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2015年7月23日 (木)

貿易統計に見る貿易赤字縮小の要因は何か?

本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+9.5%増の6兆5057億円、輸入額は▲2.9%減の6兆5748億円、差引き貿易収支は▲690億円の赤字を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易収支、6月は赤字690億円 5月から赤字幅は縮小
財務省が23日発表した6月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は690億円の赤字(前年同月は8340億円の赤字)だった。貿易赤字は3カ月連続。2000億円超の赤字だった5月と比べ赤字幅は縮小した。円安を支えに輸出額が伸びたうえ、原油安による輸入額の減少が収支改善につながった。
もっともQUICKが事前にまとめた市場予想は370億円の黒字で、予想に反して赤字となった。昨秋からの原油安の影響で輸入額は減ったものの、相場の底入れで恩恵が薄れた面もある。輸入額の減少幅は2.9%と、5月(8.7%)から縮小した。
輸出額は前年同月比9.5%増の6兆5057億円と、10カ月連続で伸びた。米国向けの自動車のほか、中国や台湾向けの半導体といった電子部品などが伸びた。地域別では米国が17.6%、欧州連合(EU)が10.8%、アジアは10.1%伸びた。ただ前年同月と比べ約2割円安が進んだ影響が大きく、輸出全体の数量指数はほぼ横ばいにとどまった。
輸入額は2.9%減の6兆5748億円で、6カ月連続のマイナスとなった。原油安の影響が続き、主に中東地域から原粗油や液化天然ガスの輸入額が減った。原粗油の輸入額は11カ月連続で減少した。
併せて発表した1-6月の貿易収支は1兆7251億円の赤字だった。上期ベースの赤字は5年連続。原油安の影響で輸入額が減り、半期ベースで過去最大の赤字だった前年同期(7兆6281億円の赤字)と比べると、赤字幅は8割近く減った。輸出額は前年同期比7.9%増の37兆8080億円、輸入額は7.4%減の39兆5330億円だった。

かなり長いものの、適切に取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、6月貿易収支は黒字と予想されていましたが、実際の貿易統計では赤字でした。この差は輸出の伸び悩みにあると私は受け止めています。足元の輸出の動向は季節調整済みの系列で見て、5月にゴールデンウィークの日並びが例年よりもよくて、工場やオフィスなどの連続休暇が多く見受けられ、生産・輸出ともにやや伸び悩んだことから、6月にはこの反動で大きく増加すると見込む向きもあったんですが、少なくともこの貿易統計速報を見る限り、5月輸出減からのリバウンドは大きくなかったようです。ただし、それでも小幅の貿易赤字にとどまり、今年2015年上半期でも貿易赤字が大幅に縮小した背景には国際商品市況における石油などのエネルギー価格の下落とともに、円安による輸入の減少が寄与していると私は受け止めています。特に、円安については、さすがにJカーブ効果もそろそろ終了しつつあると考えるべきなんですが、輸出もさることながら、4月ころから我が国経済が踊り場に入ったこともあり、輸入の減少の方により大きなJカーブ効果が表れているんではないかとの見方も可能かもしれません。

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上のグラフはいつもの輸出の推移をプロットしています。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量汁宇都価格指数で寄与度分解しており、下のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同期比を並べてプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月のリードを取っています。ということで、Jカーブ効果の続きなんですが、輸出についても決してJカーブ効果がないわけではないんでしょうが、上のグラフに見る通り、特に下のパネルでは先進国であるOECDの景気が下降気味ですし、これに加えて、中国経済の低迷も考え合わせると、円安による価格効果を帳消しにするくらいの所得効果が生じている可能性があります。米国経済は年内にも利上げを始めようかというくらいに好調なんですが、中国とともに、ギリシアに端を発する欧州経済の先行きが不透明です。4-6月の貿易統計を見る限り、8月17日に公表予定の4-6月期GDP統計1次QEの外需寄与度は明らかにマイナスで、貿易収支以外の経常収支項目にもよりますが、▲0.5%に達する可能性もあると見込まれます。

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最後に、貿易統計から目を転じると、昨日7月22日に開催された経済財政諮問会議に内閣府から「中長期の経済財政に関する試算」が提出されています。いつもの通り、ベースラインケースと経済再生ケースのそれぞれについて、財政収支と国債残高の試算が明らかにされています。上のグラフの通りです。上のパネルはフローの基礎的収支を、下はストックの公債残高を、それぞれ示しています。経済財政諮問会議資料2-3「中長期の経済財政に関する試算」p.3から引用しています。上のパネルを見れば明らかなんですが、2018年度基礎的収支のGDP比▲1%、2020年黒字化は、たとえ経済再生ケースの高成長でも達成が難しくなっています。でも、ベースラインケースだと赤字は累増しかねないようですから、少しでも財政改善のために成長の加速やインフレ目標の達成が必要、という結論なんだろうと私は受け止めています。なお、財政状況が悪化するとどうなるかについて、7月21日に第一生命経済研から「テーマ: 財政危機の末路」と題するリポートが公表されています。私は全面的にこのリポートを支持するわけではありませんが、ご参考まで。

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