大きく上振れした機械受注と設備投資の今後の動向をどう見るか?
本日、内閣府から5月の機械受注が公表されています。船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は季節調整済みの系列で前月から+0.6%増の9076億円を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
機械受注、5月は0.6%増 受注額6年11カ月ぶり高水準
内閣府が9日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比0.6%増の9076億円だった。金額ベースでは2008年6月(9419億円)以来、6年11カ月ぶりの高水準。製造業からの受注が拡大し、3カ月連続でプラスとなった。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(4.9%減)に反し、前月実績を上回る水準を確保した。内閣府は機械受注の基調判断を前月と同じ「持ち直している」に据え置いた。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は9.9%増の4417億円と、3カ月連続でプラスとなった。業種別では、「鉄鋼業」向けに火水力原動機の大型案件があったほか、鉄道部品や航空機などを含む「その他輸送用機械」で鉄道車両や航空機などの受注増が寄与した。一方、非製造業(船舶・電力除く)の発注額は4.0%減の4750億円と2カ月連続でマイナス。前年同月比での船舶・電力を除く民需の受注額(原数値)は19.3%増だった。
内閣府は5月、4-6月期の受注額(船舶・電力除く民需)が前期比7.4%減るとの見通しを示していた。6月の受注額が横ばいだった場合、4-6月期の受注額は5.7%増となり、当初見通しより大きく上振れするという。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではコア機械受注の前月比は▲5%程度の減少であり、レンジで見ても▲10-1.5%でしたから、わずかながら前月比プラスの統計結果を見て私はちょっとびっくりです。かなり強い内容ですので、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直している」に据え置いています。4-6月期のコア機械受注の予測は▲7.4%減でしたが、少なくともプラスは記録しそうですし、この予想を大きく上振れることは間違いなさそうです。上のグラフを見ても、上のパネルからコア機械受注は増加のトレンドに入ったように見えますし、下のパネルからコア機械受注の増加を支えているのは製造業であるのは明らかです。もっとも、5月の増加については鉄鋼業が前月比で+969.4%増を示していますので、何らかの特殊要因があったのかもしれません。また、5月こそ減少しましたが、非製造業も堅調ですし、コア機械受注の外数ながら先行指標と見なされている外需も決して減少を示しているわけではなく、横ばい圏内からやや増加を示しています。
ということで、コア機械受注が増加を示しているのはGDPベースの設備投資が拡大局面に入った可能性を強く示唆していると、私を含めた多くのエコノミストは考えています。先日公表された6月調査の日銀短観では、2015年設備投資計画は大企業ベースで+9.3%増、全規模全産業でも+3.4%増との結果が示されています。ただし、全規模ベースで製造業が+12.3%増である一方で、非製造業は▲1.0%減を見込んでます。円安と輸出増の影響が伺えますが、ギリシアの債務不履行から欧州経済が混迷したり、中国経済も欧州発の低迷に巻き込まれたりと、先行きはここに来て一気に不透明感を増しています。従って、5月統計に示されたコア機械受注の動向は日銀短観の設備投資計画と整合的ではあるものの、先行きでは設備投資計画が下方修正される可能性も否定できません。鉄鋼業の特殊要因も含めて、少し慎重な見方が必要だという気がしています。
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