されています。季節調整していない原系列の金融業と保険業を除く全産業の統計で見ると、ヘッドラインとなる売上高は前年同期比+2.9%増の328兆578億円と5四半期連続の増収、また、経常利益も+7.6%増の13兆9651億円と11四半期連続の増益となり、ソフトウェアを除く設備投資も前年同期比+5.5%増の9兆4383億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月期の設備投資5.5%増 6期連続プラス 法人企業統計
財務省が1日発表した7-9月期の法人企業統計によると、金融業と保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比5.5%増の9兆4383億円で、6四半期連続のプラスだった。建設用資材やスマートフォン向け電子部品の生産能力増強に加え、工場の生産自動化システムなどで設備投資を増やす動きが出た。
設備投資の産業別の投資動向をみると、製造業は10.8%増と2四半期ぶりに増加した。金属製品や情報通信機械などで伸びが目立った。非製造業は2.7%増で6四半期連続で増えた。
同統計は資本金1000万円以上の収益や投資動向を集計。今回の結果は内閣府が8日に発表する7-9月期のGDP改定値に反映される。GDP改定値を算出するうえで注目度が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資は、季節調整して前期と比べると3.1%増だった。増加は2四半期ぶりで、2013年4-6月期(4.0%増)以来の高い伸び率となった。
GDP改定値に影響を与えるため関心が高い在庫投資額(金融業、保険業を除く)は1兆6305億円(前期は5兆688億円)だった。
全産業の売上高は前年同期比2.9%増の328兆578億円で、5四半期連続の増収だった。製造業は0.9%増、非製造業は3.8%増。経常利益は7.6%増の13兆9651億円で、11四半期連続の増益。製造業が19.2%増、非製造業は1.4%増だった。
財務省は今回の調査結果について、「景気は緩やかな回復基調が続いているという経済全体の傾向を反映している」とみている。

記事のタイトルからしてやや設備投資に注目が集まり過ぎているきらいはあるものの、いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo

季節調整済みの系列による売上げや経常利益をプロットした上のパネル見れば明らかなんですが、1-3月期の消費増税直前の駆込み需要と4-6月期の反動減を経て、7-9月期は緩やかながら企業活動が回復に向かっている姿が現れています。消費増税にショックにより消費がそれほどは回復しないまま企業活動が回復しているんですから、下のパネルの設備投資かというと、まあ、そうかもしれませんが、それほど力強い伸びとも見えません。政府の公共投資かもしれませんし、輸出なのかもしれませんが、少なくとも、上の2枚のグラフを見る限り、消費増税ショックの後で家計の消費が冴えないわりには企業活動は回復を示しているといえ、逆から見ると、企業活動が活性化しても賃金や雇用の質の観点からのトリクルダウン効果は見られないという可能性も考えるべきです。従って、従来からの主張通り、消費増税と企業の法人減税の組合せは大いに疑問を感じます。企業が潤っても家計へのトリクルダウンはそれほど見られない可能性があるもかもしれません。さらに、これはどうでもいいことながら、前の第15循環の景気拡張期、すなわち、2009年1-3月期を谷とし2012年4-6月期を山とする期間における法人企業統計の設備投資統計は、私から見て極めて信頼性が低かったんですが、東日本大震災があったとはいえ、振り返ってグラフを見ると、この期間がとてもジグザグしているのが分かります。それに比べて、最近時点ではまた落ち着いた動きを取り戻しており、統計としての信頼性が回復しつつあるのかもしれません。

photo

続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。いずれも、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率は現在の景気拡大局面に入ってから一貫して低下しており、人手不足の顕在化は明らかなものの、その傾きがようやく緩やかになった段階です。数学的に表現すれば、1次微分が負で2次微分が正といえます。キャッシュフローに占める設備投資の割合はようやく反転上昇の兆しが見えますが、60%を割り込んでから長らくたって50%台半ば近くにまで水準が落ち込んでいます。このままでは設備投資が減価償却費の水準に達しそうだったので、ネットの資本ストックが減少しかねないレベルに設備投資が縮小してしまうリスクがありました。従来からの主張ですが、企業部門の資金余剰が急速に縮小するとは考えられませんし、もしも法人減税をしたりすれば、さらに企業部門の資金余剰が増加しかねないわけですから、この資金余剰を企業部門から設備投資や賃上げの形で広く日本経済に均霑させる経済政策が必要、との私の見方にも変化ありません。

今日発表の法人企業統計を受けて、来週12月8日には7-9月期のGDP統計2次QEが発表される予定となっており、設備投資は上方修正されると私は見込んでいますが、全体の成長率など詳細な2次QE予想は日を改めて取り上げたいと思います。

|

« 今週のジャズは西山瞳・安ヵ川大樹「Down by the Salley Gardens」を聞く | トップページ | 毎月勤労統計に見る雇用の質的改善やいかに? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/20840/58147113

この記事へのトラックバック一覧です: 法人企業統計に見る企業活動は消費増税ショックから立ち直りつつあるのか?:

« 今週のジャズは西山瞳・安ヵ川大樹「Down by the Salley Gardens」を聞く | トップページ | 毎月勤労統計に見る雇用の質的改善やいかに? »