景気ウオッチャーは改善が続き、国際収支は黒字が定着するか?
本日、内閣府から3月の景気ウォッチャーが、また、財務省から2月の経常収支が、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーは現状判断DI、先行き判断DIとも前月から改善を示し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1.4兆円を超える黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
3月街角景気、現状判断指数4カ月連続改善 基調判断を上方修正
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.1ポイント上昇の52.2だった。改善は4カ月連続。好況の判断の目安となる50を2カ月連続で超えた。内閣府は街角景気の基調判断を「緩やかな回復基調が続いている」とし、2カ月連続で上方修正。2月に記述していた「一部に弱さが残るものの」との表現を削除した。
現状判断指数は、家計動向が前月比2.5ポイント上昇の50.9と2カ月連続で改善した。企業動向は1.6ポイント上昇の52.7、雇用は0.3ポイント上昇の59.4と、いずれも4カ月連続で前月を上回った。家計関連では「中国、韓国、東南アジア諸国からのインバウンド客の増加、その人たちの消費増加にかなり助けられている」(九州・都市型ホテル)との声や、「これまで人材募集を出していなかった企業の求人情報を見かけることが増えている」(四国・人材派遣会社)といった見方が寄せられた。
半面、家計関連で「前年は消費増税前の買いだめがあり、今年はその反動で特にたばこの売り上げが落ちている」(北関東・コンビニ)、企業関連では「住宅着工数の減少により、住宅部材の供給過剰から価格が低迷し、収益が悪化している」(東北・木材木製品製造業)などの指摘も聞かれた。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は、前月比0.2ポイント上昇の53.4と、4カ月連続で改善した。先行き判断指数が50を上回ったのは3カ月連続。先行きの基調判断は「物価上昇への懸念などがみられるものの、賃上げへの期待や外国人観光需要への期待などがみられる」とした。景況感の改善を巡っては「円安、株高の状況が今しばらく続きそうであり、さらに各企業のベースアップなどの影響が少しずつ出てくるような期待感もある」(南関東・スーパー)などの声があがった。
調査は景気に敏感な小売業など2050人を対象とし、有効回答率は90.5%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
2月の経常収支、1兆4401億円の黒字 3年5カ月ぶり高水準
財務省が8日発表した2月の国際収支状況(速報)によると、モノやサービスなど海外との総合的な取引状況を表す経常収支は1兆4401億円の黒字だった。黒字は8カ月連続で、2011年9月(1兆6145億円の黒字)以来3年5カ月ぶりの高い水準だった。経常黒字が1兆円を超えたのは13年3月(1兆2874億円)以来約2年ぶり。
2月は前年同月の5988億円の黒字から改善し、QUICKがまとめた民間予測の中央値(1兆1293億円の黒字)も上回った。原油安で貿易収支の赤字幅が縮小したほか、訪日外国人客数の増加で旅行収支が単月として過去最高の黒字となり、サービス収支の赤字幅が小さくなった。
2月の貿易収支は1431億円の赤字だった。前年同月から4297億円赤字幅が縮小した。自動車や電子部品などの輸出が伸び、輸出額は5兆9588億円と232億円(0.4%)増えた。一方、原油安でエネルギーの輸入は減少し、輸入額は6兆1020億円と4065億円(6.2%)減った。
旅行や輸送などのサービス収支は1087億円の赤字だった。前年同月から583億円赤字幅が縮小した。旅行収支が633億円の黒字と単月として過去最高となったことが寄与した。2月は春節(旧正月)の休暇を利用した中国からの観光客が増え、単月としての訪日外国人客数が過去最高となり、消費が拡大したようだ。
企業が海外子会社から受け取る配当金収入などにあたる第1次所得収支の黒字は前年同月比4020億円(27.5%)増の1兆8622億円となった。
やや長くなったものの、いずれも、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。
景気ウォッチャーの現状判断DIは前月比+2.1ポイント上昇して52.2を記録し、先行き判断DIも+0.2ポイント上昇の53.4となりました。現状判断DIは先月に50を上回り、今月も4か月連続で上昇しています。家計動向ではサービス関連と飲食関連が牽引し、企業動向では製造業よりも非製造業が大きく上昇しています。ただ、小売り関連は先月に大きく上昇した後、今月の上昇幅は小さくなっており、指数のレベルとしても50に達しないなど、昨年の消費増税ショックからの回復に懸念が残るものを感じます。もっとも、先行き判断DIは全体では上昇幅はかなり小さいんですが、小売り関連はそれなりの上昇を示しており、こういった動向も含めて、繰返しになるものの、現状判断DIが4か月連続で改善し、2か月連続で50超を示していることなどから、統計作成官庁である内閣府では、先月までの基調判断「一部に弱さが残るものの、緩やかな回復基調が続いている」から前半部分を削除して、「緩やかな回復基調が続いている」に上方改定しています。
次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。引用した記事にもある通り、2月の経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆4400億円を超える黒字を計上し、約3年半振りの黒字幅でしたが、上のグラフに見る季節調整済みの系列でも、1月1兆円超の後、2月統計でも6000億円を超え、2013年10月から2014年3月までの赤字を脱したかのように見えます。基本的には、上のグラフに見られるように、黒い棒グラフの貿易収支の赤字幅の縮小が大きな要因となっており、その背景は国際商品市況における原油価格の下落であることは言うまでもありません。LNG価格も原油に少し遅れる形で低下しています。加えて、2月単月ながら中華圏の春節効果も見逃せません。これで、欧州や新興国などの景気が本格的に回復して我が国からの輸出が伸びれば、貿易収支は通関ベースや国際収支ベースで黒字に転換する可能性もあり得るものと私は期待しています。
来週4月17日からIMF世銀総会を受けて、昨夜、国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook (WEO) の第3章と第4章のいわゆる分析編が公表されています。日を改めて取り上げたいと思います。
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