猛暑効果などで堅調な動きを示す商業販売統計と雇用統計と消費者物価!
今日は、今月最後の閣議日であるため、いくつか政府から経済指標が公表されています。すなわち、経済産業省から商業販売統計が、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。商業販売統計の小売業販売は季節調整していない前年同月比で+1.6%増と前月の+1.0%増よりも増加幅を拡大しました。いずれも季節調整済みの系列で、失業率は3.3%と前月から▲0.1%ポイント低下し、有効求人倍率も1.21倍と前月から0.02ポイント上昇を示し、雇用の改善が進んでいます。消費者物価は前年同月比で持合いになりました。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の小売販売額1.6%増 4カ月連続プラス 基調判断据え置き
経済産業省が28日に発表した7月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比1.6%増の12兆90億円だった。プラスは4カ月連続。野菜の相場高や畜産品の好調で飲食料品が4.0%増になった。自動車は新車や輸入車の販売が堅調に推移し3.5%増加した。
7月は中旬以降の気温上昇で夏物商材が動き、織物・衣服・身の回り品は5.8%増えた。季節調整済みの指数は前月比で1.2%上昇した。経産省は小売業の基調判断を「一部に弱さがみられるものの横ばい圏」に据え置いた。
百貨店・スーパー販売額は3.2%増の1兆7056億円だった。既存店ベースの販売額は2.1%増だった。既存店のうち百貨店は3.6%増、スーパーは1.2%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は5.3%増の1兆32億円だった。
求人倍率上昇7月1.21倍、23年ぶり高水準 失業率3.3%に改善
厚生労働省が28日発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.21倍で前月から0.02ポイント上昇した。1992年2月以来、23年5カ月ぶりの高水準だった。企業収益の改善などで求人が増えた。総務省が同日発表した完全失業率(同)は0.1ポイント低下の3.3%だった。厚労省は「雇用情勢は着実に改善が進んでいる」と基調判断を上方修正した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に対し、企業からの求人が何件あるかを示す。月間の有効求人数は233万4354人で前月から1.5%増えた。一方、有効求職者数は200万2174人で0.2%減った。求職者にとっては、仕事を見つけやすい状況が続く。現行の賃金水準で働きたい人がすべて職を得る「完全雇用」の状態に近いとされる。
企業の人手不足感は今後も強まりそうだ。雇用の先行指標とされる新規求人数は90万1248人と1.4%増えた。業種別にみると、宿泊・飲食サービス業が前年同月比10.3%増えた。外国人旅行客の増加が寄与した。医療・福祉が8.7%増で続く。
7月の完全失業者数(季節調整値)は220万人で、前月より2万人減った。このうち倒産や雇い止めなど会社の都合による離職は3万人減の61万人。比較可能な02年以降で最低だった。
全国消費者物価、7月は前年比横ばい 市場予想を上回る
総務省が28日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除いたコアCPIが103.4と、前年同月比で横ばいだった。上昇が止まるのは13年5月(横ばい)以来、2年2カ月ぶり。消費増税の影響を除く実質ベースでは今年4月以来、3カ月ぶりに横ばいとなった。0.1%上昇した5月と6月から弱含んだ。一方、QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値(0.2%下落)は上回った。
原油価格の下落に伴う電気代や都市ガス代の値下げを受け、エネルギー価格が下がった。ガソリンや灯油など石油製品も下落した。円安などを背景に値上げが続く食料(生鮮食品除く)、テレビなどの耐久消費財、宿泊料は値上がりし、物価を下支えした。品目別では上昇が344、下落が133、横ばいは47だった。6月より上昇品目数が拡大した。7月の食料・エネルギーを除く「コアコア」のCPIは0.6%上昇。伸び率は6月と同じだった。総務省は「原油価格の下落の影響を除くと、物価の上昇基調は続いている」との見方を示した。
先行指標となる8月の東京都区部のCPI(中旬速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が102.0と0.1%下落した。原油安を背景とした電気代や都市ガス代などのエネルギー価格の下落が続いた。下げ幅は7月(0.1%下落)と同じだった。一方、コアコアCPIは0.4%のプラス。宿泊料や食料の値上がりで強含み、横ばいだった4月以降0.1ポイントずつ上昇している。
いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。しかし、3つの統計の記事を並べるとそれなりのボリュームになります。これだけでお腹いっぱいかもしれません。次に、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は、次の雇用統計とも共通して、景気後退期を示しています。

商業販売統計のヘッドラインである小売業については、繰返しになりますが、季節調整していない原系列の前年同月比は+1.6%増と前月の+1.0%増から増加幅を拡大し、季節調整済みの系列の前月比も同様に前月の▲0.6%減から+1.2%増にリバウンドしました。基本的には、梅雨明け後の猛暑効果の寄与が大きいと私は受け止めています。ただ、小売販売額ですからインバウンド消費を含んでいる可能性があります。というのは、グラフはありませんが、総務省統計局の家計調査の結果も本日公表されており、物価変動の影響を除いた実質で前年同月に比べ▲0.2%の減少を示しています。総務省統計局の家計調査と異なり、経済産業省の商業販売統計には国内の2人以上家計以外の支出主体、すなわち、単身世帯家計や企業などの法人や訪日観光客などへの販売が含まれており、両者の統計の差の一部なりともインバウンド消費が寄与していると考えるべきです。逆から見れば、国内家計の消費はまだ回復とはほど遠い状態にあるといえるかもしれません。消費の本格回復のためには、実質賃金、特に恒常所得といえる部分の実質所得の改善が不可欠です。そのためには、雇用の改善、特に、非正規雇用よりも正規雇用の増加が必要だと私は考えています。

続いて、雇用については、上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。消費の猛暑効果やインバウンド消費の増加に歩調を合わせるように、雇用統計も改善を示しました。これも繰返しになりますが、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して3.3%を示し、有効求人倍率も0.02ポイント上昇して1.21に達しました。私は現在の失業率水準はほぼ完全雇用水準に近いと考えていますが、フィリップス曲線的に考えると、物価上昇率が2%に達するためには、失業率も3%を割り込んで2%台半ばまで低下する必要があります。雇用の先行指標である新規求人が堅調ですので、先行きはさらに雇用の改善が見込めるかもしれませんが、この水準に達するのは決して容易ではないことはいうまでもありません。

最後に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが7月中旬値です。いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミューに異なっている可能性があります。ということで、コアCPIの前年同月比上昇率は、昨年の消費増税の影響が一巡してから、4月+0.3%、5月と6月は+0.1%、そして、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは7月はマイナスに入り▲0.1%の下落と予想されていました。それだけに、私がいくつかちょうだいしているシンクタンクなどのニューズレターでは、前年比ゼロに「踏みとどまる」と表現した結果が示されていたりして、少し微笑ましくなってしまいました。しかし、いずれにせよ、国際商品市況における原油価格の低落に起因する物価上昇率の落ち込みですから、先行きは日本のコアCPI上昇率もマイナスに突っ込むことを私も予想しています。その際のイシューは、日銀が追加緩和を実施するかどうかです。世界同時株安は今日の時点で一段落したようにも見えますが、まだまだ先行き不透明であり、金融市場の動向とも併せて、年内の遅くない時期に日銀が追加緩和に踏み切る可能性はまだ残されている、と私は考えています。
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