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2015年5月27日 (水)

OECDの報告書「格差縮小に向けて」In it together: Why Less Inequality Benefits All に見る格差やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、先週木曜日5月21日に経済協力開発機構(OECD)から「格差縮小に向けて」In it together: Why Less Inequality Benefits All と題するリポートが公表されています。300ページを超える英文のリポートで、日本語による要約も提供されているとはいうものの、目を通すにも時間がかかってしまいましたし、今週は月の最終週でいくつか経済指標が公表されたのもあって、取り上げるのが遅くなりました。長くなるので引用はしないものの、Wall Street Journal が "OECD Sees Continued Rise in Growth-Harming Inequality" と題するしっかりした記事を掲載していますので、十分かと思わないでもないんですが、国際機関のリポートに着目するのはこのブログの特徴のひとつですので、たとえ遅くなっても図表を引用しつつ簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートの p.24 Figure 1.3. Income inequality increased in most OECD countries を引用しています。かなり多くのOECD加盟国で不平等の度合いであるジニ係数の上昇が観察されており、日本も例外ではありません。1985年とその30年後の直近のジニ係数を比較しており、日本はジニ係数の絶対値でもかなり不平等の度合いが高い国の中に位置しています。

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また、上のグラフはリポートの p.25 Figure 1.5. The risk of income poverty has shifted from the elderly to the young を引用していますが、不平等や格差については高齢層の問題と考えられがちだったんですが、最近時点では若年層の所得の不足、すなわち、若年層で貧困が広がっている点が強調されています。相対的貧困率は75歳超の世代よりも18-25歳の若年層で大きくなっています。そして、リポートでは大きな不平等が経済成長を阻害すると指摘しています。

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最後のグラフは、リポートの p.153 Figure 4.10. Earnings ratio between standard and non-standard workers (standard workers = 1), 2012 を引用しています。OECDのこのリポートでは、男女格差などとともに、第4章 Non-standard work, job polarisation and inequality で我が国でも注目されている正規雇用と非正規雇用の格差について取り上げており、我が国でも賃金の格差が大きくなっていることが読み取れます。この傾向については、国際労働機構(ILO)のリポート World Employment and Social Outlook 2015 でも指摘されているところです。特に、第2章 Employment Patterns, Poverty and Income Inequality のあたりです。
また、別の観点ながら、これら以外のグラフではいくつか日本のデータが欠損しており、この第4章の非正規雇用の分析の他に、第6章の家計の所得・資産の分析などでも、我が国は十分な統計を出していない印象があります。政策立案のための基礎資料として格差や不平等に関する統計の充実が求められます。
最後に、下はOECDからYouTubeにアップされている動画にリンクしています。

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