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2015年9月30日 (水)

2か月連続の減産を示す鉱工業生産指数と小売販売額の伸びが鈍化した商業販売統計から何を読み取るか?

本日、経済産業省から8月の鉱工業生産指数商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる鉱工業生産の季節調整済みの前月比は▲0.5%減と2か月連続の減産となり、基調判断が下方修正されています。また、商業販売統計のうちの小売業販売額は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.8%の増加と7月確報よりもやや伸び率が鈍化しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月鉱工業生産、0.5%低下 海外の機械需要後退、基調判断を下方修正
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.5%低下の97.0だった。低下は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.0%上昇で、市場予想を大きく下回った。マシニングセンターなど機械関連の輸出がアジアを中心に減少した。経産省は生産の基調判断を「一進一退で推移している」から「弱含んでいる」に下方修正した。
基調判断は約1年ぶりの弱い表現となった。9月の予測指数も0.1%の上昇にとどまり、7-9月期は4-6月期に続いて2期連続で減産になる見通しとなった。
8月の生産指数は15業種のうち10業種が前月から低下し、5業種が上昇した。はん用・生産用・業務用機械工業が3.2%低下した。輸送機械工業も普通乗用車の生産抑制により0.7%低下した。電子部品・デバイス工業も1.0%低下した。
出荷指数は前月比0.5%低下の95.7だった。在庫指数は0.4%上昇の114.1、在庫率指数は6.1%上昇の119.1だった。
小売販売額、8月は0.8%増 5カ月連続プラス
経済産業省が30日発表した8月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比0.8%増の11兆5480億円だった。プラスは5カ月連続。小売業販売額は季節調整済みの前月比では横ばいだった。
業種別では機械器具が4.8%増、織物・衣服・身の回り品は4.5%増、自動車は3.8%増だった。経産省は小売業の基調判断を「一部に弱さがみられるものの横ばい圏」に据え置いた。
百貨店・スーパーの販売額は前年同月比2.6%増の1兆6057億円だった。増加は5カ月連続。既存店ベースの販売額は1.8%伸びた。既存店のうち百貨店は2.7%増、スーパーは1.4%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は5.5%増の9961億円だった。

いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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先月の指標公表時の製造工業生産予測調査では8月は何と+2.8%の増産という結果が出ていましたし、引用した記事にもある通り、日経・QUICKが取りまとめた市場の事前コンセンサスでも8月は+1.0%の増産とのことでしたから、逆に減産に沈んだというのはかなり生産の状況が厳しいということを示しているような気がします。統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「一進一退」から「弱含んでいる」に引き下げています。生産の弱さの原因を考えると、基本は中国などの新興国経済の低迷に起因する我が国の輸出の不振ですが、同時に、消費増税後の国内の消費の停滞もそれなりのインパクトがありそうです。上のグラフのうちの下の出荷のパネルを見ても、輸送機械を除く資本財出荷は最近時点でやや停滞気味とはいえ、まずまず順調に増加を示している一方で、耐久財出荷は2014年4月の消費増税から方向感として減少しているように見えます。もちろん、消費は耐久財のみから成り立っているわけではありませんが、生産と消費のサイクルがともに弱まっている印象は持ちます。7-8月と2か月連続で生産と出荷が前月比マイナスで、製造工業生産予測調査では9月も前月比で+0.1%の増産にとどまるようですから、7-9月期の生産は4-6月期に続いて2四半期連続で減産を記録するのはほぼ確実です。そうなれば、日経新聞の記事ではないですが、GDP成長率も4-6月期に続いて7-9月期も2四半期連続のマイナスとなる可能性が十分あり、すなわち、日本経済が2四半期連続マイナス成長のテクニカルな景気後退に陥る可能性も覚悟すべきです。もちろん、新興国経済の停滞が原因と手をこまねいているばかりではなく、インフレ目標の達成も同時に厳しくなりつつありますから、日銀が何らかの追加緩和に踏み切る公算が高まったと私は受け止めています。

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次に、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは2010年=100の季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は、鉱工業生産指数のブラフと同じで、景気後退期を示しています。消費に直結する小売販売額は季節調整していない前年同月比でプラスを続けており、季節調整済みの系列でも増加しているように見えますが、それほどの力強さは感じられません。統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「一部に弱さが見られるものの横ばい圏」で据え置いています。生産とのギャップの要因のひとつは、インバウンド観光客の爆買いにありそうな気がしないんでもないんですが、統計的な根拠はありません。少なくとも、7月の毎月勤労統計で示された所得は、特に、ボーナスの所定外給与を含む賃金総額では、決して期待ほどには伸びませんでしたから、小売販売額の伸びも力強さを欠いています。でも、ここまでプラスを記録しているのは、インバウンド観光客の爆買いのほかに7-8月の猛暑効果だと私は考えています。ですから、決してサステイナブルとはいえず、企業が賃上げや非正規職員の正規職員化などの雇用の質的改善に積極姿勢を示さない限り、消費の本格回復にはまだ時間がかかる可能性が高いと私は考えています。

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消費に大きな影響を及ぼす恒常所得について考える上で、年金の世代間格差を見落とすわけにはいきません。一昨日の9月28日に厚生労働省から5年振りの年金の財政検証として、平成26年財政検証結果レポート「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」が公表されています。上のテーブルは全文リポートの p.407 から 第5-2-4表 世代ごとの給付と負担の関係について を引用していますが、多くのメディアで参照されているものです。1945年生まれの高齢世代は払った年金保険料の4.3倍の年金が受け取れるのに対して、1995年生まれの若者世代では2.3倍にしか受け取れません。従来からこのブログで主張している通り、現役の勤労世代は消費しようにも、年金の世代間格差を含めた将来不安から財布のひもを緩めようがないといったところです。以下のメディアのサイトへのリンクもご参考まで。

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